第5話 席替え……なんかごめん!
すいません、タイトルが出落ち過ぎたので変更させていただきました。
新タイトル『隣の席に元カノが居ますが前を向きます』です。
タイトル変更の理由と致しましては作者の実力不足です。すいません。
タイトルで興味を持っていただいた方には申し訳なく思いますが、よろしくお願いします!
ここまでプロローグですかね…ははは
「あ……やっぱり、目の下に隈がうっすら残っちゃう……か。これ以上は目の下だけ違和感が出るものね……。仕方ないか」
昨日、夜更かししたせいで朝起きると寝不足の象徴である隈が出来ていた。昔はよく、すぐに顔に出る子ってお母さんにも言われていたけど……。
「お姉ちゃん!そろそろ時間だよ!途中まで一緒に行こう?」
「うん!すぐに行くね」
私は鏡や化粧道具を片付け、カバンを持って玄関で待つ妹の所へ向かった。今日は雨が降っているみたいだ。
「お姉ちゃん、また表情が暗いよ?」
「そ、そう? 気を付けなきゃ……ね」
白亜が言うなら……いくら自分では誤魔化したつもりでも、そうなのだろう。
「好きだったの?」
「え?」
急な問い掛けに、言葉が詰まってしまう。
「いや、その、考えてる人の事。確か浮気されたとかなんとか?」
私は――好きだ。青くんが好き。それだけはハッキリしている。
一晩考えた。でもまだ……好きだった。
もう一晩考えた。でも、やっぱりまた考えてしまっている。
あの日、青くんが女の子と腕を組んで楽しそうに話している姿を見た時……胸が痛かった。私は独占欲が強いのかな? 青くんの笑顔が欲しい。私にだけ向けて欲しい。この感情の事は知っている……嫉妬だ。腕を組んでいるのを見て頭がこんがらがった。分かんなくなって……気がついた時には走り出してしまっていた。
「私は……」
「お姉ちゃん!」
隣に並んでいた白亜が、私の正面に立って――。
「ん?」
「大丈夫。お姉ちゃんは可愛いよ」
そう、言ってくれた。
「白亜……」
「次って言ったけど……お姉ちゃんが諦めないと決めたならさ、その人にお姉ちゃんの可愛さをもっと伝えていけば良いんじゃない? その人の事が大好きだって伝わるくらいに。アピールしたら良いんじゃない? その人が浮気した事を後悔するくらいに!」
アピール……私が私自身の事を、もっと青くんに。
「わ、私の思い込みの可能性もある……よね。まだ、遅く……無いかな?」
「一度別れた事って、たぶん無くならないと思う。けど……けど、お姉ちゃんが諦めたく無いならさ……可能性の全てが砕けて粉々になるまでは、当たった方が良いと思うな。私はね!」
粉々に……なるまで。私はまだ粉になって無い……わっ! ちゃんと心に気持ちが残ってるもの。
覆水は盆に返らない。……なら、また新しく始めよう。私の気持ちを注いで、その盆を青くんに届けよう。受け取ってくれない事も覚悟はしないといけない。けど、けど!
「うん……少し考えが纏まったかな。ありがとう白亜、ジュース買ってあげる! ……お姉ちゃんは頑張るよ」
「やった! 恋愛雑誌を斜め読みしてた甲斐があったかも。ふふん!」
あっ、雑誌の………? いや、でも元気付けられたから何でもいっか。ありがとう白亜。
◇◇
学校について目の下の隈でまた少し騒がしくなっちゃった………。
青くんは……巳良乃さんと話して……。
「新山さん……シャーペンの芯が……」
「し、しっと……んん! 湿気のせいですね」
その日の授業中は気にしない様にしたつもりだったのに……気付くと短く折れた芯が量産されていた。次はお昼休み………こ、ここがチャンスに違いないわ……。
「新山さん、お昼ご飯一緒に食べない?」
"今日は学食にでも行こうかと思ってるよ"
"奇遇"
青くんは学食を利用するみたいですね……巳良乃さんも……。私はお弁当だけど……。
「ご、こめんなさい。今日は少し行くところがあるの」
「そうなの? 分かった、なら次は一緒に食べようね!」
よし、私も……の前に、簡単なチェックと手直しをお手洗いで済ませないと!
少し前髪を気にしながら追いかけるように学食へ向かって、青くんを探す。青くんは、青くんは……いた。
一歩……また一歩と近付く度に周囲が少しずつ騒がしくなる。でも、私の視線は固定されている。青くん、青くん……。
「困る」
巳良乃さんと目が合った。今のは恐らく私に言ったんだろう。でも、今は悪いけど無視をさせて貰います。
「隣、空いてるかな? あの、神戸……青くん」
「くれ……新山……さん?」
新山さん……。ううん、ここから………ここからまた始めよう。また青くんを惚れさせてみせる!!
◇◇◇
えっ? おっ? あ? え……ってえええええ!?
な、何で……? 何がどうなった? 俺が声を掛けるかどうかすら迷っていた時に……ひえぇ。
「座らせて……いただきますね」
「あ、はい……」
「あなた、どういう?」
確かに、疑問が多くて頭が支配されていく。
「巳良乃さん、少しだけ……時間をください」
「……神戸。私は先に戻る」
「わ、分かった」
紅亜さんが隣に座っている。俺は……うどんを啜る。何故なら無言だから。一分……二分くらいは無言だろうか。周囲も変な空気に触発されたのかとても静かで、俺のうどんを食べる音や他の誰かが何かを食べている音だけがその空間を支配していた。
更に、一分くらい。紅亜さんは下げていた顔を上げてこちらへと向けた。話す事が固まったのだろうか。何を言うのだろうか?
俺は何を答えればいいのだろうか?
「考えてたんだけど……ここに来たら何を言って良いのか、言葉が決まらないの。だから、一つだけ言うね」
「うん……」
考えていた……。そしてそれを伝えに来たのだろう。予感がする。
「私は前を見る。前を向いて進んで行く。そう決めた」
「それって……」
どういう意味だろうか? 過去は振り返らないという事、だろうか? 別れた事は既に過去の出来事になった、という事だろうか?
決めたという事は、そういう事なのだろう……か。
「じゃ、じゃあ……そういう事だから! 私はこれで……」
「く……新山さん!」
引き留めてしまった。何を言おう。前へ進むと決めた紅亜さんにどんな言葉を掛ければ? 誤解だと一言?
あっ……なんだろう。あれ……? 新山さんを応援しないといけないのに……言葉が……出ない。認めたく無いのか俺は? 前へ進むと決意した紅亜さんを……ダメだろ。それだけはダメだろう。
「……な、何? 神戸……君」
神戸君……。
「俺も一つだけ。あなたの笑顔に見惚れてました。……頑張ってください」
「……うん!」
うん。やっぱり紅亜さんの笑った顔は可愛い。でも、この笑顔をここで見せられると……うん。なんだかなぁ……。応援した言葉が嘘になりそうで……自分が嫌になる。
◇◇◇
紅亜さんが去った後、何かいたたまれなくなって食堂を出てきた。残りのうどんの味とか全然分からなかったし。
こうして後になってから、ああ言えば良かった……という言葉が沢山出てくる。
「はぁ……。何があなたの笑顔が……だよ。何が頑張ってくださいだよ。恥ずかしい!」
同じクラスだぞ! 恥ずかしい! 顔を合わせづらい!
「はぁ……。5時間目の授業って何だったっけ?」
多分、今の俺は何とも言えない顔をしていると思う。教室に帰ると紅亜さんは自分の机に座り、友達と話していた。
「神戸」
「さっきはごめんな、ののの。気を使わせちゃって」
先に戻っていたのののは自分の席でパックのココアを飲んでいた
「何だった?」
「あぁ……うん。前を向いて進んで行くって話だった」
自分の気持ちが沈んでいくのがハッキリと分かる。
「スッパリ?」
「いや、そんなはっきり言わなくても」
いや、実際そうなんだけど自分以外の人に言われると更に傷付くなぁ。
「次、席替えある……らしい」
「そうかい。俺の隣は決まってるし、どこでもいいよ」
それから少ししてお昼休みは終わり、五時間目の始業チャイムと同時に担任の桜先生がやって来た。この時間は席替えと六月にある体育祭への話があるみたいだ。
席替えは先生が持ってきたくじ引きの紙を引いて、その番号に座る。一番が黒板を正面に向いて一番右の一番前だ。そこから後ろに六つ。そしたら隣の列の先頭が七番となってまた後ろにだ。
「じゃあ、先に巳良乃か神戸が引いてくれ」
「引いてくるよ」
「任せた」
さて、どこになるか……。どうせなら勝也も近くに来てくれると助かるが……。
「二九……って今と変わらないじゃんね」
逆に凄い確率だな。移動しなくて済むのは楽で良いし助かる。後は周りの人次第かな。
全員がくじを引き終わって移動をし始めた。
「勝也は……って、反対側じゃないか……」
「神戸」
俺は動かなくて良いからクラスの動きをテキトーに見ていたが、のののに呼ばれて振り向いた。
「ん? どうした? ののの」
のののがジッと見つめて来る。これは……なんかさっきも……?
ゆっくりと振り替える。そこには二三番の紙を持って、のののとは逆の隣の席に座っている紅亜さんの姿があった。
「よろしくお願いしますね、神戸……青くん!」
「え……あ、はい……」
ただでさえ雨でどんよりとしている空気が、この教室だけ一段と重く感じた。それはきっと俺だけじゃなくてクラスメイトもだろう。……なんかごめん!
作者のメンタルが雑魚の為、感想の返信が雑になる事があります。ご容赦くださいませ(´ω`)