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第150話 体育祭スタート


お待たせしました!

よろしくお願いします!(´ω`)



 


 教室に戻り、少しすると紅亜さん達も戻って来た。そして、ほぼ同時に担任の桜先生も教室に入ってきた。


「はい、席着いてー。休みは……居ないわね。良かった良かった。今日は保護者様も来賓の方も多く来られますから、皆しっかりね! 怪我には気を付けて、思いっきり勝ちにいきなさい。先生からは以上ね」


『楽しみなさい』ではなく『勝ちにいきなさい』――おそらく自分の受け持つこのクラスだから言えた台詞。

 だが、その台詞の効果は抜群で、男子も女子も……俺でさえも士気は高まっている。

 クラス内では声を抑え気味にではあるものの、やる気に満ちた声が充満していた。勝つか負けるかという不安も混じって浮わついていた空気が、『勝ちにいく』という道が出来た事によって団結力に変わっていた。


「隣のホームルームが終わったら着替えて速やかにグラウンドの入場ゲートに集合すること。そこまでの移動からダラダラしない様に! あと、神戸君は米良先生の所ね。なんなら、保健室で着替えても良いわよ?」

「あ、はい。じゃあ、そうします」


 団結した直後のソロ活動は空気を乱す……と思ったが、そんな事はなさそうだった。既にハチマキを巻いてたり、別の高校から友達が見に来るだの、それぞれ会話をしている。


 鞄から体操服とハチマキを取り出して教室を後にした。

 保健室前の窓からグラウンドを見てみると、生徒会の人達が最後の準備に取り掛かっていた。

 全体の流れが滞らない為の最終チェック、その指揮を取っているのは麗奈さんだ。この体育祭が生徒会長としての最後の仕事となるらしい。

 例え最後だろうが最後ではなかろうが、手を抜かないのが麗奈さんの性分。麗奈さんが生徒会長の時点で、この体育祭は成功を約束されているも同然である。そのくらいの信頼感がある人だ。


「早く手伝いにいかないとな」


 保健室に入って着替えさせて貰い、米良先生に指示された物を両手に持ってグラウンドへ向かった。

 米良先生に荷物を持たせるなどさせてはいけない、という謎の使命感で持っている荷物は結構な重さだ。

 まず、氷の入っているクーラーボックスが重い。これは肩から掛けているからまだ良いが……米良先生が作ってくれていたスポーツ飲料水の入ったウォーターサーバーがかなりの重さだ。しかも二つ。

 絆創膏や湿布、包帯や消毒液なんかは軽くて良いが普通に重労働だ。


「じゃあ、お願いねぇ~」

「……は、はい。軽いですよ……こんなもん……はははっ」


 教室棟の生徒が使う出入口と、保健室や職員室があるこの棟の出入口の場所は違う。違うというか、別なのだ。

 つまりは、先に靴を履いて来なかった時点でミスをしていたという事になる。

 昨日の練習では、グラウンドに向かってる途中で保健室に行くことを思い出したから靴を履いていたのだが……自分のミスだからこれは仕方ない。


(これは……先に荷物は下まで運んで、靴を取りに行って……が、まだ楽かな?)


 ウォーターサーバーが一個なら持ったまま靴を取りに行っていただろうが、米良先生の判断で二個ある為すこし厳しい。

 階段を降りて出入口の近くに荷物を固めると――本当はいけない事だが――先生がいない事を確認して、上履きのまま外に出た。そして、走って自分の靴の置いてある場所まで向かった。

 ルールは守らないといけない物だ。

 でも人は、欲に負けがちだ。歴史を振り返っても七対三くらいで負けていると思う。俺が勝手にそう思っているだけで、そんな事実があるのかは知らないけれど。


(まぁ、つまりは……怒られる覚悟さえあれば、怒られて済む程度のルールなら破ってしまうってことかな! バレない様に注意は払うけど)


 上履きから靴に履き替えて、さっきとは違う軽やかな走りで荷物を取りに戻った。

 八時二十分の朝のホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴る。逸る気持ちを抱える全校生徒が着替えてグラウンドに来るまでに十分(じゅっぷん)も掛からないだろう。


「少し急ぐか」


 置いていた荷物を持ち上げて、太陽の熱と重い荷物で少し汗を掻きながら、救護テントまで早歩きで向かった。


(着いたら一杯だけ飲ませて貰おう……そもそも飲み物買って来るの忘れたしな)


 今日は少し暑く……熱くなりそうだと、そんな気がした。



 ◇◇◇


「じゃあ、米良先生……最初は競技で抜けるので」

「分かったわ~、頑張ってくるのよぉ」


 救護テントに荷物を運び、いろいろと準備している内に集合の時間になっていた。

 後の細かい事は米良先生に任せ、最初のプログラムである入場行進の為に、既に生徒が集まっている入場ゲートに急いだ。


 八時三十分を越え、学校へお客さんが入ってくる。

 今頃、校門の看板で写真を撮ってる人とか居るだろう。だが大半の人は矢印案内に従い、真っ直ぐにグラウンドへ来ている。

 その間、俺達生徒は入場ゲートで待機だ。

 来てくれたお客さんがグラウンドの場所確保を終えるまでは、しばらく待機の状態になるだろう。


「おーい、そろそろ始まるから静かになー」


 待機をして十数分。団長からの声で徐々に静かになっていき、いよいよスタートという雰囲気が広がっていった。


『選手入場』


 スピーカーから聞こえてくる声で、練習通りの足踏みが始まる。

 先頭の団長達が歩き出し、一般足踏み団員である俺達も進み出した。入場ゲートを越えると、拍手が鳴り響いてグラウンド全体で盛り上がっている。

 四分の三ぐらいを歩き終えた所で、救護テントの近くに碧も白亜ちゃんの姿を見付けた。二人は俺よりも少し後方に向かって手を振っていて……おそらくマノンや紅亜さんを見付けたのだろう。


 一周してグラウンドの中央に並ぶ。

 ここからは開会式。昨日とは違いちゃんと話がある為、長くなるだろうな……――。


「では、開会式を終わります」


 一番長かった校長の挨拶がようやく終わり、俺達は入場ゲートから出て次のプログラムの準備へ移った。

 最初は百メートル走……いきなり出番がやって来る。米良先生には伝えてある為、テントに戻らずこのまま待機をしておく。

 昨日は散々な結果を出してしまった俺だが、今日の俺はひと味違っている。

 気力も体調も万全だ。


「青さん、碧ちゃん居ましたね!」

「新山紅亜の妹も居た」


 同じ種目に出るマノンとのののが話し掛けて来た。競技は基本的に一年生からのスタートで、本当は整列しておかなければならないのだが、今はちょっとした空き時間だ。


「居たな。全然俺の方は見てなかったが」

「そですか? 私はバッチリ目が合ったですよ!」


 観客の方からやや声が上がった。おそらく向日葵が走っているのだろう。


「そうだ。昼飯の場所だけど、どこか良い場所ってある? 碧と白亜ちゃんも一緒だからさ」

「うーん……食堂か教室とかですかね?」


 やはり無難な所だとそうなってしまうか。ただ、他の人も同じ考えだろうし、混雑になるのは目に見えている。

 ウロウロして昼休みの時間が潰れるなんて事は避けなければ、妹ズから頼り甲斐が無いとか思われそうだ。


「私に名案がある。とても静か」


 救いの手を差し伸べてくれたのは、のののだった。たしかに妙案があるという顔をしている。

 いつもよりも得意気な顔と声だから、そんな時ののののに間違いは無いだろう。


「じゃあ……のののに頼んで良いか?」

「任された」


 何だかんだ、俺達はこんな感じでいくのだろう。

 のののに頼る事がほとんどで、たまに頼って貰う。そんな感じ。


「あっ……そろそろ集合みたいですよ! 頑張らないとですね!」

「「がんば……る?」」

「もぅ! 二人とも頑張るんです! 私が意地でも頑張らせますからね!」


 俺ものののも、マノンには冗談のつもりで言った『がんばる』。本当は、心の中でちゃんと『頑張ろう』としているのだ。

 おそらく今日だけじゃない――これからみんなで過ごすイベントは、きっと頑張ってしまうだろう。


「青さんもののさんも、頑張らないとまた最下位ですよ!」

「ふっ……ナメるなよマノン」

「私達は気合いが違う」


 そろそろ出番。『流し』で走っていた昨日とは違うという所を見せるとしますかね。







誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)



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2020/1/11~。新作ラブコメです! 『非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~』
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