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第49話 奥の手を使わせて貰おう

初めてこんなに期間開けましたね~

忙しくて時間の確保が出来なかったんです~。

すいません(/o\)


よろしくお願いします!

 


 もうそろそろ……近日中に午後の授業が体育祭の全体練習に変わる。だからかは分からないが、授業の詰め込みが今日から凄い事になっている。

 家での復習が絶対条件かというくらいに進んでいき、部活をしていて、尚且つ勉強が苦手な人……勝也とかは大変だろう。


 数学はまだ良い方だ。とりあえず板書をしながら、先生の話してる言葉の中から重要なワードも書き写して、問題を解けば良いのだから。

 だが、問題は英語だ。元々苦手というのもあるが、今は本当にちんぷんかんぷん……授業のペースに追い付けていなかった。出来る事と言えば、数学と同じく書き写す事ぐらい。

 手元はチラッと見る程度で、後は先生の言葉を聞き漏らさないように、視線を先生に固定して話に集中していた。



「おっ、今日の神戸はいつもより集中して話を聞いているみたいだな……よし! 二つ目の問題の答えを言ってみろ」

「あっ……えっと、『ア』の……ま、『mind』です」


「残念……答えは『ウ』だ」



 本当に残念だよ! 授業に集中していると注目を集めといて普通に間違えるとか……恥ずかしい!

 得意だから頑張ってるんじゃなくて、苦手だから必死になってるだけなのに……あっ、今ので集中力と精神力が削れた気がする。



「神戸、『ア』は間違え易い答え。つまり、的外れじゃない」

「フォローありがとう、ののの」

「でも、間違え易いからこそ間違えないようにしてる。神戸以外は」



 上げて落とす。のののはいつの間にそんな技を覚えたのだろうか? 円安と円高、ドル高とドル安、間違え易いからこそ覚えている。そういう事を言いたかったんだろうが、ごめんののの。俺は英語は苦手なんだ。



「ちゃんと復習しておきます……」

「復習大事。教える?」



 分からない問題はのののに頼る事にしよう。俺はそんなニュアンスを含む言葉で返事をして、授業に何とか集中しようと頑張った。

 少しだけ勝也の様子が気になり、振り返ってみると……ガッツリ寝ていた。力尽きるその気持ちは理解できなくも無いが、今度のテストが心配になるな。まだ先の事だけど、学期末テストだから成績にも大いに響く。

 寝てる勝也を見て安心しかけた心を、自分を追い込む事でなんとか立て直し、またノートを写し始めた。


 時間はどんどん進み、授業も四時間目の終わりにまで来ていた。

 次はようやく昼休み。疲れた脳を癒す為にも、購買に甘い飲み物でも買いに行こうかな?



 ◇◇◇



 昼ご飯を食べ終え、ついでにとのののに頼まれた分の飲み物を買いに購買へとやって来た。

 タイミングをズラしただけあって、空いている。



「おばあちゃん、ココア二つお願い」

「あいよ、二百円ね」



 お金を渡し、商品を受け取ってから戻ろうと少し歩き出した時に、正面から来た男子生徒に声を掛けられた。



「おい、あんたが神戸青とかいう奴だな?」

「ん? 違いますよ?」



 反射的に言っちまったが、本当は俺が神戸青だ。自他共に認める神戸青。でも、何故に反射的に嘘を吐いたかというと……この男子生徒は一年生。上履きの色がそうだからな。そんな一年生がタメ口で話し掛けて来たらどうだろうか? 絶対に面倒事に決まっている。

 というか……年下じゃないにしても、上過ぎない限りは初対面なのにタメ口で話されると何となく嫌いになる。


 初対面の時の勝也みたいに、『俺は円城寺って言うんだけど、お前は?』ぐらいなら許容範囲だ。ちゃんと名乗ってるからな。



「っち、アイツ等騙しやがったか? まぁいい……おい、あんた。神戸青って奴に伝えてくれ、“放課後、体育館裏に来い”ってな」


「あー、えっと……新山さん関連?」

「お前には関係無いだろ!」



 ――またか。

 別にこんな風に呼び出されるのは初めてじゃない。というか、俺を呼び出す理由は、紅亜さん関連の事しか今までも無かった。

『別れろ』『釣り合わない』『脅してるんだろ?』……簡単に言うならば、そんな事を色んな人に言われていた。付き合ってる時にだけど。


 咄嗟に違うと言ったせいで面倒にしてしまったが……仕方ない、行くか。別れてから鳴りを潜めていた筈だし、この男子生徒も紅亜さんが好きならば俺達が別れた事を知らない筈は無いだろう。


 となると、いったい……何の要件だろうか?



 俺はその男子生徒……顔のレベルなら勝也に届かないまでも高いから名前なんて聞かないが、そいつを背に教室へと戻った。



「はぁ……集団じゃありませんように。紅亜さん関連ならあの作戦でも使うかね……」



 ◇◇



「お帰り神戸」

「ただいま。ほら、ココア」



 のののから百円を受け取って、俺はココアを飲みながらさっきの事について考えていた。

 一周回って行かないとか、二周してちゃんと行くとか……本当は別の話なんじゃないだろうかとか。心配事があるとお腹が痛くなってくるな……やっぱり嫌いだな、あの一年生。

 こっちには切り札があるとはいえ……出来るなら使いたくは無いやつだからなぁ。



「どうした、神戸?」



 俺は周囲を見渡して、近くに紅亜さんが居ない事を確認してからのののに話始めた。



「あれだ、一年生に呼び出しをくらってな。きっと、新山さん関連だと思う……」

「なるほど、久しぶりに」

「でも、前みたいなのは考えにくいから何の要件か分かんなくてな……」



 のののも考えてはくれているが、流石に分からないみたいだ。一番分かりそうな俺が分からないんだし、仕方ない事だけど。



「行くの?」

「まぁ、とりあえずね。放課後に呼び出しとか……同性にされても嬉しく無いな」



 しかも、体育館裏に。これで異性からなら気持ち的には舞い上がっているだろう。だが、男からだ。気持ちが沈んでしょうがない。

 平和的な解決が出来るといいなぁ。



 ◇◇◇



 午後の授業を消化し、帰りのホームルームや掃除を終えた放課後。俺は、体育館裏に足を運んでいた。



「来てねぇじゃねーか……」



 場所は合ってる筈だし、俺の方が遅く来たと思うのに居ない。一番最悪なパターンだなと思いながらも、あと五分だけ待ってやろうと考えている。来なかったら遠慮無く帰らせて貰うけど。



 ――それから、約五分後にその一年生が姿を現した。



「お前! 何で、ここにいやがる!?」

「それはごめんな、俺が神戸青だ」

「ちっ」



 こいつ……いや、嘘を吐いたのは俺だからここは我慢しないとな。多少の態度の悪さは、もう気にしない。いちいち気にしてたら疲れるしな。



「それで、何の要件で呼び出したのかな? 新山さん関連だろ?」

「あぁ……神戸青! 俺と勝負しろ!!」


「…………はぃ?」



 ブラックから借りた漫画で似たような場面があった気がする。たしか、ここが最後のページで次巻に続く感じ……だが、そうはいかない。話は続けられていく。



「お前がフラれた事は周知の事実だ。だから、新山先輩に告白してる奴が増えて、同時に断られている奴が増えている。俺や男子の先輩達は新山先輩と同じ部活だから告白はしづらい……分かるな? だが、そんな事を気にしてたら誰かに先を越されちまう」



 なる……ほど? こいつは陸上部なのか。



「えっと……何が言いたいの? で、結局なんで、呼び出されたの?」

「お前が付き合えて、お前より格好良い奴が全員フラれる理由がわかんねーんだよ!! 全員だぞ!? 全員!! 色んな仮説が出始めている。『今は付き合う気が無い』とか『神戸青にトラウマを植え付けられた』とか……『神戸青を越えなければならない』とか」



 そんな仮説が……って、二つ目と三つ目なんだよ!? 変な仮説を流してる奴がいやがるじゃんか!



「俺が付き合えたのは……中学の同級生ってのもあるんじゃないの? 変な仮説に惑わされたら駄目だぞ?」

「だが、俺は見た……見てしまった。新山先輩がお前と楽しそうに話しているのを!! だから決めた、お前と勝負して新山先輩を手に入れてやるってな!!」



 どこでそんな姿を見られていたのかは分からないし、それはどうでもいい。どうでもいいけど……“手に入れてやる”だって? 今、こいつは俺が作戦を発動する事に踏み出すワードを口にした。


 そうか……そこまでの思いがあるなら勝負しようじゃないか。



「おい、一年生。勝負は体育祭か?」

「あぁ、俺は白組であんたは赤組だったろ? 学年の違う生徒が直接戦える種目は決まっている」

「――騎馬戦だろ?」



 綱引きも組対抗の男子の種目ではあるが、より直接的なのは騎馬戦だろう。

 話ながらも俺は、スマホを操作してチャットを送っていた。



「あぁ! 俺はそこでお前を倒して、その日の内に新山先輩に告白する」

「お前にそこまでの覚悟があるのか? 新山紅亜を戦いの景品にする覚悟が」


「勿論だ。負けたら諦める覚悟くらいはとっくに持っている」



 そうか。実際の所――俺は騎馬戦に出場していない。この男子の不戦勝だ。だから問いをぶつけた……景品として扱うのか? 負けたとして諦めれるのか……と。(いさぎよ)さは認める。でも、勝手な想像ではあるけど、こんな扱いは紅亜さんも不本意だろう。



「悪いね、本人が居ないのに勝手に賭けの対象にするのはできないタイプなんでな。新山さんを呼ばせて貰った」



 呼んだ理由は簡単。こうすれば話をうやむやに出来るからだ。流石に本人を前にして『勝った方が!』なんて、言えないだろう。


 これは俺の為でもこの男子の為でもある……と、思う。思いたい。

 俺からすれば面倒事を回避できて、この男子は……あれ? 特に無いかも……? いや、紅亜さんに『勝ったから告白』なんて、そんな真似をしなくなるだけ良いだろう。



「おまっ!? どういうつもりだ!?」

「今、言っただろ? 俺は隠れさせて貰うから。本人に言えるならどーぞ。ちゃんと伝えてくださいな」



 ◇◇



 それから数分後に紅亜さんが部活前なのにわざわざ来てくれた。



「あれ? 森くん? どうして、ここに……? そ、それより神戸君を見なかった!? た、体育館裏に来てくれって……」

「あ、えっと……その」



 うんうん、呼び出した俺が居ないのは後で謝るとして、概ね予想通りだな。よし、帰る……



「あの! 俺、神戸青……先輩と体育祭で戦います! それで、勝った“方”から聞いて貰いたい話があるんです! そ……それだけです。失礼しました!!」

「えっ!? あ、森くん!? それって、神戸君もって事かしら!? ……な、何の話かな? えへへ……っと、神戸君も居ないし部活に戻ろうかな。森くんに詳細を聞かないとね!」



 流石は陸上部。走り去る速さが違うな。それと、森くん。まさか、言うとは予想外だった。君の勇気を称えて苗字は覚えておこう。


 俺は体育館の陰から二人が走り去って行った方を見ていた。



「でもね、森くん。話す時はテンパっちゃ駄目だよ? ……いや、マジで」



 俺は紅亜さんに、戦うだけだよとチャットを送り、真っ直ぐ家まで帰ってきた。





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)

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