第44話 そこに宇宙は……あった!!
お待たせしました(´ω`)
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!
ブクマがもう少しで5000件に届きそうだす!だす!
♪o(゜∀゜o)(o゜∀゜)o♪
麗奈さんにテストや成績、勉強について色々と問い詰められながら登校し、ようやく解放されて教室に入ると……そんな俺よりも気難しそうな顔をしている勝也がそこには居た。
非常に珍しい光景。体育祭関連で悩んでいるのならまだ分かる。
だが、机の上には紙も何もなく、人が集まっているわけでも無い。つまり、勝也が一人で悩んでいるのだ。
あり得ない。いや、でも勝也だってイケメンとはいえ、悩み事の一つや二つくらい在るのだろう。ここは友達として、話てくれるのなら、聞くくらいはしようじゃないか。
「勝也、朝からどうした? 何か悩んでるなら聞くぞ?」
「青、スカートの中についてだけどさ……って、青! どこ行くんだ!?」
さ、今日も頑張っていきますかね。
◇◇◇
結局、先生が来るまで勝也のスカートの神秘性について話を聞かされ、意味もない時間を過ごしてしまった。
だが……こんな会話も、勝也とだから許されるのであって、仮にブラックとしていたら冷たい視線をモロに受けていただろう。
勝也のお陰もあって……近くを通った女子から、俺への視線も緩和されている。というか、俺に対してしか冷たい視線が来ていない気もするんだよなぁ……。
「はい、おはようございます。今日の予定は……」
桜先生が今日の予定を話始めているが、隣に座っているのののと紅亜さんから視線を頂いている。つまり、割りと話は聞かれていたという事だな。はぁ……俺は悪くない。
「神戸、スカートの中に宇宙は無い」
「神戸君……ただのお喋りとはいえ、教室でそんな話は駄目ですよ?」
ののの、スカートの中に宇宙? そんなモノあるわけ無いだろ? 在るのは布だ布。誰だい? そんな事言ったのは。やれやれ……本当にやれやれ。
それに対して、紅亜さんの言う事はもっともだな。せめてもっと女子の少ないタイミングとかにすべきだったか……次に活かさせて貰うか。
「悪いのは勝也ですよ」
朝からスカートの中身について悩んでる男子がいると思うか? 実際に居たから何も言えなくなるが、その時は思わなかった。つまり、友達なら話を聞いてあげるのは当然だし、聞かれたら答えるのも当然だろう。つまり、俺は悪くない。勝也が悪い。
「神戸、スカートの中はこうなってる……」
俺は、小さく聞こえて来るのののの声に、自分の耳を疑った。
耳を疑ってしまったなら、目視で確認してしまうのも仕方ないだろう。俺はゆっくりを首を回し、のののを見てしまった。
「体操服……」
「神戸、ドキッ? ふふ……ドッキリ」
「か、か、神戸君! いま、いまっ!」
これがハニートラップ……か。やれやれ。やってくれたな、ののの!! これは許されない! これは許されない!
でも……少し悔しい。スカートの中は神秘性がある……という勝也の言い分が、少しだけ理解出来てしまった。
「そこ~神戸君。ちゃんと聞いてくださいね?」
「あ、はい。すいません……」
えぇ……朝から今日は厄日だと、犇々と感じる。気を付けなければ……。
◇◇
――だが、そんな俺の気持ちとは裏腹に、放課後になって今日一日を振り返っているが……今日は厄日で間違い無かったな。
教科書は忘れており、体育では突き指し、昼休みはお弁当をひっくり返した……これでもまだ一部である。谷園の相手、谷園のつまらないギャクを聞く、谷園のオーラ話に付き合う。
とにかく、何かと今日は運が無い。そういう日と割り切れれば良いのだが、こうも続くとまだ何かあるのではないかと不安にもなる。
ピロン!
そんな時に麗奈さんからのメールが届いた。行かないという選択肢は無いが、何かあると怖いし、色々と用意はしておくかね。
「『すぐに行きます』……っと、じゃあな、ののの」
「また明日、神戸」
部活に入ってないのののがまだ残っていたから、声を掛けて、俺は麗奈さんの待つ生徒会室へと向かった。
◇◇◇
ノックをしてその部屋に入ると、麗奈さんが着替えていた。そうだ、俺も着替えといた方が良いかもな。
「今日は誰も居ないんですか?」
「あぁ、雨の日だと出来ることも少ないからな。家で出来る作業ならわざわざ残って貰う必要も無いだろう? ほら、青も早く着替えると良い」
体操服に着替え、同じ服装なのにこうも雰囲気が違うのかと軽く絶望を挟んで、外に在る本日の作業場である物置倉庫へと傘を差しながら移動した。
物置倉庫とは言っても、体育祭、文化祭、その他行事で使う様な道具が置いてあるだけで、そこまで大きくは無い。教室より狭いくらいかな。
「今から行う作業は、破損、汚れ等の有無のチェック。晴れていれば、人を集めてもっと素早くできたのだが……天気の事だから仕方ない。とりあえず、二人で出来る所まで進めよう」
麗奈さんが作業内容を話ながら倉庫の扉を開いた。
中を見渡すと、たしかに物の種類は多いが、纏められて置かれている分、綺麗に整ってみえる。これなら、チェックもし易そうだ。
俺は、扉を少し開け、持って来ていた鞄を挟み込む。
「よし。麗奈さん、劣化してる物とか、壊れている物のチェックをしていけば良いんですよね?」
「鞄を持って来ていたのは換気の為か! 気が利くな、青は。この倉庫にある用具の一覧表はこれだ。確認して不備がなければチェックを入れて、何かあればその破損の状態を書き込んでくれ……あー、その前に私に知らせてくれると助かる」
麗奈さんから、三角コーンや掲示板、テント等が一覧になってるコピー用紙を受け取り、早速行動を開始した。俺は時計回りで麗奈さんは反時計回りに。
「えっと……フラフープに不備は無し。これは入場ゲートか? 組み立てるタイプだったんだ……これも劣化は無しっと」
チラッと麗奈さんを見てみると、一つ一つ丁寧に確認していた。それなのに俺と変わらないスピードで作業をしていて……俺は早さから丁寧さにシフトチェンジをすることにした。
早さも大事かも知れないが、まずは麗奈さんと同レベルの丁寧さでやらないと、後々問題になったりした時に申し訳ない。
「順位の旗も大丈夫……ん? これは、玉入れのヤツ?」
たしか、今年の競技の中に玉入れは無かった筈だ。去年はあった筈だけど……何で今年は無いのだろう? のののが最初はやりたがってたからなぁ。
「麗奈さん、今年って何で玉入れ無いんですか? まぁ、女子の競技で男子は関係無いんですけど」
「玉入れか。各学年の競技数やらを調整した時に、どの種目を選ぶかで落選したんだよ。私としては、入れても良い気はするけどね。まだ、追加で競技を増やす事も可能だからね」
なるほどね。この学年の女子だけ一つ多い! とかなったら面倒だもんな。その結果、玉入れが無しになったのか。個人的には別に一つ増えたって構わないと思うんだけど、楽しみたい人達からすると納得できないのかもな。
確認したが、別に壊れてる訳じゃないし……学年じゃなくて、三学年合わせた女子の競技としちゃえば、時間もそこまで掛からないだろうし、良いと思うんだよな。
後で提案してみようかな? 男子だけの競技になりそうな道具が在れば……だけどな。
それから作業を進めていくと、やはりいくつかの道具は経年劣化してる物があった。木製の道具は一部が欠けていたり、布は穴が空いていたり。
その都度、麗奈さんに報告して一覧表に書き込んでいく。細かく見ているから見逃しは無いと思うが、如何せん速さが足りていない。
重たい道具や棚の上にある物に関しては俺が取るようにしている。仮に、今日風邪を引いていないとして、麗奈さんと副会長の二人で作業をしていたなら……重たい物は動かすのに時間が掛かっただろう。その点だけは、俺で良かったと自分でも思うかな。
女の子が上にある物を無理やり取ろうとして……“きゃあ!!”なんて事になりでもした……って、麗奈さんっ!?
「今の可愛らしい……じゃなくて、大丈夫ですか!? 麗奈さん!」
「あいたた……すまない。私でも取れると思ったんだが……布の上に別のが乗っていた様で、落ちてきてしまったよ」
道具の事なんて別にどうでも良い! 怪我は……見える所には無さそうだな。保健室に立ち寄って貰ってきてた絆創膏は必要無さそうだ。
「麗奈さん、どこか痛い所とか無いですか? ぶつけた所とか……」
「大丈夫……っ! 大丈夫だ。心配いらない」
嘘だな。麗奈さんは嘘を吐く時に後ろの長い髪をいじり出す。癖とも言っていい。直されても困るから本人には一回も言ったことは無いけど、毎回この仕草をやる。
今回はよほど隠したいのか、両手で髪を触っている。という事は……手は大丈夫か。バランスを崩してたから……足か。よく観察をしてみれば、右足に重心が乗っている気もする。
そう言えば前に、麗奈さんには状況だけで判断してるって感じの事を言われたっけな……。なら、ちゃんと確めた方が良いな。
「麗奈さん、その左足ですが……」
左足の『ひ』の時点で顔を逸らし、『だり』の時点で肩をビクッとさせ、『あし』の時には、髪を触るどころか握っていた。
「な、な、何かな? 私の左足に何か用かな? 青は変なことを言う。普通、左足に話し掛けはしないだろうに。いや~不思議だ。実に不思議だが、そこは私と青だ。特に気にかけたりはしないさ。それで、私に用事なのだろう? 聞いてあげるから言ってみなさい。遠慮することは無いのだよ? うん、ホントに」
珍しい。麗奈さんがテンパるなんて……これはレア中のレアだが、分かりやすいにも程がある。
「痛むんですね?」
「ちょっと、捻っただけだ。問題は……無い!」
麗奈さんの事は、自分の事をちゃんと制御出来る大人な人だと思っているし、大丈夫というなら大丈夫かもしれないが、放置していいという訳では無いだろう。
「麗奈さん、すいません。俺の厄日が移ってしまったのかもしれないです……ちゃんと湿布も貰って来てますから、それだけでも貼っておきましょう。あと、作業は遅くなりますが、俺が運ぶので麗奈さんがチェックする……というやり方に変えましょうか」
「厄日だから念のために貰って来てるなんて……青らしい考えで、用意が良いな。でも、助かったよ。ありがとう」
麗奈さんの足に湿布を貼り、やり方を変えたからクオリティは変わらなかったが、圧倒的にスピードが落ちて……結局、三割くらいは残ってしまった。
麗奈さんは自分のせいで……と言うが、俺の中では厄日の方が説得力がある。
「とりあえず生徒会室に戻りましょうか? 歩けますか?」
「すまないが、肩を貸して貰えるか? あと、少しゆっくりになりそうだ」
鍵閉めも傘差しも俺が担当して、痛みはそこまで無さそうだが、歩きにくそうな麗奈さんを連れて生徒会室まで戻ってこれた。
問題はここからもある。高校生にタクシーは贅沢だ。麗奈さん家の車は麗奈さんパパが使っているし、うちはお母さんが免許を持っていない。
――さて、どうやって帰ろうか。
勝『スカートの中には何があると思う?』
青『……布。なんて答えではないんだよな?』
勝『あぁ……確かに布は在るだろう。時には無いかもしれないが、基本的にはあるだろう。だが、そういう事じゃない。そこに神秘的な“何が”存在しているか……だ』
青『……深いな』
勝『これは、スカートの中を見るに至った過程をも加味せねばならん。偶然か、はたまた運命か、それとも……』
青『見せられた……か。なるほど。考えさせられるな』
勝『そう、だから俺はスカートの中は秘境。そのものがあると思っているんだ。青はどう思う?』
青『秘境。そういう回答もあるか……。だが、俺はあえてこう言おう。そこに在るのは――宇宙だと』
勝『――っ!? ったく青、流石だな』
青『勝也の答えも神秘的だったな』
近くに居たクラスの女子『……ぅへぇ~(こいつ、宇宙って、何言ってんだ?)』