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第54話 スペック高いね……向日葵さん

すいません、遅れました……

言い訳は活動報告に……(本当に言い訳)


待たせてしまった割には短めですが、よろしくお願いします!


 


「青さん、お待たせしました! オムライスです」

「おぉ……!! これまた美味しそうな。ではでは、さっそく……いただきます」



 運ばれて来たのは、デミグラスソースが目を引き、半熟トロフワオムレツが輝いて見える、なんとも食欲をそそるデミオムライス。

 スプーンで一口分だけ掬うと、ライスはガーリックライスのようで、デミグラスが引き立つ感じだ。うん、これ……絶対に美味い。



「ん~~っ!! 美味い。向日葵さん、たぶんこれから寡黙(かもく)になるから先に感想だけ言っておくよ。めちゃくちゃ美味しい」

「ふふっ……お口に合ったのなら良かったです。ゆっくり味わって食べてくださいね」



 半熟がとても良い半熟。デミグラスもとても良いデミグラス。ヤバい、語彙力が無くなっていく。

 出来立てで少し熱いが、それもまた良い。駄目な所があるとすれば、俺の財布だな。おかわりが出来ない。



「あ、すぐに戻りますけど、少し……失礼しますね。店長にピークは過ぎた事を伝えて来ますので。勿論、青さんが手伝ってくれた事も言っておきますから」



 俺は頷く事で返事をし、オムライスに集中する。もう、半分近く食べてしまっているからな。

 ここからは少しペースを落として、より一口を味わうように食べるつもりだ。写真でも撮っておけば良かったと思うが、それはまた今度にしよう。



「……将来はプロの料理人とかになったりしてな」



 トロッとした卵と、ライスをデミグラスソースと一緒に口に運ぶ。

 卵にも何か調味料でも加えているのか、ガーリックの香りやデミグラスの濃さにも負けない味を楽しめている。一口食べるごとに、一手間も惜しまずに作ったのを感じられて、より美味しいと思える。


 贔屓(ひいき)が入っているのかもしれないが、本当に美味しいと思う。炊事が出来て、おそらく家事も出来る。おまけに気立ても良くて、容姿も良く成績も良い。



「……すごっ、えっ? ちょ、よく考えると凄くない?」



 思わず口からこぼれて、一人言になってしまった。近くには誰も座っておらず、誰も聞いてないのが救いだったな。だが、本当にひま後輩のスペックの高さに改めて驚いた。家がちょっと大変で友達が“少ない”事を除けば、羨むべきスペックの高さだ。

 一年の男子は容姿で好きになっているだろうが、ひま後輩をより知れば、より好きになるだろう未来が分かるってもんだ。それに、少し大人びてもいるし。なんなら、俺よりも大人っぽい。



「…………最後の一口」



 ライスは勿論のこと、デミグラスソースもスプーンで可能な限り掬い上げて、口に運んだ。向日葵さんが作ってくれたオムライスを余すこと無く堪能しつくした。満足である。



 食べ終わった食器類を運び、食休みをしていると向日葵さんが戻って来た。その表情は何だか少し嬉しそうである。



「マスターの具合はどう?」

「あ、はい! 店長も奥さんも今日一日、ゆっくり休めば大丈夫かと……えっと、それとですね! 青さんの事を伝えたら、ケーキをご馳走してあげなさいと言われたんですよ! まだ、食べられますか?」



 食べられるかどうかと聞かれれば、当然食べられる。

 たしか、ケーキも向日葵さんが準備をしていた筈だし、食べられるのなら是が非でも食べなければ。



「じゃあ、今から宿題とかし始めるから……三十分後くらいにお願い出来るかな? ケーキは向日葵さんにお任せする」

「はい! ……あ、お会計ですね。すぐに参ります。では、失礼しますね青さん」



 残っていたお客様が帰った事で、お店には俺以外に珈琲を注文して読書をしているお爺さんしか居なくなった。

 あの人は来る度に見掛けるが、俺より早く居て俺よりも遅く帰っている。常連客中の常連客だ。つまり、向日葵さんにとっては休憩時間のようなものだ。



「青さんに(なら)って、私も勉強しますかね……」



 勤勉であることに倣わないといけないのは俺の方だけどな。

 勉強道具を取って来た向日葵さんが、すぐ隣の席に座ると……真面目に勉強し始めるから、俺も宿題が(はかど)る。なんなら、普通に勉強までも捗る勢いだ。

 これが、谷園ならこうはいくまい。お喋りが駄目と言う訳では無いが、オンオフの切り替えがちゃんと出来た方が良いのはたしかだしな。


 とりあえず三十分。俺と向日葵さんは無言で教科書、ノート、プリントと格闘し続けた。



 ◇◇◇



「青さん、ケーキはケーキでもパンケーキです! 生地はほとんど味が無いので、ハチミツか生クリームと一緒に食べてくださいね」



 向日葵さんが準備をしに行ってから、五分も掛かっていないんじゃないだろうか……という速さで持ってきた。これまた喫茶店らしいメニューだな。

 薄く小さめのパンケーキが三枚、皿の上で三角形に配置されており、中央には生クリームの小さいタワーが出来ている。蜂蜜は別容器という配慮まで。

 うん、これは写真を撮っておこう。パシャり。



「だ、誰にも見せちゃダメですよ!? 秘密なんですから!」

「わ、分かった。じゃ……いただきます」



 さりげなく珈琲を用意してくれる向日葵さんに、尊敬の眼差しを向けつつも、左のフォークはパンケーキを押さえ、右のナイフは生クリームを掬ってパンケーキに移動させて、切りに入る。

 生クリームを乗せたパンケーキを口に運ぶと、程よいパンケーキの食感とクリームの甘さが口一杯に広がった。



「向日葵さん、秒だ。秒で口に甘さが広がって、秒で美味いと脳が判断してる。量もちょうど良さそうだし……なんかもう、さすがだね」

「いつもなら、ショートやチョコやチーズにタルト……そういったケーキがメインなんですよ。なんですけど、今日は青さんを少し実験台にさせて貰ったんです。ごめんなさい」


「謝んないで! 全然……実験台になんて毎回でもなるって話! あー、でも……向日葵さんがフザケ無い限り、美味しいとしか言わないからあまり実験台としてはダメかもだけど」



 ゲテモノの実験台にされるなら、容赦なく不味いと言うだろう。だが、向日葵さんが真面目に作った料理に関しては美味いとしか表現できない。俺が食のプロならアドバイスもしてやれたかもしれないけど、向日葵さんの足元にも及ばないからな。



「いえ……青さんがそうやって美味しそうに食べてくれるだけで、私は嬉……コホン! あー、うー、うん。ほら、どんどん食べちゃってくださいっ!」

「はいはいっと、ハチミツも掛けちゃおうかな~」



 俺が食べている所を実験なのかどうかは分からないが、向日葵さんがじっと見ていたせいで……少しだけ食べづらい感じはしたものの、ちゃんと完食した。勿論、味に関して言えば、文句の一つも無い。珈琲との相性もバッチリである。



「三大欲求に食欲がある理由がなんとなく分かった日になったよ、ごちそうさまでした」

「空腹からの食欲ではなくて、味の追及という意味での食欲ですか? 初めて貰う角度の褒め言葉に返す言葉が見付からないのですが……どういたしまして」



 少し困り顔という向日葵さんも珍しい。ツンとしてる時が一番しっくりとくるのは確実なのだが、それ以外の表情も最近は多く見ている気がする。

 向日葵さん……ひま後輩が学校でも上手くやっていける日は案外近いかもしれないな。うんうん。



「何を頷いているのかは分かりませんが……お皿、片付けてきますね?」

「ありがとう。俺はもう少し勉強してから帰るね」



 外を見るとまだ明るい。夕方。冬ならもう暗くなっている時間だが、今の時期なら空はまだオレンジ色。綺麗な夕焼け空に心を奪われそうになる。それを何とか(こら)えて、勉強を再開させた。



 ◇◇



「では、青先輩! また、来てくださいね!」



 お店での関係性はここまでのようで、向日葵さんは入口まで見送っては笑顔で手を振ってくれる。

 隣に座っている時にも見えたその手は、洗い物や調理やなんやで少し傷んでいた。今度、ハンドクリームでもプレゼントしようかな?



「またな、ひま後輩。帰り道には気を付けるんだぞ」



 ひま後輩と同じように少し小さめに手を振って、帰路につく。歩き出した直後に、何となく、ただ何となく気になって振り返った時に、まだひま後輩が居た時はちょっぴり嬉さと驚きが同時に生まれた。



「サービス精神が凄いな……。というかこの感じ、晩飯は遅めでもいいな」



 最短ルートを避けて、少しだけ遠回りをして家に帰ったものの、あまり効果はなかったようだ。



 ◇◇◇



「お兄ちゃん、お菓子ちょうだーい」

「残念だな、碧。今日はお菓子はありませんことよ」

「……分かった! 冷蔵庫だね!」



 コンビニスイーツが碧に食べられる事になってしまったが、安いシュークリームだから良しとしよう。全然、良くは無いんだが。

 宿題も終わっているし、明日も特には予定がない。つまり、土曜の夜は最強である。



 ――ピロン!



 スマホが鳴って、届いたチャットを見ると……意外な人では無いが、意外な内容が送られて来ていた。




『神戸、明日、暇?』




誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)


ブクマ、感想、ありがとうございますです!

(別作品含め、何かしらのブクマが増えてて上ゲ上ゲ)

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