第113話 嫌いなタイプは?
お待たせしました!
次に何を書くかを記したメモ的なやつを誤って消去してしまった為に、やる気がごっそり削がれました……
そして、自分で何を書いてるのか分からなくなるパティーン(/。\)
でも書いたのでよろしくお願いします!
「私のタイプは……」
ひま後輩は、視線を左に座る紅亜さん、マノン、のののに向けて、次に米良先生、最後に俺に向ける。
のののの番が終わり、次は誰が米良先生の餌食になるのかと思っていたら「私が……」と小さくひま後輩が手を挙げた。
自分以外の人が話している時は、何故かオドオドと落ち着かない様子だったのに、今はいつも以上に目がパッチリとしていた。
気のせいかもしれないが、やけに好戦的というか、挑戦的な瞳をしている。
「向日葵ちゃんは、どんな人がタイプなのかしらぁ?」
「そうですね、青先輩……です」
――堂々と、そう宣言してみせた。
ひま後輩はこの場で、米良先生以外のメンバーに対して、交際している事の齟齬が生じない様に、ちゃんと演技を続けているのだろう。
(流石はひま後輩だ。一瞬、本気かと思ったわ……)
その点を忘れがちな俺と違って、ひま後輩はいつだって完璧だ。
ただ、ひま後輩らしからぬ積極性に驚いた。
いろんな計画を練っているらしいひま後輩。もしかすると、計画外のこの状況をも既に計算に入れているのかもしれないな。
「まぁ! まぁまぁ!!」
こっちは予想通りではあるが、そんな事を言ってしまえば米良先生が黙っていない。
先生も驚きだったのだろう……珍しく前のめりでひま後輩に質問を投げ掛けていた。
「それで、神戸君のどこが良いのぉ?」
「なんか、引っ掛かる言い方ですねぇ……」
思わず口から出た言葉は無視された。
視線が先生とひま後輩を行ったり来たり……間を取ってマノンを見てみると、そっぽを向かれた。
「青先輩の良いところですか……沢山ありますよ?」
「あらあらぁ~、可愛い後輩じゃない? ねぇ、神戸君?」
「そうですね。最高の後輩ですよ」
「ほ、褒めても何も出ませんわよっ」
ひま後輩のターンはこれで終わっても良さそうなのだが、米良先生はこの展開でもお構い無しに聞きたい事をひま後輩に聞いている。
「そんな神戸君に、どうアプローチをするつもりなのぉ~?」
「そうですね……後輩という立場も利用します。先輩は後輩に優しいものですからね」
「でも、学生時代の学年の違いって大きいって思うけどぉ?」
「えぇ、ですが青先輩は同学年の方と距離があるみたいですし……私の一人勝ちもあり得るかと」
「なるほどねぇ~、向日葵ちゃんが思ったより積極的で驚いたけどぉ、先生は好きよぉ?」
ひま後輩、米良先生を除く四人を置いてけぼりにして、会話が盛り上がる。
どうしようかと、のののに視線を向けるも、ジトッとした視線を返されるだけであった。
「そうねぇ……こればっかりは本人が居るんだし、聞いちゃおっか?」
「本人って……俺ですか?」
「とぼけた声を出しちゃ駄目よ~? せっかくこんなに可愛い後輩がいるんだからぁ……神戸君のタイプも教えてあげなきゃでしょ~?」
「なん――ッッ!?」
とてつもない視線を感じた。
背筋にゾゾゾと寒気が走るような視線。
肉食獣に狙われた草食動物が如く、俺はただ一歩後退った。
「青先輩? どうしました?」
「い、いや……何でもない」
「ほら、神戸君~? 好きな女の子のタイプ、言っちゃいなさ~い」
(ううん……。急にそんな事を言われてもな……)
もっと時間をくれたら考えられる。いや、考えられない今だからこそ、パッと浮かんだやつが本心だったりするかもしれない。
て今は、それ以上にひま後輩の演技に俺も乗っからないといけない状況でもある。
――どっちにするか、困って迷って視線が泳いだ。
紅亜さんだけでは無いが、特に紅亜さんからガン見されている気配を感じて、そっちだけは向けなかった。
(くそぅ……何個かタイプを挙げて、最後にひま後輩を褒めちぎるか)
「えっと……がんばり屋さんで」
「……ふ、ふーん(うんうん!)」
「お互いに気を使わないで良いとか」
「……へー(なるほどですね)」
「価値観が合うとか」
「……にゃー(やっぱり猫)」
あと何があるか……そう考え出した時点で終わりにした。考え出したら嘘臭くなるからだ。
後はひま後輩を褒めていけば良いのだが……バイトの事は言えないし、お金持ちじゃないの事も言えない。
外見を褒められるのはあんまり喜ばないひま後輩だ……内面を重点的に褒め称えた方が良いだろうな。
「ひま後輩はそれに加えて、器用だし、頭も良いし、他人を思いやれるし、謙虚だし、礼儀正しいし、唯一の後輩だし。何て言うか……いつもありがとう」
「……ん、んん!! あと百個くらいは褒めて欲しい所ですが、私はできる後輩ですので、勘弁してあげますわ」
ホッと肺に溜まっていた、重たい空気を吐き出す。
世の中はバランス。
ひま後輩を褒める事で、米良先生を満足させる事もできただろうし、他のみんなにも付き合っている演技がバレずに済んだだろう。
「私も学生の頃は、歳上に憧れたものよぉ」
「そうなのですね」
「えぇ、そんな向日葵ちゃんにアドバイスをするならぁ……そうね『その体をもっと魅せる』と良いわぁ」
「体……ですか」
「まぁ、思春期の今は男子の視線が気になるかもしれないけどぉ……好きな人にくらい、大胆でも良いと思うわよ~? ね、神戸君」
米良先生が俺に顔を向けて、悪い笑顔を見せてくる。
いったい男子高校生に何を聞いてるのか、これは職員会議ものだと思う。
だが、胸の話なら以前も体育館でしている。大きい小さいで争う時代は終わっていると。
「む……」
(――いや、これは……トラップか!?)
俺は出そうとした言葉を飲み込んで、ギリギリで気付いた。
米良先生は『胸』とは一言も言っていない。
ひま後輩はたしかに胸が大きい……だからこそのミスリード。
それに加えて、あの人をからかう様な悪い笑顔だ。先生も流石は大人の女性だ。こうやって日々男を手玉に取っているのだろう。
ひま後輩は別に胸だけが良いという事ではない。等身、手足の長さ、胸が目立つのは嘘じゃないが、全体的に見るとバランスの良さが分かる。
「ひま後輩は姿勢が良すぎるんだよね。もっと肩の力を抜いた方が、別の良さが見える……かも?」
「青先輩……!!」
「神戸君、面白くないわよぉ……?」
「いや、男子高校生に何を言わせようとしてるんですか……自重してください」
やはり策略を巡らせていた米良先生。
胸に関して、肯定的でも否定的でも何かコメントしようものならどうなっていたのやら……。
ひま後輩だけじゃなく、女子陣からは冷たい視線が注がれる事になっていただろう。
そもそも、単なるセクハラになる。とんだ罠を仕掛けてくれたと、少しため息が漏れた。
「神戸君に胸を見られたと思う子……はい、挙手して~」
米良先生のただならぬ一言に、一名を除く女子陣が躊躇う素振りも無く手を挙げた。
その、残りの一名も周りに合わせてか、ゆっくりと挙手してしまった。
決して開き直る訳ではないが、逆に聞きたい「見ない男子高校生が居るの?」と。
答えは、居ない……だ。
自己申告なら見ないという男子も居るかもしれないが、それは嘘だろう。一秒以上はしっかりと見ているに違いない。
ただ、訂正しておかねばならぬ事がひとつだけある。
それは自信満々に真っ先に手を挙げた、のののに関してだ。
ひま後輩、紅亜さん、ギリギリマノンはたしかに見てしまった自覚はある。心で謝ったが、無意識の内に視線が誘導されていた。
だが、ののののは見ていない。決して見ていない。
いつも胸に関して何かしら思うところがあるっぽいのののだ。きっと見ていても怒るし、見ていなくても怒るのだろう。
だからこそ、のののだけは訂正しておきたい。
どうせ怒られるのなら、見てない人より見た人からの方が当然という感じがあるからな。
「いやらしい」
「ののののは見てないぞ」
「一番見てた」
「いや、本当に」
「……これだから男は」
「嘘じゃないんだ、本当に」
――あ、ヤバい。のののが静かになってしまった。
ただでさえ嫌われている状態なのに、火に油を注いだ感じがある。
これは、ひま後輩の言っていた『フォローをします』の内に入るだろうか。いや、入らないだろう。
見てないものは見ていないのだが、言葉や言い方をもっと考えれば良かった。
のののも女子高生。少し他の人とは違うと思っていたらけど、気にする所は一緒みたいだ。
「…………」
「の、のののは……そう! 足! 細くて綺麗な足の方が目立ってたから! そっち見てたんだ」
「いやらしい」
のののをよいしょしたのは良いが、ののの以外からの視線に込められた温度がマイナスを突破した感じがある。
これでまた何かを訂正しようとすれば、どこかでまた綻びが生まれる。
どっちかを取ろうとすれば、どっちかを落とす。
この件に関しては落としどころは無く、俺がより嫌われるのは確定事項らしい。
こんな状況にしてくれた米良先生は、一連の流れをただ見守っていただけで、助けてはくれない。
荒らすだけ荒らして放置とは……もはや悪魔の所業。
小悪魔時代を越えた女性は悪魔になる……それは当然の結果かもしれない。
でも米良先生……ただの男子高校生には荷が重いです。そろそろ助けてくれないと、胃に穴が開きそうです……。
「神戸君、胸フェチで足フェチだったなんて……欲張りさんねぇ?」
「いや、先生!? それ、一番駄目な纏め方じゃないですかっ!」
「そうかしらぁ……あら、残念だけどもうそろそろ時間になるわね。先生、楽しかったわぁ~」
「もう、懲り懲りですよ……」
なんか、精神的な疲労が溜まった。
先生だけが満足そうにしている。女子陣はどう思っているのか分からないが、ひま後輩はようやく解放される事に、安堵している様子だった。
「えっ、私の番……」
「ごめんねぇ、紅亜ちゃん……でも、紅亜ちゃんはモテるし大丈夫よね?」
「いや、私もその……」
「それはまた別で聞いてあげるわよぉ~」
「あ、はい……」
肩を落としている紅亜さんに掛ける言葉は見付からない。
紅亜さんの好きな人のタイプを聞いてみたい気もするけど、聞くのが怖い気持ちも少しはあった。
「少し話」
「えっ、私にですの?」
「そうそう、向日葵ちゃん。私ともお話しましょう?」
「あっ、谷園先輩までですか……? いえ、さっきのはその……」
ひま後輩がのののとマノンに連れられて、離れて行く。
米良先生も終わりが見えたとかで、椅子の片付けを俺に命じて、保健室へと帰って行った。
その場に残ったと言うよりは、取り残されたと表現した方が正しい俺と紅亜さんががただ立っていた。
どちらも話し掛けるはせず。かといって距離を変える訳でもなく。
その沈黙に堪えきれなくなったのか、先に言葉を発したのは紅亜さんだった。
「神戸君は、女子に関して嫌いなところってありますか?」
「好きじゃなく……嫌いですか?」
「えぇ。向日葵さんとお付き合いされたのですものね。なら、可能な限り『嫌な女子』になろうかと。『これは嫌』というものがあれば……すぐに始められる『外見的』な方がありがたいですけど」
嫌……嫌か。
ガサツで乱暴な人とは合わないと思う。
ギャル系も話す事が無さすぎて困るだろう。
でも、それは内面的なもので、紅亜さんが変えようと思って変えるとすれば、相当に面倒だろう。
だから外見的にすぐ変えられるのを要求してきたのか……。
俺が嫌だと言えば、そういう格好にしてくれるらしい。そこまで嫌う努力をされるのは、やはり悲しいものがある。
(俺が嫌いと言えば……か)
例えば俺が、眼鏡女子は嫌いと言ったら。
例えば俺が、髪を二つ結びにしてる女子が嫌いと言ったら。
……もしかして、という可能性に賭けてみても良いかもしれない。
明日からは休みだ。そうすれば紅亜さんだって、こんな会話は忘れてしまうだろう。
なら、言うだけ言ってみた方がまだ面白くなりそうだ。
「眼鏡で、横顔が見える様に髪を二つ結びとかで纏めた子が嫌いです。大が付くほど」
「そ。覚えておくね。じゃ……」
そう伝えると、紅亜さんはあっさりと言葉を返して、そのまま去っていった。
一人になった所で、散らかったパイプ椅子の片付け作業をしていると、長く感じた六時間目が終わるチャイムの音が、ようやく鳴り響いた。
まだ土曜日と日曜日が残っているが、今週も終わったという気分が湧いてくる。
だが、まだ終わっていない。
明後日の日曜日は、マノンが我が家から養護施設へと帰る日だ。
一週間は長いと思っていたが、あと二日と思うと短かったとさえ思えるから不思議だ。
「ペン……それ以外にも用意した方が良いかね」
俺はそう呟いて、根元先生が集合を掛けた場所へと小走りで移動を始めた。
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)
宇野宮さんはアルファポリスで10話を公開したので、あと3日でなろうの方に追い付き、4日経てば最新話を投稿する予定ですよ!




