第69話 意地悪ゴコロ
お待たせしました!
書き終わったらすぐに投稿!
見直ししてないから誤字が横行!
見付けたら教えてこれは要望!
それが作者の為の孝行!
……寝ます。夏バテには皆様もお気を付けてください……。
作者は8月中に5回は鼻血出してます……キーゼルバッハ部位から……。
「はい! 自分の分を取ったら後ろに回してね! そしたらさっきの作業に戻って下さい。六月に入ってギリギリっていうのもアレですから、進められるだけ進めてください」
副リーダーである三年生の女子生徒が、ダンボールから赤いハチマキを取り出して配り始めた。
集合を掛けた理由はハチマキを一人一人に配り、少しでもテンションを上げさせようという作戦だったのかもしれない。
現に、女子生徒はハチマキの結び方でお喋りが始まり、男子は頭に巻いたり腕に巻いてみたりしていて、気持ち的に盛り上がっている。
「ハチマキは各自で大切に保管してください! 小さく名前を書くのは良いですが、赤が霞まないようにしてください。オリジナリティーは出し過ぎ無いように」
白組の方も同様にハチマキが配られているみたいだった。
「ふっ、ブルーなのにレッドとか……パープルじゃないか」
「ブラック……お前は白組の方が良かったんじゃ無いか? グレーになるぞ? ……ほら、お前にピッタリだ」
「どういう意味だ! ブルー! 誰の高校生活が灰色だって!?」
「勝也を見てみろ……」
「いや、キャッスルと比べるなよ……」
男女問わず話している姿を見ると、やはり大事なのは勉強じゃなくコミュニケーション能力な気がしてくる。勉強が別に得意って訳でも無いが……。
「そうだな、奴と比べると凹むからやめておこう……」
「いや、我から見たら貴様も羨ましい……くそっ! お前らなんか嫌い! もう、アニ研の皆の所に行ってくるから! 来るなよ!」
「そ、そうか……別に行かないけど、達者でな」
ブラックに別れを告げた俺は、周りがそれぞれ作業をしていた場所に移動する流れに乗って、壁際に向かった。
体育館の前の方に生徒の大半は集まっている。
後ろに行けば行くほど、都心から田舎に向かうかの様に、どんどんと過疎っていく。だが、嫌いじゃない。人の少ない方が落ち着くものだ。
人の多い方が楽しいというのは、多分きっと正しい。が、少ないからつまらないという事では無いだろう。ブラックがアニ研の所に向かったみたいに、“合う”人となら二人であろうとも三人であろうとも楽しいに違いない。
「神戸、ハチマキ」
「はいよ。どんな感じで結ぶ? 妹の運動会の時に結ばされた事あるからいろいろ出来るぞ?」
「ターバン」
「ごめん、それは初めて聞く結び方だわ」
「私達の三本を一本に纏めたら……それでも長さが足りるか微妙ですわね」
ひま後輩のアイデアを採用してのののの頭に巻いてみた。
完成したのはヘアバンをしたののの。イメージするぐるぐるターバンには程遠かったみたいだ。
「流石に足りないか……ののの、猫っぽい結び方なら出来るぞ?」
「先に言う」
「ごめんごめん。えっと……三角の結び目を二つ作って、後ろで結べば……ほい! 完成」
「……見れない」
「手鏡は持ち合わせておりませんが……巳良乃さん、お似合いですわよ」
表情も少しだけ嬉しそうにみえる。流石に本番では普通に結ばないといけないだろうが、休憩中やこういう時なら今後もやってあげるのも良いかもしれない。
「にゃんこ」
「のののの髪は黒いし、白いハチマキの方が映えたかもな」
「十分……にゃ」
「おぉ……おぉ! あざと過ぎて少し時が止まったが、破壊力あるな」
「そうですわね、なんでしょうかこの……愛でないといけない使命感のようなものは。先輩なのですけど、とても可愛らしいですわ!」
メイド喫茶でも中々に見ないレベルで猫耳が似合っていて、それでいて語尾に「にゃ」である。反則的と言ってもいいくらいだ。
じゃれついてくる元気な猫というよりは、おとなしく寄り添うタイプの猫を彷彿させてくる。まぁ、猫を飼った事は無いんですけど。
同性のひま後輩ですら魅了してしまうとは、のののは恐ろしい子だった。
「恥ずかしい」
「のののじゃなくて、にゃにゃにゃと呼んだ方が良いかな?」
「名案ですわね」
「違う、愚案、良くない」
照れ隠しの様にそっぽを向くのののだが、耳が赤くなっているのが俺やひま後輩にはバレバレだった。
それでもハチマキを外さないという事は、そうとう気に入ってくれたのだろうな。
「んじゃ次は、ひま後輩のハチマキ貸して?」
「えぇ、どうぞ……私にも何か?」
「あぁ、さっきの半分の角を作って……こう巻けば……はい! 完成」
「あ、ありがとうございます……似合うでしょうか?」
「よく似合う」
チラッとひま後輩を見たのののが一つ頷き、そう言った。
ひま後輩に作ったのは頭のてっぺん辺りに角が来るようにした、鬼スタイルだ。他意は無い。簡単に出来るからだ。
ひま後輩にな見えないからと言って、作った訳じゃない。ちょっと鋭い瞳とよく似合いそうとか思ってない。……思ったけど。
のののが照れから復活したのか、次なる標的であるひま後輩を褒めちぎっている。
だが、如何せん……のののの声は抑揚が少ない。
平坦に近い声で何回も「似合ってる」と言われたら、普通の人なら「はいはい、似合ってる似合ってる」みたいにあしらわれてる様に感じてしまうだろう。
ひま後輩ならその辺りを理解してくれると思うが、一応のフォローをしておいた方が良いだろうな。
「のののも言ってる通り、よく似合ってるよ。それならしっかりしているひま後輩にも、お茶目な所があるって皆が分かってくれそうだ」
「そう……でしょうか? ふふっ、ならもうしばらくはこのままで居るのもアリかもしれませんわね」
自分のハチマキを触ったひま後輩が少し怒ってみたり。
のののが午後の眠気に襲われ掛けたり。
俺が作業に集中してないと、巡回してた生徒会長である麗奈さんに怒られたりしたが、何とか時間内にノルマである一枚は完成させきった。
後半のラストスパートで若干の荒さは出てしまったが、ずいぶんと細かく貼り付けたものだ。
上半身サイズもある紙を埋めるのは、意外と大変だった。のののなんて身長の半分くらいは隠れてしまう長さだ。
「油断はすべきじゃ無かったな……」
「ですが、終わりましたわね。他の方がどうかは分かりませんが」
「麗奈さんが俺達の所に来た時にさ、順調って頷いてたし、良いペースだったんじゃない?」
たぶんだが、終わってない人も居るだろう。その中で一枚終わらせられたというのは、サボってない良い証明になるだろう。
実際の所、前半に飛ばしてたから後半は駄弁ってる事が多かった。楽しかったから全部良し! のリア充的な感覚を身に付けた俺は、リア充と自称しても良いかもしれない。
「赤組集合~!」
三年のリーダーからそんな声が掛かった。
離れてた人も割りと近くに居た人も集まって行く。
「おっ、戻ろうか。紙は俺が纏めて持ってくよ」
「いえ、後輩である私が持っていきますわ」
「いやいや、ここは男の俺が」
「いえいえ、雑用くらい任せてください」
「「いやいや……」」
そんなやり取りを呆れた(?)瞳で見ていたのののだが、然り気無く紙をこっちに預けていた。「私は持っていかないからどっちでも良い、早くして」と言わんばかりだ。
「急ぐ」
いや、言った。
俺はひま後輩に軽く耳打ちをして、紙を預けて貰った。
「ののの、結論から言うとこれはのののが持って行ってくれ」
「解せぬ」
「駄目ですわよ巳良乃さん。青先輩に頼り過ぎですわ」
「解せぬ」
いやいや言うのののだが、意地悪が九割占めている行動理念の元、楽し過ぎなのののに持って行かせた。
残りの一割はアレだ……のののの為を思ったアレ的なアレである。
……いや、うん。十割の意地悪ゴコロですね。
◇◇◇
授業が終わって制服に着替え、教室に戻ってきた。
ホームルームで、明日は期末テスト向けの小テストを各授業で実施するという『お死らせ』を受けた。
とりあえず、勝也の瞳が死んだ。ブツブツと何かを言っている。
「あ、青くん! ちゃんと勉強してる?」
「まぁ、してない事は無いけど……不安はあるかなぁ」
「そうなんだ! 良かったぁ」
(よ、良かった!? つまり、自分より下が居て安心って事ですか!? いや、元より下なんだけどさ……)
何故かニコニコの紅亜さんと対象的に、俺は苦笑いしか返せなかった。
苦笑いをしている間にホームルームも終わり、放課後を迎えた。
雨が弱くなる気配も無い。帰ろうか、それとももう少し様子を見ようか迷っていると、谷園が前の席の椅子を使ってこっちを向いた。
「止みませんね~」
「雨なぁ。嫌いじゃないけど」
「私はじめじめして嫌ですけど~。まぁ、良いです! 紅亜を待ちましょうか」
「ん? 何か言い方的に俺も含まれて無い?」
「えっ?」
「え?」
首を傾げる谷園に釣られて、一緒に首を傾ける。
隣に座っていたのののがそっとスマホを差しでしてくれたお陰で、その疑問が解決した。ついでに紅亜さんの言葉の意味も。
『テストとか困ります困ります』
その言葉から始まった“チャット”を目で追った。
勝也は部活のバスケで来れないと返信している。小さく書いてある時間を見ると、ちょうどホームルームの時間帯の時にしていたやり取りの様だった。
『紅亜も部活終わるのなら、どこかでテスト対策しましょ』
『青くんがスマホ見てないみたいだから、声掛けてみるね』
というやり取りで、紅亜さんから言われた強烈な言葉の「良かった」という意味が理解出来た。
のののが返信してるのは放課後に入ってからみたいだが、それでもすぐにスマホを気にしてるあたり、既に俺よりもスマホを使いこなしている感がある。
「なるほど……。テストが不安って言って、良かったって返された時は何事かと思ったが……勉強会のお誘いがあったって事な」
「そんなドギツい返しをしたんですか紅亜は……」
「神戸、勉強大事」
「そうだな。のののが居るならとりあえず全教科で困る事は無さそうだ。教室でするの?」
「いえ、せっかくですからファミレスにでも行こうかと!」
まさか、二日続けてファミレスに行く事になるとは思わなかったが……代わりになる様な場所を提供出来る訳でも無い。
ここは、黙ってお任せしといた方が良いだろう。同じファミレスに行くとは限らないしな。
そして――合流した紅亜さんを含め、俺達は、駅近で便利という真っ当な理由から昨日と同じファミレスに来ていた。
恥ずかしいからとかでは無く、ただの保身の為に、俺は学校を出てからも三歩……いや、十歩くらいは後ろを歩いてこのファミレスまで来ていた。
「とりあえずドリンバーですよね! 青さんは、何か注文します?」
「……チーズケーキですかねぇ」
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)