第114話 雑貨店へ
お待たせしました!
よろしくお願いします!٩(๑'﹏')و
「――早く着替えて、各教室でホームルームに入る様に。以上」
「「ありがとうございました」」
六時間目が終わり、後は掃除と放課後になる。
ただ、この集団が一気に玄関へ向かうと……流石に詰まってしまうだろう。
(少し後から行くか……)
歩くペースを下げて、集団の最後尾付近にまで下がって来た。
喋りながら戻る生徒が大半の中で、一人颯爽と集団の隙間を縫って戻る生徒も居る。
知らない三年生や知らない一年生を見ると、やはり部活に入ってないと、どうしても縦の繋がりが薄くなるという事を今更ながら実感した。
かと言って、横の繋がりがある訳でもないが……。
「青先輩、探しましたわ」
「ん? どうした、ひま後輩よ」
「いえ、特に用事があるという事では無いのですが……今日は部活なので、と伝えておこうかと」
「あー、了解。じゃあ、先に行ってるから」
「えぇ、私も部活が終わったらすぐに行きますわ」
特に会話は無いが一緒に戻って、一年の教室がある階でひま後輩とは別れる。
別れてから思い出したが、のののとマノンに連れて行かれた件は大丈夫だったのだろうか。
何の話をしていたのかは分からないが、さっきの様子から察するに、特に問題は無かったのだろう。たぶん……。
着替えて掃除をしてホームルームを受けて、放課後。
すぐに喫茶店へ向かっても良かったのだが、俺は教室に残っていた。
理由は二つある。
まずは、マノンが作ってくれたお弁当を食べる為に。喫茶店で食べる事も考えたが、それは店の雰囲気を壊すだろうと止めておいた。
それともう一つは、スマホでちょっと調べものをする為に。
「青~、今メシにしてんのか?」
「おうよ。勝也……部活は良いのか?」
「実は今日休みでな! どっか行こうぜ?」
「まぁ……二時間くらいなら空きがあるぞ。とりあえず座ってくれ」
スマホを左手にお箸を右手に。
行儀は悪いかもしれないが、放課後のこの時間にそれを細かく言う人は居ない。
勝也を前の椅子に座らせても、そのスタイルは変わらない。
「で、何でこの時間に弁当? 昼は?」
「昼は昼で食ったけど、この弁当も食わないとな」
「ほーん? お……青が弁当食ってるから、谷園さんが見て――あっ、帰った……」
「そうか……。いや、勝也に聞きたい事があったんだわ」
俺がさっきからスマホで調べていたのは、女子に人気のペンについてだ。
良いボールペンなんかはそれなりの値段がするし、万年筆なんてマノンには必要無いだろうし……かといってコンビニとかで買えるペンは論外だ。
雑貨屋で買うつもりになっていたが、俺は自分のセンスに自信が無い。
勝也が来てくれた事は、一言で言うならラッキーだった。
「おっ、なんだ?」
「――詫びペンだ」
「詫び……えっ、何だって?」
「ペンだ、ペン! お詫びのペンだ」
「いや、意味が分からんぞ? お前はだいたい意味が分からんが……」
「失礼なっ! ペンを壊した事にしてしまったから、お詫びのペンが必要なんだって! 何が分かんないっていうんだ?」
「おう……全部だ」
全部が分からないという勝也に、仕方なくもう一度、丁寧に、同じ事を言ってあげた。
それでも分からないという勝也。読解力が足りてないのだろう……勝也は本をあまり読まないからな。
それにしても今日は、昨日や一昨日よりも弁当が美味しい気がする。特に卵焼きがドストライクの味である。
「まぁ、とりあえずペンが欲しいんだが……どこで買えば良いと思う?」
「女子に人気だろ? ペンよりさ……ペンケースの方が種類もあって良いんじゃね?」
「ペンケース! 盲点だった!」
「いや、そりゃ……ペンを買おうとしてたんだからなぁ」
たしかにペンを壊した事にしてしまったが、可愛さ的にもペンケースの方が良いかもしれない。
そもそもペンを壊してない訳だから、ペン以外でも構わないだろう。
「で、どこか良い店ある?」
「ちょいとお待ち……」
勝也がスマホを取り出して、ポチポチっと文字を打ち始めた。
まさかとは思うが、女子に店を聞いてるとかだろうか……頼りになるな。うん……頼りにね。
ムシャムシャとご飯を食べて待つ。
待つと言っても一分も経っていない内に、勝也が「返事来た」と口に出した。
やはり、女子に聞いていたらしい。
「結構遠いショッピングモールか……おっ、また来た。この辺にも雑貨屋はあるらしいぞ。他にも幾つか候補が来たな」
「なるほど。助かる勝也、後で送っておいてくれ」
「どうせなら近くの雑貨屋に今から行ってみようぜ?」
「良いのか? すぐ弁当食っちゃうから待ってて」
すぐに食べるとは言ってももちろん、味わって食べさせて貰う。
聞かれる事は無いのだろうが……味を聞かれた時にちゃんと答えておけるように。
「すまん勝也、お茶。金は出す」
「はいよ」
時計は四時前を指していた。
ひま後輩はだいたい六時過ぎくらいに喫茶店に来る筈だから、それまでには移動する事を考えて……全然遊ぶ時間はあるな。
遊ぶというか、俺の買い物に付き合って貰うだけなのだが、俺と勝也……ブラックも呼べば良かったかもしれないけど、集まればそれはもう遊んでいるという事になるのだ。
――四時十分。
弁当も食べ終わり、買って来てもらったお茶を飲みながら、勝也の言ってた雑貨屋の位置を調べた。
場所は我が家とは反対の方角、あまり足を運ばない方の地区にあった。
「そろそろ行くべ」
「おけおけ」
ゆっくりとしたのにも関わらず、クラスには不思議とまだ女子が残っていた。
あまり関わった事の無い女子だし、勝也も関わりは薄い筈なのだが……ちゃんと挨拶をする勝也。
人気の秘訣を垣間見た瞬間。俺がやろうものなら、無視されかねないし、相手も迷惑だろうから……しない。これが『うぃんうぃん』ってやつだな。
二人で学校を抜けて、雑貨屋へ向けて歩き出す。
場所自体はそう遠くはない。歩いて十分掛かるか掛からないかぐらいだろうか。
六月になってまだ数日、天気は良いのだが、雲の流れが速い様に思える。
もしかしたら、今週末辺りから天気が崩れ始めるかもしれない。
低気圧は体調を崩すというか、頭が重くなるから好きじゃない。ここからより暑くなると考えると憂鬱にもなる。
「勝也って、夏と冬なら夏が好きそうだよね」
「まぁ……そうだな。イベントも多いし、アイスも美味いし。青は?」
「どちらかと言えば、冬。イベント多いし、アイスも美味いし」
「アイスを被せんなよ……」
「アイスは年中美味いだろぉ!!」
「そうだけど、そうじゃねーんよ」
ぐだぐだとお喋りをしていれば、目的地まではあっという間だった。
到着してみれば、雑貨屋というのがすぐに分かった。雑貨店と言った方が正しいかもしれない。
店内に入ると、文具やアクセサリー、時計や貯金箱等々……中高生に受けそうな商品から大人も助かりそうな商品まで置いてあり、お客さんもそこそこ居た。
商品の割合的に、ここは多様な文具がメインの文具雑貨店みたいだった。
割りと近い場所にあったのにも関わらず、初めて来た店にテンションが上がっていく。
「おっ、練り消しだ……懐かしい~」
「このアクセサリー誰か持ってた気がするなぁ」
「ジグソーパズルだって! 部屋に飾ってたらなんかオシャレ感あるよな」
「青の部屋ってシンプルだもんなぁ……なんか小物でも買っていったら?」
雑貨店の商品の多さを、俺も勝也も端から見て回る勢いで堪能していた。
(……っと、アロマなんて見ている場合じゃないな。目的を忘れる所だった)
『森の香り』と書かれているアロマを棚に戻し、俺はペンケースが置いてある売り場へと移動した。
形や素材、デザインの違うペンケース。種類が多いのは良いことかもしれないが、それが逆に俺を悩ましていた。
可愛い動物がデザインとしてあるペンケースか、シンプルなデザインの方か。大きめのやつか小さめのやつか……。
選択肢が多いのは逆に、何も選べなくなる時がある。
「勝也、ちょっと」
「んー? どうした?」
パーティーグッズを見ていた勝也を呼んで、ペンケースについてアドバイスを貰おうとしていた。
だが、勝也の答えは「何でも良いんじゃない?」という、素っ気ないものだった。
「それ……晩飯を聞かれたとして、母親に言ったら怒られるやつだぞ?」
「たぶんだけど、何でも良いと思うぞ。ほんとに」
「じゃあ、この……絶対に違うと分かるデザインのやつでもか?」
「お前が相手に気持ちを込めてそれを選んだなら、な?」
「……それって結局、何でもは良くないって事じゃんよ」
俺は手に取った、サングラスのミニオジサンが等間隔でプリントされているペンケースをソッと戻した。
(時間……余裕はないか)
他の商品に気を取られ過ぎて、今から悩んでいたらひま後輩との方に間に合わなくなりそうだ。
思ったより最初に見て回っていた時間が長かったのか、いつの間にか夕暮れになっていた。
「勝也、今日中には決まりそうにねーわ」
「そか。明日の午後なら空いてるし、暇だし……付き合うぞ?」
「おっ、マジか! ……あー、でも予定がまだ分かんねーんよ。もし、空いてたら夜にでも連絡する」
「オッケー。じゃあ、店出るか」
「だな」
結局は何も買わずに店を出た。
だが、いろいろ見れただけでも良かったかもしれない。参考にはなったからな。
「じゃあ勝也、また」
「おう! またな」
勝也とは駅まで一緒に歩き、そこで別れた。
家に歩いていく勝也とは違って、俺は喫茶店の方に小走りで向かって行く。
そこまで長居は出来ないけど、とりあえずひま後輩と会わなければ、明日からの予定が立てられない。
それに……せめて日曜日は開けて欲しいと頼まないといけない。
俺はいつの間にか、たいして速くはないのだが普通に走っていた。
「すぅ……はぁぁ……」
ようやく到着した喫茶店の前で、息を整える。
そして、少しボサッとした髪を手で解かして準備をしてから、店の扉を開けて中に入っていった。
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