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第47話 勢いで、言うよ

誰かー、この作品で砂糖を吐いたり、砂糖を舐めてる感覚に陥った人はおりますかー?

ランキングに乗ってる作品の感想欄を良く見にいくんですが……やはり展開がめっちゃ、甘いらしいじゃないですかー?

(この作品もそんな路線に……便乗して……)


というのは、冗談で。通常運転です。

よろしくお願いします!


ブクマ5000件越えてたんですよ。ありがとうございます(´ω`)


※40話で青くんの家に行った事を紅亜さんに話しましたが、そこの一部を変更しました。大変、申し訳ありません。

青くんが妹の部屋に泊めたうんぬん言いましたが、「暗かったから送っていったんだよ? ……一度」的な分にしました。

 


 紅亜さんに名前で呼ばれた。呼ばれたよな? 呼ばれた筈だ。

 ただ、名前を呼ばれただけなのにこんなに驚く……いや、正確には嬉しさだ。嬉しさが込み上げてくるとは思わなかった。



 谷園に乗っかって俺をからかってみたのかもしれない。でも、紅亜さんはあまり冗談を言うタイプでは無かった筈だ。

 返した方が良いのか、それとも苦笑いでごまかすのが正解なのか、紅亜さんと谷園が俺の返答を待ちながらお喋りしてるが、まだ答えは出せずに考えていた。


 谷園をマノンと呼ぶことはきっと出来る。不可能じゃない。俺は出来る子だから。

 だが……紅亜さんを紅亜さんと呼ぶことが、果たして今の俺に出来るだろうか?

 紅亜さんは、俺と別れてから学校の食堂で、初めて名前を呼ぶ時に俺をフルネームで呼んだ。その意味は何だろうか。


 勝也にもっと考えろと言われたのを軽く流していたが……まさか、こんなタイミングで考える事になるとは思わなかった。


 名前で呼ばないのはまぁ、理解できる。区切りを付けたって意味だと思う。

 その時に苗字だけで呼ばなかったのは、分からない。そこに意味が有るのか無いのかすら分からない。


 フルネームで呼んだ意味。俺は、それに釣られて、『紅亜さん』では無く、『新山さん』と返した。その時に思ったのは確か……。



 ――あぁ、離れてしまった。



 そんな気持ちだった。名前から苗字に呼び方を変えるだけで、こんなにも遠くに感じるとは思いもしなかった。

 苗字でこう感じた。なら、フルネームだとより離れた気持ちがあるだろう。


 あの言い方だと……そう、まるで――


 “初めまして”


 そんな含みのある感じだった気がする。


 お互い、もちろん初めて会う訳じゃない。それは当然だ。だから俺は……全くもって別の、見当違いな事を考えているのかもしれない。

 でも、フルネームで呼ばれたという事が、その距離感が、まるで『今日新しく知り会ったばかりの二人』を演出していた。


 別れた二人を新しい状態と言えるなら、初めましてが含まれていたとしても、それは間違いでは無いのかもしれない。

 するとまた、疑問が生まれて来る。

 何故、紅亜さんはそこまでの距離を空けたのだろうか……という疑問。

 怒っているなら、そもそも話を掛けに来ないはず。だけど、実際に紅亜さんは話をしに食堂まで来たし、怒っている様子は見られなかった。つまり、フルネームで呼んで、そこまでの距離を空ける必要は無かったと……思う。



 結論――よく分からない。以上。


 そこまでの距離を空ける“必要があった”のか、ただ空けた“かった”のかは、分からない。直接聞かないと、俺はいつまでも答えが分からないままだろう。

 たが、ここまで答えを出せた事で、ようやく本題に戻れる。



『青くん、自己紹介しますね。紅亜です』



 それに対して、俺はどう(こた)えるべきなのか。

 正直、いろいろと考え過ぎて疲れた。だが、いつまでも無言という訳にはいかないし、鞄から今朝コンビニに買ったチョコを口に運んで、もうちょっとだけ……考えてみる事にした。



 ◇◇



「あっ、麗奈さんの足……大丈夫だったんだ」



 スマホに麗奈さんから今朝送ったメールの返事が届き、足の怪我が大したこと無くてひとまず安心した。



「おっ、そうだ……」



 そこで閃いたのが、麗奈さんにアドバイスを貰うという事だ。

 結論はまだ出ていないのに、昼休みの時間はどんどん終わりに近付いていて、焦りがあった。



「えっと……『足、酷くなくて良かったです。質問なのですが、相手の下の名前を呼ぶのが照れ臭いんですけど……どうすれば良いですか?』」



 少し考えが長かった上にスマホを触り出した俺に、返事の期待はしなくなったのか、二人はお喋りに夢中になっていた。

 谷園はともかく、紅亜さんに対しては少し悪いと感じる。

 心の中で、謝罪と言い訳をしていたら、麗奈さんから返信が来た。



『そうだな。恥ずかしいのなら、帰り際に呼ぶと良い。所謂(いわゆる)、言い逃げという奴だな。諸刃の剣でもあるがな』

「なるほど。帰り際か……」



 流石は麗奈さん、いつも頼りになる。

 俺は小声で呟き、その案を即刻で採用した。今日の放課後に言い逃げする事を決めて、後はこの空気をどうするか……を考え出した。

 だけど、これはもう寡黙のままで居るしか無いと思っている。このタイミングで他の話もおかしいし、返答も出来ない。



「これは……犠牲が必要かな」



 俺は、買っておいたチョコを紅亜さんの机にそっと置き、作り笑いからの机に伏すという華麗で見事なコンボを繰り出した。

 どれくらいかと言うと、『高速餅つき』くらいの華麗さと見事さがある……餅つきに華麗さがあるかは分からないけど。



 ◇◇◇



 よし、放課後まであと少しという最後の授業。放課後の事を脳内シミュレーションしていたら、もう、残り五分となっていた。

 授業の内容自体はノートに書き写していたが、頭に入ったかというと……微妙である。その分、華麗に去る準備は整ったが。



「じゃあ、ここはテストに出すからな~。文法、単語は覚えておけよ~、スペルミスも厳しく付けていくからな。……少し早いがキリが良いし、ここまでだ。まだ、教室からは出るなよぉー」



 委員長が号令をかけて、早めに授業が終わる。

 テストに出ると言われた所を赤ペンでチェックして、スマホで撮影してのののに送った。


 よし、チャイムがなったら帰るか。

 まずは、紅亜さんにささっと挨拶を華麗に決める。そして、谷園の所へ(おもむ)き、ここでも華麗に決める。完璧である。


 俺は時計を凝視し、その一秒一刻みの秒針を追っていく。

 四周して、あと、数秒。



「さん……に……いち」



 キーンコーンカーンコ~ン


 チャイムが鳴ってもすぐには動かない。もっと、クラスが動き出してからだ。


 皆が自分の席から動いて、帰宅や部活に向かい始めた。

 二人が帰る前にと思って、俺も……動き出した。まずは、隣の紅亜さんに。



「えっと、その……さよなら! く、く、紅亜さ……」



 あと、少し。言いきってさっさとにげようとしていた時に後ろから声が掛けられた。



「青! 今日、俺らは掃除当番だろ? 鞄持ってるけど、先に帰るなよー?」

「……えっ!? そうだったっけ!? じゃなくて……あ、あれっ? 新山さん?」



 最悪のタイミングである。忘れていた俺が確かに悪いけど、これは酷い……。行き場を失った勢いが萎んでいき、変わりに恥ずかしさだけが残った。

 紅亜さんを見ると、急に話し掛けたから驚かせてしまったのか、こっちを見て固まっていた。



「わ……そ…………!!」

「えっ? な、何て言ったの?」


「わ、私も……私も掃除を手伝いますぅー!」



 その急な宣言に、帰りかけてた何人かが引き返して来た。

 勝也は、早く終れそうでラッキーくらいにしか思っていないみたいで、谷園までやって来ては、掃除を手伝うと言い出した。



「あ、あれ……なら、俺は先に帰って良いですかね……」

「駄目に決まってんだろ? な、新山さん?」


「そ、そうよ! あ、あああ青くんは当番なんだから!」



 また……。紅亜さんぎそんなに恥ずかしそうにするから俺まで名前を呼ぶのが恥ずかしくなるんだ。きっとそうに違いない。

 とりあえず、熱を帯びている自分の顔を紅亜さんの視界から外す。鞄を肩から降ろして、深く深く、深呼吸をする。念のためにもう一度。



「すぅ…………はぁ~~。よし! マノンは(ほうき)を、紅亜さんは、机を後ろに下げる手伝いをお願いします!」


「ガッテンです!」

「うんっ!」



 そこまで大きな声は出していないが、発言の内容が内容であるから、クラスが少しどよめいた。

 だけど、それは軽く流して掃除をし始める。


 きっとまだ顔が赤くなってるだろうし、俺はバケツに水を入れてくる為に教室を後にした。



 ◇◇◇



「名前、呼んでもらえましたね! 紅亜」

「うん、驚いちゃった。でも、もしかしたら今日だけかもしれないわね」



 青くん恥ずかしがり屋だから。

 例え今日だけだとしても……今はそれで良いと思ってる。



「そうですねぇ……青さんは照れ屋さんですからね! 前に青さん家に泊まった時はマロンなんて呼ばれたんですよ? やれやれですよね」


「えっと……マノン? 私の聞き間違えかしら? 今、青くん家に泊まったって言わなかったかしら?」



 聞き間違えじゃない事は分かっている。それでも、耳を疑ってしまった。もしかしたら……と、思って。たしかに、青くんの家にマノンが行ったというのは聞いたけど……泊まったとは聞いてない。



「あっ……。えっと、その! ……ひぅーひぅー」

「マノン!? どど、どういう事!? 詳しく話なさい!」



 マノンが下手くそな口笛を吹き出した。

 青くんの家に泊まったと確信した私は、マノンに詰め寄った。どういう経緯かとか、とか、とか!



「はぁ……重た。雑巾(ぞうきん)でも絞りますかっと」



 バケツに水を入れに行っていた青くんが戻ってきた。

 私が青くんに聞こうとする前に、マノンが先に動いた。



「青さん! 青さん! 紅亜にバレました! 青さん家に泊まった事がっ!」

「ば、教室で何言ってんの!? ち、違うよ! 勝也、助けて!」


「いや、俺は谷園さんに連絡を貰ってその日はお前と谷園さんの二人っきり……おっと、失言失言」



 二人っきり!? ののさんに連絡を入れないと。あぁ、でも……病気だし。うん、その前に私がきっちり事情を聞いておかないと。



「青くん」

「ひゃい!? な、何でしょうか?」


「ね?」

「はい……」



 流石は青くん。いつもののさんと会話してるだけあって、こちらが何を言いたいか理解が早い。

 別に、怒ってる訳ではないのだけど……やっぱり、そこら辺の事はちゃんと知っておかないといけないじゃない?



「じゃあ……私は……」

「マノン。貴女もよ?」



 掃除を早めに切り上げて、円城寺君を含めた四人で教室に残って円満で円滑な話し合いをし始めた。








誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)



この作品で砂糖を吐いた事の無い人は……出「ピーーー」。

(そして、誰も居なくなった……)

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