第27話 とりあえず駄弁ってみようか
よろしくお願いします!(´ω`)
とりあえず、1話から少しでも見易くなればと思って色々と調整しました。(1/12)
それに伴って、少しだけ文を追加ましたがストーリーが変わる程じゃないです。(多分)。1話が多目に足しましたけど……これが今の限界ですかねぇ。
周囲の人を見てみると、動き回ったり、既に固定された面子で話し合ったり……と様々の中、俺とひま後輩は壁際に二人で座っていた。勿論、人ひとり分の間隔を空けて。
「…………」
「…………」
沈黙である。やはりこういう時は先輩である俺から何かしら話さないと……とは思うのだが、共通の話題も分からないし、お昼を共にしたとはいえ、馴れ馴れしくするのもどうかと考えているその結果が――――この沈黙である。
くぅ……これなら勝也に後輩女子との話し方講座でも開いて貰えば良かったぜ。
「青先輩の……お好きな食べ物はなんでしょうか?」
「あ、えっと、うーん……。餃子、チキン南蛮、オムライス、スパゲッティミートソース、ハンバーグ……とかかな? ひま後輩は?」
気を使わせてしまったのか、沈黙に耐えきれ無かったのか、ひま後輩から質問が飛んできた。お互いに正面を見ている為、顔を合わせている訳では無いが……今ようやく会話のキャッチボールが始まった。
「私は、甘いお菓子を好みますね。ですが、本日いただいた素うどんも中々の美味でしたわ」
「素うどん美味しいよな。でも、エビチリも中々に美味しかったろ?」
俺のエビチリを八割近くも食べたのだから満足はしている筈である。
「えぇ、ですが……食べるとしたら素うどんの方が飽きが来ないかと。……そうです! 思い出したので話題を変えますが、青先輩は生徒会に入っておられるのですか?」
確かに言われてみれば、素うどんならトッピング次第でいくらでも楽しめるし美味しいし、飽きないだろうな。
生徒会……なるほど。そういえば、前に会ったときは生徒会と書かれた名札を付けて文化部の部室を回っていたな。
「いや、俺は生徒会じゃ無いよ、これでも誇り高き帰宅部だからね。あの日は、知り合いの手伝いで文化部の部室を回っていただけ。……たしか、ひま後輩は書道部って言ってたよな……どう? 楽しい?」
「そうでしたの。書道部の方は……えぇ、楽しいですわ。少し用事がありまして、早めに帰る事も有りますが先輩方は優しい方達ばかりですし」
そういえば、前に……言い争いとまでは行かないまでも、ひま後輩が帰る事に対して一悶着があったのを見たな。
「そうか……書道部は大会? いや……コンクールか。何月くらいにあるの?」
「書道のコンクールはよく新聞社が開くのですが、そうですね……大きめなコンクールは9月以降に公募があって、冬の1月辺りに開催されたりしますわね。勿論、それ以外にもありますが」
へぇ……たまに入賞したという話があるが、俺が知る書道部の活動は文化祭での演目としての一つくらいだ。
「俺は字が綺麗じゃ無いからな~。それどころか、絵も下手だし、楽器も引けない……マジかよ! 自分で改めて確認したら芸術系のセンスの無さがえげつない!?」
「ふふふっ……最初から上手く出来る人なんてのは稀ですわ! ……まぁ、私は出来ましたけど」
言うじゃないか……ひま後輩。天才肌なのかな? それはそれで良く似合うけどさ。
「じゃあ、近くあるコンクールの結果は楽しみにして良いんだね?」
「…………申し訳ありませんわ。本当は――」
ひま後輩が何かを言いかけた時に、俺達の前にやって来た人物が居た。そして、一人分空いていた俺とひま後輩の間にちょうど収まる感じで座り、一言。
「神戸、大変」
のののだからだろうか……。まったく大変さが伝わってこない。
「どうした、ののの?」
「青先輩……この方は?」
えっと、どっちから先に応じれば? んなー、とりあえずひま後輩へ説明からだな。
「こいつは巳良乃のの。俺の隣の席の子で、やれば出来るけどやらない子だ。それで……どうした、ののの?」
「神戸、私を匿う」
匿う……ということは何かに追われてるという事だろうが、のののを追う者がちょっと想像つかない。
「良いけど……俺は何を?」
「何も。神戸の近くに居れば人は来ない……のだけど、この子は?」
オーケー。のののも俺をそんな風に思っていたのか……。違うな、のののにすらそう思われるレベルに俺がなったんだな。何それ悲しい……。今度はこっちの説明か。
「この子は、灰沢向日葵さん。一年生で、さっき昼飯の時に勝也も含めて三人で話をしててな……今はこうして暇を潰している感じだ」
「納得。では、私もお邪魔する」
「よ、よろしくですわ?」
のののが間に入ったとしても、コミュ力の平均値が下がっただけである。まぁ、三人でただ真っ直ぐ向いて話しているだけでも乙なものだ。
◇◇◇
のののを匿うというか、隣に置いてから一、二分経ったが……誰かが来る気配も無い所か、俺達だけ孤立してる感まである。
「ののの、結局……誰に追われてたんだ?」
「知らない子。でも、図書室で良く見掛ける」
ふむふむ。きっとその子はのののと仲良くなりたかった……それか、本の話をしたかったんじゃないか? 俺が気付くくらいだし、のののも気付いてる筈なんだけど……。
「いいの?」
「方向性の違い」
方向性の違い? そんなバンドマンみたいな……。えっと……理由だよな? 多分、きっと、想像だが、のののは好きな本を読むのも見付けるのも一人で楽しみたい派。その子は共有したい派……という事かな?
「のののはオススメとかしたくならないのか?」
「聞かれたら。でも、神戸にはオススメする」
ありがたいけど、のののが読む様な小説楽しめるかは分からんぞ……? 良くある有名な著者の、薄いのに内容が厚いタイプの小説は十ページ程度で諦めるレベルだし。それでも、読み終える事が出来れば満足感に包まれるのだろうけど。
「初心者向けで頼むな」
「前向きに善処」
「あ、あの! 失礼ですが、全然会話についていけないのですが!? きっと、あちらの私達の正面に居て、チラチラと見ている方ですよね? 巳良乃さんを追いかけてる人というのは」
そういえば、いつの間にか居るな……本持ってるし、眼鏡掛けてるし。友達と合流したのか、三人のグループで会話をしながらでもこちらを見ている為、のののに興味を持っている事がバレバレだ。
俺達三人も正面を向いて座っている為、向こうがこちらを見ると必然的に目が合う。合っているのはののので俺達は視界に入っているだけなのだろうが。
「あの子。神戸、『知ってる?』」
「俺は知ら……そういう事ね。ひま後輩、あの子って一年生だよね? 知ってたりする?」
「青先輩は通訳なのですか? それに原文の意訳が凄いですわ……どこをどうすれば私への問い掛けとなるのでしょうか……。えっと、ですが残念な事に別のクラスの方ですわね。まだ名前も存じ上げて無いですわ」
そうか、知らないのか。残念。
意訳というか、のののは頭が良いけどコミュニケーション能力が低い。だから、俺も想像力を働かせて何とかひま後輩に向けて通訳している。
今のも、『この子に聞きたいけど初対面だし……』というのののの葛藤の結果、俺に聞く呈を装い、あわよくばひま後輩に話が流れれば……てな感じだろう。多分。間違ったら指摘が有るのに、今は無かったから正解だろう。
「のののも最近は、話す事が少しずつ増えたんだし……一回くらいあの子と話してみたら?」
「神戸、進むと引き返せなくなる事もある。ね?」
のののは正面を向いて俺に言っていた筈が、ふと声が離れていく感じがして横目で見てみると、最後の問い掛けの“ね?”だけはひま後輩の方に向けられていた。
流石にその意図を読み取る事は出来なかったが、ひま後輩も正面を向いていた顔を、のののの方に向けている。何だか、二人は分かり合ってる感じがして疎外感だが……女の子にしか分からない事ってのもそりゃあるよな。ひま後輩の目がいつもより少しだけ見開いていたのは印象的だったけど。
俺はまた、正面に視線を戻して会話を続けた。
「まぁ、のののが乗り気じゃないならさ、それでいっか。もし、気が乗った時に話してみるのもまた自由だしな」
「うん」
「お二人と居ると……何だが時間がゆっくりに感じますわね?」
それは俺じゃなく、のののに原因があると思うな。ののののノンビリが周囲にまで伝播してるが故の感覚だ。
「赤組、そろそろ時間なので集まってください!」
団長からの呼び掛けがあり、体育館に備え付けられている時計を見ると、もうすぐ本日最後の授業が終わりそうな時間だった。
「では、青先輩、巳良乃さん。楽しかったですわ」
「こちらこそ」
「神戸、胸は脂肪」
……見てないよ? 見てないったら見てない!! まったく、のののが変な事を言うから視線が誘導されてしまったじゃないか……。
そのせいで去り際にひま後輩から一睨み頂いた。……すまん。
「神戸、私も何だか肩凝った」
「ダウト。さ、ひま後輩は先に行っちまったけど俺達も並ぼうぜ」
のののに背中をペシペシ叩かれたが痛くない。肩にやって貰えれば気持ちの良い強さだな。
集まった後に団長からの一言があった。頑張りましょう的なやつ。その後に全体でのホームルームを体育館でするらしく、先生から話が少しだけあり……ようやく放課後となった。
誤字脱字がありましたら報告お願いします!
(´ω`)
よし、1話から少しずつ読みやすい様に改稿していきますかね……