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第1話 終わって始まって

また、見切り発車ですが…

よろしくお願いします!


※すいません初っぱなルビ間違ってました…。

紅亜はくれ"あ"です。"は"ってのは誤字でした(((^_^;)


※のののとの会話で1ヶ月という部分を1週間に変更しました。出会いが4月なのに1ヶ月というのはおかしかったので

 


「ばかぁ! あほぉ! ロリコン!! 浮気者ー! (あお)君なんて知らない! もう、別れるんだからぁぁぁ、うわぁぁぁん……」


紅亜(くれあ)さん!? ご、誤解だよ! ちょっ……速っ!?」


 俺は今、中学の頃から少しずつアピールをして、努力を重ねて頑張って……ようやく付き合えた彼女にフラれてしまったようだ。


  彼女は可愛い。これは"元"彼氏……だったからの補正ではなく学校でも話題になるくらいに可愛い。茶色の綺麗な髪にぱっちりした瞳、笑った時に出来る笑窪が……。


 んん。と、とにかくそんな可愛い彼女と付き合えた事すら奇跡なのに一ヶ月も経たない内に俺はフラれてしまったのだ。


「お兄ちゃん……もしかしないでもヤバめ?」

「あぁ、今、お兄ちゃんはフラれたのかもしれない……。でも、フラれて無いかもしれないから、ちょっと電話で誤解を解いてみるよ」


 俺は慌ててスマホを取り出して電話を掛けようとするが、焦りが突出し過ぎて少しだけ手間取った。


『お掛けになった電話番号は……』

「仕事が速くない!?」


 彼女は容姿だけでは無く、勉強も運動も人気も高レベルだ。それも、ちゃんと努力をして得ているから凄いと思ったし惚れた箇所の一つでもある。やる事はちゃんとやる子だったのが今回は俺にとって裏目に出ていた……。


(みどり)~どうしよう……お兄ちゃん、今世紀の運を使い果たしたと思ってたのに……それが無くなっちゃったよ。ハ、ハハ……」

「お兄ちゃん、碧が腕組んでたからだよね……ごめんよぉ。帰りにお兄ちゃんの好きなジュースを一本買ってあげるから……元気だして」


 いや、碧は悪くないよ……。というか……。


「安っ!? 碧、お兄ちゃんの今世紀の運をなんだと思ってるのかなぁ!? どうすんの? お兄ちゃん、可愛い彼女にフラれたんだよ!?」


 ジュース一本で何とかなると思われてるのか……。


「それは、お兄ちゃんが妹と腕なんか組んでるし……そもそもお兄ちゃんが足遅いのが悪いんじゃないの?」


 くっ……。確かに俺は足が遅い。いや、そこまで遅くはないと思うのだが、確かに運動部でも無いし、まして文化部ですら無い帰宅部だ。対して紅亜さんは運動部。速かったなぁ。というか、腕を組んできたのは碧なんだけどなぁ~もう、それはいいか……。



「お兄ちゃん……高校行きたく無いんだけどさ、引きこもってもいいかな?」


「お父さんとお母さんが悲しむ事は無しの方向だよ。まぁ、元気だしなよ! 紅亜さん? って人が全てじゃないよ、お兄ちゃん!」


 まぁ、そうか。学費を出してもらってるのに不登校はマズイか。やっぱり……。


「いや、でも、割と学校に行くモチベーションの全てだった様に思う……」


「ほ、他にも素敵な人も居るって! なんなら碧の友達を紹介してあげようか?」


 紅亜さんより素敵な人……居るならぜひ見てみたいが。


「え? マジ? 紹介して……って! 碧の友達なら小学六年生だろ!? お兄ちゃん、ロリコンのレッテルを貼られちゃうよ!」


 というか、そんな小学生の碧とカップルに思われたんだよな、俺。あっ……なんかそれも悲しい。


「まぁ、明日からの事は明日考えるとして、早く帰ろうよ」

「そう……だな。うん、とりあえずもう帰ろうか」


 その晩、我が家の食卓でお父さんとお母さんに滅茶苦茶いじり倒された。そうだよね、もう笑いに変えるしかないよね……ははっ。はぁ……。


 自分の部屋に戻った俺は、もう一度だけ紅亜さんに電話を掛けてみる事にした。着拒が一時の物だと信じて。


 俺は基本的にメール派であり、紅亜さんは電話とかチャット派で……俺も電話したいという気持ちがあったし、番号だけは交換していた。逆に言うと、電話番号しか交換していなかった。


 少しの手の震えを押さえ込み、数少ない電話帳から紅亜さんの所をタップし、通話ボタンを押す。


『このお電話はお客様の都合上、お繋ぎする事が出来なくなっております』


「そう……か」


 機械の声、これは機械の淡々とした音声だと分かっているのに、俺には紅亜さんの今の気持ちが籠った……そんな声に聞こえた。



 ◇◇◇



 翌日、俺は憂鬱な気分を引きずりながらも通っている学校……文武両道よりは少し文に力を入れている私立の学校へと登校していた。


 この学校の良い所は規則が緩い所と文武のどちらでも構わないが、成績の優秀な者が学校への要望を出すと通りやすいって事があるのだ。


 例えば、学年一成績が良い者が学食のパスタの種類を増やして欲しいと言えば、次の日には増えていたりする。要望が無茶苦茶なモノでない限りは叶えられる為、頑張る者が多く、結果、学校の質は高くなっていたりする。


「はぁ、俺も成績がトップになれば紅亜さんとヨリを戻せるのかね……流石に無理か。何が無理って俺の成績がオール三な事だよな。ははっ」


 あれ、何だろ……? 紅亜さんと付き合っているという噂が広まってから、俺への視線も確かに多くなったが、いつもより多い様な気が……。


「青!」


 後ろから声が聞こえて、振り返ってみれば……少し駆け足で近寄って来る男子生徒の姿があった。


「ん? あぁ……勝也(かつや)。おはよう」


「そんな暢気な事言ってる場合かっつーの! お前と新山さんが別れたって噂が広まってるぞ!?」


 勝也……円城寺勝也という男はイケメンだ。それに優しい。新山さんと付き合って少ない友達がさらに減った俺とまだ友達でいてくれる良い奴だ。友達も多いから情報もすぐに入ってくるのだろう。


「あぁ……その事。まぁ、俺のテンションで察して欲しいというか……もう、ね。てか、何で広まってんの?」


「先に学校に来てる奴からチャットが届いたんだよ! 新山さんが元気無くて、女子が理由を聞いたら……って感じで。たぶん、かなり拡散してると思う……話題性があるからな。原因は何だ? お前とは去年からの友達だし、空回りアピールしまくってるのも知ってる……何かあったのか?」


 去年、入学して同じクラスになってから少しずつ話すようになり、友人と断言していい関係は築けている。ん……チャット?


「拡散されてるのか、どうりで視線が多いと思ったよ……ん? 空回り? いや、ははっ! 空回ってた……俺が!?」


「いや、そこはもう気にしなくていいだろ!?」


 いや、すんなりと無視できるような発言じゃないんだけど? でも、今はあえて流すか……。


「そ、それもそうだな。原因か。原因というか……ほら、俺の家って家族の仲が滅茶苦茶良いだろ?」


「まぁ、前に遊びに行った時も仲の良さは感じたな」


 勝也は部活もあるため、数回しか来ていないが俺の家で遊んだ事もあった。


「そう。で、昨日もこの件を笑われまくった程に仲の良い家族なんだけど、たまたま妹と買い物に出ている時に紅亜さんと会ってさ……たまたま冗談で妹が俺の腕に掴まってるタイミングだったんだよな」


「おぉ……う。それで疑われたと? でも、すぐに誤解は解けるんじゃないか?」


 俺もそう思う……なんならまだ会わせた事の無かった妹をそこで紹介しても良かった。良かったんだけど……。


「ざっくり説明すると、走り去った。俺足遅い。着拒。今ここって訳だ。オーケー?」


「あぁ、かなり悲惨というか無惨というか……なんだ? 展開が早くてピンと来ねーな? でも……とりあえずジュースでも奢るよ」


 あの後、情けないかも知れないが、何度も何度も電話を掛けてみたのだが……聞こえて来るのはやはり機械音声のみだった。


ジュースは貰ってる(それはもういい)!!」


 俺と勝也は教室へと向かった。そう、紅亜さんが既に登校しているらしい二年二組の教室へ。



 ◇◇◇



 教室へ入ろうとした所でクラスの女子三人に呼び止められた。


「神戸、忠告って訳じゃないけど……今日は新山さんに近寄らないでくれない?」

「あんた……ヤバイよ? 新山さんを悲しませるとかマジ無いし」

「クラスで気まずいのとかやめて欲しいしさ? 分かるでしょ?」


 なるほど。本当に話は広まっていて……こんな事になるのか。


「まぁ、待とうぜ? 青にも言いたい事の一つや二つくらいあるだろ?」

「円城寺君……違うのよ。せめて今日、出来れば可能な限りは……って話なの。女子も一部の男子も新山さんを守らなきゃって雰囲気にもなりつつあって、火に油を注いで欲しくないのよ」


 それで忠告か……。クラスの事を考えると、言われた通りにしておくのが賢明なのかな。


「そういう事か。青、どうすんだ?」

「クラスの雰囲気を悪くしたいとは思わないし……せっかく忠告して貰ったからね。とりあえず様子見で。教室に入ろうか……」

 

 一歩入ると、視線が集まった。視線の種類が幾つかありそうだ。興味本位な視線、近寄るなという視線。紅亜さんは……こっちを見てもくれないか。忠告通り、この視線の中で話しかけたり出来る空気じゃ……ないな。


 何より、あの機械音声がまだ脳裏にこびりついている。声を掛けたい……でも、あの声、教室の視線、忠告。色々な物が俺から踏み出す勇気を奪っていく。


「まぁ、なんだ? 新しい恋でも探せ……とか、物事には必ず理由があるんだ、新山さんについてよく考えてみろ……って感じの、両極端だが、ありがちな事しか俺からは言えないかな? とりあえず隣の席の子が待ってるぞ。また後でな」


「おう……十分だ。ありがとう勝也」


 勝也と離れて自分の席に向かう。俺の隣の席には少し変わった子が陣取っている……そう、陣取っているのだ。席替えというクラスでも人気を誇るイベントがあるのだが、変わるのは俺の隣以外だ。隣だけは指定席になっていた。


「おはよう」

「やっと来た、神戸(かんべ)。髪やって」


 髪やって。その単語が朝の日課になりつつある行為の始まりを示す言葉。今の俺にはこうしたいつもと変わらない“何か”の方が気が休まるな。


「はいはい。今日は如何様(いかよう)になさいますか? ののの様」

「神戸の好きにしていい」


 本人は楽かも知れないが、こっちは晩御飯に悩む主婦の様な気持ちになる。


「じゃあ、今日はポニーテールにしておこうか」

「うん」


 この、俺しか呼んで無いが……あだ名が『ののの』の女の子。本名、巳良乃(みらの)のの。俺の隣の席を指定席にする為に二年生に上がってすぐのテストで一度だけ、学年一の成績を修めた女の子だ。隠れ才女。隠してるのはそのやる気もだけど。


 何故、俺の隣の席を確保したかというと……。


「神戸、最初の授業何?」


「神戸、お菓子食べたい」


「巳良乃さん、おはよう」

「……」


「神戸、今日は良い天気」


 この通り、コミュニケーション能力が少しアレな上に表情も残念ながら豊かではない。だが、慣れたら凄く話してくれるし、たまには笑うのだ。


 学年が二年に上がって俺がこのクラスになった時に……その時は偶然だけど、隣の席にのののが居たのだ。


 最初は何を考えてるのかよく分からなかったが、授業でペアを組んだり、頭が良いのにやる気が無くズボラな性格だったり…そのお世話というか面倒をみていたらいつの間にか懐かれていた。


 学年が上がってからすぐのテストで学年の一番という結果を出し、先生へ要望を出す事で俺の隣を指定席にして今に至るという訳だ。


「神戸、噂」


「……のののもこのクラスだし流石に聞こえてたか」


 ほぼ単語のみを発するのののに最近は慣れてきて、隠れてる言葉を補完できる様になってきた。


「うん」


「まぁ、そのフラれたと言いますか……誤解なんだけど聞いてもらえなかったというか、電話も繋がらなかったというか」


 俺はのののに聞こえる程度の声で会話を進めた。


「大事なのはそこじゃない」


 そこじゃない? どういう事だ?


「え? 大事な部分?」

「そう。神戸、この一週間私の面倒あまり見なかった。付き合ってる時も最初の方は……」


 それは仕方が無い事だと割り切って欲しいかなぁ。優先する順番はどうしてもあるわけだし。


「まぁ、それは……しょうがないだろ? そんなに膨れなくても。ご、ごめんよ……ののの」

「神戸居なかったら私の髪はボサボサのまま。神戸、別れた。また私のお世話出来る……これ大事」


 大事なとこってそこ!? なんか、フラれた理由を教えてくれるとか、これからの行動についての指針を教えてくれるって事じゃないのか!?



「こら~、ののの~!」


「いひゃい、ひっはうのひんし」



 のののと話してる内に先生がやって来たので、仕方なく頬を引っ張ってる手を放して席に着いた。


 のののにそんなつもりは無かったのかも知れないが、空元気に近い何かを出させてくれる程度には、俺の沈んでた心は浮き上がっていた。


 普通男子こと神戸青と、学校を代表する美少女こと新山紅亜が別れたという噂は既に学校中に広がっており、男子は歓喜し、女子は原因とそもそも付き合った理由の憶測で盛り上がっていた。


 俺は周りの反応に興味は無いし、紅亜さんもそうだろう。だから、興味本位で近付いてくるクラスメイトには何も言わなかったし、何も聞かなかった。




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転移物のハイファンタジーですよ!息抜きです(´ω`) どうぞ、よろしくです! 『アイテムチートな錬金術師』

2020/1/11~。新作ラブコメです! 『非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~』
― 新着の感想 ―
[良い点] 文の構成が良く読みやすいですね あと、キャラの個性も出ているのでは無いかと思います [気になる点] 特に無し [一言] これからも頑張って下さい!
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