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第89話 睡眠が足りなくて、眠たいから思考が鈍る


お待たせしました&ただいまです(´ω`)


気持ち太って帰って来た気がします……

福岡は飯が美味い!あと、夜は怖い!


そんな感じです!


 


「ちょっとちょっと! 起きてください! な~にを暢気に寝てるんです!?」


 体を揺さぶられる感覚と共に意識が覚醒していく。

 頭の中を眠いが支配しているせいか、何もしたくない。起きたくもない。返事も面倒だ。


「起きてくださいよ! 責任……そう! あの日の責任を取ってください青さん!」

「おい、あまり怖い言葉を使うなよ……いや、マジで怖いから。誤解の中でも厄介な部類だから」


 今が何時かも、教室にクラスメイトがどれだけ居るかも分からなかったが、醜聞(しゅうぶん)でしかない。少しだけ回復した気力で何とか……その言葉を発している谷園に俺は言い返せた。


「いやいや、青さんのせいで私の宿題がひとつも進んで無いんですよ!?」

「そうか……えっ、それ俺のせいなの?」

「です! 責任とって、写させてください!」


 俺は鞄に入ってあるノートを谷園に渡した。

 別に宿題は金曜日の内にやっておけばと思ったが、谷園が家に来ることになった原因は俺にある。しかも、いろいろと迷惑をかけた訳だし。そのお礼の一端になるのなら、宿題くらい安いものだ。


「えっ!? 青さん、マジですか? 半分は冗談のつもりでしたが……」

「ん~、まぁ……迷惑掛けたからな。あと、眠いからすぐに離れて貰おうかと」

「何ですかそれ! それじゃあ、まるで私がうるさいみたいじゃないですか! 失礼しちゃいますね!」

「……まだ八時前か。寝れるな」

「伏せて誤魔化そうとしても駄目ですよ!」


 さっさと写してくれば良いのに、何が気に食わないのか分からないけど……谷園はまだ近くにいて何かを言っている。本人的にもっと感謝でもして欲しいのかもしれない。それか、俺の対応がおざなり過ぎたのかもしれない。

 眠たいのに寝れない状況というのは少しだけキツい。早々にお引き取り願わねば、授業中まで寝てしまうかもしれない。


「谷園」

「マノンですっ!」

「……マノン。いつもヘルプありがとう。だから早く、宿題写して返してくれ」

「……………………う、うす……です」


 静かになった谷園を置いておいて、俺は勝也が来るまで目を閉じて体力回復に(つと)めた。横目で少し、のののを見てみると顔を伏せていた。寝ているのかは分からないけど。


「おーい、青~起きろ~」


 教室に流れるクラスメイト達の会話を聞き流していると、いつの間にか時間になっていたのか、勝也が左肩を叩いて起こしてくれた。


「おうおう……眠そうだな? 夜更かしか?」

「寝てないだけだ、心配はしてくれ」

「なんだそれ、でもほら、缶コーヒーのブラック。眠気覚ましには良いだろ?」

「ブラックか……朝から縁起悪いな」


 共通の友人である奴の事を思い浮かべて、すぐに消した。

 苦笑いを浮かべてる勝也に代金を渡して、ブラックコーヒーで眠気が取れるか分からないが、とりあえず味わう。それから、のののの肩を軽く叩いて起こしにかかる。


「起きろ、ののの」

「眠い」

「飲むか? ブラックコーヒー。一口飲んだけど」

「飲む」


 のののに缶を渡す。受け取ったのののは目を擦って、コーヒーを飲んで、欠伸(あくび)をして、そして俺に缶を返した。

 欠伸をしてる姿がとても猫っぽい。日向ぼっこしかしないタイプのやつ。

 思ったよりは普通に話せる。寝て起きたらいろいろ考えてしまうと思っていたが、意外と普通だ。


 でも……反対側はどうだろうか? あの日、あのまま別々に帰ってから連絡も取ってないし、どんな表情してるか分からない。俺もどんな表情で話せば……いや、どんな表情になるのか分からない。

 正面を向けば、視界の端に少し映る。だが、ハッキリ確認するには横を向かねばなるまい。


 ちょっとだけ横目で紅亜さんを盗み見る。

 ただ普通に座っている風にも見える。でもその目元、目の下にうっすら隈がある様に見えた。もしかしたら、紅亜さんも良く眠れた訳じゃないのかもしれない。

 手元にはまだ中身の入っている缶コーヒーがある。渡そうか、渡さないかで迷っている訳じゃない。何か理由付けしないと話せないのか、と思って止まってしまっているだけ。

 用事があるから話し掛けるなんて普通の事だ。でも、用が無いのに話す関係だったことを考えると……今の状態で話し掛けるのに躊躇(ためら)いが出てしまう。


 自分の小心者っぷりは分かっている。

 だから…………その、紅亜さんの机の上にソッとコーヒーを乗せるだけに終わった事を誰も責めないで欲しい。

 顔を伏せて何事も無かったらという風にしてみるも、視線はたしかに感じる。が、先生が教室に来るまでの間、俺は顔を伏せ続けた。


 ――朝少し寝てコーヒーで誤魔化してみても、結局のとこ午前中の授業は睡魔との戦いだった。


「おい、神戸! ここを答えてみろ!」

「あ、いえ……すいません。分かんないです」


「……ったく。試験も近いんだ、寝るなよ。巳良乃、お前もだぞ!」

「答えは『万有引力』」


「今は物理や歴史の授業じゃないぞー。ちゃんと起きとけよ。じゃあ、新山」

「はい……味が分かりませんでした」

「お前はその缶コーヒーを片付けておけよ……」


 先生からため息が漏れ出す。黒板を見れば英語の授業だった。そんな事が午前中に多々あって、ようやく昼休みが来てくれたのだった。


「青、飯どうする?」

「勝也は? 食堂行くならついて行くぞ? 弁当だけど」

「そっか……んじゃ、パンでも買ってくるわ! 何か要るか?」

「ブラックコーヒーで……ヤバいわ。眠気がヤベーですわ」

「私は、ココア」

「はいよ。じゃ、行ってくるから準備しといて」


 机を勝也の席まで動かして、セットしておく。ついでに、のののも机を動かしてやって来た。

 どうせなら……と、机の角と角を合わせて中央に謎の三角地帯を作るオシャレさを発揮してみた。特に意味は無いけど。でも、三人で顔を合わせながら食べるなら理に(かな)っている配置だ。


「眠いな~」

「窓際ぽかぽか」

「食後はもっと大変かもな」

「大変」


 弁当を用意した状態で勝也の帰りを待っていると、コンビニの袋を携えた谷園がやって来た。


「うふふ~マノンですけど~」

「なんだそのテンション?」

「……と、言うことで紅亜も連れてきて良いですか?」


 俺とのののは顔を合わせて、谷園をもう一度見る。お前はマジか? と。来たとして話せる事も何があるのかよく分からないし、勝也にだって気を使わせてしまうだろうに。

 そういう意味で、谷園に視線で問い掛ける。


「……ん? 何です?」

「かぁー……ダメかぁー」

「神戸」

「あぁ、そうだな。マノンはマノンって事だ」

「神戸?」

「いや、迷惑掛けたしな……本人がそう呼ばれて満足するなら、それも良いのかなって」

「いや、置いてきぼりなんですけどー? 結局どっちなんです?」


 俺とのののは谷園の言葉に頷いて返した。ハッキリと断れない性格は似ているのかもしれない。


 ◇◇◇



「おいおい……お通夜じゃねーんだぜ? 何で皆黙ってんの?」


 数分席を外しただけでこうも変わっていると、さすがの勝也も戸惑いを隠せないようだ。分かる。ずっと居ても戸惑うもん。

 視線を合わせない紅亜さん。何故か能天気さではなく空気を読む方で出てきたマノン。勝也から受け取ったココアを飲むのののに、顔色を窺うだけで何もしない俺。


「うーん……分かった、この状況を当ててみようか? 青がまた何かやらかしたんだろ?」

「正解」

「いや、うん……のののは静かにココアでも飲んでてね」


 当たってる様で当たってない様に見えるがちょっと当たってる……そんな勝也の回答については誰も何も言えずに、また静かになる。

 皆の配置は近くの机も借りて、四人合わせと一人をくっ付けた形。俺の隣にののの。正面に谷園でその隣に紅亜さん。勝也が全体を見れる一人の位置だ。

 問題はマノンだ。頷いた俺やのののもだが、何を思って連れてきたのか説明をして欲しいレベルだ。というか、なぜ一番喋りそうな奴が黙っているのか。


「まぁ、とりあえず飯にしようぜ?」

「だな」

「する」

「です」

「うん」


 俺は何気ない感じでスマホを取り出してチャットアプリを起動させる。送る相手は勝也だ。

 さすがに忍びないというか、事情を知ってもらえた方が都合が良い。勝也のコミュニケーション能力に頼りきりになってしまうのだが……な。


『簡潔に言う。実は日曜日紅亜さんとの誤解が解けた。碧と居たところに、紅亜さんと紅亜さんの妹と出会った』

『どうりで。詳しくは後で。今は知らない事にしておく』

『了解』


 各自で用意している物を食べていく。勝也とのののとマノンは買ってきたパン。俺と紅亜さんは弁当を。

 会話も無く食べると、いつもより圧倒的に食べ終るのが速く、つまりは何もしない時間が増えてしまった。


「今日は珍しく新山さんも眠た気なんだな?」


 勝也が紅亜さんに質問を送る。今日に限っては何でもない質問なのに、必要以上に意識してしまう。


「えぇ。少し考え事をしていて……まぁ、纏まってないと言うか、分からないというか」

「へ、へぇー! デモ~、チャント休マナキャ、疲レチャイマスヨー?」


 めちゃくちゃ棒読みである。そう言えばマノンの演技力は、たしか中々の物だったっけな。

 きっと、何かを意識して喋ろうとするから不自然な演技になってしまうのだろう。それならいっそ、黙っててくれた方がマシに思えるが、それもマノンの優しさだと思うと、何も言えない俺よりはるかにマシだ。


「まぁ、難しい内容なら誰かに相談してみるのもアリなんじゃね? 一人だと考え方が狭かったりするしな?」

「そう、かもね。でも……できるだけ自分で考えてからにしてみる」


 ちょっと下を向いてる紅亜さんに質問をしていた勝也だが、次はマノンの方にターゲットを変えた。少しずつ皆と話す作戦? なのだろうか。

 こういう会話回しは俺には出来そうにないし、勝也にその位置に座って貰って助かった。それぞれに丁度良い質問をして、皆が黙ってる時間を減らしてくれた。

 そして、昼休み終わりのチャイムが鳴り……使った机を元の位置へと戻している時に、勝也だけは早々に自分の席に戻りため息を吐いていた。

 結局、勝也には気苦労を掛けてしまったお詫びとして、機会があれば、何かを奢ろうと俺は心にメモしておいた。





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)


ぷぷぷ、旅行中に総合評価が16000PTを越えてた。ありがとうございます!

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