第61話 クッキーは放課後に
お待たせしました!(短めですが)
すいません……ゲームが……ゲームが楽しくて少ない執筆時間をゲームに費やしてました、、、
ゲ、ゲームの事は責めないであげてください!面白いのはゲームが悪い訳じゃないんです!仕方の無い事なんです(はい、言い訳オワリ)
~前回のあらすじ~
紅「クッキー作った」
他の皆「へぇ~楽しみ!」
青「シュガートラップだ! 気を付けろよ!?」
学生にとって一週間の始まりである月曜日。青空が広がっていて天気はとても良い。少し日差しが強く、暑くなりそうだけど。
それでもクッキーの事を考えると、今日が湿気の多い日じゃなくて良かったと思う。
「あ、ポイントで八円分お願いします」
「かしまりやしやぁ~丁度お預かりしやす、レシートは……いりゃねっすか、ありゃりゃっしやぁ~」
朝から変な店員に、気の抜けた対応をされてこっちまで力が抜けるが、勝也や谷園、そして自分の為の缶コーヒー、それにハンドクリームも買っておいた。のののは控えめだったら食べられるだろうし、きっと大丈夫だろう。
(おっと……ゆっくりしてると遅刻しそうだな)
スマホで時間を確認して、歩き出す。いつも通りに家を出て、いつもは寄らないコンビニに立ち寄っていた。しかも、あの店員のせいでレジ前で順番を待った事でタイムロス。少しくらい歩くスピードを上げないとヤバそうだ。
どうせなら自転車で来れば良かったと思ったが、今更だな。
◇◇◇
学校に時間ギリギリに到着し、靴を履き替えて教室へ向かうが、何やら騒がしく感じる。土日が明けての月曜日、それぞれ友達と話す事があるのかもしれないが、それにしては騒がしかった。
原因なんて、ひとつしか思い付かないが。
「おはよう勝也」
「よう青、やっと来たな。月曜日からギリギリなんて大丈夫かぁ~?」
「遅刻しなかったらセーフだから良いんだよ……それと、これ受け取っておけ」
勝也に買ってきた缶コーヒーを渡す。一瞬、疑問の表情を浮かべてはいたが、何かを察したのか「サンクス」の一言だけ伝えてきた。
「青、お前も貰ったのか? クッキー」
「いや、今来たばっかだっつーの」
「そうか……その、あれだ。新山さんも、女子には配っているが男子には配って無い様でな、貰えない男子が居る事を忘れんなよ」
「はーい、皆さん席に着いてくださいね~、ホームルーム始めますよ」
桜先生の登場で席に戻るが、勝也の注意は頭の片隅に置いておく事にした。クラスを見渡すと、隣に座るのののはいつも通りで、紅亜さんは何だか楽しそう。だが、男子は妙に落ち着きが無く……女子の一部は既に被害があったようで、“カロリー”という言葉がポツポツと聞こえてくる。
なるほど、特に男子に注意が必要なのは確かなのかもしれない。鞄じゃなく、机の中からこっそりとクッキー入りの袋を見せた勝也が言うんだから、間違い無いだろう。
俺は、クッキーをいつ貰えるのか気になって、先生が話している間も何となくチラチラと紅亜さんを横目で見てしまっていた。何故か、五回に三回くらいは目が合って、すぐ逸らすという行動を二人して繰り返していたら、いつの間にかホームルームが終わっていた。
「はい、では、一時間目の授業の準備に入ってくださいね」
桜先生が教室を出ていった後、待つか声を掛けるか迷っている間に、紅亜さんがクラスの女子達に連れて行かれてしまった。
「なぁ、お前クッキー貰った?」
「いや、貰ってない……というか、女子にしか配って無いんじゃね?」
「良いよなぁ~、チラッと見たけどよぉ……一袋に二枚三枚くらいだから、貰った奴に欲しいとか頼みづらいしさぁ」
やはり話題に上がるのは紅亜さんのクッキーの話だ。さっき見た勝也が持っていた袋には、少なくとも五枚は入っていた気がするけど……何も言わないが吉だろうな。
「ダメ元で頼んでみるか?」
「お前、言えんの? クッキーくださいって、新山さんに」
「ははっ、お前等には無理だろうな、ちなみに俺も無理だ……」
近くでされているそんな会話に耳を傾けていたからか、いつの間にか背後から近付いていた気配に俺は気付けなかった。
「ふっふっふ、だぁーれだ?」
いきなり視界がブラックアウトするが、俺は至って冷静だった。逆に高校生になってコレをされるとは思っておらず、少し気恥ずかしい部分を除けば至って冷静だ。犯人もすぐに分かったしな。
「このクラスで俺に話し掛けてくる人物は極少数……気持ち的に男子の勝也を除き、月曜日からこのテンションで絡んでくるのはただ一人……」
「なんか、とてつもなく悲しい推理を聞かされましたっ!?」
谷園が俺の目元から手を離し、正面へと回り込んだ。
「おはようございます、青さん」
「おはよう」
「おはようございます、青さん」
「ん? おはよう」
「おはよう……」
「どうしたの!? 壊れたの!?」
何故か挨拶を繰り返す谷園の、三回目の挨拶を遮って理由を尋ねるも、帰って来たのはどこか不服そうな顔だけだった。
谷園はたまに意味の分からない事をする。だから、これもその一つに過ぎないのかもしれないと思うが、挨拶を返したのに不満とは……女子と言うよりかは谷園が難しいに違いない。
「壊れてるのは青さんの方です! それと……私の胃や味覚も壊れそうなんですが……」
「あぁ……お察しする。だから、昨日言ったじゃん? 甘いって……ほら、お前にも缶コーヒーだ」
「おぉ……青さん、気が利くじゃないですか! 百円ですか?」
お金は別に要らないと言っても、「どうせ買いに行くつもりでした」と谷園が譲らない。こんな時の缶コーヒーなら奢ると言っても、財布を開きながら谷園は「いえいえ……」と言い、だから俺も「いやいや……」と返す。
勝也の様にサンクスだけで十分だというのに、意外ときっちりしている谷園である。
「へへっ……青さん、百円がねーですよ? というか、千円札が一枚と三十円しか無い」
「……分かった。千円で手を打とう」
「ふふっ、青さんが冗談なんてテンション高めです?」
「……分かった。千円で手を打とう」
谷園が冗談だと思わなくなるまで繰り返して、プルプルと震えながら差し出す千円を受け取り……お釣りの九百円をその掌に乗せてあげた。
「あ、青さん!? そういうのは良くないと、思いますよ! 千円を取られるかと思ったこの悲しみ……どうしてくれるんですかっ!?」
「悪い、つい…………面白くて」
プンスカ怒り始めた谷園が、迷惑料と言って千円と九百円を交換して席へと戻って行った。まぁ、結果オーライだし良いんだけど……去り際の谷園が、机の上に広げていた教科書の下に、さりげなくクッキーを置いていった。
このクッキーを俺にどうしろと言うのだろうか? 男子が持つとある意味爆弾に変わる代物というのを、女子は気付いていないのだろう。
◇◇◇
「えぇ~ですから、この問題というのは公式を当て嵌められる形に式を……」
(……ん? 紙?)
一時間目の数学の授業も半分を越えた頃に、先生が背中を見せたタイミングで、折り畳まれた紙が俺の机の上に放り込まれた。宛先が書いてあればそのまま次へ回すのだが、手紙には宛名が無く、とりあえず飛んで来た方向を見ると……そこには当然紅亜さんが居る。
俺が口パクで「どこ?」と聞くと、返って来たのは「よんで」の三文字。間違えて無ければ、確かに読んでと言っている。だが、念のために、紅亜さんを確認しながら、折り畳まれた紙を広げていく。紅亜さんが止める事も無かったし、やっぱり正解だったのだろう。
折り畳まれた紙には一言――――『クッキーは放課後に』
……とだけ、可愛らしい文字で書かれてあった。まぁ、文字の可愛さはに関しては特に関係無いけど。
俺は紙に書かれた文字を消しゴムで綺麗に消し、『分かった。部活は?』と返事を紅亜さんに送り返した。
一時間目だけかと思ったそのやり取りが、気がつけば昼休みに入る前の四時間目まで続いた。ただ、何となくという理由だけで。何気ない会話をダラダラと続けてしまった、チャットをしている感覚で。
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