第14話 勝也、ののの……俺を嵌めたな!
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ありがとうございます!(^ω^)
……と、感謝を込めてますが、この14話はとあるゲームアプリでガチャが当たらなくてムシャクシャした勢いで書いたので、変な箇所があったらすいません
(´・ω・`)
「はい、では……男子は名前を書いた紙を折り畳んで前に持って来てください。先生が引きますんで当たった人はクラス代表として、頑張ってくださいね!」
どうやら先生の冗談では無く、本気でくじ引きで決める様だ。クラスの男子は熱気を醸し出しながら、ノートから一枚紙を破り、勢いよく名前を書いていく。先生が全員と言った為、俺も名前を書いて先生の所に渡しに動いた。
最後に渡しに行った勝也が席に着いた所で、先生が目の前に集まった紙を混ぜ始めた。あれで誰が誰の紙か分からなくなったが、自分に違いないと自信あり気に豪語している者やひたすら何かに祈ってる者が……半々かな。
まだ種目決めにすら入ってない事を考えると……紅亜さんの出場競技によっては、もう少し先生の目の前に集まった紙の出番がありそうだ。
「神戸、選ばれたら?」
「それは絶対に無いと思うよ?」
思うどころか、俺が選ばれる可能性は――零%である。
簡単な事で、ちょっと勝也が当たる確率を上げたに過ぎない。国語のプリントを『ちょこライン』で見せてあげた時に何かすると約束してくれたし、これの事でチャラにしてあげるつもりだ。
「では、引きますよ! 男子のクラス代表は――――円城寺君、お願い出来ますか?」
「……嘘、だろ?」
他の男子からは落胆の声が聞こえてくるが、不満な声は出てこない。皆、心の中では勝也ならクラス代表として認めているのだろう。当人である勝也は、まさか自分が引かれるとは思っていなかったのか驚いた様な表情をしている。
――すまないな、俺が勝也の名前を書いたばかりに。でも俺は、あくまでも確率を上げただけで……勝也が当たったのはクジを引いた桜先生のせいだからな。
「なるほど、神戸の言ったことが分かった」
「まぁ、勝也なら代表としてもクラスを纏められるだろうし、適任だろ?」
流石ののの、察しが良い。
「では、クラス代表の新山さんと円城寺君は前に出て来て司会進行をお願いしますね! とりあえずは、種目決めからやってください」
「分かりました」
クラス代表の仕事がさっそく始まるらしく、二人は黒板の前へ移動した。通り際に、勝也から一言頂いたが……引かれたのが勝也の書いた紙じゃ無くて俺のだったし、勝也的に誰が書いたのか分からなかったら真っ先に俺を疑うのは妥当な判断だろうな。
「じゃあ、俺が板書するから新山さんは進行を頼む」
「分かりました。では、まずは男子百メートル走からですね。ええっと……参加人数は十二名なので、クラスリレーや組対抗リレーに出る人は控えて貰えると他の方が出られますので、そんな感じでお願いしますね?」
これはナイス進行だ。これで確実に一つは決まったみたいなモノだしな。後はどれかしらを取ればそれで終わりだ。
「……よし、今手を上げてる十二人はもうちょい上げといてくれ。もうすぐ書き終わるから。…………もういいぞ、新山さん次は女子で」
「はい、それでは……」
◇◇◇
二人の進行は順調で、種目もどんどん決まっていった。百メートル走、綱引き、騎馬戦、ムカデリレー、障害物競争、代表して走るリレーの二つも決まり、残るは借り物競争か二人三脚である。
二人三脚は男女でペアらしく……気恥ずかしいのか、男子は借り物競争の席を狙ってジャンケン大会をしていた。俺も参加したが、すぐに負けてしまって……その結果、一つしか種目を選んで無かった俺はまさかの二人三脚が決定付けられた。やりたく無かった競技の一つな分、テンションは低い。のののくらい低い。
「はぁ……ペアの人に申し訳ないな。呼吸を合わせるのとか難し過ぎるだろ……」
「神戸、どんまい」
のののは無事に、百メートル走と借り物競争の座を手に入れていた。本人は最低限決める事は決めたと言って読書に耽り始めてしまった。
「おーい、男で誰か二人三脚出ないか~? 青と……仕方ない俺も出るか、残り二人なんだが?」
「女子も四人……誰か参加してみない?クラスの中で同じ部活の相手を誘うとかさ?ダメ……かな?」
やっぱり、ペアになる相手が分からないから手も上げにくいのだろうな。俺も強制的じゃなければ手を上げないだろうし。
「はい! そういう事なら私と健太が出るわ! 同じ弓道部だしね」
「あー、まぁ……いいぞ」
「助かるぜ、健太。あと、一ペア無いかー?」
おぉ……同じ部活か。そういう類いならペアも作りやすいし、練習もし易いな。うん、誰か俺と同じ帰宅部とか居ないかな? 練習はし放題なんだけど。
「マノン、出てくれないかしら?」
「私っすか? なら相手は、あ……」
谷園か。アイツもたしかまだ帰宅部だったし、練習するのに支障は無いな。
「円城寺君ね! うん! 円城寺君とマノンでもう一ペアの完成ね! はい、決まり。円城寺君もいいかしら?」
「お、おう……谷園さんが良いなら俺は構わないが……とりあえず名前だけ書いておくな」
おぉ……残り一ペアにまでなったな! 正確には一ペアと俺の相方さん。ペアより俺の相方さんが見つからない可能性が高い。嫌な可能性だけど。
「あー、神戸君のパートナーが居ないわねー。しょ、しょうがないからー、私もー、二人三脚に出るしか無いわねー?」
紅亜さんは何を言い出しているのだろうか? いったい……何を言っているのだろう!! そんな事言い出したら……さっきの二の舞に……。
――その瞬間、紅亜さんの出場の宣言の瞬間。男子……俺と勝也と健太君を除く男子が揃って手を掲げた。上げるってモノじゃない……あの勢いは間違いなく掲げるだった。
「「「「俺が出ます!!」」」」
「はい、もう一度くじ引きですねぇ~」
桜先生、くじ引き好き過ぎないですか?
◇◇◇
「先生、俺が引いてもよろしいですか?」
紅亜さんのパートナーを賭けたくじ引き大会が再度開かれた。先生の許可を得て勝也が引くらしいが……ヤバい。さっき俺の書いた勝也の紙は引かれた。でも、勝也が自分で書いた紙を引いてしまったら……変な空気になる!
「いや、どうせ出ないならそれは別にいいか。それより自分のパートナーが誰になるかだな……ん?」
勝也がこっちを見て不敵な笑みを浮かべている? 手元はランダムに紙を引こうとしているが、既に何か掴んでないか?
確か、さっき俺の横を通る時に一言……『やられたらやり返す』って言ってた様な……まさか!?
「じゃあ、引くぜ! 男子、これはくじ引きだし恨みっこは無しだぞ? いいな!」
「「おう!」」
男子は祈りのポーズを取り、勝也が結果を発表する瞬間を心待ちしている。
「じゃあ、言うぜ! 栄えある新山さんのパートナーに選ばれたのは――――神戸青! お前だ!!」
「……嘘、だろ?」
奇しくも先程の勝也と同じ反応をしていた。した時に、勝也の言葉、勝也の笑みの意味も正しく理解していた。
――そう。勝也が俺と同じ事をしていたと。
そうすると疑問が出てくる。俺は面倒事を勝也に押し付け……任せる為に紙に勝也の名前を書いた。なら、勝也が俺の名前を書いた理由はなんだろうか? 俺と同じ理由だとは考えにくいし……。
「ほ、本当に!? 円城寺君、ちょっと紙! 紙を貸してください! ……本当だ! うわっ! うわぁ~! ……コ、コホン。では、あと一つのペアですね、どなたかお願いしますね」
――そのあと、紅亜さんの無言の圧力により、特に話した事も無い女子が一人の男子を誘ってペアとなり、種目決めの時間は終わった。
「はい、クラス代表の二人は今後も色々と顔を出して貰う話し合いがありますので、よろしくお願いしますね! ……っと、そうでした。このクラスからは一人、体育祭における保健係りを出さないといけないのを忘れてました……。出場種目の少ない人が都合良いのですが、誰かやりませんか?」
「先生」
意外な事に、手を上げたのは隣の席。紅亜さんではなく、のののだった。
「はい? どうしたんですか、巳良乃さん」
「神戸が出る種目が二つで……このクラスで一番少ない……です」
俺は最初、のののが何を言っているのか理解が追い付かなかった。だが、思考が追い付いた時に先手を打たれたのだと思い至った。
「教えてくれてありがとう巳良乃さん! では、神戸君お願いしますね。米良先生の補助ですので、特に大変な事は無いと思いますよ。……もう、授業時間も終わりそうですね。今日は連絡事項も無いですし、また来週元気に登校してくださいね! では、終わりとしますがチャイムがなるまでは帰らないように! 以上です」
おっと、待て待て待て……って、終わった!? 終わったの? 確かに俺の出場種目は少ないが、それは同率一位の筈だ。のののが何食わぬ顔をしているから先生も気にしてないが、のののも二種目の筈なのに!
「ののの、俺を売ったな?」
「適材適所。神戸、面倒見良い。私が保証する」
そんなドヤ顔されても……。はぁ……こういう時はプラスの方向で考えよう。米良先生の補助なら、パイプテントの下で待機してれば良いだけだと思うし。怪我人が居なければ仕事も無いし、日陰で休めると考えれば……案外、悪くも無いかもしれない。
「青~、よくもやってくれたな?」
そんな声を掛けてきたのは勝也で、それは俺が言いたいセリフでもある。
「何で、俺の名前を書いてたんだ? それだけが疑問なんだけど……」
「あぁ……まさか、青も同じ事をしてるとは思わなかったぜ? 青がクラス代表にでもなれば、ちゃんと楽しむかなって思っただけだ。ま、それ以上に面白い展開になって俺的には満足だけど!」
他の人からみたら面白いだろう。俺と紅亜さんのペアだなんて面白い以外の何でもないからな。
紅亜さんはリレーにも出てるし転んで怪我を負わせる訳にもいかない。陸上部だしな。安全第一の『勝ち負けなんて無視作戦』しか使えないだろうな……これは。
「そういう勝也は谷園とペアだろ? 息、合うのか?」
「練習すればある程度は走れるだろうさ。谷園さんのペースで走れれば転ぶ事も無いだろうし、普通は男側が調整して足並みを揃えるんだが……」
言いたい事は分かる。紅亜さんの足の速さは体感済みだから。
「神戸、足遅い」
「ののの、俺は遅くは無いぞ~、ただ速くないだけで」
でも、紅亜さんに合わせるのは無理だから何とか俺に合わせて頂かないと。チラッと紅亜さんの席を見てみると、紅亜さんもこっちを見ていた。
「頑張ろうね! 神戸君! ね!」
「お、おう。よろしくお願い……です」
よ、よし。チャイムもそろそろ鳴るし……今日はもう帰ってしまおう。うん、それがいいな。帰って休日を満喫するとしましょう。
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(^ω^)
つい先ほどまで、1話目からちょっと書き足したり、書き換えたりいろいろしてました。読みやすくするためです(12/8)
5話とかは少し足しましたね。