第42話 放課後特別レッスン
アイディアが浮かばない!スランプだ!
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という訳で、この辺で第1回の人気キャラランキング投票受付は終了でーす!
では、よろしくお願いします!
一番箸の遅かったのののが昼飯も食べ終わった頃、ひま後輩が食器を手に立ち上がった。
「では、私は先に戻りますわ。青先輩、のの先輩、ごきげんよう」
「お~う、またな」
「また」
ひま後輩が立ち去った後、少しして周囲の人……主に男子も席を立って離れて行った。流石に、この後もひま後輩を追い掛ける訳では無いだろう。無いよな? だとしたらもう、ストーカーである。
「俺達も戻るか?」
「購買でココア」
ココア……を買うらしい。俺は出汁の少し残った二つの器を返却口へと運び、帰りは先導せず横に並んでいるのののと購買へと向かった。
◇◇
「ココア」
「俺は……俺もココアで」
購買のおばちゃんからココアを買った俺とのののはそのまま教室に戻るのでは無く、少し外に出て……濡れない場所で雨を眺めながらストローでココアを飲んでいた。
「雨」
「雨だな~」
雨とココアとのののと俺と……何か一曲出来そうだが、残念な事に俺にそんな才能は欠片も無いみたいだ。歌詞が何も浮かび上がらない。
「神戸、新山紅亜に話す事は出来なかった件……その理由も聞けなかった」
「あぁ……朝に紅亜さんから少し聞いたよ。でも、あれだろ? 仲良くなったんだって? 良かったな」
あまり二人で話してる姿というのを見たことは無かった。それが昨日は出掛ける程の仲に……女子って凄い。この二人に何か共通点とかあったのかね?
「まだ」
「そ、そうか……。でも、のののが他の人と沢山喋るのは嬉しいって思うけど……同時に、少しだけ寂しさもある……かな?」
よく聞く例えだが、飼い犬が他の人に懐いちゃうってやつ。のののは人だし、どちらかと言えば猫みたいだけどな。でも、ここはグッと堪えてのののを助ける為の動きを俺はしないとだな!
「ふふっ」
「ん? どうした、ののの?」
急にニッコリしたののの……今日はコロコロと表情が変わって、珍しいし、少し面白いな。まぁ、些細な変化だから見逃しちゃいそうになるけど。
「やっぱり少し寒い。神戸、戻ろう」
「はいよ。午後の授業は何だったかな~」
教室に着くと予鈴が鳴った。タイミングが良い、なんて話ながら次の授業の準備に取り掛かった。まぁ、教科書とノートを机から出すだけだが。
◇◇◇
「はい! 今日の授業はここまでよ。このままホームルームに入るからまだ、席は立たないでね」
今日の授業……最後の国語の授業が終わり、クラス担任でもある桜先生がそのまま帰りの連絡をし始めた。
「約一ヶ月後には体育祭が始まりますが……その後に運動部は高校総体がありますし、七月になれば期末テストもあります。少し慌ただしくなるとは思いますが、手は抜かず気も緩めず頑張っていきましょう。特に期末テスト! 勉強は努力しただけ確実に伸びますから。この学校は結果を重視します……それは、過程を見ないという事ではなく、『努力はするもの』という過程ありきの考えで、結果重視の評価しているんです。まぁ、そんな校風の学校ですから、早めに準備をして取り組む様にしてくださいね。残念ながら、『忙しかった』等の理由は、聞いてあげられませんので。あと、神戸君は少し残ってください。以上です! 他のクラスはまだやっていますから騒がしくしないように」
先生の言葉に総体がどうとか……テストがどうとか……様々な反応をクラスメイト達は見せているが、俺は違う。そういった反応ではなく、嫌なタイプの残され方を、然り気無くやられて、何かやらかしたんじゃないだろうか? という感じを一人味わいながら、今日を振り返っていた。
「うん、何もしてない……何もしてない……よね?」
「じゃあな、青! なんだ……頑張れよ」
やめてくれ勝也……俺が何かをやらかして今から怒られるみたいじゃないか。
「神戸君……私も屋内メニューがあるから部活に行くけど、その……元気だして」
「いや、俺は何もしてないよ? 無罪だから」
「神戸、償う」
のののまで!? というか、今日は割りと一緒に居たよな!? あぁ……のののも帰るんだ。ちょっと誰か一緒に来てくれないかな?
「あっ……谷園……」
「青さん……んっ!」
親指を立ててサムズアップしてくる谷園の、その指を折り曲げてやろうかと考えたが、完全な八つ当たりだと……ギリギリだが、何とか俺の心は走り出さずに堪える事ができた。
結局、誰も捕まえる事が出来ずに桜先生の元へと行くことになった。
「先生……俺、何かしましたでしょうか? 思い当たる節は無いんですけど……」
「ん? 何を考えてるか何となくは分かるけど、違いますよ。放課後に時間を取って貰って悪いけど……今から保健室に行ってくれる?」
保健室? 保健室……保健室……保健室?
「えっと……何でですか?」
保健室なんて今年はあの時に一回訪れただけだし、忘れ物とかじゃないだろう。
「忘れたんですか? ほら、神戸君は体育祭で保健係に“なった”でしょ? それで、米良先生のお手伝いをするのに色々と打ち合わせをしておいて欲しいの。神戸君、部活には入ってなかったし……今日でも大丈夫よね?」
「あ……そういえば、のののの策略で保健係に“された”んでした……。そういう事なら全然大丈夫です! じゃあ、行ってきますね。先生、さようなら」
良かったぁ……それが今の素直な気持ちだ。怒られる系の奴じゃ無いなら、もはや何だっていい。ほらな? やっぱり、何も無かった。分かってたわー何もしてないもんな、分かってたわー。
俺は必要な教科書以外は入ってない鞄を持って、教室を後にした。
◇◇
保健室のドアをスライドさせて中に入ると、相変わらずの色気を放っている米良先生と、そんな先生の前に座っている女子生徒が一人居た。知らない人だが、上履きを見ると先輩だという事は判る。
「あら……神戸君ね。少し待ってて貰えるかしら?」
「あー、はい。その、外で待ってますね」
米良先生の前に座っていた女子の先輩からは、すすり泣く声というか……音が聞こえていた。何かあって、米良先生に相談に来ていたのかもしれない。だから、俺は廊下に立っている事にした。
「変なタイミングで来ちゃったなぁ~」
廊下の窓から見える下校中の生徒をボーッと見ていたら、話はほとんど終わっていたのだろう、俺が廊下に出てから数分で保健室のドアが開く音がした。振り返るのも気まずいから音で判断しているが……まぁ、先輩だろう。外を眺めたままの姿勢で、足音が遠ざかって行くまではそのまま動かずに待っていた。
「神戸君、もう良いわよ?」
「あ、はい!」
入る前に出て来てしまった米良先生の後に続き、保健室へと入ってく。先生はいつもの定位置に着いて、俺は机の上に鞄を置いて椅子に座った。
「さっきの子……ちょっと恋愛絡みでトラブルがあったみたいで相談されてたのよ。悪いわね、待たせちゃって」
「そうだったんですね……米良先生は恋愛の相談とかされてそうですね?」
というか、守秘義務的なのは無いのかとも考えたが別に良いかと割り切った。顔を見た訳でも無ければ、そもそも知ってる先輩とかほとんど居ないからな。
俺の予想は当たっているみたいで、米良先生はよく恋愛相談を持って来られるらしい。人の体にセクシーを着ている様な印象の先生だもの。女子は大人のアドバイスを欲して先生に助けを求めるのだろう。
「でもねぇ……今はまだ大人の恋愛なんて知らなくて良いとと思うのよね、あなた達は。変に考えすぎないで、真っ直ぐに突き進めば良いと思うわ。勿論、相手に迷惑を掛けるのは駄目だけど、好きな子には臆病にならずに当たるのよ? 良いわね?」
「は、はい」
あれ? 思わず返事をしてしまったけど……いつの間に恋愛相談した感じになっているんだ? これが米良先生の力か……なんか凄い。
「大人も子供も変わらないのは、理性で制御出来る『好き』と理性じゃ抑えきれないくなる『好き』が存在するという事で……」
「先生、ストップ! その話はまた今度、機会があれば学ばせて貰いますから! 今は体育祭の打ち合わせを…… 」
実は、米良先生自体も恋バナ的なのが好きなのではないか? と、疑い始めて……まぁ、それは良いんだけど、まずはやる事をやっておこうと話の途中だったが流れを断ち切って、打ち合わせをする方向に持っていった。
「あらそう? なら、また今度。えぇっと、そうね。体育祭だけど……毎年怪我をする子は居るわ。一生懸命だもの、転ぶこともあるわ。私達のやる事は、その怪我を勲章にしてあげる事が仕事よ」
おっ? ちょっっぴり……分かんなかったぞ? 俺の理解力が足りて無いのだろうか? ちょっと……えぇ……?どうでも良いけど、米良先生って何歳なんだろうか? 気になる所だ……。
「な、なるほど? とりあえず、急いで処置して怪我の治りを少しでも早くする事が仕事ですね?」
「そうとも言うわ」
そうとも言うらしい……これは、のののとはまた違った意味で集中しないといけないのかも……しれないな。
「神戸君には悪いけど、放課後に何度か呼び出して手当てを受けて貰うわね。簡単な処置くらいなら出来る様になって貰うわ」
おぉ……そこまでするのか。もっと、こう……ガーゼを渡す! とか、言われた道具を渡す! とか、そんな感じだと思っていた。
「わ、分かりました! 頑張ります」
「ふふっ、頑張ったら担任の桜先生にも言っておいてあげるわ。では、放課後の放課後による放課後の為の二人きり特別レッスン……始めるわよ?」
この人……さては感覚派だな!?
作者の悪癖……それは見直しをしない事がある。
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!( ノ;_ _)ノ
結果発表は活動報告にて!