第33話 俺は……どうするんだ?
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本屋へと向かってのののと歩いているが……ほとんど無言だ。でも、気まずいという訳ではなくて自然な状態。お互いが沈黙でも特に問題は無く、それが普通であると受け入れていた。
「こっちの方が近道だけど?」
「なら、あっちを通る」
俺が指差すのは近道となるルート、のののが指すのは遠回りという訳じゃないが大きな通りを歩く普通のルート。
「まぁ、急がなくてもいっか……明日は休みだもんな」
「うん、悠悠閑適」
……ちょ~っと難しいかな! うん! ……悠々自適なら聞いたことあるんだけど、帰ったら調べておこう。
言葉は少ないけど、会話を交わしながら俺とのののは駅の近くにある本屋さんへと辿り着いた。
◇◇
店に入った俺は、のののの後について行き、色んな本を見流していく。のののが立ち止まったのは小説関連の棚の所だった。
「そういえば、のののは漫画とか読まないの?」
「たまに。でも、自分でイメージしたい」
ふむふむ……イメージか、なるほど。漫画は絵で、どういう表情とか、どういう背景とかはとても解りやすい。その点、小説は人によってはイメージする物が違う。バナナと言われて、一本だけ思い浮かべる人が居れば、一房のバナナを思い浮かべる人も居るだろう。剥いてある状態かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
俺はそこまで感受性豊かじゃないからな……やっぱり漫画の方が面白く感じるけど、のののからすれば自分で幾つものイメージが湧く小説の方が好きなのだろう。
「人それぞれだな。それで……今日は買うやつとか決まってるの? 今人気のヤツとかは既に読んでるんだろ?」
「うん……今回は――恋愛小説。作品自体はまだ決まってない」
……えっ!? のののが恋愛小説!? こう言っちゃ何だが……イメージが湧かないんだけど? そりゃ、あれだけ小説を読んでれば色んなジャンルの本を読むだろうし、それが恋愛小説の時があるのも分かるんだけど……。
「そ、そうなんだ……なんか意外? って言うか、恋愛小説はよく読む系統なの?」
「あまり……恋愛小説は読み解くのが難しいから。でも、買う」
まぁ、言わんとする事が分からないでも無い。それなら漫画の方が分かり易いのでは? とも思うけど、さっきの理由も含めてのののが選ぶのなら止めはしない。
「じゃあ、俺も何か見てみるか……表紙とタイトルで引かれたら買おうかな」
「私はあらすじで」
恋愛小説が纏められて置かれている棚を端からさっと見ていく。平積みされている本がオススメだろうからそれは最後にして、タイトルだけを漁っていく。
「神戸、私は決めた」
「えっ……早くない? もう見付けたの?」
まだ探し始めたばかりだというのに……どれどれ? 『彼の好きな私になる為、私は私を騙します』と『彼が変わらないと言うならば、私が彼を変えてみせます』の二冊か。タイトルから察するに、どちらも女性目線の話みたいだな。
「えっと……じゃあ、俺はこれにするかな? 『僕が君の隣に立つ理由』……うーん、面白いのかな? ま、まぁ! 読み終われば満足感は出るだろうし」
「小説はそんなもん。神戸、漫画の方、見に行く?」
漫画か……いや、今日はこの何となく視界に入ったから手に取った一冊で止めておこうかな。お金もそれほど持って来て無いし。
「いや、大丈夫。のののは? 他に買う本とか」
「大丈夫」
中々に満足そうな顔をしてらっしゃる。たぶん、他の人から見たら眠たそうな顔にしか見えないだろうが……俺もだいぶ慣れてきたもんだな。
「買ってから……お茶する」
「お茶? どこか寄ってくって事か?」
まさか、本屋の誘いならまだしもお茶の誘いまで来るとは……まさか!? に、偽物!? 引っ張ってみるか?
「は、はんへ~」
「す、すまん! 偽物の可能性があったから……でも、この眠そうな目も小さいサイズ感もおさげも本物! ちゃんとのののか……」
別にお茶のお誘いは全然オッケーだ。のののらしからぬ感じがして疑っただけで……な。
「どこかの珈琲チェーン店にでも行こうか」
「うん! 早く行く」
本を購入して、俺とのののはここからすぐ近くにあったお店に入った。俺はアイスココアを、のののはアイスカフェラテを購入してからテーブル席で向かい合わせで座った。
「普段なら飲み物が逆なんだけどな? まぁ、そういう日もあるかね」
「あるある」
◇◇◇
別に沈黙は良いのだが、流石に対面に座ってまで何も話さないとなると……少し落ち着かない。買った本を読むわけでも無し……チミチミと飲み物を飲むだけだ。
のののだから……何か考えがあってここに来たとは思うんだけど、沈黙のままだな。
「…………」
「…………」
ふぅ……ココアが美味い。何となく居たたまれない気持ちになって、窓の外を見てみると……もう夕暮れだった。その中を、家へと帰っているであろう人が行き交っていた。
「ののの、ココア飲む? 甘い物を飲んだ方が頭には良いだろう? 何を考えているかは分からないけどさ」
「うん……私のと交換」
のののが俺のココアと自分のカフェラテを入れ替えた。ココアを一方的にあげるつもりだったんだが……これ、ストロー使わなくても間接キスになるのだろうか? それともセーフか?
「うん、ココアは美味」
あっ……普通にストロー使うんだ。俺が気にしすぎなだけか? 潔癖症な訳じゃ無いけど、なんか恥ずかしいから使うのは止めとこう。……というか、ストローも交換しておけば良かったな。後の祭りってヤツだけど。
「そりゃ、良かった。で、のののからお茶のお誘いとか珍しいけど……何かあったの?」
「……流石は神戸。ちょっと聞きたい事あった。大した事……じゃない」
聞きたい事……全然思い当たる節は無いけど、何かあっただろうか? のののが俺に聞きたい事だから勉強の事じゃないのは分かるけど……。
「何だ? 聞きたい事って」
「神戸、新山紅亜との誤解……解かないの?」
◇◇◇
「ただいま~」
「青、遅かったわね? ご飯は? すぐに食べる?」
俺はもう少し後で食べるとお母さんに伝え、自分の部屋へと帰って来た。制服から寝間着に着替え、椅子に座ってのののとの会話を思い返す。
◇
『解かないの……って言われても、なんて言えば……良いかな? ほら、こう……』
『遅い?』
『そんな感じ……かな? 今さら言っても……って。もう二週間も経った訳だし』
『解けたら?』
『……え? もし誤解が解けたらどうするかって? まぁ……誤解が無くなった。という事象が産まれるだけで、何も変わらないんじゃないか?』
『告白したい……そう思わないの?』
『それは………………あ、あれ? 俺は……』
『……意地悪な質問した。誤解は私に任せる』
◇
最後に、自分に任せてと言ったのののを見てる事しか出来なかった。のののからの質問に、俺は……答える事が出来なかった。喉元までは言葉が出ていたと思う。が、答えられなかった。
「告白したいか……か。誤解が解けたとして……いや、仮に解けなかったとしても、告白という事そのモノを俺がするのか。自分の事なのに、ピンと来ない」
あれは凄く勇気がいる。心がすり減るし、緊張して吐きそうにもなる。それを越えてでも、溢れ出る想いを好きな人に伝えたいから告白をする。俺もまたいつか……そんな気持ちになれば告白をするかもしれない。だが、今はとてもそんな気持ちには……なれないし、ならないだろうな……きっと。
「誤解か……のののが任せてと言うなら任せておこう。別に紅亜さんも今さら誤解と教えられても、もう前を向いている訳だしな。特に気にする事も無いだろう」
さて、それは頭の片隅にでも置いておいて……明日からの土日をどう過ごすかだな! せっかくの休みだし、有意義に使わないと……っと、そうだ! 確か、マスターの店がランチ的なのを始めるんだったな! 明日、早速行ってみるかな。
「谷園も誘うか……? いや、アイツは騒がしいからいいか。一人でのんびり過ごそう。そうだ、宿題とか買った本とか持っていって居座らせて貰おうかな? 予定を立てるこの時間って楽しくなってくるな!」
明日の計画を一人であれこれ考えていると、お父さんが仕事から帰って来たみたいだ。時計を見るともうそんな時間であった。思ったより計画に時間を取っていたみたいだ。
俺と碧は晩飯をいつも先に食べているから、晩飯がお父さんと一緒になる事は少ない……休みの土日くらいだろうか? 晩飯は、やっぱり家族揃って食べる日の方が美味しく感じるし、家族間のコミュニケーションを取る大切な時間でもある。
今日は珍しく俺の帰宅が遅くなったから一緒に食べれるな……まだ、そんなにお腹が空いてる訳でも無いけど、せっかくだから一緒に食べるか。
「ビールでも注いであげますかね!」
俺はリビングに向かうついでに、お父さんを出迎えようと自室を後にした。
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(´ω`)
皆様も、最近は寒いですから風邪にはお気をつけて……( >д<)、;'.・