第41話 後は……分かるね?
~~中間発表~~
1位 ○○○ ○○43票
2位 ○○ ○○○28票
3位 ○○ ○○○23票
キャラ名はあえて伏せるスタイルで、結果をお楽しみに!(ちなみに、作者は4票と大健闘……)
1票しか入ってないマニアック(1度しか出てない)なキャラとかも居て、以外と面白いです!
投票はまだ受け付けておりますよ(´ω`)
よろしくお願いします!
午前中の授業が気付いたら終わっていた。寝ていた訳じゃなく、一生懸命話を聞いてノートを取っていたからだ。ちょっと数学の時にウトウトしかけたが、何とか乗り越えた。不思議なもので授業中に眠くとも、授業が終われば目が覚める。何なんだろうか……本能的なアレがアレしてアレになっているのだろう。
だが、まぁ……過ぎ去った事は気にせず、のののが今か今かと待っているから早く食堂へ移動しましょうかね。
「神戸、早くする」
「はいはい、そう慌てなさんなって」
のののが先行して教室を出て行き、ちょくちょく振り返って確認してくる。ちゃんとついて行っているから安心していい。のののの後を俺がついて行くスタイルで食堂へ向かった。
◇◇◇
……流石は食堂である。別に急いでいた訳は無いのだが、教室を早く出たのにも関わらず既に食堂は賑わっていた。
「神戸、何うどん?」
「そういえば、前も雨の日に一緒にうどん食べたな? うーん……どうしようかねぇ~。のののは?」
種類が豊富だと嬉しいが、逆に悩む。知らないうどんにチャレンジするか、無難にいつものうどんを頼んで安心感と共に食すか。
のののは既に決まっているようで、讃岐うどんと返して来た。のののは無難に攻めるタイプだな……なんか納得。そして、俺もそこは同じタイプである。のののの奢りだからチャレンジしても良いのでは? と思う人が居るかもしれないが、逆だ。のののの奢りだから、失敗の無い無難な選択をする。チャレンジは自分のお金でしないと、どこかで申し訳ない感じが滲み出てしまうからな。
「買ってくる」
「じゃあ、受け取りの辺りで待ってるな」
のののが券売機の列に並んで順番待ちをしている間に、俺が二人分の席を確保しても良かったが……まぁ、そこはあえて、待つことにした。のののにうどんを二つ運ばせるのは、少しだけ不安があったからだ。重さの面もあるが、身長的な話もある。背が低めなのののは目立たないから、誰かとぶつかってせっかく買ったうどんを溢してしまう恐れがある。
まぁ……うどんを慎重に運ぶのののの腕がプルプルするだろうという事は、簡単に予想出来る。だから、せめて運ぶくらいは俺にやらせて貰うつもりだ。
通行の邪魔にならない様に、人混みの少し後ろ且つ壁際の方でのののを待っていると――人混みの中から悠然とした佇まいで優雅に歩く一人の少女が居た。ひま後輩である。
だが、そんな品のある絢爛なひま後輩の手には素うどん。素うどんである。後ろに執事を侍らせ、料理を運ばせる方が似合うに違いない雰囲気なのに……自分で素うどんを運んでいるのだ。
事情を知らなければ、『お嬢様だけど鼻に付かない!』とか『庶民派なのね!』とか『それでも美しい』……なんて周囲が口にしている様な事を俺も思ったかもしれないが、今はなんか……応援したくなる気持ちで一杯だ。
「……あら? 青先輩、ごきげんよう」
「ぷふっ……コホン。こんにちは、ひま後輩」
いや、似合うよ? ごきげんようという台詞。似合うけど……ね? これも一つのギャップってヤツなのかなぁ……。
「お一人でいらっしゃいますの?」
「いや、今日はのののがお昼をご馳走してくれるらしくてな。ほら、あそこに」
丁度、のののが券を買う所でお金を券売機に投入している所だった。ひま後輩はのののが苦手なのだろうか? 少しだけ苦笑いをしていた。
「ひま後輩は食堂ってよく使ってたりするの? 最初にあった時より周囲の反応は過剰じゃないっていうか……いや、なんか睨まれてる気がしないでも無いけど……」
「へぇ……中々に鋭いですのね? 青先輩の仰る通りで、お昼は食堂に来ていますの」
素うどんが安くて美味しいので……と、ひま後輩は小声で付け足した。この歳から食費を節約してるひま後輩を尊敬する。普通なら、安さより好きな物を選びがちになる筈なのに。それに加え、俺はついついお菓子を買ってしまう事が多々あるからな。
「そうだ! お昼……ご一緒する? のののにも聞かないといけないけど……大丈夫だと思うし」
「良いんですの? 何故か……というか、やはり私の周りにだけ人が座りませんで、少し退屈をしていましたの。話し相手が居るというのは助かりますわ」
まぁ、姿勢正しく料理を召し上がるお嬢様(仮)と一緒に食事というのは、事情を知らない……もしくは、少しも仲が良くないとすればハードルが高いだろう。
だから、何かしらのチャンスがあると信じて、出来るだけ近く、だけど少し離れた所には座ろうとする……という男子の心理は分からないでは無い。でも、すまない。声を掛けた者の勝ちという事で今日はひま後輩をお借りする。
「神戸、うどんだからすぐに完成するはず」
「ありがとうののの。運ぶのは俺がやるから呼ばれたら一緒に取りに行こう。それと、ひま後輩がいつも一人らしいから……誘っても良い?」
のののは表情こそ変化しないが、ひま後輩を数秒間ジッと見つめ――『良い』と一言だけ口にした。
優しいのののだから大丈夫とは思っていたが、謎の数秒で少しだけ緊張した。俺も緊張したのだから、ひま後輩はもっと緊張しただろう。
「な? 大丈夫って言っただろ? のののは優しいんだから」
「神戸の言う通り」
「で、ですが……あの間は何でしたの?」
それは知らん。のののしか分からないが、流石に『あの数秒って何?』とは聞けない。結果的には良かったんだし、気にしなくて良いと思うぞ。ただ、ジッと見つめただけだ。良くある良くある。
「神戸、うどん出来たって」
「……早いな。じゃあ動きますか」
食堂のおばちゃんからトレーに乗った讃岐うどんを二つ受け取り、ののの、俺、ひま後輩の順で空いてる席へと向かった。奥の方に四人席を見付け、片側の右に俺、左にのののが座って……俺の正面にひま後輩が座った。
「「「いただきます」」」
ひま後輩を中心にドーナツ状に席が埋まっていく。主に男子。おそらく……丁度良くテーブルに乗っていると言える、ひま後輩のアレを見ている男子が多いのだろう。うどんの器が邪魔で正面からは見えにくいけどな。
「神戸、何見てる?」
「……ひま後輩、俺の讃岐うどんに乗ってた油揚げをあげよう。他意は無いよ? ……ひま後輩はそれで良いのかもだけど、素うどんだけだと少し寂しいだろ?」
「よろしいのですか? それならご厚意に甘えさせて頂きますが……」
のののは鋭い。いや、全然鋭く無いけど。のののの問いにはあえて何も答えず、うどんを啜る。見ていない……という感じを出来るだけ醸し出した甲斐があってか、疑いの目を向けて来るのはのののだけだ。こういうのは、本人にさえ気付かれなければセーフと言える……ひま後輩には気付かれて無いと、思いたい。
「神戸、私のも机に乗る」
「いや、それは無……コホン。いやぁ、麺の弾力が違うなぁ~やっぱり。美味い美味い」
のののが手をグーにして俺の左肩を軽く小突いてくるが、悪いのは俺じゃなくないか? 今のは自虐的な……いや、これ以上は何も言うまい。口は災いの元とも言うしな。どうせ口から出すのなら、綺麗で優しい言葉達にしていきたい。
「お二人は仲がよろしいですのね?」
「まぁ」
「当然」
息はぴったりな筈だ。目は口ほどに物を言う……のののはどちらかと言えばそのタイプだ。目を見るだけで何か質問を出されても、お互いに同じ回答を合わせるくらいは簡単に出来る筈だ。
「本当ですの? では……思い浮かべた果物の名前を揃えて答えてくださいな」
俺はのののの目を見る。眠そう……じゃなくて果物。果物か。のののだから、私に合わせろと思ってるだろうし……のののの好きな果物を言えばそれでオーケーだろう? 簡単だ――――ん? のののの好きな果物って、なんぞ?
甘党だから、イチゴ? メロン? それとも……モモとかか? し、知らねぇぇぇぇぇ!?
いや、落ちつけー落ちつけー。目を見ろ。うん……なるほど、全然分からない。もう、勘で良いか。猫っぽさがあるし、猫、炬燵……と来れば、もうミカンしか無いだろう。あっ、そう思えばミカンな気がして来たぞ! ミカンが好きって、言ってた様な……言ってなかった様な……。まあ、いけるだろう!
「「せーのっ、『ミカン』!!」」
俺は左手を横に居るののののに掌を上にした状態で差し出す。その手にのののの右手が上から降りてきて、ハイタッチを交わした。
「揃い……ましたわね。正直、驚きましたわ。どちらかの好きな果物ですの?」
驚いてるのは俺の方だ。まさか……当たるとはっ!! 俺の推理力がこんなに冴えているとは思いもよらなかった……。今ならミステリー小説を読んでも犯人とか解っちゃいそうな勢いである。
「ふっ、ひま後輩……これは俺の推理力だ。俺の好きな果物はリンゴ。ちなみに、お互いに好きな果物の話とかはしたこと無かった気がするし……後は、わかるね?」
「私もリンゴ……好き。神戸、お揃い」
ほーら……ん? リンゴ? ミカンは? あれ……? リンゴ? ミカン? リンゴ? ミカン? ミカン? リンゴ? ミカン? リンゴ? モモ? モモは違うか……あれ?
「どういう事……ですの? 青先輩、『後は、わかるね?』……とは?」
「エー、ソンナコトイッタカナー?」
「神戸、言った……こほん。『後は、わかるね?』」
おっとー!? 無理やり似せながら言わないでおくれぇー!? 恥ずかし恥ずかし……え!? のののの好きな果物ってミカンじゃないの? いや、待てよ……? リンゴは好きって聞いたけど、ミカンも好きかもしれない。
「ののの、ミカンも……好きなんだろ?」
「ミカン。嫌いじゃ……ない? 『後は、わかるね?』」
いや、分かんないぃぃぃぃぃぃ!! じゃあ、なんで揃ったんだ!? のののも俺の好みをテキトーに言っただけか? それはそれで息はピッタリだけどさぁ!
「あの、青先輩? 『後は、わかるね?』とは……」
「おっと、ひま後輩……それ以上ニマニマしながら先輩をからかうと、油揚げ没収だからな!」
その後、真顔でからかって来るのののとひま後輩の相手をしていたらお昼休みの時間はだいぶ消費されていた。それと比例するように、俺の精神力的な内側に存在する何かも、かなり消費されていたのである……。
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)
今回は以外とのののの文字が多かった気がする……