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第90話 頑張ったのに、ノーカンですか!?


お待たせしました!


よろしくお願いします!(´ω`)


あっ、明日が投稿から一年だったから、明日に投稿すれば良かった(←投稿してから5分後に気付く)

 


 五時間目の途中で寝てしまい、終わりのチャイムで目が覚めた。だが、もう大丈夫。眠気はほぼ無くなったと言っていい。

 窓際の一番後ろに座る勝也と掃除用具入れの間にあるスペースへ移動して、座り込んだ。


「おはようさん」

「うい……大丈夫。もう、目は覚めたから」

「あのさ、後ろの席だといろいろと見えるじゃん? 特にさ、巳良乃さん、青、新山さんの場所とかな」

「授業に集中しようぜ?」

「今日のお前が言うなっつーの。……まぁ、流石に違和感は感じるよな? いつもと雰囲気が違っていれば」


 俺もそれについて説明しておこうと、勝也の所に移動してきたのだ。

 のののとの事は、のののがどうもしないと言った以上何をするわけではない。が、紅亜さんに関してのアレコレは、勝也に前々から相談にも乗って貰っていたから話しておく義務があった。それに、頼りになるアドバイスをくれるかもしれないという下心もあった。


「時間が少ないから手短に話すと――」


 日曜日の出来事を、要点だけを切り取って繋げて話した。碧と碧が誘った谷園と出掛けてた最中に、紅亜さん姉妹と遭遇したこと。紅亜さんが取り乱したこと。谷園がフォローしてくれたこと。

 勝也は俺の話を最後まで聞いて一言……「放課後、部活の後まで待てるか?」とだけ聞いてきた。


「まぁ、基本は暇だからな」

「じゃ、帰りながら話そうぜ。少し遅くなるかもだけどな」

「それはいいよ。むしろ助かる」


 授業の間の休み時間はそこまでで終わり、六時間目の授業が始まった。七時間目の授業を含め、そこからはなんとか起きて授業もちゃんと聞いていた。

 夜更かし組の仲間であるのののは、眠いのか、それともいつもの様に眠そうなだけなのか分からない表情で授業を受けていた。紅亜さんは……いつもと変わらない、そんな感じに見えた。


 そして、(きた)る放課後。真っ先にやって来たのは何故か、マノンその人だった。



 ◇◇◇



「青さ~ん、放課後はお暇ですか?」

「今日はアレだ、勝也を待っとく予定だな」

「となると……二時間三時間は暇という事ですね?」

「……何を企んでる?」


 俺からの熱い疑いの眼差しを、マノンは涼しげな笑みで受け流した。


「神戸、帰る」

「そうか、また明日な」

「うん」


 教室を出て行くののの。目の前のコイツも連れて帰ってくれないかと期待したが、さすがにそれは伝わらなかった。

 部活に向かった勝也や紅亜さんに頼ることも出来ず、それでいてマノンから逃げれる手段も見付からない。俺は両手を上げて、降参のポーズを取った。


「面倒ごとはパスだぞ? これでもお腹はいっぱいなんだ」

「よく言うじゃないですか~、デザートは別腹って」

「そうかもしれないけど、食後にハニトーを出されても食べきれる自信は無いぞ?」

「男ならガッツリ行くのが魅力なのですよ?」

「限度があるだろ! 限度が!」

「何で、余力を残しておかないんですか!」

「別腹がすでに余力だからだっつーの!」


 なんでマノンと押し問答をしているのか……というか、そもそも本題にすら入っていない。いつもなら本題から入るであろうマノンに、少しだけ違和感を感じる。

 マノンは面倒ごとを持ってきたのだろうか? それとも、ただ言い返してみただけなのか。話を聞けば解決するが、それは同時に面倒ごとを聞かされる……という事態にもなりうる。

 だが……落ち着いて考えれば、答えはすぐに出てきた。


「マノンが面倒ごとを持ってくるのはいつものこと、か」

「そうですそうです……って! なんかそれ、引っ掛かる言い方ですねぇ」

「はぁ……。で、何の用なんだ?」


 用事があるのだろうが、聞いたら聞いたで口ごもる。

 言いづらい事なのか、本当は用など無かったのか。どちらでもいいから早く聞かせておくれ。という気持ちでマノンからの返事を待った。

 しかし、言いたい事が纏まらないというよりは、何から話して良いか分からないと言った感じで、口は開くものの、言葉が出てこない。


「えっ……と、え~っと……そう、アレです!」

「マノン呼びなら、気が向いたからだぞ」

「あっ……え? そ、そうなんですか? “私に”気が向いた、と?」

「そう、気が向い……ん?」


 俺とマノンとの間で、とてつもなく大きな認識のズレがあった様にも感じたが、俺は変なことを言っていないし……気のせいだろうか?

 (かたく)なに苗字で読んでいた俺が気が向いたから……という理由に驚いた表情を見せ、何かを考える素振りをしたが、それだけだった。

 仮に、何かを聞き漏らしていたとしても、あの短さで重要な単語なんてそれほど多くは無いだろう。だからきっと、大丈夫なはずだ。


「そうですか、そうですか……」

「なんだよ、その意味ありげな頷きと視線は」


 マノンは周囲を見渡して、近くに人が居ないことを確認しだした。マノンにしては珍しく表情が真面目だ。不思議と、いつものマノンならではの気軽さが無くなっている気がした。

 クラスにはまだ人は残って居るけど、近くにはいない。小声くらいの音量での会話なら聞えはしないだろう。


「青さん……」


 口元に手を添えて、思ったより小さい声で呼ばれる。内緒話の礼儀? かは分からないが、俺も自然と声を拾う為に耳を近付けていた。

 ゆっくりとマノンの方へ、無防備にも。


 そして――――。


 元々マノンに対して警戒心というものは薄かった。それは俺だけじゃなく、マノンと接した人はそうなっていくのだろう。

 人とのコミュニケーション能力に長け、愛想が良く、リアクションも良い。まだ転校してきて一ヶ月程度だと言うのに、まるでずっと前から友達だったかの様な距離にマノンは居る。


 だから、油断した。


 言葉で説明できる程度の事なんて、人の表面でしかない。人には表と裏がある。

 良い人だって良い部分だけで構成されている訳じゃない。悪い部分を見せない様にしているから、良い人と思われるだけだ。その人が良いか悪いかなんて、それぞれの主観で判断するもの。その人が自分をどう思っているかは、また別の話になる。

 マノンについて言うならば……何かを“抱えている”とは思ったが、危険な奴とはとても思えなかった。


「青さん。実を言うと私はですね、養護施設育ちというか、もっと言えば孤児なんですよ」

「…………孤、児? 嘘だろ? ――本当、なのか? でも、それなら……どうしてこんなタイミングなんだよ」

「それは、私が悪い子だから……ですかね?」


 自嘲気味に、マノンが話す。悪い子……文字通りの意味よりも、もっと深い気持ちが込められている気がした。

 マノンを評価する際に、いたずらっ子と言う人が居ても、悪い子と言う人はまず居ないだろう。基本的には圧倒的な評価として『良い子』なのだから。

 だから、より混乱する。そして、孤児。複雑な事情の急な告白に、驚きがまだ追い付かない。


「ますます意味が分からないぞ? たしかに、お前はいつも意味が分からないけど……今回は唐突過ぎだ。それを俺に教えてどうしたいんだ? 何が狙いだ? まさか、同情して欲しいなんて言うんじゃないよな?」

「同情……は、そうですね。してください。青さんは私に同情して、私に構って、私を心配して、私を孤独(ひとり)にしない。言うなれば……それが狙いですかね!」


 最後の方を明るく、いつも通りに言っても(かす)む。持ち前の明るさが霞み、それどころか痛々しいまである。

 同情しろ……は驚く。正直、今でもドッキリなのか? と疑える。いつものおふざけで、今すぐマノンの態度がガラリと変わるのを待っている。でも、そうはならないのだろう。


 何故なら――すでにマノンは、“嘘じゃない”、“同情して欲しい”という気持ちが本当だという事を証明しているのだから。


「お前は……その為に、その為だけに、俺の頬に()()()をしたのか?」

「……はぃ。すいません青さん。やっぱり……怒りました?」


 頬に当たった時間は一瞬と思う程に短い。だが、確かに柔らかい感触があった。今でも頬に変な違和感が残っている。

 誰がこのタイミングで頬とはいえ、されると思うだろうか。俺は思わなかった……だからこそ、油断だ。

 あの瞬間……というかマノンに行動を操られていたことに驚いた。マノンの性格というより、頭の回転を舐めていたのが今回のに繋がったのだとすると、思ったより恐ろしい奴なのかもしれない。警戒度が少し上がる。簡単に言うと……“いろいろ”ちょっと“ムカつく”だ。


「実感が出てきて驚いてるけど、怒ってない。だけど、少しムカついたってのが正しい」

「そうですか。ごめんなさい、です……」


 下を向いたマノンに、俺は畳み掛けるように言う。ムカついた理由を。


「マノン……お前が思ってたより策士だったのにムカついた。お前に操られたのにもムカつく。でもな……“口付け”でもしなきゃお前の事を気にもしない男だと思われた事が、一番ムカついてるんだよ」


「……っ!? あ……ごめ、ん……あの! あのあの……でも、ファーストです……よ?」


 何を思ったのか、そんな事を言い出した。それなら俺だって家族以外に頬っぺとはいえ、されたのは初めてだ。幼少期の碧からのはカウントしない事とする。

 だから、時間が経てば経つほど……頬に熱が集まっていくのが分かってしまう。あのマノンとはいえ、さすがに照れるし、恥ずかしさも出てくる。


「ほっぺはノーカンだ、バカ! 母親譲りのフランクさと父親譲りの日本語だったか!? 誰がそんな小せぇ合図に気付けるんだよ! バカ! お前、本当にバカ!」

「そ、そんなバカバカ言わなくても……が、頑張ったのに!」


 お互いに顔を赤くして、残っているクラスメイトの存在も忘れて、ちょっと大きめの声を出した。

 とりあえず俺は、時間を作ってくれようとした勝也に謝罪のチャットと癒しの猫画像を送っておいた。のののにしか使えない手だが、僅かばかりの効果を期待して。


「バカって言ったのは照れ隠しだから気にするなっ! ったく……場所を移すぞ、聞いて欲しい話があるなら、全部聞いてやる。だけどなマノン――最初に言っておくぞ。お前が孤児だから、施設育ちだからって、全員が奇異の目で見ると思うなよ。……行こう」

「…………はいっ!」


 どこか話しやすい場所はないかと考えながら、俺はマノンの少し前を歩いて教室を出て行った。





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)


この、何となく伏線的なのを回収して行くという、終わりに向かってる感……ぐふふ。

(それはそれとして、ちゃんと、終われるんやろか……)


なんか、一気にポイント入ったのか、ジャンル別日間のランキングが浮上しててニヤケましたね

(*´ー`*)

あざすっ(手をハエの様にこすりながら)

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