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第18話 学校案内レッツゴー!

お待たせ致しました。

よろしくお願いします!

 


 朝のホームルームも終わり、一時間目の授業前であるこの時間に、俺は勝也とのののにお礼を言っていた。借り物競争のお題を出してくれたお礼である。マノンは席が少し遠いから後で行く予定だ。



「後は、生徒会で案を絞ったり増やしたりするらしい。とりあえず、ありがとう」

「別にそんくらい気にすんなって! たいした手間じゃ無いしな」

「うん」



 お礼を言った後、今日の遅刻理由を聞かれた。どうするかなぁ……あの告白の件は、男子の方にも女子の方にとっても秘密の方が良いだろうし。



「あれだ、登校中にトイレに行きたくなって体育館の近くにあるトイレに行ったのが失敗だったな。校舎内のトイレならギリギリ間に合ってたかも知れないし」


「あ~、なるほどな」


「神戸、また怒られた」



 先週も遅刻したからなぁ……もう少し朝の動き出す時間を早める必要があるか? でも、ギリギリまで寝てたいからなぁ。



「神戸君、チャットの事ごめんね。お題の案を出せなくて」


「あ、いや、新山さん部活って言ってたから大丈夫……ですよ。お、お疲れ様です」



 紅亜さんが部活だと知らなければ既読無視の線も考えてたかもしれないが、前日のチャットで聞いていたし、そこまで気にしなくて良いのに……律儀だな。


 そうだ、勝也と紅亜さんに聞いてみるか。さっきの女の子の事を。



「部活やってて後輩が居る勝也と新山さんに聞きたいんだけどさ……」


「後輩? 居るけど……どうした?」

「神戸君、何かあったの?」



 俺はさっき会った女の子の特徴を二人に話した。灰色のツインドリルに少しキツめの瞳でお嬢様口調。流石に紅亜さんの前で胸の事は言えなかったが、こんなに特徴のある子だし情報としては十分だろう。



「うーん……待てよ~? 俺の後輩が何か話してた気もするけど、思い出せねぇ……すまんな青」


「陸上部の後輩でも無いですし……? それで、神戸君、その女の子がどうしたの? まさか……!?」


「神戸、どっかで会ったの?」



 そうか、知らないか。体育館で部活をやってる勝也と、外で部活をしている紅亜さんが知らないのなら……文化部の可能性が出てきたな。そもそも部活に入っていないという可能性もあるが。



「体育……んん、トイレから出て玄関に走ってる時に同じく走ってたから遅刻仲間かと思って……うん。それだけだよ? ホントに。知らないなら別にいいよ、そこまで興味があるわけでも無いしね」



 ただ見た目のインパクトと、面白い話し方してるな~と、思っただけだし。



「そう? ホントに何も無いのね? 何か話して仲良くなったとかじゃないのよね?」

「うちの後輩にでも聞いておくよ。その子の事、判ったら教えてやる」



 仲良くはなっては……無い。紅亜さんのお陰でちょっとだけ有名人な俺だけど……あの子は俺の事は知らない様子だった。男子生徒の方は知ってたっぽいけど。


 勝也には気にしなくて良いと伝えたが、きっと調べてくれるんだろうな。俺が知りたいのはモテてるのかどうかだけ……完全に興味本意だが、朝から告白されるって中々だと思うし気になるよね。



  ◇◇◇



 授業が始まって、一時間目、二時間目と過ぎ去って今は昼休み。各自、好きなように過ごす時間である。俺は弁当を自分の席で食べ終えて、この後の時間をどう潰すか考えていた。



「勝也は遊びに行ったし、のののは図書室だし……」

「青さん! 青さん!」



 どうするか悩んでいた俺に声を掛けてきたのは谷園だ。



「どうした?」

「何で……何で誰も学校案内してくれないんですか!? 私……逆に驚きなんですけど!?」



 あら、可哀想に。誰かに案内して貰っているモノだと思っていたが、可哀想に……。



「そのオーラは……まぁ、いいですよ。じゃ、行きましょうか!」


「行きましょうか……って。職員室前か、玄関辺りに校内の見取り図があるぞ?」



『いやいや……』『いやいやいや……』と、お互い水掛け論になりかけた所で俺が折れた。理由は暇だからだ。



「じゃあ、とりあえずは移動教室で使う特別教室棟の方から行ってみるか」

「レッツゴーですよっ!」



 理科室、音楽室、美術室……案内だけを淡々としていった。それが楽しいのか知らないけど谷園はニコニコしてるし、とりあえずはこのスタイルで続けていこう。


 次は、職員室や事務室、保健室がある職員棟へと移動しようとした時に……本日二度目のアレを見てしまった。



「前からずっと好きでした! 僕と、付き合ってください!!」



 俺と谷園は校舎裏で告白している男子生徒とそれを聞いている女子生徒の姿を窓から見下ろしていた。月曜日から告白するって……やっぱり凄いメンタルだな。


 ――それよりも、あの女子生徒……後ろ姿ですぐに判る。あれは、間違える筈も無い……紅亜さんだ。



「青さん! 青さん! 見てください!」

「わ、分かってるよ。紅亜さんの事だし告白くらいされるだろ?」



 前に、手紙が下駄箱に入ってるというベタな告白をされていたのを知っているし、一度は鳴りを潜めたが……再発? 再開? したのだろう。



「ほら、学校案内の続きに行くぞ?」

「えぇー!? 最後まで見届けましょうよ! あっ! 男子の方が去っていきましたよ……トボトボしてます」



 トボトボか。そうか。あれ……なんで少しホッとしているんだろうか。



「……ほら、行こう」


「待ってくださいよ! ヒーローインタビューしないでどうするんですかっ!? ……ん? ヒロインインタビューですかね?」



 いや、どっちでもいいけどインタビューとか止めて欲しいかな。うん、だってそれってつまりは……。



「おーい! 紅亜ーーっ!! 上ですよ! こっちです!」

「えっ? マ、マノン!? いつからそこに!?」



 そうするよね、知ってた!

 いやぁ、危なかった……。こうする理由なんて無いけど、つい反射的にしゃがんで隠れてしまった。


  ギリギリの所で、紅亜さんからは見えて無かったと思いたい……。



「ついさっきです! 学校案内をして貰ってましたぁ!」

「して貰ってましたって……まさか、他にも誰か居るの!?」



『居ない』……そう谷園から紅亜さんに言って貰う為に、俺は首を横に振り手でバツを作って示して見せた。示したよね? 示してるのになんだい……その笑顔は。



「居るけど居ないですよ! では、私達は校舎を徘徊しますのでまた後で……ですっ! 行きましょうブルー!」


「ブルー? ブルー……青……青? ……青くん!? ちょ、待ってマノン! ちょっと待っときなさいよ!?」



 おい、紅亜さんが来ちゃうけどどうすんの!? ……くそぅ、こいつ俺と紅亜さんが付き合ってた事を知らないんだった。こうなれば仕方ない。



「谷園、逃げるぞ! とりあえずここじゃない何処かへ!」


「……えっ!? 何ですか、その駆け落ちする時みたいな台詞は! でも、面白そうだからついて行きますよっ!」



 校舎内を走るわけにはいかず、早歩きで移動した。紅亜さんが通るだろうルートを避けて、他の棟に向かう。


 校内で見付からない様に動くのは、鬼ごっこをしているみたいで少しドキドキして、ついでに学校案内も出来るし意外と楽しい。昼休みが終わるまで逃げ切れれば、俺達の勝ち……的な。



「谷園、紅亜さんには人が集まり易いから目立つ筈だ。……人の多いところは避けて、少ない所を通って行こう」


「人の少ない所へ……じゅるり」



 ……じゅるり、じゃない。というか、普通こういう時は『ごくり』だろうに。いや、そういう反応自体が間違ってると思うけどさ。一度ならず、二度三度とじゅるりじゅるりと音がするから振り替えるとそこには――



「あぁ~、やっぱりゼリーって美味しいですねぇ~。じゅるり」


「ゼリーの音かよ!」



 一口サイズのゼリーを食べている谷園の姿がそこにはあった。


 唐突にゼリーを食す……なんでだよ! 誰のせいで静かに逃げてる最中だと思ってんだ。じゅるりってんじゃねぇよ……。



「何ですか、物欲しそうに見つめて……まさか、欲しいとかですか!? ダメですよ! 定期的にゼリーを摂取しないと私、死んじゃうんですから!」


「いや、ここ数日でお前にゼリーのイメージなかったけど!?」



 むしろ、今始めてゼリーを食べてる姿を見た気がするレベルだ。……っと、こいつの冗談になんで真面目にツッコミを入れてるんだろ。



「定期的に摂取してますよ……具体的には月一で食べてますっ!」

「なら、俺もだよ! ……あっ」



 くそっ……落ち着け、落ち着け。じゅるり音はまだ聞こえて来るけどツッコミはここまでにしておこう。



「ふぅ……よし。谷園、たしか、図書室にのののが居る筈だし……ちょっとそっちに行ってみるか?」


「良いですね! 私、本とかあんまり読みませんが図書室に可能性を感じてます!」



 何のだよ!? というツッコミをまた入れてしまったが、俺達は図書室へと向かった。


 この学校の図書室は結構な広さで、本の数も多い方だと思う。


 流石に、話に聞く様な大学の図書室くらいの数では無いが、生徒が新刊の希望を出したり、要らなくなった本を寄付してるらしく、本の数は年々増えている様だ。


 昼休みに図書室を利用する者はそこそこ多いみたいだが……俺は数回程度しか利用した覚えが無い。



 ◇◇◇



「おぉ! 結構な広さで読むスペースもありますし、これで飲み物の持ち込みが大丈夫だったら暇潰しには最適ですね! ね!」


「静かにな、のののは……あそこか。ちょっと行ってくるから」



 図書室内で本を漁ってるのののを見付けて近寄った。理由は二つ。一つ目は単純に見付けたから。二つ目は――



「ほら、ののの。この本でいい?」


「ん……神戸、助かった。脚立が置いてなかった」



 いつもは脚立が置いてあるのかな? なら、片付けてあるか、他の所へ持って行ったんだろう。タイミングが良くて何よりだよ。



「神戸、図書室に……珍しい」

「ちょっと、『かくかくしかじか』……でな」

「……?」



 ごめん、『かくかくしかじか』って言ってみたかっただけ。ちゃんと話すからジト目はやめておくれ……。


 本棚に並べてある本を眺めていた谷園を連れてきて、のののにここに来た経緯を簡単に話した。のののは理解が早くて助かる。


 その上、俺はのののと図書室に最初から居て、谷園が後からやって来た。……という設定まで作ってくれた。ポケーっと本を眺めている谷園にも説明はして、ここで紅亜さんをやり過ごす事に決まった。



「やっと見付けたわよ、マノン! ……と神戸君! それに……あれ?

巳良乃さんも?」



 キーンコーンカーンコ~ン


 一応、設定は作って待っていたのだが、このチャイムで教室に戻らなければならない。つまり……これは俺達の勝ちと言って良いだろう!



誤字脱字がありましたら報告お願いします!

(´ω`)

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