第124話 一週間の終わり
お待たせしました!
よろしくお願いします!
長かった様にも思える、マノンお泊まり編も終わりですねぇ……
あっ、誤字脱字の報告、いつもありがとうございますm(__)m
なんだかんだで、二度寝は許されなかった。
碧に引っ張られる様にしてリビングに向かい、寝惚けたまま朝食タイムに入った。
こんがり焼かれたトーストに、イチゴジャムをざっくりと塗って齧る。牛乳を一口だけ飲んで、またトーストを齧る。
他のみんなも各々好きなジャムをトーストに付けて食べている……いつもと変わらない、神戸家の日曜朝の光景だ。
「青さん、イチゴジャム取ってください」
「おぅ……え? ブルーベリーとハーフ? なにそれズルいな。俺にもブルーベリー取ってくれ」
「マーガリンと砂糖、それをオーブンで焼くのが一番美味しいんだよ!」
「あらあら、朝から元気ねぇ」
トーストの味付けひとつでも会話が盛り上がる俺達の様子を、珈琲を飲みながらお母さんが見ていた。
なんかちょっと恥ずかしい気持ちになったのは、眠気から回復したからだろうか。
とりあえず照れ隠しに碧の砂糖トーストを一口貰うと、お返しと言わんばかりにイチゴとブルーベリーの二口分を食べられてしまった。
「砂糖トーストはおやつって感じじゃない?」
「美味しいから良いの! ジャムとそう変わんないでしょ」
「碧ちゃん、ブルーベリーが付いてますよ」
「ん……ありがとうマノン姉」
何気ない日常と化したこの光景も、今日でおしまいとなる。
お父さんが寡黙で通しているのも、その事が分かっているから寂しさを隠す為なのだろうと、何となく察する事ができる。
逆に碧はギリギリまで甘えるつもりなのだろうし、お母さんはどっしり落ち着いている。
何はともあれ、みんなマノンが帰っちゃう事にたいして一様に寂しさがあるのだろう。
また来るとは言え……いや、来させるつもりだが、マノンにも都合があるだろう。今後は、長期の泊まりだってそう簡単に出来るものじゃなくなると思う。
「マノン、牛乳を注いでくれない?」
「はい、良いですよ」
だから俺も、マノンが居る時間……朝食という短い時間をも楽しんでいこうと考えた。
その結果として、マノンをパシらせているのは、我ながら発想が貧困過ぎて情けないな。
「はい、どうそ青さん」
「ありがとう」
「パパさんも珈琲のお代わりどうですか?」
「う、うむ。いただこうかな」
俺とお父さんだけが少しぎこちない、そんな朝食の時間となった。
それぞれが食べ終わる頃に、その話題について話し始めたのはマノンだった。
「では、そろそろ準備をしないといけないので……先に部屋に戻りますね」
「碧も手伝うよ!」
マノンが持ち込んだ物は意外と多くない。主に学校の道具と洗濯物くらいだ。今から洗濯物を取り込んで鞄に詰めたりするのだろう。
その準備が整ってしまえば、本当に一週間のお泊まりも終わりになる。短かった様な長かった様な、最初はマノンに同情しろと言われて連れて来たが、今となってはそんな事どうでも良くて、ただ居て欲しいとさえ思う。
「マノン……忘れ物の一つくらい、してもいいんだぞ?」
だから思わず、そんな事を言ってしまった。
忘れ物があれば、家に来る大義名分が出来ると思って。
「全部持っていきますよ。忘れた物は手に入れられましたから。全部、持っていきます」
「そっか。準備できたら教えてくれ」
「はいっ」
マノンが忘れた物――家族という温かさ。
全部持っていくというなら、俺の考えは杞憂だったみたいだな。
今のやり取りを碧は不思議そうにみているが、何も言うつもりはなかった。碧は知らなくて良いことだからな。
リビングを出て行ったマノンと碧。俺は牛乳をチビチビと飲みながら、準備が整うまでテレビを観て過ごす事にした。
今日は一日、快晴になるらしい。
◇◇◇
「では、お世話になりました!」
「また、いつでも来て良いからね。建前とかじゃなくて、よ?」
「ウチはいつでも歓迎するから、また来なさい」
「ママさん、パパさん……ありがとうございます!」
玄関先で両親へ世話になった分の感謝と別れの挨拶をしている。
俺はマノンの荷物を運ぶ要員として、マノンの横に並んで立っていた。
準備が出来たというマノンの声を聞いてから外用の服に着替えて、小さな鞄に贈り物を忍ばせた。そして、マノンの重たい荷物を持って玄関へと運んで来たのだ。
「マノン姉ぇ……また来てね……絶対だよ?」
「はい、約束です」
「ホントにホントだよぉ……?」
「ホントにホントです! 碧ちゃん、指切りしましょうか」
表の理由として碧には「別れに時間が掛かる」や「またすぐに来るから」という理由で言い聞かせて、送る役目は俺一人にして貰った。
碧なら……気をつかって最初からついて来る気はなかったのかもしれないけど。
「青、ちゃんと送るのよ?」
「分かってる。行こう、マノン」
「はい。では、また来ますね」
「……違うだろマノン。家を出る時は?」
「――っ! そうですね。ママさん、パパさん、碧ちゃん……行ってきますっ!!」
最後はみんな笑顔で、別れじゃない別れの挨拶をした。
でも、家を出たマノンが少し泣いていたのは……秘密にしといてやろう。
――荷物を持つ俺の横に、マノンが並んで歩いていた。
照り付ける太陽の下、お喋りをしつつ少しだけ遠回りをして、施設へと向かっていた。
大通りを避けて歩いたのは、人通りを避ける為と、何となくまだ帰りたくない気持ちが俺にも……おそらくマノンにもあったからだ。あからさまに遠回りになる道に曲がっても、何も言わずについて来てくれたのがその証拠になるだろう。
それでも目的地に向かわないとと思いながら進んでいる。つまり、いつかは到着してしまうという事だ。
施設が見えた途端に、何とも言えない寂しさが湧いてきた。
「……着いちゃいましたね」
「そうだな」
「結局、最後まで持たせちゃいましたけど……重たくなかったです?」
「重いけど、これくらい大丈夫」
施設への入口まであと数十メートルという所で、箒を手にした一人の女性が出て来た。白髪混じりの髪で年配の方だとは思うのだが、背筋は曲がるどころか、若者並みに真っ直ぐ伸びていた。
白とクリーム色の市松模様をしたエプロンは、施設の人が着用する制服代わりだろうか? なんだか、とても安心する色合いの様に思えた。
「あっ、静江さんです」
「静江さん?」
「施設長の事ですよ……静江さーんっ!」
マノンの声に、施設長がこちらに気付いた。そして、箒を左手で持って、右手で小さく手を振った。
マノンが手を大きく振りながら走り出して、俺は軽くお辞儀で返した。
俺もマノンを追って、軽く駆け足になる。重みで肩が痛いが、あと少しだけだと自分に言い聞かせて走った。
「ただいま帰りましたっ」
「お帰りなさい、マノンちゃん。どうだったかしら?」
「とっても楽しかったです!」
「そう……良かったわね。マノンちゃん、そちらが……」
「青さんです!」
「初めまして、神戸青です」
そう紹介されて、簡単な自己紹介をしておいた。
静江さんにまじまじと見られてるが、その視線は決して嫌なものじゃなかった。優しい笑みがそう思わせるのかもしれない。
マノンの話では、宿泊に関しては反対された訳じゃないらしいし、怒られはしないと思うが……なんだか少し、身が引き締まる。
「そう……青さんね。ありがとう。マノンちゃんは迷惑じゃなかった?」
「はい。家族も別れを惜しむくらいですから」
「それは良かったわねマノンちゃん。そうだ……立ち話もなんですからどうぞ中へ。疲れたでしょう? お茶でも飲んで行ってください」
「あー……でも」
「お時間があるのでしたら、泊まっていた間のマノンちゃんの様子を教えてくださらない?」
「そういう事でしたら……はい。お邪魔させていただきます」
部屋に置いて片付けてくると言うマノンに荷物を渡し、俺は静江さんに連れられて、建物の中へと入って行った。
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