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第58話 鍋パーティー

お待たせ……しました!

ゴホッ……ケホッ……すいません、体調ゴホッ……崩してるゴホッ……訳じゃないですけど、遅れました。

m(_ _)m


では、よろしくお願いします!



 


「お茶」

「ありがとう、ののの」


 のののがお茶を運んでくれて、隣に腰を下ろしたのののと一息ついているのだが、なななさんが正面に座っている。ただ座っているのではなく、ジッと見てくる。落ち着かない……。



「あの……」

「何か?」

「あ、いえ……」



『何か』と聞きたいのはこっちなのだが……。というか、大人版のののであるなななさんに見詰められると何か照れる。これが大人版だから出ている……色気、というものなのだろうか?

 隣ののののを見て、なななさんを見る。将来的に、のののもこんな感じになるのかと思うと楽しみな気がしてくるが、成長が止まっているっぽいから望み薄かもしれない……。



「せめて、コミュ力くらいはお母さんに勝てると良いな?」

「おこ。身長以外は負けて無い」

「でも、ののは“小さく”て良いのよ? 可愛いわ」

「憤慨の極み。小さいのは身長だけ」



 そう言い張るのののではあるが、なななさんをこぢんまりとさせたのがのののだ。身長以外もだいぶ小さい。具体的な事を言うと怒られそうだから(ひか)えるが、のののも控えめな諸々が成長するといいけどな。



「あぁ、そうだ……のの、晩御飯は?」

「神戸?」



 なななさんから視線と共に投げ掛けられた質問を、のののがキラーパスの如く流してきた。

 巳良乃家の晩御飯の事情はしらないけど、この二人の事だ……何かしらを補わないと会話にならないのは百も承知。


 だから……つまり――。


『あぁ、そうだわ! ……ののちゃん、今日晩御飯はどうするのかしら? お家で食べるの? それともお外?』

『まだ、決めて無かった……神戸、食べて行くよね? 晩御飯はどうする?』


 ……が、一番可能性がありそうである。思い出した様にのののへと確認した事と、のののからのノータイム問い掛けで推測出来る内容としては、この辺が妥当だろう。

 違ったら恥ずかしいから、いつもの様に丁度良い返答をしておくか。



「のののに任せるよ」

「任された。お母さん、任せる」

「そうね……なら、何か作りましょう。せっかくだから」



 まるでダブルプレーを取ったかの様な見事な連携で、俺の返事がなななさんへと伝わった。会話としては俺となななさんの間だけで、簡潔に完結してしまう程度のものだが、のののを経由するというのは大事なことだ。言葉の前後に隠された情報を推測する為に……というか、もう少し分かり易く話してくれれば問題はないんだけど。


 でもまぁ、俺の予測は当たっていたようで内容は間違っておらず、晩御飯をご馳走する流れになった。



「じゃあ、後で買い物ね。荷物、運ぶの手伝ってね、青ちゃん」

「……えっ? あ、え? あ……はい、分かりました?」

「私も行く」



 どうやら悩んだ結果、青ちゃんが当選した様だ。

 別に呼び方に関しては(こだわ)って無いから良いけど、ちょっとだけ驚くよね。青ちゃんだもの。他に青ちゃんなんて呼ぶ人は居ない。青ちゃんってキャラでも無い。これは、平気で言ってのけるなななさんの凄さだな……天然的な意味で。



 ◇◇◇



 お菓子を食べたり駄弁ったり、テレビを付けてみたりお菓子を食べたりして夕方。そろそろ買い物へと出掛けるとなななさんに言われ、特に準備する物も無く、俺とのののは手ぶらのまま巳良乃宅を出発した。


 スーツから私服に着替え、買い物袋と財布の入った鞄を手にしたなななさんは、一気に主婦へと変身をみせた。仕事の出来る女性から一児の母へ、そのギャップは俺に歳上趣味があればグッときていただろう。



「今日はお鍋にしましょうか」

「闇?」

「やめようののの、誰も幸せにならなそう」



 鍋と一言いっても、種類は豊富だ。鍋の種類も多いが、(しめ)の一品でぶつかる事だってあるだろう。雑炊派や麺を入れる派だ。

 その楽しみを残す為にも、闇鍋だけは絶対に止めなければいけない。というか、三人で買い物へ行ってるのに闇もなにも無いけどな。


「青ちゃんは何が良いかしら? もつ鍋? しゃぶしゃぶ? すき焼き?」


 悩む。何が悩むかと言うと、ここで俺の意見を言って良いのかという事だ。ご馳走して貰う立場だし、言い方は良くないかもしれないが、何でも良いが本心だ。

 うちのお母さんに「何でも良い」なんて言うと、簡単な料理が出てくる。まぁ、「ステーキ」と言っても簡単な料理が出てくるあたり、晩御飯への質問は、考えるのが面倒だからとりあえず聞いてみた……というだけのものだろう。



「そうですね、何でも良いですよ?」

「やみ……むぐっ」


「えっと、茄子が少し苦手なんで出来れば入ってなければ嬉しいですね!」


(どれだけチャレンジしたいんだのののは……)


 のののの頬を軽く摘まんで喋らせ無いようにする。そして、迷った結果、苦手な物だけを伝えておいた。あとは、なななさんに任せておこう。何鍋だって……闇鍋以外ならたいていは美味しい物だ。

 特に皆で食べる鍋は、食べる時の雰囲気も合わさって、楽しくて美味しい料理だ。



「ののは、何かある?」

「……うどん?」

「流石だな、ののの」



 昼にガッツリうどんを食べたというのに、〆にうどんを所望するのののに呆れと感嘆の感情が混ざった言葉を送った。

 そんな話をしている内に、目的地であるスーパーへと着いてさっそく買い物をし始めた。

 買い物カゴは俺が持ち、なななさんがメインの食材を選び、のののは食後のデザートを選びに行った。



「青ちゃん、キノコは?」

「大丈夫ですよ」


「青ちゃん、なに豆腐が良い?」

「焼き豆腐……ですかね?」


「青ちゃん、鍋以外にも……」

「あーえー……味噌汁か、お惣菜とかですかね?」


「青ちゃん……」

「はい……」



 買い物は順調に進んだ。……進んだ。

 必要な物を探しながら、晩御飯には必要無いけど買い足し用の商品もカゴに入れ、そろそろ重たくなってきた時に、のののがデザートを片手に戻ってきた。



「お買い得」

「おっ、焼きプリン。良いチョイスだな、俺も好きだぞ」

「のの、うどんの麺も選んで来て」



 カゴにプリンを入れて、またすぐに離れていくののの。買い物としてはうどん麺が最後で、のののが来ればお会計をして終わりだ。

 好きな物に関しては動きの早いののの。程無くして、麺を手にして戻ってきた。その間、僅か二秒である。もちろん、体感で……本当は一分くらいだと思う。だとしても、普段ののののののんびり加減を知っている人にとっては驚くべき速さである。



 ◇◇



「早く帰る」

「青ちゃん、お願いね」


「あっ……はい!」



 レジを通して袋に詰めると、思ったより重たくなった買い物袋が二つ完成。それを持つのは当然俺で、両手に持ちながら軽やかな足取りの巳良乃親子を追って、少し汗ばみながら家まで戻って来た。

 ここからは主になななさん、ヘルプにのののが入ってクッキングタイムらしく、俺はゆっくりと待たせて貰うことにした。

 材料からどんな鍋が出来るのかは想像つくが、今は完成が楽しみである。


 友達の家で晩御飯をご馳走になる事は初めてでは無いけれど、妙なくすぐったさがあって、どうにも落ち着かない。

 前に谷園が我が家に泊まった時も、こんな気持ちだったのかもしれないな。

 家にはその家に住む人達の空気感がある。それなのに何故か、そこまでここに座っている事に違和感を“覚えない”。今日初めて来た家だというのに、ちょっとしっくり来るレベルだから、逆に落ち着かないのかもしれない。

 それはきっと、のののとなななさんの雰囲気が良く似ているから……俺を落ち着かせるのかもしれない。



「神戸、まだ時間かかる」

「はいよ、本でも読んでおくからこっちは気にしなくて大丈夫だ」


 スーパーから戻る時はオレンジ色だった空が、だんだんとその眩しさを失っていき……暗くなり始めた頃にようやく、グツグツとした鍋の音と食欲をそそる香りが、読書に夢中となっている俺の元へと漂ってきた。


「神戸~」

「青ちゃん、出来ましたよ」


「おぉ! 良い香りが……」



 食器類を準備して、三人で鍋を囲む様に座る。俺のお腹がまだかまだかと鳴いている……。



「では、召し上がれ」

「「いただきます!」」


 なななさんが鍋の蓋を開けたと同時に、俺とのののは声を合わせて鍋パーティーを開始する言葉を言い放った。

 微笑ましい光景である筈なのに、憐憫(れんびん)な眼差しや少し浮かない表情をしているなななさんが、少しだけ印象的だった。






誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)


最近は、1話書くのが長く感じる。不思議な事に……。


ひっそりと更新している『中二病の宇野宮さんはちょっとイタい』もよろしくお願いします……



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