第16話 どこだっけ……胃薬
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٩(๑'﹏')و
麗奈先輩と考え始めた借り物競争のお題……俺はさっそく良い案が浮かんだ。
「『昨日の今日でこのトークを使わせて貰うが、借り物競争に入ってたら盛り上がるお題って何がある?』……これでよし。谷園とか勝也なら良い案も出してくれるだろうし」
意気込んだのは良いけど、やっぱり一人より二人、二人より三人だよな!
しかも、のののは借り物競争に出場する立場だし……自分が引くか誰かが引いたら面白そうな案を出してくれるに違いない。
皆にも頼るとして、俺も何か考えないとだよな……やっぱり。お題……お題……。先生は定番として、やはり小物から人物まで幅広くやりたい所だな。そっちの方が見てても楽しめそうだし。
ピロン!
「おっ……さっそく返信だな。どれどれ……」
『定番だけど、苗字とか名前とかは盛り上がるんじゃねーか?』
なるほど、『皇さんを二人』……とか面白そうだな。うん、不可能に近いけど。男子が走る時は女子の名前を引かせたりすると良いかもしれない。流石は勝也だな。
『私はですね、やっぱり盛り上がるお題がいいと思うんですよね! ズバリ! 好きな人です!』
『おぉ! 谷園さんの案、確かにそれは盛り上がるかもな! 定番なお題の中に、そういうのが入ってると面白いかもしれない』
谷園からも返信が届いた。やっぱり、そういう話題は欠かせないのだろうか? 谷園が言うとアホっぽくなるが……。
引く人によっては嫌がりそうな感じもするが……う~ん。これは麗奈さんと相談だな。俺のメッセージに既読人数が三と付いてるから、のののも見ている筈なんだけど……。
「『のののは何かある?』……麗奈さん、借り物競争の方向性は分かってきましたよ!」
「そうか。やはり一人で考えるよりは誰かと協力した方が良いな。生徒会でも話し合うからどんどん忌憚の無い意見を聞かせてくれ」
俺達は案を出すだけで、後は生徒会が篩に掛けてくれるならどんどん出そう。数打ちゃ当たる……違うな、塵も積もればって感じかな?
ピロン!
『猫』
猫かぁ~。学校に連れてきてる人が居ない限りは達成出来なそうなお題だけど……とりあえず一つの案として受け止めておこう。
『それより、何で青がそんな事を気にしてんだ?』
『ですね! たしか、青さんは借り物競争じゃ無かったですよね?』
「『ちょっと、麗奈さんの手伝いでな。生徒会が細かい所はやってくれるみたいだから、お題の案を多く出して欲しいって』……そう言えば麗奈さん、谷園マノンって知ってますか?」
麗奈さんは知っているのだろうか? 面識は無い……と思うのだが。
「名前くらいはな。転入生だろう? ……詳しい事は知らないが、青と同じクラスだったような?」
流石は生徒会長。麗奈さんは谷園の事を知っていたか、やっぱり。谷園は……多分、麗奈さんの事を知らないだろうな。教えておくか。
『なるほど。頑張れよ、青』
『麗奈さんとは……誰です? クラスの人じゃ無いですよね?』
『生徒会長』
と、思った矢先、のののが代わりに簡潔に言ってくれた。……のだが、単語だけだから借り物競争のお題かとも思ったぞ。……ん? これは中々に?
生徒会長というお題は案外悪くないかも知れな……い? これも候補に入れておこう。こっそりと。
『えぇ!? どうして、青さんみたいな霞んだ人が生徒会長なんてピカピカしてそうな方とお知り合いなんですか!?』
おっと……これは喧嘩を売られてると思って良いのかな? というか、何で谷園は俺を霞ませたいの?
「『麗奈さんとは家が近所で知り合いなんだよ。というか、霞んでるのとか関係あるのかっつーの?』」
『大有りです! あれ……まさか、霞んでるからこそですか!?』
こそってなんだよ。霞んでるからこそってどういう事だ……?
……霞んでるからオーラの濃い人を呼び寄せてるとでも言いたいのか? ははっ、そんな事あるわけ無いのに。やっぱり変な奴だな谷園は。
『誕生月』
おぉ……う。のののはマイペースだなぁ。でも、ちゃんとお題の案を出してくれて助かるよ。
「麗奈さん、友達に聞いたのと……俺も思い付いたのをいくつかメモしておきましたよ」
「うん、助かるよ! とりあえず青は案を出しておいてくれ。もしかしたら障害物競争の方に転用できるかも知れないからな」
……凄いな。俺が『ちょこライン』を使ってる時も、麗奈さんは俺の勉強机をプリントでいっぱいにして何かを書いている。
仕事量が多いのかな? 変な制度がある分、やっぱり大変なんだなうちの生徒会長って職務は。
「何か飲み物でも持ってきますよ。麗奈さんは何飲みますか? やっぱり珈琲とかですか?」
「……青は状況判断のみで物事を決めてしまう傾向があるな。やれやれ、私の好きな飲み物を思い出して欲しいよ、まったく……」
うっ……。そ、そう言えば麗奈さんは苦いのが駄目だったな。机にプリントを広げ、お仕事感が溢れていたからつい珈琲という選択をしてしまった。
実際に仕事中ではあるが、仕事中だからこそ甘いものが良かったかも知れない。俺のうっかりミスだったな。
「ココアを更に甘めにして持ってきますよ……。麗奈さんの糖分補給の為にもね?」
「うむ、それは良い判断だ! 頼むぞ、青」
麗奈さんからお褒めの言葉を貰った俺は部屋を出て、飲み物を作りにキッチンへと向かった。
◇◇◇
「お兄ちゃんおはよ~、麗奈さんが来てるんだって?」
「あら、青……どうかしたの?」
お母さんのみならず碧もリビングに居たのか。
「いや、ちょっと飲み物をね」
キッチンに向かってココアを作る。アイスの方でいいかな? いいよなもう五月だし。
「私も麗奈さんに会ってくるね!」
「あらあら……青、お菓子もあるから麗奈ちゃんに出してあげて」
「ありがとう。じゃあ、貰っていくよ」
冷蔵庫の中にあったチョコレート系菓子を幾つか貰って、お盆にココアと共に乗せて運んで行く。部屋の前につくと何やらゴソゴソと音がするが……
「碧~、開けてくれ~!」
“お、お兄ちゃん!? ……麗奈さん早く“
“う、うむ!”
「おーい、碧~」
「はいはい、どうぞどうぞ」
何をしてたのか、ゴソゴソしていた気がする。だけど……部屋の中は変わってない様に思える。
「はい、麗奈さんココアとお菓子です。――何か探してました?」
「あ、ありがとう。別に、何も、本とか、特に探してはいないぞ?」
うーん。思春期男子の部屋の中を荒らさないで欲しいと思うけど、残念ながら麗奈さんが心配している様な本はこの部屋に無い。全てお父さんと共に隠しているからな。
お父さんもお父さんで見付かったら相当怒られるらしく、とても慎重だ。これは父と子の秘密である。
「碧、今日は暇なのか? なら、お兄ちゃんと麗奈さんの手伝いをして欲しいんだけど?」
「うーん……あ! 今日、碧は忙しいのですよ! 麗奈さん、手伝いたいんですけどごめんなさい!」
「ほっ……うん、忙しいなら仕方がないな。仕方がない、青! 二人で頑張るしかないな!」
そう言って碧は出ていってしまったが……あいつ、さっきもリビングでテレビ観てただけだよな? せめて、借り物競争のお題でも考えて欲しかったんだけど……。
「うん、中々に甘い! 美味しいぞ青」
「お口に合った様で何よりです。それじゃあ、続きでもやりますか」
そう意気込んで、再開しようとした時に部屋の扉が叩かれた。
「麗奈ちゃん、お昼はウチで食べていくでしょ?」
「よろしいのですか? ……では、私も作ります! 手伝わせてください」
――ヤバい。
どれくらいヤバいかと言うと、お母さんの顔がニコニコしたまま固まっているくらいにはヤバい。フォローという名のお断りをしないと……。
「れ、麗奈さんはお客様なんですから! ね、お母さん。ね!」
「そ、そうよ。麗奈ちゃんもたまには休まないと……ね?」
「大丈夫ですよ! これでも料理の腕は成長しているのですから!
任せてください!」
お母さん、頑張ってくれ! 頑張って、麗奈さんを止めてくれ!
「……なら、青の分を任せようかしら?」
「はい! 美味しく作るからな、青!」
お、お母さん!?
子供を売りやがった……。まぁ、麗奈さんの料理に耐性が有るのは俺しか居ないのかもしれないけど、ちょっと酷くない!?
あっ……ゴメンねの顔をしてる。犠牲者が一人で済むならそれで良いって顔もしてるな、あれは。
あぁ……。情けない事に張り切ってる麗奈さんに何も言えない俺がいる。
「麗奈さん、お母さんと同じ手順で作ってくださいよ! そ、それが家の味ですから!」
「うむ、神戸家の味はちゃんと覚えるからな! 楽しみにしておいてくれ」
嬉々として我が母と部屋を出ていった麗奈さんを見送って、とりあえず俺は一応……胃薬の準備をする事にした。
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転生物、転移物も書いてます!
ファンタジーですがお暇ならよろしくお願いします!(宣伝)
あと、今になって他の方のラブコメを読んで勉強した方が良いかも?と、思い始めましたので、オススメがありましたら……ね。