第55話 のののに誘われて
序章的な部分ですから短めです!
よろしくお願いします!(´ω`)
ブクマも評価も上がっているのをみると、やはり嬉み。ありがとうございます!
日曜とは、月曜日の為の準備期間だと思って普段なら何もしない俺だけど……今日は電車に揺られていた。お出掛けしているのだ。
休みでお出掛けする人が多いのか、電車は満員ではないけれど両隣に人が並んで立つ程度には混んでいた。
(たしか……次だったよな?)
のののから指定された駅は、俺や学校に通う生徒が使う駅から三駅離れている。立ちっぱなしは疲れるし、そこまで遠くなくて助かった……もう間もなく着きそうだ。
『――――お忘れ物にご注意下さい』
ドアが開いて駅に降り立つ。初めて来る駅というのは何だかワクワクするが、あまりゆっくりしている時間は無さそうだ。
スマホの時計を見ると、待ち合わせの時間前にはちゃんと着いているのだが、のののの性格的に誰かとの約束には遅れないように早めに来ているだろう。
今日は遠くまで空が澄み渡っていて気温もちょうど良さそうだ。なんだか同じ空の筈なのに、いつもとは違うように感じる。
「さて……行きますか」
俺と同じく電車から降りた人達の波に乗って、階段を下りて行った。
「おっ……」
長めの階段を下りている最中に、その姿を見付けた。チェックのロングスカートにダボッとしたパーカー。壁に背を預けながら前ポケットに両手を突っ込んだ姿でこちらを見ている女の子。
髪が少しハネているその姿はよく見掛ける姿で、探す手間が省けて良かった。
ICカードをかざして改札を抜け、のののの待つ場所へと向かった。
「お待たせ」
「早いね、神戸」
待ち合わせは九時三十分。今がその十分前だ。俺が早いならのののはもっと早い。というか、早すぎな気もするけど……今日はどこかへこれからまた移動するのだろうか?
待ち合わせ場所と時間しか教えて貰って無かった俺は、頭の中でここから近くの遊び場を考え出した。
だが、のののが行き先を既に決めているかのように歩き出す。
「えっと……ののの? 今日ってどこ行くの?」
「神戸、休日は人多い……。私の家に避難する」
「あーたしかに、こんなに人が多いと疲れるし一度お家へ……って! ののの!?」
直接聞くのが躊躇われた結果、ノリツッコミなんてものをしてしまった俺だ。
だが、日曜日にお家にお邪魔してしまっても良いのだろうか? 自分の家ならいつでもウェルカムなのだが、他のお宅となると話が違う。なんかこう……申し訳無い気がしてならない。
「大丈夫。お母さん、夕方まで帰ってこない」
「あっ、それなら安心……出来ないよっ!?」
今度は素で出た反応だ。落ち着け、俺。立場を変えて考えるんだ。
俺が親の立場で、娘が休日に俺が居ない間に男友達を家に連れて来ていたとしよう……いや、無駄か。全然ピンとこない。息子が女の子を連れて来てるのなら、同じ男としてソッと喜んであげられるが……娘が男の子の場合は分からんな。
「神戸……落ち着く。私も遠出するならもっとオシャレする」
「それ、のののの落ち着いた雰囲気に合ってて良いと思うよ?」
「……あ、ありゅ…………むぅ。神戸、早くついて来る!」
そう言って振り返る事無く歩き出してしまい、俺にはのののについて行くという選択肢しか残らなかった。ここで帰ってしまうくらいなら、少しくらい我慢してでも、迎えに来てくれたのののの為について行った方が良いだろう。
駅から十分ほど無言で歩き続け、住宅地に入って更に十分。俺の三歩分だけ前を進んでいるのののが立ち止まった。
のののが止まった家は外装から既に綺麗で清潔感がある。同じ二階建ての一軒家だが、俺の家よりも少し大きいかもしれない。
表札にはしっかりと『巳良乃』の文字が書いてあった。
「神戸、到着した」
「広いなぁ~、大型犬とか飼っていても驚かないレベルだ」
「飼うなら猫。それに、お母さんと二人だからホントに広い」
のののが何気なく返してくれた返事を聞いて、俺はそれ以上話を広げる事をせずに、誘われるまま家の中へ上がらせて貰った。
◇◇◇
「ここが、私の部屋」
「お邪魔しますよ~」
玄関から上がって、まっすぐにのののの部屋へと案内されていた。部屋と言っても本棚や冬物の服が入った箱を置いている部屋だ。ほとんど本棚で囲まれているその部屋は、確かにのののの部屋と言っても良いだろう。
参考書から小説までいろんな本が用途や種類で別けられ、並べられている。
「これって今まで読んだ本?」
「だいたいは。でも、お母さんが前に読んでた本とか買ってくる本はまだ」
それでもいずれは読むらしい。凄い読書量なのは知っていたけど、学校だけじゃ無かったんだと驚いている。
凄い以外の言葉が見付からないが……何とか捻り出して上手く言葉を贈りたい気分だ。本に囲まれているせいだろうか? 賢い事を言わないと……みたいな雰囲気がこの空間の中にはあった。
「次の大賞は……誰が取るかな?」
(間違った!! 俺も本には興味あるのと、のののにも話して貰おうという思いと、目に映った大賞作品という三拍子が重なって!)
のののが、急にどうかしたの? とでも言いたげな瞳を向けてくる。変に格好つけようとしたのが失敗だったな。とりあえずシンプルに褒めて、後から思い付くだけ褒めるスタイルの方が良いかもしれない。
「……コホン。凄いな、のののは。この部屋にはのののが積み重ねて来たモノ達が詰まっている感じがするよ」
「うん。だから、神戸に……見せたかった」
のののはそう言って、部屋の中にある本の中から一冊を迷う事なく選び、それを俺の所に持ってきた。貸してくれるという事だろうか?
「えぇーっと……『高校二年生から始める大学受験のアプローチ』」
「頑張ろ、神戸!」
嬉しいような、悲しいような、似たような本や実際の大学受験の為の問題集を幾つか渡されている。今よりもっと勉強しろという事だろうか? たしかに学力は中の中であるけど、俺達が通っている学校で中の中ならば、そこそこ良い筈ではある……と思う。
だが、のののが渡したという事はまだまだ足りてないという事なんだろう。志望する学校もざっくりとしか定めてはいない。これも早めに決めておかないと対策が出来ないからな。
「ははっ……頑張りますよ」
「私の部屋で勉強する……お昼まで」
「え……えっ!? 今からって話!?」
のののは当然とばかりに頷いた。
俺にとっての日曜日とは、月曜日の為の準備期間だ。だから土曜日に勉強しておいて、日曜日は休む為に使う。そんな日に勉強をしても良いのか? もちろん、良いはずが無い。
それをのののに伝えるべく口を開くその前に、先にのののが話し出した。
「神戸の為、勉強……」
「のののが居れば百人力だなっ! わかんない所があったら教えてくれよ!」
自分の為に勉強を促してくれる人を無下に出来るか――もちろん、無理だ。日曜日の休みは勉強に使う……そんな日があっても良いだろう。
俺はのののにスパルタは無しで、解けない問題はヒントを教えてくれる事を条件にして勉強の件を承諾した。
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そのうち、四、五作品を日替わりで投稿して、1週間で5日間は別作品を楽しめる的な事をしたい……。(面白さは別問題)
ま、ストックないと難しそうですし、毎日同じ作品の最新話を書き上げるモチベが維持できないのを隠すのが目的ですが(笑)