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第72話 金曜日は浮かれがち


お待たせしました~

ホントは三連休中に上げたかったですが、普通に何もしませんでした……っと!


では、よろしくお願いします!



 


 朝食が並ぶリビングへ、最後に現れるのはだいたい俺だったりする。

 まだ碧は食べているが両親は既に食べ終えていて、お父さんなんかは新聞を読んでいる。


「おはよう青、早く食べちゃいなさいね。お母さんも準備があるんだから」

「あぁ……そういえば言ってたね。お父さんの仕事が終わってから?」

「そうよ。今日は早帰りさせて貰うみたいだから……青、留守番は頼んだわね。居ない間の食費は碧に渡してあるから」


 両親はお父さんの実家に行くと、数日前から聞いていた。

 急でもないし別に良いのだが、早帰りしてまで行くのは少し大袈裟な気がしないでも無い。

 でもまぁ、誰の墓参りかも知らないくらいには、どうでも良いと思ってるのだが。


(あと、お金を碧に渡す選択は……何て言うか、まぁ……正解だろうと俺も思うけどさ)


「さっさと食べて」と言うお母さんの声に急かされたし、体を起こす為にも、いつもの自分の席に座って朝食を食べ始めた。


「お兄ちゃん、今日は何が良い? 何でも作っちゃうよ!」

「そうだな……何でも良いよ」

「で、でたぁ~! じゃあ、野菜“だけ”炒めにしちゃおうかなぁ?」

「ごめんなさい、それだけは……勘弁してください。ナスとピーマンたっぷりの野菜“だけ”炒めは勘弁してくださいよ、碧様~」


 冗談と分かりつつも、食費を預かってる碧ちゃんに楯突く事は避けるべきだ……と、まだ冴えきってない頭でも理解は出来た。


「じゃあ、夕方に買い物行くから手伝ってね!」

「はいよ。なんなら、晩御飯の手伝いとかしちゃう勢いだぞ」


 流石に両親の手前、小学生の妹に家事炊事を全部任せるとは言えないし、何よりも碧の前では兄らしい所を見せておかないとな。いつ碧にも反抗期が来るかも分からないし。


「ごちそうさまでした! ……お兄ちゃん早く帰って来てよ?」

「分かってるよ。帰宅部舐めんなよ」

「じゃあ、そろそろ俺も出るかな。青、数日だけど碧と家は任せたぞ」

「分かった。いってらっしゃい」


 お父さんと碧がリビングを出て、先に家からも出ていった。

 俺は家を出る準備に入るギリギリの時間まで、早く食べろと言われつつもゆっくり朝ごはんを堪能していた。


「ごちそうさま」

「食器はそのままで良いから早く学校に行っちゃいなさい」

「そう朝から急かさないでよね」

「あんたがゆっくりし過ぎなのよ。……ねぇ、青?」


 急に変わった声のトーンが気になって、テレビに向けていた視線をお母さんに向けた。

 何かを思案している表情だった。言うべきか言わないべきか迷う様な……そんな雰囲気だった。


「どうしたの?」

「……ん。何でも無いよ! お父さんも言ってたけど碧ちゃんを頼んだわね」

「……分かってる。こっちは心配しなくて良いから、お墓参り? に、行ってらっしゃい」


 最近になって、こういう表情をするお母さんをよく見る。いや、お母さんだけじゃなくお父さんもだ。

 何かを言いたいんだろうけど、結局は何も言ってくれない。気にはなる。気にはなるが……気にしない風に俺も振る舞っていた。


 自分の部屋に戻って準備を整えると、すぐに家を出た。

 今日は晴れてる。快晴って程じゃないけど、青空が見えている。

 水曜日に降っていた雨の影響が昨日もちょっとだけ残っていたグラウンドの状況はまだ分からないけど、体育祭の練習は無事に出来そうな天気だ。

 個人的には、雨であの作業をしていた方が楽だから嬉しいけれど。



 ◇◇◇



「ねぇねぇ、碧ちゃん?」

「何かな、白亜ちゃん」


 六年二組の教室に、いつも通りの時間に着いた。すると、これまたいつも通りに白亜ちゃんが話し掛けてくれる。

 学校に居る時はそれなにり友達と会話をするけれど、一番お話するのはやっぱり白亜ちゃんだ。


「今日はどうする?」


 どうするとはつまり、放課後のお誘いの事だ。白亜ちゃんが遊べる時は、いつもそう聞いてくる。

 逆に、私が暇な時は私から白亜ちゃんに聞くのだ。

 いつもならすぐに了解の返事を返すのだけど……今日は少しだけ“悩んだ素振り”を見せていた。

 お兄ちゃんに早く帰って来てと頼んだのに、私が遊んで帰るのは悪い子だろう。それに、お兄ちゃんが誰も居ない家に帰るのを寂しがるかもしれないし。


「ごめんね白亜ちゃん。お父さんとお母さんがお爺ちゃんの家に行くらしくって、まぁ、私とお兄ちゃんはついて行かないんだけどね……ほら、家に誰も居ないとお兄ちゃんが寂しがるでしょ?」

「ふむふむ、なるほどなるほど……うん、分かった! 碧ちゃん、お兄さんの事が好きだもんね!」

「なっ……!! 何言ってんの!? そ、そそそんな事ないんだけど!」

「だってぇ~、男子からの告白だって全部断ってるじゃん?」

「白亜ちゃんだってそれは同じでしょ! お兄ちゃんは関係無いの!」


 少し声が大きくなってる事に気付いて、声量を落とした。

 白亜ちゃんはいつもこうだ。お兄ちゃんに会ってから、何故かお兄ちゃんの話題を振ってくる事が多くなった。(つい)いには私がお兄ちゃんを好き……みたいな感じで対応してくる始末だ。

 当然、嫌いでは無い。でもそれは、お兄ちゃんとしての話だ。なのに白亜ちゃんと話していると、どうにも異性としてという風に聞こえてしまう。


「だって、私には付き合う気とかないし~」

「わ、私だってそうだよ」

「ふ~ん……ま、そういう事にしといてあげますか」

「まったく白亜ちゃんは……ん? でも、白亜ちゃんって恋愛系を特集してる雑誌を読んでるよね? 何で?」

「そりゃ……来るべき時の為に?」


 何故に疑問系なのかを聞き返したくなるが、これ以上はいつ墓穴を掘るか分かったものじゃないと、話を切り上げる方に持っていった。


(いや、なに墓穴とか思っちゃってんの私は! そんなの無いから……無いったら無いから!)


 私だって何回かは告白された事もある。嬉しい事だ。でも、こう……何か違うのだ。

 今から付き合って長続きするカップルも居ると思う。それは否定しない。けど、私には無理だ。

 飽きっぽい私が恋愛なんてもの……良く分からない内に始めても、上手くはいかないだろう。そんな思いから、「好きな人居るので」と、やんわりお断りをしていた。

 白亜ちゃんにお兄ちゃんの件で言われるのは、この断り方のせいかもしれないと……薄々は感じているけど、一番無難で一番傷付けない方法だと思っているから、どうしてもこの方法を選んでしまう。


「来るべきって……いつになるやら」

「それはもう……こう、大人の魅力に溢れた人が私を拐ってくれるのよ」

「あー、白亜ちゃん? お兄ちゃんの友達に勝也さんって人が居るんだけど、イケメンだよ? スポーツやってるみたいだし」

「イケメンかぁ……それはお兄さんよりも?」

「外見的にはそうじゃない?」

「外見的には…………ね?」


 意味深に強調して言う白亜ちゃんの顔は、したり顔だった。

 それじゃまるで、内面も合わせたらお兄ちゃんの方が格好良いと私が思っているみたいではないか。

 そりゃ、お兄ちゃんは優しいよ。誰にだって優しいのがお兄ちゃんだし、私が特別な訳では無い……少しは家族補正があるかもしれないけど。

 初対面の白亜ちゃんにだって優しかった筈だ。そう……誰にでも。


「あれ? 碧ちゃん……何か怒らせた?」

「怒ってない! 怒ってないけど……なんか! お兄ちゃんにはお仕置きが必要だと思う!」

「これは……恋愛雑誌に載ってた嫉妬から来るおぞましいナニか……だね。お兄さん、頑張って……」


 白亜ちゃんが、いつの間にかさりげなく離れて行っていた事に気付いたのは、チャイムが鳴った後だった。



 ◇◇◇



「……お、悪寒が」

「どうした青? 早く学食に行こーぜ」

「そ、そうだな。次って結局はグラウンド集合か?」

「だと……思うぜ? まぁ、とりあえず体操服を持ってっとけば問題ないだろうさ」


 今日は金曜日で、少しだけ浮かれてる生徒が多かった。

 やはり、明日が休みで気持ち的に余裕だと、授業だっていつもより窮屈に感じない。

 今日のこの後が、体育祭関連の時間で終わりというのも、浮かれる理由の一端になっているのだろう。

 木曜日の小テストを乗り越えたからかもしれない。何はともあれ、谷園とか凄く楽しそうにしている。今ものののにちょっかいを掛けて無視されているみたいだし。


「体操服か、そうだったな。サンキュー」

「さ、行こうぜ! 今日は何食えるかなぁー」


 教室から出た俺と勝也は、食堂に向かった。

「食おうかな」ではなく「食えるかな」なのは、勝也が日替わり定食ばかり食べているからだろう。

 食券を買う時に、やはりと言うか、いつも通りに勝也は日替わり定食を選んだ。便乗するとかでは無いが、俺もなんとなくで勝也と同じ日替わり定食にした。

 渡されたのは豚バラ炒めで……まぁ、普通に美味しそうな感じだ。


「空いてる席あるか?」

「んーっと…………んんっ!?」

「どした、青?」

「いや、あれ……」


 席を探して見渡した先にあった……いや、居た奇妙な組み合わせに少し驚いていた。

 俺がお盆を持つ右手の人差し指だけ動かして、その方向を示すと、勝也もすぐに気付いて驚いた表情を浮かべた。


「灰沢さんはよく見掛けるから慣れたけど……向かいに座ってるのって新山さんだよな?」

「みたい……だな。ゆっくり来たせいで、何がどうなってこうなってるのかまるで分かんないぞ……面識あるのか? あの二人」


 素うどんを食べるひま後輩は、もはや慣れつつある光景だ

 だが、今日はその目の前にお弁当を持参した紅亜さんが居る。

 予想では、一人で居るひま後輩の所に紅亜さんが来たと考えられるのが一番しっくり来るが、その理由が不明過ぎる。

 谷園かのののでも居れば、ひま後輩とは顔見知りでもあるし、特に気にする事でもないのに。


「勝也、谷園とのののって教室に居たよな?」

「あぁ……だな。たしか、二人で飯にしてたよな?」


 そうなのだ。だから、知らない所で二人が仲良くなっていた可能性だってあるが、意外感が拭えない。

 紅亜さんには、ひま後輩と初めてあった直後に名前を調べて貰おうとした事があった。ひま後輩も、紅亜さんの事は知っているだろう。

 だから……不思議では無いのだが、俺からすればやっぱり不思議としか思え無い空間がそこにはあった。


 ――君子、危うきに近寄らず。


 自分を徳も知恵もある者とは言わないが、あの場所は危険だと察知くらいは流石に出来る。

 周囲の男子生徒が二人を気にしない訳もなく、仮に俺がその中へ飛び込めば、勝也にだって迷惑が行くかもしれない。

 それでもやっぱり気になるのなら、後で聞けばそれで十分(じゅうぶん)だろうと思った。

 だから俺は、その中心地から離れる様に遠くの空いている別の席を確保しに向かった。


 席を確保してから、豚バラ定食の感想や昨日のテストの出来について勝也と駄弁っていた。念のため、壁際の一人用のテーブルを二つ横に並べて、俺も勝也も紅亜さん達には背を向けていた。


「うっそ……そこの答えって“ア”じゃ無いのか?」

「たぶん、“イ”の方だったと思うぞ……」


 食堂の端の方で、そんなとりとめのない明日には忘れていそうな会話を始めていたら、勝也が何かに気付いたのか振り返った。空気感か気配か……何に気付いたのかは分からないが、振り返った。

 それにつられて俺も振り返った……振り返ってしまった。そして、バッチリ目が合った。


「あ、やべっ……」


 咄嗟にでた声がそれだった。具体的に何がヤバいのかは説明出来ない。つまり……本能が「これはヤバい」と叫んだのだ。

 たまたま人の少ない遠くに居たばっかりに、逆に目立ったのかもしれない。ひま後輩と紅亜さんにあっさりと見付かってしまった。


 ――木を隠すなら森の中。という、割りと聞く言葉を今になって思い出した。


 それでも、別に二人がこちらへ来なければ良い話なのだが……そこは、実は人見知りの紅亜さんとボッチのひま後輩だ。迷わずに席を動いた。


(だが、俺だって何もしない訳じゃない! 救援を要請する!)


 体勢を元に戻し、今頃きっと教室で暇しているであろう二人に、素早くチャットを送った。

 内心では冷や汗を掻きながらも、回避出来そうに無い二人分の足音を、何食わぬ顔でただ待っていた。






ひま後輩と二年組の絡みは、前に書いたのをよ見直してから書いてるから大変だったりする(←メモでもしとけやって話ですよね)


ちな、見返す為に遡ると、おかしい部分が見つかるから凹みがち。見つければすぐ修正するんですけどね……


例)谷園がひま後輩と会ってひま後輩のフルネームを聞いた後日に、食堂でクッキーの話の時に、「灰沢さん……この子の下の名前って」と青に聞くシーンとか普通に載ってて、正直冷や汗ものですよね。(既に修正というか削除済み)


誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)



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2020/1/11~。新作ラブコメです! 『非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~』
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