第21話 にらめっこしーましょ……ガハッ!!
よろしくお願いします!
(´ω`)
さて、昼飯も食べ終えたしどうするかな? 何かしないといけないって訳じゃ無いんだけど……周りの人は昼休みを謳歌しているっぽいし、何もしないのは少し勿体無い気がする。
そう思いはするが……特にコレと言ってしたい事は無いんだよな。勝也はどっかに行ってるし、のののは図書室だろうし、今日は谷園も居ない。
「飲み物でも買って、どこかで時間でも潰すか?」
友達が居ないと基本はソロ活動になってしまう……当然だけどな。俺は財布とスマホを制服のポケットにしまい、購買へ行く為に自分の席から静かに動き出した。
◇◇
廊下で騒いでる男子や教室でお喋りに興じる女子を軽く見ていきながら一階にある購買へとやって来た。忙しい時間帯を少し過ぎている為か、人は居な――いや、一人だけ居る。あれは麗奈さんだ。
「――――という事ですが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ。いつまでに用意すればいいんだい?」
何やら購買のおばあちゃんとお話をしているみたいだ。手に何やら書類の様な物を持っているし、生徒会の仕事だろうか?
「麗奈先輩、どうもです」
「うん? ……おっ、青じゃないか! どうしたこんな時間に? 既に購買のパンならほとんど売り切れてしまっているぞ?」
うちの購買のパンは、業者に発注している物が九割と食堂のおばあちゃんが作っている物が一割の対比で売ってあるある。すぐに売り切れるのは食堂のパンの方だ。数回だけ食べれた事があるが、めちゃくちゃ美味しかったのを覚えている。数が少ないからでは無く、美味しいからすぐに売り切れるんだよな。
「飲み物を買いに来たんですよ。おばあちゃん、ココアください。……それで、麗奈先輩はどうしたんですか?」
「あぁ、体育祭の障害物競争で吊るしたパンを口で取る……というポイントを作る予定なのだが、そのパンを食堂のパンに出来ないか相談しに来たんだ。……ちょっとしたドッキリにするつもりだから、まだ内緒だぞ?」
マジかよ……嬉しいドッキリだし、これなら障害物競争を選んでおけば良かったかもしれない。
「はい、ココアだよ! 百円ね」
「ありがとうございます。どうぞ、平成元年の光沢の無い百円玉です……それで麗奈先輩、生徒会はもう忙しいんですか?」
「まぁ、そうだね。書類関係は早めに配って、早めに提出して貰わないといけないし、騒音関係で地域の方へのお知らせをプリントで届けなければならない……それ以外にも仕事は沢山あって、本番までやることは多いかな?」
縁の下の力持ち。そんな言葉が思い浮かんだけど、それじゃあ十分の一も伝わらないだろうな。何か俺にも手伝える事は無いかな?
「麗奈先輩、俺でも出来そうな……お使い程度の仕事って無いですか? 放課後なら空いてますし、簡単な仕事がある時は手伝いますよ!」
「……気持ちだけ受け取っておくさ。ありがとう青」
……だろうな。そう返ってくると思っていた。麗奈さんはそういう人だと知っているから。
――――自己満足。手伝う理由が純粋で高潔、そんなモノじゃ無く自分勝手な気持ちというのは申し訳無いと少しだけ思っている。
けれど、俺の気持ちを満たす為に幼なじみとして、押し付けがましくもお節介を焼かせて貰う。
「麗奈先輩! 俺は生徒としてじゃなく、幼なじみとして手伝いたいんです。確かに出来る事は少ないですが……麗奈先輩の力になりたいと心から思っているんです。……迷惑ですか?」
「あ、青!? その言い方は卑怯だぞ!? それを断ってしまえば、青の気持ちを否定する事になってしまうだろ? やれ……いったい、どこでそんな言い回しを覚えたんだ?」
くっくっく……麗奈さんが俺に拒否権を与えない言い方をするみたいに、こっちも対麗奈さん用に色々と考えているんです。
「ふふっ、青春ね~」
「「お、おばあちゃん!?」」
やっちまった!! 人の通りは無かったとはいえ、ここは購買の前だ。どうして少しだけ恥ずかしい様な台詞をペラペラと言っているんだ俺は……おばあちゃんの前で。
「おばあちゃん、ココアをもう一つ頂きますので! ……麗奈先輩、どうぞ。これ飲んで頑張って下さい。それと放課後になったらメールで呼んでくださいよ?」
「う、うむ……簡単な仕事を見繕っておくよ。ココア……ありがたく貰っておく」
良かった。押し付けがましくなったが、麗奈先輩を手伝えるならそれで満足だ。簡単な仕事くらいなら任せていただきましょう!
「では、また放課後に」
俺はココアを片手に教室へと戻る事にした。どこかに行ってみようかとも思ったが、それはまた今度で良いだろう。
◇◇◇
来た道と別ルートから教室へと戻る途中、紅亜さんが告白されている所を見てしまった。なんかアレだ……昨日の今日で大変そうだ。
教室の自分の席でココアを飲みながらスマホでゲームをしていると、紅亜さんがお戻りになられた。お疲れ様です。
「あ、あら神戸君……昼休みはずっと教室に居たの?」
「さっき、購買にコレを買いに行ったけど……それ以外はここに居ましたよ?」
まぁ、ずっと居ると言っても間違いじゃないか……今日だって特にする事が無いから購買に行ったわけだし。
「そ、そうなのね! 購買……ならセーフかしらね」
何かホッとしてる様だが、セーフ……とはいったい?
「あっ、そうだ! 戻り道で見たけどさ、あれって先輩だよね? 結構モテるって有名なサッカー部の……」
「ア……アウトじゃないのっ!!!」
な、何だ!? 教室に居る皆が話を止めて、こっちを注目するくらいの声量が紅亜さんから飛び出した。
「ど、どうしたの?み、みんな見てるよ!?」
「えっ? あ、ごめんなさい……。ちょっと驚いちゃって。じゃなくて、見たの!? 購買と校舎裏じゃ場所が違うのにどうして? えっと……その、か、勘違いしないでねっ!?」
それは遠回りしたからだけど……。告白されるなんて、俺からすれば凄く名誉な事だと思う。昨日のヤツは急に谷園が紅亜さんに声を掛けるから隠れて、そのまま居なかった事にしてしまったけど……今思えば隠れる必要なんて無かったんだよな。
告白も紅亜さんレベルでされる様になると、受け取り方というか感じ方が俺みたいなのとは違うのかな? それに、勘違いって何をだろうか? そもそも実は告白じゃなかった……とか?
「暇だから少し遠回りしてね。ご、ごめんね、プライベートな事だし触れない方が良かったよね……でも、あれって告白じゃなかったの?」
「しっ! しぃーーっ! こ、告白でしたけど……その……しぃ~でお願いします。それに、お断りしたので広まってしまうのはその方にとっても……」
自分の鼻に人差し指をくっ付けて必死になっているが、俺がその事を話すとすれば……谷園くらいしか居ないだろう。でも、紅亜さんは相手側の事も考えているみたいだし、そこまで必死なら言わないでおくから安心してください。
「わ、分かりました、分かりましたよ」
「本当に断ってますよ! し、信じてください……そうだ! わ、私の目を見てくださいっ! それで分かって貰える筈で……」
一秒……二秒……む、無理っ!
嘘を吐いてない事を証明するのと、俺が信じているかを確認したかったのだろうが……紅亜さんの大きく綺麗な瞳に吸い込まれそうになるというか、単純に恥ずかしくて目を逸らしてしまった。
「うぅ……や、やっぱり信じてませんね!?」
「い、いや信じては……いますよ? ただ、少し恥ずかしかったと言いますか……そ、そうだ! なら、新山さん……俺の目を見てください」
一秒……二秒……ガハッ!
これは自爆だった! これじゃ、さっきと同じ事を繰り返しただけで、俺がダメージを受けるだけじゃないのか?ほら、紅亜さんは至って平気そ――――
「あの……こ、これは少し照れます……ねっ」
「て、照れますよね……あはは」
……どうやら意外と効果はあったみたい。だが、紅亜さんの照れてる姿に俺が照れて、それに紅亜さんがまた照れて……。
お互いの反応に反応する事を何回も繰り返した。それから昼休みが終わるまでの間、微妙な空気感の中に二人だけが閉じ込められている……そんな気分を味わっていた。
◇◇◇
午後からの授業も何とか乗り気って、放課後となった。帰りのホームルームで、明日の午後から体育館で赤組白組に別れ、三年生の団長やクラス毎のクラスリーダーを中心に話し合いが行われるとの連絡があった。
組のトップなのに団の長。組長じゃなく団長と呼ぶ理由は、赤組組長より赤組団長の方が言い易いから……らしい。勝也が言ってたから本当かどうかは知らないけど。
話し合いと言っても去年と同じく、最後の目玉競技であるリレーの代表を選んだり、組同士での顔合わせがメインになるだろう。つまり、俺的には授業が無くてラッキーとしか思ってない。
「神戸、バイバイ」
「おう!また明日な、ののの」
勝也や紅亜さんは部活へ向かい、のののも帰って行った。今日は谷園も居ないみたいだ。
教室に残って居るクラスメイトも少なくなって来た頃、麗奈さんからメールが届いた。
「よし、じゃあ行きますか」
宿題で使う教科書や空の弁当箱くらいしか入っていない軽い鞄を肩に掛け、気持ち的に急ぎ足で教室から生徒会室へと向かった。
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