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第30話 ルールを決める。

のののが長めに喋る回

よろしくお願いします!

 


 恋バナという名の暴露会もそこそこ落ち着きをみせ、俺は部屋で一人、モンブランを食べていた。



「クリームうまうま……スポンジケーキうまうま……あ、あれ!? いつの間にか無くなってる!?」



 チャットには当たり障りの無い返事をしながらゆっくり食べていた筈なのに……楽しい時間がすぐに過ぎ去ると言うのは本当の様だな。



「『モンブランを食べ終えたので寝ます』……まぁ、実際に寝る訳じゃ無いけど」



 こういうグループトークは、最初に離れる方が良い。最後の方にまで残ると、逆にタイミングを無くすって話だ。誰かが言っていたな……。碧とか碧とか……こんな事を教えてくれるのは碧。それしか思い浮かばねぇな。



『えぇ!? 青さんズルいですよ! こんな時間帯にケーキの話は女子的に困るんですけどっ!』


『青はモンブラン派か? 俺は断然チーズケーキだな』


『和菓子』


『何だか、お腹が空いてきましたね……』



 おっ、紅亜さんとのののが復帰した。と言っても何ターンか返信が無かっただけだけど。

 のののからさっき個人的にチャットが来たし、珍しい組み合わせな気がするけど、紅亜さんとのののでチャットしていたりしたのかもしれない。



「よし、後は置いといていいな。片付けて来るか」



 あまり話しすぎると学校で会った時の話題が無くなるし、ほどほどにしておかないとな。


 ついでに風呂にも入っておこうと、着替えを持って部屋を出た。台所で使っていたフォークを洗い、風呂に向かった。



 ◇◇



「きゃっ! お兄ちゃん!?」


「いや、パジャマまでしっかり着ておいてその反応はおかしくない? ほら、髪も乾かし終わったなら出た出……碧、髪が生乾きというかまだ乾かしきれて無いぞ?」



 髪の前側は乾いてるみたいだが、後頭部やその先端が濡れて見える。濡れたままだと痛むって聞くし乾かしてやるか。



「ほら、ドライヤー貸して。……乾かすぞー」

「ぶぉーーーうぉ~うぉ~」



 碧のドライヤーのマネは長くは続かなかったが、髪の方もすぐに乾かす事が出来た。これで碧の髪の毛もバッチリだろう。



「ありがとうお兄ちゃん!」

「はいよ。じゃあ、お兄ちゃんも入っちゃうから出てっておくれ……」



 碧が風呂場から離れてから思った。そういえば、一緒に入らなくなってだいぶ経つな……と。もっと小さい頃は一緒に入っていた筈なんだけど……こうして兄離れをして行くのかね? その内、『マジあり得ないんだけど!? ウケる~』とか言い出すのかな?


 碧の成長には気を付けよう……そんな事を考えながら、お風呂を堪能した。



 ◇◇◇



 今日は木曜日、週も折り返して明日の金曜日が待ち遠しいだけの今日。まぁ、晴れて良かった……それだけの日。


 いつもの様に学校に向かい、いつもの様に勝也や谷園に挨拶をして、いつもの様に席に着いた。そう……いつもの様に。



「お、おはようののの」

「おはよう、神戸」



 いつも通り……いつも通り。



「お、おはようございます紅亜さん」

「おはようございます、神戸君」



 ……うん。



「あれぇ? 青さん、紅亜もののさんも何かピリついてませ……んぐぐ!?」


 “しっ、谷園! 何も言うな。いつも通りなんだ。変なことは何もない……良いね?”



 後ろから声を掛けてきた谷園の口を手で覆って、黙らせて、頷かせた。問題を問題として浮上させたら問題になる様に、ピリついている雰囲気を確認してしまったら受け入れないといけなくなる。気付かない方が良い物事とは、きっと、こういう物の事だ。



 “ふが、ふがふふがふ!(はい、分かりました!) ふがふがふがふが!(離してください!) ふぅ……助かった。でも、やはり何か……二人共オーラがいつもと少し違いますよ? 何かあったんですかね?”


 “ケンカは……そんな事しないしだろうし、何だろうな?”



 でも、知っている。女子に限らず、ピリついている人に近寄ると、とばっちりが来る事を。触らぬ神に祟りなしだ。



 “まぁ、女の子の気分なんてコロコロ変わりますよっ! 頑張ってください、青さん!”



 ――谷園の応援も虚しく……結果的に、放課後まで両隣から出ている雰囲気にビビる俺であった。



 ◇◇◇



 昨日……巳良乃さんから宣戦布告された。


『新山紅亜。私は貴女に宣戦布告する』そう言われて私はすぐにピンと来た。“あぁ……やはり巳良乃さんも青くんが好きなんだ”……と。


 すぐに返信はしたのだけど、返って来たのは『明日の放課後』という言葉だけ。


 それで、今日一日はその事だけを考えて過ごしていた気がするわね。



「じゃ、じゃあ……また……明日」

「神戸、バイバイ」

「また明日です、神戸君」



 何故か今日は青くんの様子がおかしかった気もするけど……体調でも悪かったのかしら? 後で確認しなきゃね。


 青くんが教室を出て、皆が部活へと向かう中……私はまだ自分の席で座っていた。巳良乃さんの指示を待っている。私から話し掛けても良いのだけど、巳良乃さんが放課後にと言ったから……ね。



「話……ある。人の少ない所」

「分かりました。それなら良い場所があるので……行きましょうか」



 ……変に緊張する。相手は巳良乃さんだからだろうか? 話す内容が青くんの事だからだろうか? それとも……。


 私は巳良乃さんを先導する形で人通りの少ない場所へと向かった。申し訳無いけど、少し面倒だと思っていた告白される事が役に立った。



「ここなら大丈夫でしょう。それで……聞かせて貰えますか? 昨日の宣戦布告のその真意を」



 自分でも分かるくらいに緊張して、言葉も堅くなっている……それに、少し威圧的だったかも知れない。でも、でも……この焦りは何だろうか……。



「新山紅亜、貴女が神戸好きなの……知ってる。でも……わ、私は……もっと……もっと……神戸が好き」

「…………っ……ぁ」



 言葉が詰まった。巳良乃さんは会話が苦手だと知っている。青くんとの会話でも、長く話すところは滅多に見ない。だからこそ……その巳良乃さんだからこそ、今の一言で気持ちの全てが伝わって来る。


 危険――その信号が私の頭に響いていた。この一言を青くんに聞かせたらいけないと、訴えかけて来る。ど、どうすれば……私は……。



「話の……続き。……貴女も私も、神戸が好き。()()()――神戸から、自分の事を……自分の事だけを好きだと言って貰いたいと思っている。違う?」



 違く……無い。

 自分の内面を見透かされてるみたいに、巳良乃さんに全て当てられている。


 “私の弱さ”であの時の青くんを信じきれ無かった……その事で青くんを傷付けてしまった。自分勝手だとは分かっている。それでも……やっぱり私は青くんに、もう一度好きだと言って欲しい。


 巳良乃さんの言う通り……他の誰でも無く、私の事だけを好きだと、青くんに言って欲しい。



「巳良乃さんの言う通り、かんべ……じゃない。私も青くんに好きだと言って貰いたい。その為なら私は……巳良乃さんとも戦います。宣戦布告をお受けした上で、私も巳良乃さんに負けないと……宣戦布告のお返しですっ!」



「そう。なら、ルール……決める」



 巳良乃さんが、淡々と話す。少し……笑ったように見えたのは気のせいだろうか……。


 それよりも……例え、どんなルールだろうと誰が相手だろうと、私には負ける気持ちは無い。……ありがとう巳良乃さん、貴女のお陰で私の中の迷いが軽くなった気はしますよ。


 鏡を見れば、私も巳良乃さんと同じく笑っているでしょう。綺麗な笑顔じゃないかも知れない。けど、一番素直な笑顔だと思う。



 ◇◇◇



 私とも戦う……とも? まるで他にも居るかの様な口振り……でも、とりあえずは順調だ。昨日の夜に長く喋る練習をしておいて良かった。



「そう。なら、ルール……決める」



 ちょっと、疲れた。やはり新山紅亜は危険。容姿じゃ……敵わない。こんな子に好きだと言われたら男子は舞い上がるだろう。だからこそ……神戸に告白だけはさせてはならない。



「ルールその一……自分から神戸に交際を求めてはならない。以上」


「えっ……あの、ごめんなさい巳良乃さん。もう少し詳しく……良いかな?」



 えっ……。これ以上無いくらいに分かり易くしたのに……えっと、だから……。



「神戸に、告白、して欲しい。私も貴方も……。だから……」


「青くんに告白される様にアピールはして良いけど、自分から告白するのは……無し。という事ですか? ですが……」



 危惧する事は理解している。抜け駆けしないか心配しているのだろう。こっそりと告白してしまう感じで。



「ルールその二……という程じゃない。。私も貴方もお互いに神戸から言って欲しいと確認した。私はそれを信じる。自分から好きだと伝える事――()()()()()()()()()()()。私が欲しいのは神戸の気持ち……。新山紅亜、貴女は?」


「いえ……そうですね。青くんに言って貰わないと意味がない……分かりました。お互いを信じましょう。抜け駆けしてバレた時のリスクはお互い様ですし……確かに青くんに伝えるのは告白された後にすれば良いですものね。お互いアピールだけ……という事ですね」



 中々に……上手く……行ったかな? 本を読み返しておいて良かった。挑発や……駆け引きに乗ってくれて助かった。スポーツマンには正々堂々……正しかったな。とりあえず……これで大丈夫……だろうか?


 今日は疲れたな。こんな頑張るのはいつ振りだろう? これも全部……神戸のせいだ。今度、飲み物を買って貰おう。



「優位性は私にある。でも、私は貴女に勝たないと……って思ったからこの協定を提案した。貴女は他への抑止力にもなる」


「……なるほど。確かに私も貴女に勝たないと……と思ったわ。マノンが言っていたわ、好きなモノが同じ人同士は仲良くなれると。巳良乃さん、もし良ければ……貴女の事をののさんと呼んでも良いですか?」



 谷園マノン……不安要素の一人。人との距離の縮め方は私にはマネ出来ない……ん? 私とも……という発言には谷園マノンが含まれている可能性がある? だと仮定するならば……谷園マノンはいわゆる、ライバルの関係である相手とも仲良くなれると提唱しているの……か? そういう考えこそが距離を縮める為に必要で、私に無いもの……なのだろうか。なら、人の良いところは取り入れていかないと……。



「か、構わない。私も呼ぶ。でも、しばらくは新山紅亜と呼ぶ」

「分かりました。では、ののさん……私は今から部活へと行きますね」



 私は新山紅亜を見送った。これで何とかスタート地点に並べたかな。でも問題は……ここから。神戸にアピールして好きになって貰わないと意味がない。



 頑張ろう……明日から。


 

作中の一日がこんなに早く過ぎるのは作中の日曜日以来ですかねぇ(´ω`)


誤字脱字がありましたら報告お願いします!


日間ランキング上位目指して頑張るぞい!

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