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第13話 パシャパシャパシャパシャ

お待たせしました。3000~3500字を目安に書いていますが少し長くなりました。


よろしくお願いします!

 


 今日は週末だ。今日さえ乗り切れば土日がやって来る。特に予定は無いけど、個人的には予定が無い方が良いことだと思っている。部活や遊びの予定がある人からすれば寂しい様に思えるかもしれないが、休みの日は家でゴロゴロが一番という人も少なくない筈だ。


 今日は寝坊することも無く普段通りに家を出発していた。いつも通りの歩くペースでいつも通りの道を通って、いつも通りに教室へと入った筈なのに……いつもより騒がしいのはまた何かあった証拠だろう。


 やはりと言うか……その騒がしさの中心に居るのは紅亜さんだった。



「おはよう勝也。おはようののの」

「おう、昨日は助かったぜ」

「神戸、今日は見せるものがある」



 いつもなら髪を整えて結ぶお願いをされるはずだが、ここにもいつも通りじゃない人が居たようだ。のののがカバンに手を入れて取り出したのは……。



「スマホ?」

「昨日買った。神戸教えて」



 そうか……というか、持ってなかったんだな。学校には持って来て無いだけかと思ってた。



「あれ?説明書って付いてあった……よね?」

「……難しかった」



 のののは頭が良い。けど、苦手な事が無いわけでは無いだろう……電子機器はそういう部類の事だったのかな?



「分かった。とりあえず音が出ない様に設定して、色々と他の設定もしていこう」


「そ……その前に。神戸の……連絡先」



 そう言ってのののがスマホごと渡してきた。俺ので良ければ登録させて貰おう。ののののスマホにアドレスと電話番号を入力して返してあげると、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。俺も初めて家族以外の連絡先を知った時は嬉しかったし、その反応もよく分かる。



「それで、ここをこうしたら色んなアプリがとれるからな?」

「なるほど、分かりやすい」



 のののにスマホの醍醐味というか、大事なアプリの取り方とか、カメラの使い方、とりあえず簡単な事だけを教えておいた。朝の時間じゃこれくらいが限界だし、それほど俺もスマホを使いこなしている訳では無いからな。



「おはようございます、青さん! ののさん!」

「おはよう谷園」

「……」



 谷園が挨拶をしても、のののはスマホに夢中な様だ。……何を見てるかは知らないが、画面に釘付けである。スマホに夢中ではなくても挨拶を返すかは怪しい所だが……。


 その姿を見ても、谷園は気を悪くした様子は無いのが救いだな。



「青さん、なんか紅亜に人だかりが出来てる様ですけど? ……何です?」


「まぁ、割といつもだと思うけど……たしかに朝からは珍しいかな?」



 谷園が聞いてきますと言って輪の中に入って行き、すぐに戻ってきた。



「なんか……紅亜が『ちょこライン』? とかいうアプリを始めたみたいでID? を聞くために集まってるみたいですよ! 電灯に集まるむ……」


「分かったからそれ以上は言わなくてよし! というか、『ちょこライン』は劣化版なんじゃないのかよ……」



 劣化版で使用人数が少ないのもメリットだと思っていたんだがなぁ。



「神戸、私もそのアプリ取った」



 のののが画面を見せてくる。すると、そこには設定の完了した『ちょこライン』の画面が表示されていた。のののも電話とか苦手そうだし、アプリを取るのは分かるけど……紅亜さんが取るのは分からないな。



「じゃあ、私も取りますよっ! 青さん、ののさん、交換しましょうよ!」


「……まぁ、別に良いぞ。俺も昨日始めたばかりでよく分かってないけど」


「……ナイス」



 俺達三人は『ちょこライン』のIDを交換して、谷園に勝也からこのアプリを聞いたことを伝えると勝也ともIDの交換をしに行った。


 朝のホームルームの時間となり、先生が教室に入って来た事で騒がしかった集まりも一時解散となったみたいだ。



「おはよう、神戸くん」

「……お、おはよう、新山さん。朝から人気者だね?」



 紅亜さんはいつも通りそうだけど、まだぎこちないな……俺の方は。



「えぇ、偶々『ちょこライン』というアプリを取ったんだけど、その話してたら集まってしまってね……。も、もちろん! まだ誰にも教えて無いわよ?」


「……えっ? じゃあ、何でアプリ取ったの?」



 誰かと繋がる為のアプリを取って、それなのに誰にも教えて無いという紅亜さん。実に不思議な事をするんだな、と思って質問したのだが……何故か顔を引きつっていた。そのタイミングで先生が話を始めた為に、俺達の挨拶も変な終わり方をしてしまった。



「先日言った通りに、今日の最後の時間は体育祭の種目を決めたりするので、皆さん考えておいてくださいね。クラスの代表……つまり、他のクラスとの連携や代表を集めての話し合いの時に、クラスの為に動いてくれる人を男女一名ずつ決めなくてはなりません。ですので、なりたいと思ってる人が居たら頑張ってくださいね。じゃあ、今から体育祭の種目が書かれたプリントを配りますね」



 回ってきたプリントには変更の場合有りとの注意書きがされているが、二年生が出場する種目だけがピックアップされていた。


 二年生が選ぶ種目は――。

 百メートル走、綱引き、騎馬戦、借り物競争、二人三脚、障害物競争、ムカデリレー、学年別クラス対抗リレー、組別対抗リレー



 と、なっている。最後の二つは足の速い代表選手だから気にしなくていいな。勝也の応援をするだけだ。俺が出れるのは他の七種目だが……出来るだけ個人競技に出るとするなら、百メートル走、借り物、障害物の三つしかない。チーム戦だが、特に練習の必要も無さそうな綱引きを入れても四つだ。


 百メートル走は出れる人数も多いし大丈夫だけど……他の種目は人数が少なめになっているみたいで、男女混合や男女別の競技もあ?。どれを勝ち取れるかの戦いだな。



「神戸、どれに出るの?」


「とりあえず百メートル走と他のどれかだな。のののは?」



 前にチラッと話したが、プリントを見る限りのののが希望していた玉入れは無いようだ。



「被らなければ、百メートル走と借り物か障害物。足が遅くても可能性がある」



 確かに……それに楽しそうでもあるしな。借り物競争は二年生だけの競技らしく、参加人数は少し多めになっていた。俺も第一候補の一つにしておこう。



「はい、静かに! ……とりあえず考えておいてくださいね。では、号令はいいですので、一時間目の準備に入ってください」



 そう言って教室を先生が出ていった瞬間、また話し声が各所から聞こえ始めた。運動部はここぞとばかりにやる気を見せている様で特に声も大きい。



「青~お前、クラス代表とかやんないの?」


「やる訳無いだろ? こういうのは運動部が……それこそ勝也が仕切った方が良いんだって!」



 クラスのリーダー的な存在になるなら勝也とか、他の運動部の奴等がお似合いだろう。



「でも、代表とかなると少しは評価も上がるだろ? 俺は競技で上手くやれば活躍できるし……」


「なら、尚更だろ? 活躍できる時に活躍しておくべきだぞ、勝也! 勉強の方はギリギリだろ?」



 赤点を取る程では無いが、普通な俺よりも点数でいえば下だからな。



「うっ……それを言われるとなぁ~」


「皆、種目の話はしてるが代表の話はしてないし……案外簡単になれるんじゃない?」



 運動部の奴等の聞こえてくる会話からは、借り物競争とかムカデ競争を一緒に……という、周りに俺が出るから分かるよな? みたいな雰囲気を撒き散らしながら話している。勝手にどうぞって気分だが、せめて百メートル走は残しておいて欲しいかな。



「青……お前、ちゃんと体育祭を楽しもうとしてるのか?」


「正直に言うと、授業がなくてラッキーくらいにしか思ってないな? 頑張らないって事は無いし、クラスの輪を乱すつもりも無いけど……何て言うかなぁ~ボチボチで良いって感じ?」


「分かる」



 のののと俺で二票だ。これで俺らの勝ちだと一瞬だけ思ったが、よく考えればクラスの三七人中の二票でしかなくて、圧倒的な敗北だった。



「巳良乃さんも青も、もっと楽しもうぜ! イベントだぞ? イベント! イベントと言えば何がある!?」


「――恋の芽生え、そして発展。ですね……勝也さん!」



 どこからか現れた谷園が、実に高校生的な解答をしている。恋の芽生えね。



「正解だ! 谷園さんは分かってる様だな」


「もちろんですよぉー! 体育祭で活躍すればモテモテですよ! モテモテ!」



 二人して何を馬鹿な事を。何がモテモテだよ。活躍出来ない時のリスク、足を引っ張るリスク……。モテモテになるには越えなければいけない物が多い。はぁ……やれやれ、これは本当にやれやれだ。



「勝也、今から足が速くなる方法とか……ないかな?」



 本当にモテモテになるのか、それの実験台になってあげようとしただけである。だから、のののと谷園……そんな目を向けないでくれないかな? ……というか、何で谷園(お前)まで!?



 ◇◇◇



 勝也からはとにかく走れとアドバイスを。谷園からはモテる汗の拭い方を。そしてのののと、近くに居て話を聞いていたのだろうか、紅亜さんからは少し冷めた視線を頂いた。


 授業も順調に消化していってやっと昼休みだ。授業中まで騒ぐ者は流石に居ないが、休み時間の度に種目選びについて話し合っていた。男子の話題に上がるのは、男女でペアを作る二人三脚の事だ。どうやら、紅亜さんが二人三脚を選ぶという話が出てから一つしか無い席を巡ってのやり取りが行われているらしい。



「はぁ……これだから男子は。オーラがギラギラしてて居心地悪いですっ!」



 と、谷園の意見もあるが女子も女子で勝也や他のイケメン運動部とペアを組みたいと話していた。ギラギラしたオーラが無いとしたら俺とのののと勝也が集まって話しているこの場所くらいだろう。



「そういう谷園は何に出るんだ?」


「私は別に足が速い訳でも無いですし~……何でも構わないスタンスですよ! 青さんみたいに面白いオーラの人を探したりしたいですねぇ~」


「楽しみ方は人それぞれだけどよ……いいのかそれで?」



「んんっ、マノン……ちょっといいかしら?」



 俺も勝也に続いて谷園にツッコミを入れようと思った矢先、紅亜さんの登場でタイミングを逃してしまった。



「どうしたんですか? 紅亜」


「あ……いや、その。私も皆が何に出るか興味があってね! その!

  会話に加えて貰おう……と?」



「神戸、カメラを内向き? にしたい」


「それは、こうやれば……」



 カシャ!

 ……と、音がなってののののスマホには眠そうなのののと何とも言えない表情をした俺の二人の姿が写っていた。



「誤作動」


「いや、今バッチリ狙ってたよね?」



 誤作動にしては、タイミングが良すぎたよな? 今のは。



「誤作動」


「親指をセットしていたよね?」



 俺がのののの後ろに回り込んですぐにシャッターが切られた訳だから……絶対にワザとだよね?



「誤作動。だけど記念に保存しておく」



 まぁ、別に怒ってる訳でも無いし構わないけど……なんかのののらしからぬ行動だった気がするな。



「写真で思い出した。青……お前の『ちょこライン』のプロフィール画像さ、未設定のままだろ? 俺とも写真撮ろうぜ!」


「勝也との写真をプロフィール画像に? 華が無くない?」


「なら、私と撮りますか~?」



 というか、俺のプロフィール画像に一人じゃ無いにしても自画像は少し恥ずかしいかな?



「品が無くない?……と言おうと思ったけど、流石に失礼だからやめておく」


「口から出たらアウトですよ!」



 ごもっともな事を言われたが……あれ? 紅亜さんがスマホを取り出した……?



 パシャパシャパシャパシャパシャパシャ……。


「ん? まさか、紅亜も誤作動ですか?」


「ご、ごめんなさいね? 皆を撮ろうと思ったんだけど連写機能になってたみたい」



 いや、俺は見ていた。他の人は見ていなかったのかも知れないが……異常に親指の動きが速かった。それに縦画面で……皆を撮る?

  カメラはこっちを……いや、まさか……ね。でも、俺の脳が何かを訴えかけている。



「どうせなら、紅亜も入って皆で撮りましょうよ!」


「い、良いのかしら?」


「俺と青だけよりは華があるな」



 紅亜さんがクラスメイトの一人に頼み、写真を撮った。これ……俺のプロフィール画像にするための写真じゃなかったっけ? 恥ずかしいからこの前撮った猫の画像にでもしておこうかな。



「あー、写真を送りたいけどいいツールは無いかしらー? そ、そう言えば皆、『ちょこライン』やってたわよねー?」


「ん? ……何か変ですよ紅亜。でも、『ちょこライン』なら私は皆さんとIDの交換を済ませてますよぉ……っと、そうだ! グループ作れるんでしたよね、作りませんか!?」



 確かにそんな機能も……でもあれってIDを互いに知っておかないといけないんじゃ無かったっけ?



「ナイスアシスト……じゃなくて、いい考えよ! マノン!」


「構わない」


「俺も大丈夫……だが?」



 分かってる。二人が心配してくれているのは分かってる。多分、俺が紅亜さんのIDを知れた事に舞い上がってチャットを送り付けないか心配しているのだろう。



「大丈夫だよ。心配いらないって! 来たら返事するスタンスで行くから」



 ホッとした表情の二人を見れたし、とりあえずは安心して貰えたのだろう。連絡が来たら返すスタンスなら迷惑と思われる事も無いだろうしな!



 ◇◇◇



 マノンのお陰で大きな一歩を踏み込めたと思う。巳良乃さんが青くんと二人で写真を撮るなんて事をした時は、少し焦って青くんを連写しちゃったけど、それはそれで良かった。これは大事に保存しておかないと!



「グループ名は何にしますか~?」



 グループ名……『私と青くんとその他』『私と青くんと愉快な仲間達』『私と青くん』……やっぱり三番目かしら? うん、三番目が一番しっくりくるわね!



「勝也とか谷園はこういうの得意だろ? 何か思い付かない?」


「そうだなぁ……共通点とかあればそれでいいんだが」


「私達の共通点ですかぁ~」



 共通点なら簡単にあるじゃない。“青くん”という共通点が。



「クラス」


「のののが言う通り、それしか思い付かないな。……新山さんは何かある?」



 新山さん……そうよね……。確かに私も何となく神戸くんと苗字で呼んでしまったから、きっと青くんも苗字で呼んでるのね。それもいつかは名前に変えていかなきゃよね。やっぱり、紅亜って呼んで欲しいもの。


 ……っと、今はグループ名だったわ。青くんに期待されてるならここは良い案を出さないと!



「シンプルに名前の一文字を使ったらいいんじゃないかしら? 少しおかしいとしても、被る事も無いだろうしね! 私達だけなら分かり易いでしょ?」


「なるほど……確かに難しく考えるよりは良いかもね! 流石だね」



 やっっっったぁ! ふふっ! 今ので好感度はどのくらい上がったのかしら!? でも、手応えはあるし、きっとだいぶ上がったに違いないわ!



「では、グループ名は『青紅マの勝』……何か変な感じですがこれで決まりですね!」



 マノンがやってくれて私達はグループを結成した。円城寺君は男の子だから別に良いけど、マノンと巳良乃さんには注意していかないとね。今日、帰ったら青くんにチャット送っちゃおうかな?



 ◇◇◇



 昼休みも何とか終わり、午後もユルく進んでこのままの調子で種目決めも終わるかと思われたが――。



「はい! 俺がクラス代表になります!!」

「いや! 俺がなる!!」

「お前ら俺に任せておけよ!!」

「俺が!」

「俺が!」



 クラスは今、荒れていた。正確に言えば、男子の中で争いの一歩手前の状態まで来ていた。先生がクラス代表を先に決めると言い出した時までは静かなモノだった。だが、女子のクラス代表に紅亜さんが立候補して、決まった途端に……始まった。



「皆さん静かに! そこまでやる気があって、先生は嬉しいですよ! ですが、クラス代表は男女一人ずつですから……男子はクジにでもしましょうか?」



 先生の一言で男子全員参加のくじ引きが行われる事になった。



何か、紅亜さんがヤベー奴になってる気もするけど純愛ですよね!(^ω^)


話が進むスピードをもう少しくらい上げようか悩んでたりします(´・ω・`)


誤字脱字がありましたら報告お願いします!

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2020/1/11~。新作ラブコメです! 『非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~』
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