第119話 やっぱり餃子って美味いよね
お待たせしました!
よろしくお願いします!(´ω`)
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「お兄ちゃん、起きて! 起きるんでしょ!?」
「ぅ……はい? あー……あと五分……」
「もう十二時になるよ! なっちゃうよ!」
体を揺さぶられ、意識がハッキリとしていく。
碧は悪くない。決して悪くないのだが、どうしてこうも起こしてくれる人に対して「眠いのにほっといてくれよ……」と思ってしまうのだろう。
スッキリとは起きれないのだが、それでもノッソリと起きて、碧に大丈夫な姿を見せておいた。
ここでまた布団を被ってしまえば、二度寝は不可避……勝也との待ち合わせに遅れてしまうだろう。
寝ぼけ眼を擦りながら、俺はシャツとパンツを手に風呂場へと直行した。髪を直すのも目覚めるのもシャワーで一発で済ます魂胆だ。
「ふぁっ……あ~ぁ……眠い……」
脱衣して、残り一枚のパンツに指を掛けたタイミングで俺の耳が、近付いてくる足音を拾った。
タッタッタと鳴る足音は、碧かマノンだろう。……逆に脱ぐか。
まだ寝ぼけているのかもしれない。思考が鈍いから羞恥心も鈍いのか、今見られたからといって、何とも思わない気がする。
ある意味『無』の境地に立っているのかもしれない。
「あら、青? シャワーするの? なら洗濯は上がってからの方が良いかしらね」
「お母さん……」
「青……碧やマノンちゃんは思春期なんだから、そういうの気を付けなさいよね?」
「あぁ……はい……気を付けまス」
一気に目が覚めて、心が冷めた俺は、静かに浴室に入り……何事も無かったかの様に、シャワーを済ませた。
そこでようやく、思考も正常になってきた。うん、これは……逆にお母さんでセーフだったわな。
◇◇◇
――昼過ぎの駅前。
改札付近でまっていると、ジャージに身を包んだ勝也が駆け寄って来た。
「うーっす」
「うい。どこ行くよ」
「あれな、腹減ったな」
「そこら辺で食ってくか?」
「いや……電車で移動してからが良いな。時間的にどうせ混んでるし」
という勝也の考えで、俺達は先に電車で移動する事にした。
とは言え土曜日のお昼、人の混み具合もそこそこだ。前に行ったショッピングモールに行くのがもう疲れそうだな。
「バスケはどうよ」
「んまー、ぼちぼちだな。試合も近いけど、キャプテンが軽い怪我してるからなー。あの人がコートに居ないとどうしても士気が下がるし」
「クラスで言う俺的な存在か……」
「……。そうだな!」
「肯定されるとツラい!!」
改札を抜け、電車を少し待って、快速の電車へと乗り込む。
勝也の肩掛け鞄が少し大きいからか、オジサンが舌打ちしていた。
そのまま電車で揺られる事、四十分。ようやく俺達は息苦しい空間から、解放された。
「ふぅ……中々だったな」
「あぁ、こうも人が多いとな……」
鞄からスポーツドリンクを取り出して飲んだ勝也から、一口だけ貰い、ショッピングモールに向けて歩いて行く。
「勝也、飯は何がいいよ?」
「そだなー、ラーメンとか?」
「おー、良いかもな」
「やっぱ、運動の後はラーメンっしょ!」
そんな事を話していると、いつの間にかショッピングモールの前に。そして、入って一直線にフードコートへ向けて進んでいく。
迷わず進んで行く俺に、勝也が「よく分かるな」と声を掛けて来たが、それはまぁ……先週来たから場所はだいたい把握している。
「だいたいフードコートは一階か上の階だろ?」
シンプルに、そう誤魔化しておく。
わざわざ言う必要の無い事だし、上手く説明できるとも思えないし。
飲食街まで来た俺達は、迷わずラーメン屋を目指して行ったのだが、やはりまだ昼時の範疇……人が沢山居た。
「でも、結局は今の内に並んでおくのが一番早いんだよな」
「他の少ない所を探しがちだけど……どこも多いだろうしね」
意見が分かれる事もなく、俺達らラーメン屋の列に並んだ。
そのラーメン屋はいろんな種類の味があるみたいだが、俺は醤油ラーメンと餃子ってパターンが多い。勝也は特に決めてはなく、その日その時の食べたい物を食べるタイプだったはずだ。
――待つこと約三十分。
回転率は良いと思ったラーメン屋でも、店に入るだけでこんなに時間が掛かるなら、他の店はおそらくもっとだろう。
勝也と喋っていれば、それだけで退屈せずに時間を過ごせるからありがたい。
部活に勉強、他の事も含め、話題が尽きる事は無いんじゃないかと思うほど、話し出せば止まらなくなる。
勝也や……ブラックみたいに趣味が合うからそうなのだろう。他の男子生徒とは上手く話せる気すらしないからな。
「勝也は、何頼むか決めたか?」
「うーん。ヤサイマシマシ……」
「いや、ここはそういうお店じゃねーから!」
「つけ麺……は無いか。じゃあ、蕎麦にするか!」
「ラーメン屋で滅多な事を言うんじゃねーよ!? どういうボケをかまして来てんだっつーの!」
「冗談、冗談。普通に豚骨ラーメン……『骨』抜きで」
「うん。後で、駄菓子屋でも行こうか」
珍しくボケに回る勝也にツッコミを決めて、落ち着いた瞬間に店員さんを呼ぶ。
何を食べるか聞いてないが、店員さんが来たらさすがに注文するだろうし。
「はい、ご注文をお伺い致します」
「醤油ラーメンと餃子で」
「こちら、セットにしますとミニチャーハンが付きますが……」
「あ、いえ、大丈夫です……勝也は?」
「豚骨ラーメンとチャーハンで」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
店員さんが注文を繰り返す事なく、去っていく。
別に俺は気にはしないのだが、中には神経質な人も居ますから注意が必要ですよ……と新人のバッチを見ると、心の中で応援したくなってくる。
勝也がスマホを触りだして、何気なく俺もスマホを取り出す。
『メニューが決まらないです!』
『碧ちゃんと遊んでますよ!』
『アイスとか食べたいなぁー』
……みたいに、マノンから幾つかチャットが届いていた。
『忘れなかったら帰りに買っていくよ』
『抹茶味が良いです!』
(返信が速い!?)
送って十秒経ったか経ってないか……それぐらいのスピードで返信が届いた。
たまたまスマホに触れていたタイミングだったとも考えれるが、もう数回くらい試してみる事にした。
『何色が好き?』
『赤とか黄色とか、暖色系ですかね? あ、でもでも……お兄ちゃんカラーも好きですよ?』
『お昼は勝也とラーメンです』
『わっ! 良いですねぇ~。うっ……何故か鼻が痛く……』
(長めなのに……やはり速い!!)
まぁ、だから何なのだという話でもあるのだが。
それでもやはりチャットひとつを取って見ても、何かが変わり始めているのだと感じる。
しばらくマノンとのやり取りや、勝也と会話をしていると、注文していた料理を店員さんがゆったりとした動きで運んできた。
「お、お待たせしました。醤油ラーメンと餃子。豚骨ラーメンとチャーハンになります」
「どもです」
伝票を置いて、一仕事をやり遂げた感を出しているが、またすぐに次のお客に呼ばれている。
接客業は大変だと思いながら、後で写真を送ってやろうと一枚だけパシャリとスマホでラーメンと餃子を撮影しておいた。
「いただきます」
「いただきまーす」
勢いよくズズズと麺を啜る勝也に対して、俺は餃子のタレの作成に入る。猫舌だからすぐにがっついて食べれないという理由もあるが、餃子のタレの準備は、餃子を食すにあたっての楽しみのひとつと言えるものだ。
今回はいつもと違い、餃子用のタレもラー油も使わず『酢をメインに胡椒を少し』……それだけで食べてみようと思っている。
かなりあっさりというか、少し酸っぱい感じになるが……これが意外と意外となのだ。
醤油ラーメンとの相性は良いし、米も進むから……今更ながらミニチャーハンが付くセットにしておけばと、若干の後悔をしていた。
「タレ使わんの?」
「酢と胡椒だけってのも、意外と美味いんだよ。一つ食ってみ?」
「じゃ、遠慮なく……ッ! これ……疲れた体に合うわぁ~」
「そこでチャーハンをっ!!」
「お、おう! ハグハグハグ……んーっ、美味い!」
ご満足いただけたなら良かった。
一人でも餃子愛好家が増えれば、それはもう……とんでもなく良い事に違いない。
俺も、そろそろ食べていきますか……。
「ンムッ……あひゅい! はふい! うはひぃぃ」
猫舌は熱いのが苦手。でもやはり、出来立てを食べたいというジレンマ。
ラーメンは冷めたら麺も伸びているが、餃子は冷めても美味しい。つまり、餃子は最高という事だな。
普通に食べ進める勝也の横で、俺はゆっくりと餃子を味わう。
そんなこんなで食べ終わった俺達は、速やかに支払いを済ませ、ラーメン屋から出て行った。
「消化させるためにも、歩きますか」
「だな。雑貨屋の前にゲーセンでも行こうぜ?」
「オッケー」
今度はちゃんと、案内板を見に向かった。前回は行ってないからだけど……。
それから、勝也の提案したゲームコーナーへと行く為に、もう一つ上の階へと向かった。
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)
私の作品には、餃子がたまに登場するんですよね!
餃子万歳!




