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第67話 体育館となるとこのメンツですよね


お待たせしましたぁ!

ガチャ爆死丸(^ω^)


~前回のあらすじ~

雨降ったから午後の体育祭の時間は体育館だよ!


では、よろしくお願いします!



 


 別クラスで着替えをした後、勝也とブラックと一緒に体育館へと移動していた。


「はぁー、六月に入ったらすぐ体育祭だな……けっこう準備期間ギリギリらしいぞ? 先輩(いわ)く」

「練習で授業が潰れるのは良きかな良きかな」


 勝也の(うれ)いとブラックの能天気の差は、実行委員であるか否かだろう。俺だってブラックと同意見だ。

 この手の学校行事で、準備がギリギリと言っても間に合わなかった事なんて今まで無かった。

 小学生の時は先生の管理の元に作業をするだけだで、中学生の時と高校は最後の追い込みで無理矢理にでも間に合わせている。

 つまり、タイトなスケジュールだとしても余裕はあるという……少し矛盾している状態で、問題は無いという事だ。


「チッ」


 左から勝也、ブラック、俺の順番で歩いているその右横を誰かが舌打ちをしながら通った。

 小さい音だったが、舌打ちは勝也まで届いていたのだろう……会話が少し途切れた。


「ふっ……一年生か(若者か)。そして、一年生にも嫌われているブルーの存在に我、驚きと羨望の眼差し」

「いや、煽ってやるなよブラック。青、知り合いか?」

「知り合いというか……彼はあれだ、陸上部の一年で……」

「あ、察し。目の上のたんこぶというか、逆に七不思議入りしてもおかしくないブルーと新山氏関連の話ですね」


 妙に理解の早いブラックだ……と少し感心してみたが、よく考えずとも俺を嫌っている人の大半の理由がソレしか無い。

 七不思議は言い過ぎだろうが、男子の場合においては不思議がっている人が大半だろう。

 他は彼……林君だか森君だかと同じで、何を聞いたか知らないが怒ってるパターン。一年生の場合はそれ以外にもあるが、自覚してても自分では直せないものだし……直す気も特には無い。


「俺は不思議に思わないけどよ、確かに一年生とか他の学年の人にしたら不思議に思っているかもな? 特に青より見た目が良いと自負してる奴は」

「……我も最初、不思議に思ったでござるよ? 新山氏に話し掛けるブルーを見た時は。中学が一緒だったと聞いても」

(ブラック……容姿レベルは俺とそこまで差は無いだろうに)


 体育館も見えて来た所で、この話を切り上げる事にした。


「はいはい、もう良いだろ? この話は。あの一年生に関しても体育祭で勝負しろって言われただけだし」

「おっと? 熱血漫画か何かで?」

「青が出てる競技って……一〇〇メートル走と二人三脚だよな? 何で勝負すんだ? タイム?」

「いや、彼が言うには騎馬戦らしいけど……ま、種目決めは終ってたし、後の祭りだよな」

「まだ、祭りの前だけどなー」


 ブラックのツッコミを鼻で笑ったが、少しだけ引っ掛かりを覚えた。祭りの本番までは何があるか分からないし、イベントにはアクシデントが付いて回る事もあるのだと、言われた気がして。


 体育館に俺達が入ったタイミングで、赤組、白組で整列するように指示が飛んだ。と言っても、各学年の一組二組と三組四組で別れて並ぶだけである。

 整列後に先生の話が少しあったが、今日も主な流れは団長達に任せるらしく、早々に切り上げていた。


「今日は、雨が降ってしまってグラウンドが使えないので、予定を変更して、別の作業をしてもらいます。二年生三年生は知ってると思いますが、当日の各組の待機席の後方に巨大パネルや横断幕を飾り付けます。ですから――」


 団長の話は、雨なので今日は横断幕作りをしますというものだった。

 巨大パネルは美術部の方で下書きをして貰ってから、三年生で色を塗っていくらしく、二年生と一年生は主に横断幕作りを頑張って欲しいとの事。

 アイデアや各自の作業については、既に三年生が決めていてくれたらしく、俺達が何をすれば良いか考える必要は無いみたいだ。

 学校行事というのは、三年生の思い出作りの面が強いだろうから、どんどん三年生が考えて指示さえしてくれればそれで良いと思う。


(手持ちぶさたにならないのは良いな)


 下手に手が空いてしまうと、すぐにサボり認定をされてしまう。指示が無いと余計な事をしてしまうかもと、積極的な行動に移せない。

 そんな状態になるくらいなら、最初から決められた事をしていた方が楽だと思っている。ノルマがあればそれを時間内に終わらせる事を考えていれば良いのだから。


「では、今からやって貰う事を話すのでよく聞いておいてください。今日中には終わらないと思いますけど、出来るだけ進められる様に頑張りましょう!」



 ◇◇◇


 作業内容は簡単で、きっと、小学一年生にも出来る内容だ。

 横断幕の文字は『赤組ファイト』、それを折り紙を使った貼り絵で大きな物を作るらしい。

 当日に強風で無い事を祈るばかりだが、手作り感は出るし、皆で作った達成感も味わえそうだ。

 先程配られたのは、一人辺りB2サイズの用紙、折り紙、スティック(のり)の三点セット。上半身くらいの大きさがある用紙には、細かい枠線が引かれてあり、枠内に『黄』『赤』『黒』と小さく文字が書かれてあった。


「枠内が大きいからと言っても、大きく千切らずに、なるべく小さく千切って貼るようにお願いしますね! 分からない事があったらすぐにリーダの誰でも良いので聞いてください。では、広がって良いので作業開始してください! とりあえず五時間目が終わるまでです!」


(よし……壁際を確保するのが優先だな)


 俺は周囲が友達とグループ作りを優先させてる内に、壁際に移動した。人の確保より場所の確保……これでも単純作業は効率重視でやる男と自負しているのだ。

 背もたれの無い状態とか、腰が痛くなりそうだしな。

 それに――友達が少ないのは、決して俺だけじゃない。類は友を呼ぶとは良く言ったもので、こういう時は自然と集まってくるみたいだ。


「神戸、ナイス場所取り」

「青先輩、先日のお礼を言いに来ましたわ! べ……別に一緒に作業しようと思った訳ではありませんのよ? 本当ですのよ?」

「のののが居ると一年生の本好きの子に睨まれるし、ひま後輩が居るとシンプルに睨まれるんだよな……まぁ、良いんだけど」


 そんな事を口走ってみたが、のののに一年生の所へ行く様に言うつもりも無ければ、ひま後輩に離れてくれとも言うつもりは無い。

 二人ともコミュ力に難アリという事は知ってるし、せっかく集まったなら三人で作業すれば良いだけの話だからだ。


「可哀想な神戸」

「口元が笑ってるぞ、ののの」

「青先輩、何で睨まれるのですか? 私が何かしてしまったのでしょうか?」

「マジの心配!? 本気にしなくて良いんだぞひま後輩……冗談みたいなものだから」


 俺の左隣にのののが腰を降ろし、俺の右側にひま後輩が座った。

 顔を上げれば周囲では無く、遠くの誰かと視線がぶつかるし、手元を見て作業に集中した方が良さそうな状況になってしまった。


「紙の裏に数字が書いてあるけど……二人は何番?」

「十八」

「私のは……三六と書かれてありますね。何の番号でしょうか?」

「たぶん、番号順に並べると文字が完成するんだと思うけど……」

「私のは小さい『ア』の出だし」


 俺とひま後輩が小さく驚いた。

 のののの言ってる事が本当かどうかは、用紙を完成させても分からないだろう……一人の量なんてほんの一部でしか無いのだし。

 それを貼る前の、ただの枠線が書かれてる状態だけで分かるのは流石としか言えない。


「もしかして、巳良乃さんって物凄く頭がよろしいのですか?」

「あぁ、学年で一位を取るくらいならやってのけるぞ……本気になれば」

「本気になれば……ですの? ですが、それでも凄いのですね!」

「えっへん」


 褒められて嬉しいのか、少しだけ頬が(ゆる)んでいる。

 のののは本気を出せば凄いのに、いつも最低限のラインでしか頑張らない。のののの事だからあれこれ言うつもりは無いけど、少しだけ勿体ない気がしないでもない。


「ひま後輩は学年でどれくらいの成績? テスト順位とか」

「そうですね……四月終わり頃にあったテストですと、二十位ぐらいだったかと」

「なるほど……さ! 作業を始めようか! 話すのだって手を動かしながらじゃないとね」


 俺が一年の時よりも圧倒的に成績が良いひま後輩だ。のののも言わずもがな。つまり、この空間の偏差値を下げてしまってるのは俺だ。

 俺が「二人に勝ってる所なんて少ないだろう」と卑下しだす前に、話題を切り上げておく方が賢い選択だろう。のののには見透かされているような視線を頂いているが、無視させて貰う。


「えぇ、そうですわね。では始めましょうか……っと、床に置くと少し貼りにくいですわね……」


 俺は足を組んで胡座(あぐら)で座ってるが、のののとひま後輩は女の子座りをしていた。

 確かにひま後輩の言う通りで、用紙を床に置いたら少し体がキツい。体が硬い俺も同じ気持ちだ。だが、ひま後輩の場合は邪魔なモノが二つあるから……もっと大変かもしれない。


「神戸、私も貼りづらい」

「前から思ってたけど、ののの……ひま後輩に何かしらの対抗意識持ってない!?」

「そうですの? 何か面映ゆい感覚ですわね」


 何に対して対抗意識を持っているのか……それは見れば一目瞭然ではあるのだが、それを男の俺が言うのはどちらに対しても失礼極まりないだろう。

 左右に居る二人の事をチラチラと見ていたら、(おもむろ)にのののが立ち上がり、照れるひま後輩の目の前まで移動した。そして――


「ていっ」


 少し屈んだのののがひま後輩の胸に軽めのビンタを放った。

 揺れる胸。集まる視線。満足せず、逆に何か憤怒に似た感情を更に募らせたっぽいののの。胸を押さえる様に隠して頬が赤くなっていくひま後輩。それを見ていた俺。


「――ごちそうさまです」


 つい、そう言ってしまった俺の反応はマイナス評価だったのだろう。のののからそれほど痛くないパンチ、ひま後輩から上目遣いでの鋭い視線が突き刺さった。


「神戸」


 のののが相も変わらず眠たそうな視線で問い掛けてくる。

『そんなに大きい胸が良いのか』と。


 ここで選択肢を間違えると、のののが拗ねてしまうかもしれない。俺はここぞとばかりに頭を回転させて考えた。


『大きい胸が良い』……そう言った時の反応は決まりきっている。今は俺の好みじゃなく、のののが拗ねない答えを導き出さないといけない。


『小さい胸が良い』……これは実は危ないと知っている。過去に碧が言っていた、「大きくなくても良いけど、小さいのも嫌」と。何で碧とそんな話になったかは覚えて無いが、そう言っていた。


 なら――俺が選ぶ答えは、これしか無い。


「ののの、大きいとか小さいとかで議論する時代は終わってるんだよ。胸を平等に愛すのが(まこと)の紳士というものだからね」


「変態」

「変態ですわ」

「……千切り絵って無心になれるから良いよね」


 どうやら俺は、選択肢を盛大に間違えたらしい。

 二人からは、俺の答えに呆れたせいか、手が飛んで来る事も鋭い視線が来る事も無かった。

 存外に、不正解とは言えないのかもしれない……いや、変態って言われたし駄目な選択だったな。






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