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第60話 クッキーの思いで

お待たせしました~m(。_。)m

ちょっと、風邪を引いてたので更新遅くなり申し訳無いです。(熱は無いですが、鼻と喉がやられてました。というか、まだ完治してない件)



前回のあらすじ

紅亜さんがクッキーを作ってるらしいですよ?


では、よろしくお願いします!


 


『クッキーを焼いてみたんだけど、甘めと甘さ控えめ、皆はどっちが良い?』


 紅亜さんから届いたチャットの内容はこうだ。だが、意味は違う。これは……超超超甘めか、超甘めかの二択なのだ。

 紅亜さんの作ったお菓子を食べてみた人にしかこの感覚は通じないというか、分からないだろう。


 ――――あれは去年の十二月後半。街中は当然、学校の中でさえもソワソワとした雰囲気で溢れている頃の事。今さっき届いた内容に近い事を俺は紅亜さんに聞かれていた。


『ねぇ、青くん! 青くん!』

『紅亜さん? そんなに慌ててどうしたの?』


『慌ててる訳じゃないのよ? それより、青くんは甘い物って好き?』

『まぁ、割りと……けっこう好きな方かも?』


 この時は、『もしや、紅亜さんから何か贈り物(プレゼント)的なのが貰える?』なんて考えて、ちょっと浮かれながら返事をしていた。

 この時、既に紅亜さんはその人柄の良さも広まっていて、終業式や年末年始、そしてクリスマスの予定まで埋まってるなんて話も出ていて、噂程度の広まりだと言うのに、その相手が誰なのかという詮索までされていた。

 まぁ……それは本当の事で、先約という訳では無いけども、俺から誘ってみたら意外な事に、誘った日の全部に紅亜さんは了承してくれていた。


 まぁ、それは置いといて……とりあえずそんな紅亜さんが贈り物なんて珍しいし、少し浮かれていたのだ。


『甘いのが好きなのね。分かったわ! じゃあ、また明日ね』

『あ、うん! じゃあ……』


 そんな感じでその日は別れ、次の日の放課後。俺は、何故か砂糖の固まりを食べさせられていた。正確には、砂糖の甘い味しかしないクッキーを……だ。


『ど、どうかな? 味見もしたし、美味しくなってる筈なんだけど ……』

『(甘い甘い甘い甘い!! 何これ!? 焼き砂糖!?)……お、美味しいよ?』


 俺はこの時ほど麗奈さんに感謝した日は無かった。主に胃を鍛えられたお陰で、なんとかギリギリの所で言葉を絞り出せたのだから。

 放課後の教室で俺は期待しながら待っていたのだ。打ち合わせしていた通りに俺は教室に残っていて、先に帰ったと見せ掛けた紅亜さんがこっそりと戻って来る。そして、教室に二人きり。

 甘いのは雰囲気だけで良かったのだが……その日初めて、紅亜さんの甘みに関する味覚が壊れている事を知った。


『あのね、青くんはよくチョコも食べてるじゃない? だから……少し違うけどココア味もあるの。それに、蜂蜜の味がする物も!』


 俺は小分けにされた袋を震えた手で受け取って、ニコニコしながら何か期待の眼差しで見てくるいる紅亜さんの目の前で、その全部食べきったのだった。それから数週間は胃にちょっとした違和感が残る事になるのだが、俺は紅亜さんの笑顔を守ったあの時の自分を褒めてやりたい。よく、食べきったと。


 ――だから、もう一度こんな機会があるのなら俺は……。


「『俺は甘さ控えめにしようかな』って言うけど、この案件……皆にも教えといた方が良いのかな?」


 凄く悩む問題だけど、とりあえずは皆の意見を見てから個別に送ってみよう。


 ◇◇◇



「おや、紅亜がクッキーをですかぁ~、女子力が高いですねぇ。私も今度、何か作ってみますかね? 青さんは洋菓子と和菓子、どっちが好み……」


 紅亜からのチャットに「甘め」と返事をしながら、私も……と考えた。考えたまでは良いけど……。


(私は……どうして青さんの好みに合わせようと考えたのでしょうか?)


 自分で考えた事なのに、何故か自分で理解出来ていない不思議な状態に陥っていると、青さんからの個別チャットが飛んできた。


『谷園、新山さんの甘めは普通より十倍……いや、三十倍は甘いぞ? 大丈夫か?』

「三十倍? そんなに甘いんですかね? ですが……『女の子は甘い物が好きなので平気ですよ!』っと!」


(むぅ……というかこれは、紅亜さんのクッキーを食べた事があるという事ですかね?)


 青さんに返事を返しながら、せっかく教えてくれた青さんに対して私は――少しだけ、むくれていた。

 だから、続けざまにチャットを送って、少しだけ青さんにイジワルをしてみる事にした。


『青さんは紅亜のクッキーを、いつ食べた事があるんですか? あと、マノンです!』

『いや、それは去年ちょっと、そういう機会があっただけというか? マロン』


 去年……去年ですか。なら、仕方が無いですね! 私はまだ転校してきていませんし、セーフと言って良いでしょう。それに、まだ名前では呼んでくれないみたいですね……青さんの恥ずかしがり屋には困ったものですが、私が待つしか無さそうですね。


「あ、好みも聞いておきますかね。せっかくですし……『ふーん、です。話は少し変わりますが、青さんは和菓子と洋菓子ならどちらが好きですか? 具体的にどーぞです! あと、マノンです!』」

『胡麻団子が良い感じかも。マロン』


「中華じゃないですか……流石は青さんですね、斜め上です。良いでしょう、作って見せようじゃありませんか!」


 私はスマホのメモ機能に、胡麻団子とメモをしてまた、青さんに返信を送る。


「『分かってましたよ! オーラがそう言ってましたから! あと、マノンです!』」

『いや、お前の視るオーラじゃ具体的な事は分かんないだろーが……。マノン』


(流石、青さん……私の事を良く分かってますね……あと、マノ……あれ!? マノンって書いてある!!)


 スマホを凝視した。最初は打ち間違いかと思ったけど、変換でもマロンの方が出る筈ですから……これはきっと間違いじゃないですね。だから、間違いじゃないから……ないから……。


「うぅ……。驚きとむず痒さで変な感じです~!! 青さんめ! 青さんめ! 青さんめ! ……ってあぁ!! またオーラの色が……そんな、そんなそんな! 名前を呼ばれただけなのにっ!!」


 私は自分のオーラの変化に気付いた。

 また、だ。また青さんに名前で呼ばれただけで、“こんな色”に変わってしまっている。その事を、そろそろ気のせいだと無視出来なくなっている。


「くぅ~……こうなったら寝ます! 寝て、一回リセットするしかありませんね! 『青さん、罰として明日また、名前で読んでくださいね』」


 青さんに名前を呼ばれたらどうなるか分かっているのに、それを頼んでしまう。私は少しバカなのかもしれないですね。ですが……ですが……これは仕方が無い事なんです。私が呼んで欲しいと思っている以上は、仕方が無いですよね。


 私は布団に潜り込み、少しだけ(もだ)えてそのまま眠りについた。



 ◇◇◇



「ほぅ、新山さんのクッキーねぇ。こりゃレアだなぁ……でも、クラスが騒ぎになるかもな」


 漫画を読んでいると、チャットが届いた。青が真っ先に『甘さ控えめ』を選んでいる事に少し意外性を感じたが、俺も同じく『甘さ控えめ』と返事を送った。

 別に甘いのが苦手という訳じゃない、ただ何となくだ。


『勝也、たぶん甘さ控えめでも、全然まったく控えて無いだろうから、ブラックコーヒーか無糖のドリンクを用意した方がいいぞ!』


「甘さ控えめが控えて無いってどういう……ほほぅ。なるほどなるほど。『甘めを食べたから言える事なんだな? 詳しく聞こうじゃないか? ん?』」


 そう言えば……と、ふと去年の冬頃に青が胃もたれを起こして甘い物を拒否している事があったのを思い出した。

 勉強の事は全然覚えられないのに、こういう事は意外と覚えている自分に少し苦笑いが出るが、何だか自分が良い奴の様にも思えてくる。

 まぁ、それは別にどうでもいい。だが、何だか話が繋がった気がしている。青を取り巻く環境を見ていると、こいつらはいったい何を遠慮してるんだ……と、思う事がある。

 俺の立場だからそれに気付けるのかもしれないが、俺がそこに干渉するつもりは無い。青の問題だからな。


『くっ、鋭いな。あれは去年……』


 やっぱり正解か。まぁ、それは良いとして……せめて新山さんに、新山さんと仲の良い女子にも少しは配る様に言っておいた方が良いかな? このグループだけに配るとしたら少し面倒に、というか特に青がまた何かを言われかね無い。


「まぁ、このくらいの事はしてやるか。今度、ジュースでも奢って貰うかね。『はいはい、ごちそうさま。とりあえずブラックコーヒーでも準備するわ』」


 青の話が『食べきった俺』から『お菓子を作る新山さん』へと移ったタイミングで返信して、流れを止める。ホント、何やってんだかな。

 俺は新山さんへチャットを送ってからスマホを充電器に繋いで、漫画の続きを読み出した。



 ◇◇◇



 新山紅亜がクッキーを作ったそうな。

 神戸を家に招待した日の夜に、そんなチャットが届いた。

 どうせなら、うどんでも作ってくれればもっと嬉しいけど、別にクッキーに罪は無い。ありがたく貰っておこう。


「『甘め』」


 どうせなら、だ。どうせなら甘い方が良い。そう返信すると、今度は神戸からメッセージが届いた。


『ののの、新山さんは甘さに関する味覚が異常だから、甘めだと……下手すると食べれないぞ?』


 初耳。新山紅亜にそんなバグがあるとは知らなかった。まぁ、些細な事かも知れないけど。

 それよりも、神戸はどうやって新山紅亜のその異常な味覚を知ったのだろうか? 中学時代? 高校に入ってから? 今回と同じくクッキーでも貰ったのか……食べに行ったのか?


「『神戸、理由』」

『えっと、その……去年の冬に』


 なるほど。思ったよりも詳しく話してくれた。神戸はいつも沢山話してくれる。私はそれを聞くのが楽しくて、嬉しくて、好きだ。

 でも、今の話はもっと簡潔で良かった。聞いたのは私だけど。


「『そう。控えめに変える。また家に来る?』」


 神戸を見送った後、お母さんに聞いたら、また連れてきても良いと言っていた。今度は皆で何を食べようかな……とも帰りの車の中で話した。

 だけど、家に帰って来た時にふと疑問に思ってしまった。お母さんのある行動に。そして、その疑問は疑念となって簡単には消えなくなった。

 だから……神戸をまた誘う前に、お母さんに聞かないといけない事がある。答え次第では自分で調べる必要があるかもしれない。それに、法律関係や事例、あらゆる方法を模索してみないといけない。


(とりあえず、日記に今日の事を書こうかな。最近はようやく書くことが増えてきたから楽しいな)


 お母さんに勧められて、昔から書いてる日記。一行で終わっていた寂しい日記だったけど、高校二年生からは、書くことが増えて楽しい日記になっている。

 内容はほとんど同じ人物の事ばかり。だけど、それでも私の世界は反転した。



「私はのののだから……頑張れる」


 神戸からの返信を見て、それを日記に書き残す。次は別のうどん屋でも調べておこうと最後にメモして、今日はもう日記を閉じた。



 ◇◇◇


「ふぅ……まぁ、谷園にはブラックコーヒーでも買っていってやるか。他はまぁ、大丈夫そうかな?」


 皆との連絡も終わり、明日の準備をしていると、再び紅亜さんからチャットが届いた。今度はグループではなく、個別に。


『青くんは甘いのが好きじゃ無かった?』


 ……俺は今、試されているのだろうか? いや、深読みのし過ぎだな。紅亜さんが覚えててくれたのは素直に嬉しいけど、もうあの甘さは遠慮したい。


「無難に……無難に……『前に甘いのは食べさせて貰ったからね! 次は甘さ控えめも食べてみたいかなって』」

『そういう事ね! なら、青くんには二つ用意しておくから……特別よ?』


 ははっ……紅亜さんは気を使ってくれたのかな? 優しいなぁ。

 俺はありがとうと返事を送って、クッキーの枚数があまり多くない事を祈り、明日の為に胃薬を準備する事にした。





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)

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