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第127話 マノンちゃん先輩!



お待たせしました!

よろしくお願いします!(´ω`)



 


 学食は今日も混んでいる。

 でも、その中で券売機に並び、今まさに食券を買おうとしているひま後輩はすんなりと発見する事が出来た。きっと今日も素うどんを買うつもりなのだろう。

 列の最後尾に並ぶと、食券をオバチャンに渡して待機しているひま後輩に逆に発見された。奥の方の席を指でちょんちょんと指示をして、早くも出来上がった素うどんを受け取り歩いていった。


(手慣れっぷりが凄いな……最初は右も左も分からなかった筈なんだが……)


 ほぼ毎日来てると思われるひま後輩は、既に俺よりもスムーズに行動していた。

 水を取りに行くルートが最短で、しかも、誰の邪魔にもならず進んでいく。


(っと、俺の番か……さて、今日は何にしようかね)


 券売機にお金を入れ、十円玉が出る料理にしようと選ぼうとして……結局は日替り定食にしておいた。

 食券を渡して五分近く待機しているとオバチャンに呼ばれ、定食を渡された。今日はヘルシーな料理、豆腐ハンバーグ定食だった。

 俺もひま後輩同様に、水を取ってから移動した。ひま後輩が指差した、奥の方の席に。


「青先輩、こっちです」

「お待たせ」

「あれ? 谷園先輩はご一緒じゃ……?」

「マノン? 連れて来るって言ってたっけ?」

「いえ、そういう訳じゃないですけど……谷園先輩は来ると電話で仰られていたので」


 俺の知らない話だ……。喫茶店に行って、ひま後輩に電話を貸した時にそういう話になっていたのだろう。

 なら、マノンも家……もしくは教室で一声くらい掛けてくれれば良かったのに。そうすれば置いていかずに済んだだろう。


「普通に教室出て来ちゃったからなぁ~。そうだ、今日紅亜さんが髪型を変えて……」

「あ、来ましたよ?」

「ん?」


 話の途中だが振り返ると、食堂の入り口付近でキョロキョロと誰かを探してるっぽいマノンの姿があった。

 静かに手を上に伸ばすと、それに気付いたマノンがタタタッと移動してくる。走ってはいないが、そんな感じで。


「ちょっと青さん! 何で待っててくれないんですか!」

「いや、その答えはもう俺の中で出てるから。マノンが悪い」

「……いつの間にか教室から出てるし! まったくもう……! あ、隣失礼するですよ?」


 マノンの中では、どうしても俺が待っていなかったという流れにしたいみたいだ。やや強引にも自分のターンで話を終わらせると、隣に座り、コンビニの袋からサンドイッチを取り出した。


「思ったより明るいと言いますか……なんと言いますか……」

「まぁ、マノンだしな」

「私ですからね!」

「そう……ですか。でも、私は少し(かな)しいのですよ。青先輩」

「……すいません」


 何を哀しがっているのかは、幾つか候補があって絞りきれないが……幾つか心当たりがある時点でもう駄目なのだろう。

 先手で謝罪する。卑怯かもしれないが、これが一番穏便に済むと思った。

 マノンについて隠していた事をきっと言っているのだと思う。どう伝えて良いか分からなかったとか、流石に言えないとか……そういう事も含めて、全部含めて、やはりひま後輩に言ってなかったのが哀しくさせたのだと思う。


「もやもやがあります」

「すいません……」

「ちょっと嫉妬もしています」

「す、すいません……」

「マノンさんと仲良しなのはよろしいと思いますが……」

「ちゃんとひま後輩を信頼はしているという事は、信じてください……」


 表情や声色でチクチクと心に刺さるものがあるけど、今回は隠し事をしていた俺が悪い。味方ではあるけど、やはり仮の恋人。女の子が家に泊まっていると、言えなかった俺の弱さ。

 それすらもひま後輩なら受け止めてくれるだろうけど……引かれたらどうしようという気持ちが、心の片隅に残ってしまっていた。

 それを(いまし)めにするのなら、俺はもっとひま後輩に対して、自分の汚く醜く弱い部分を晒け出していかなければ……本当じゃないのかもしれない。


「ひま後輩。俺はひま後輩が思っているより……情けない奴なんだよ」

「知っていますが?」

「私も知ってますよ!」

「えっ……あぁ……そう……そうなんだ。なんか、すいません」


 周知の事実。何故か謝る俺。うどんを(すす)るひま後輩に、サンドイッチを齧るマノン。

 俺の情けない話は、するまでも無いという事らしい。これでも兄であり先輩だというのに、威厳というのが全く無いみたいだ。


「でも、青先輩は(にぶ)いですよね」

「いや、接続詞の使い方! 逆接の流れでしょ!?」

「そうですよ向日葵ちゃん。青さんは、鈍くて優柔不断なのに私を振る時はキッパリだったので、根はしっかり者ですよ」

「もう……ね。それを引っ張り出されちゃうとね? 好きにしてください……」


 俺も豆腐ハンバーグを一口大に切って食べる。味はよく分からなかった……。

 食べ終わってもまだ席を動かずに話していた。

 俺の今後について話しているみたいだが、会話には混ざれていない。まるで、親が子供の将来について話しているかの様に蚊帳の外だ。


「も、戻っても良い? 居たたまれないというか……」

「そうですわね。その方が都合も良いですわ」

「青さん、また教室で~」

「うぅ……全く止められない……でも、教室に戻るわ……」


 購買で、パックのジュースでも買ってから戻ろうかな。甘いやつね。甘いやつ。



 ◇◇◇



 青さんがフラフラと遠ざかっていく。少しからかい過ぎたかもしれないですね。

 でも、予定通りに向日葵ちゃんとお話する時間が確保できたので良しとしましょうか。


 私は知っているんです。向日葵ちゃんが兄さんを好きな事を。

 あちこちに手を出して許せません! でも、好きになる気持ちは理解できるのでむむむ……という感じです。


「向日葵ちゃん、向日葵ちゃん。本当に良いんですか?」

「えっと……何がですの?」


 ……だから聞いてみたと言うのに、この反応です。向日葵ちゃんもあまり青さんの事は言えませんね。(にぶ)です。にぶにぶです。

 話を聞いた時にはその手もあったか……と、先を越された感もありましたが、考えてみればです。それは、終わりにしか繋がらない道という事です。

 上手く事を運べば分かりません。でも、仮である以上……青さんは決して本気にしようとはしないでしょう。

 つまり、向日葵ちゃんが好きになれば成る程……(つら)くなる事にしかならない。


 向日葵ちゃんもそれは覚悟の上なのかもしれません。でも、私が隣に座っただけであからさまにオーラが変わってしまう様では、その覚悟も本気なのかは分かったもんじゃない。

 もしかしたら、いずれ来る終わりの日から目を逸らし始めているのかもしれない。

 分かります。分かります。向日葵ちゃんの気持ちは良く分かります。なんなら、向日葵ちゃんよりも私の方が分かっているまであります。

 ですから、ここは心を鬼にするつもりです。


「このままで、このままの関係(・・・・・・・)で、良いんですか?」

「……それは」

「向日葵ちゃんには静かに終わりがやってくる筈です。とても静かに。きっと『ありがとう。助かった』なんて言葉と共にです」

「…………っ」

「私はイタズラに焚き付けているという自覚があるので、ズバズバ言いますよ。なんせ、私はもうフラれてますからね。最強です」


 食堂の片隅でする様な話では無いかもしれないけど、向日葵ちゃんはスマホを持ってないらしいし、仕方ない。

 私はフラれたけど、告白はして良かったと思っている。

 告白しなかった未来があったとすれば、きっと私は……今でも光を求めて、暗闇の中を一人彷徨っていたと思う。少し大袈裟かもしれないけど、つまりは後悔していただろうという事。


「もちろん、最後にどんな選択をするかは向日葵ちゃん次第ですよ? ですが、自分の気持ちに(ふた)をするのは辛くありませんか?」

「…………」

「えぇ、怖いという気持ちは良く分かります」

「――――!?」

「敗者である私から言える事はですね、『青さんなら、きっと大丈夫』って事だけです」

「わ、私は……」


 沈黙していた向日葵ちゃんが、少しだけ何かを言い掛けて、また口を閉ざした。

 目は口ほどにホニャララと言いますが、私からすればオーラは全てを語っていると言えてしまう。向日葵ちゃんの機微は手に取るように分かっている。


「これはちょっと抜け駆けをしたと言いますか、ルールを破って告白してしまった私なりの贖罪(しょくざい)? 謝罪(しゃざい)? まぁ、誠意みたいなものです。他の二人もイタズラに焚き付けていきますから」

「谷園……先輩は、その……仮に青先輩が他の女性と付き合ったりして、お辛くは無いのですか?」


 私だって人間が出来ている訳じゃない。当然、嫌だなぁ~と思ったり、嫉妬したりすると思う。辛いかどうかで言えば、きっと辛い。

 でも……兄さんは私を妹として扱ってくれると約束してくれた。家族だと言ってくれた。だから少し考え方を変えてみた。

『兄さんが他の女性と付き合う』のでは無く『私を含めた青さんと付き合える人なら、まぁ許す』という感じに。


 私も兄さんに対して、線引きはしないといけない。

 私にも、いつかは良い人が見付かるかもしれない。

 兄さんが私を妹として扱わなくなる事があるかもしれない。


 でもそれは結局、先の話である。確定のしていない未来の話。

 ならば、今しかない。約束のある今を幸せに過ごすしか、私には選択できない。

 兄さんが誰かと付き合う事で訪れる変化は辛い。でも――。


「向日葵ちゃん。それでも私は、青さんを信じてます。形はどうあれ、私に幸せを教えてくれるって」

「……お強いのですね谷園先輩は。私は、自分の事ばかり考えていました。お恥ずかしい限りです」

「ううん。私も自分の事だらけだったから、あんまり偉そうな事は言えないんですけどね! いつの間にか、青さんが解決してくれていたんです」

「それは……分かる気がします」


 少しだけ、向日葵ちゃんの表情が柔らかくなった。オーラも落ち着いている。

 きっと、私の知らない向日葵ちゃんの事情を兄さんは知っているのでしょう。誰も近寄って無かった向日葵ちゃんに寄り添ってあげていたのも、その事情に関係あるのかもしれませんね。

 誰にでも優しいなんて聞けば、優柔不断の八方美人なんてイメージも湧きますが……意外にも兄さんは、優しくしたい人に優しいんですよね。


「同じ事を言うようですが、最後にどうするかは向日葵ちゃん次第です。選択したのなら、進むしかありませんから」

「はい。ありがとうございます谷園先輩」

「ノンノンですよ。私は……マノン! マノンちゃん先輩ですっ!」


 よし。後は、紅亜とののさん。時間を見付けて話しでもしておきますかね。



 ◇◇◇



誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)



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