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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
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秋の章 「昼休み」

「1人いないけどとりあえずみんなご苦労様。無事予選突破だ」

女子陣が作ってきた全員分のお弁当に加え、

俺と花さんのお手製唐揚げもみんなに好評だった。特に雪平は

「俺急に参加したから昼抜き覚悟だったんで助かりました!この海苔巻き美味しいな。あと卵焼きも甘めで好きだ。ウインナーも赤いヤツで俺の好みだ」

と、ちょっとキャラ崩壊気味で興奮し喜んでいた。

弁当を食べ終え乃蒼の一口チーズケーキを食べながらリレー決勝の作戦会議を始める。

「タケルを失ったのは想定外だったけど、雪平が来てくれて本当に助かった。お前がいなけりゃ俺らはここで終わってた。それにアンカーとしてのお前の走りは満点だ。座って見てたのに俺は思わず興奮して立っちゃったよ」

五天から最大級の賛辞をもらった雪平は

「いえ、与えられた責任を果たしただけですから」

と急にキリっとしだした。

「お前らのタイム計ってたけど全員自己ベスト更新してたぞ。リレーは200だから純粋に100のタイムにはならないけどな。桜、お前は18秒33。乃蒼は18秒75だった」

わあ、と桜さんが両手を挙げて喜んだ。乃蒼はそんな桜さんに負けて悔しそうに、だけどどこか嬉しそうな顔をしていた。

「雪平、お前は12秒88。陸上部からオファーくるタイムだな笑」

速っ!確かに鬼っ早だったけどそんなに速かったのかこいつは。

「もしかして雪平くんも昨日鶏肉食べた?朝、牛乳飲んだ?」

乃蒼が真面目な顔してそう聞くと

「昨日はすき焼きだ。近江牛だ。朝はフレンチトーストとオレンジジュースだ」

と雪平も真面目な顔で答える。

「ねぇ野島さん、結局そのメニューって何だったんですか?」

野島さんと羽生さんは2人して苦笑いしていた。

「何でもないよ」

はぁ?何でもないのかよ!

「なんか意味ありげっぽかっただろ?それでいいの。プラシーボ。人って結構単純だから意味ありげなふうにしとくとプラスに効果が働いて良い結果が生まれやすいんだよ。お前らは何だかんだで単純だからな笑。もし最初から雪平がいたら多分雪平にはあのメール送ってないだろな笑」

薄々気づいてはいたけど…。あ、乃蒼が凄いしょげている。

「私てっきり鶏肉と牛乳効果かと思ってたのに…」

「いや、乃蒼。だからこのタイムは鶏肉のおかげでも牛乳のおかげでもないんだよ。お前の実力」

私の?と乃蒼は野島さんの言葉を噛みしめている。うん。確かに単純だ。

「ネタバレしちゃったけどもういらねぇよな?お前らはやれば出来る子だ。予選でデータは全部取れたし、あとはやれるだけの事をしよう」

やれば出来る子。うん、確かに俺らはやれば何でも出来る。1人じゃできないこともあるけど、先輩たちがいたら何とかなりそうな気になる。

「それで、勝てそうなんですか?」

と彩綾は野島さんに聞いたのだが

「う〜ん、データ通りいくとしたら俺らは2位だ」

と芳しくない答えが帰って来た。

2位…。いや、それは凄いことなんだけどやっぱり勝ちたい。俺がもっと早く走れば何とかなるだろうか?

「ごめんね、私がもっと早ければ」

「私も、この中で一番遅いのは私だから、ごめんなさい」

そんなことねぇよ、と羽生さんが2人を慰めた。

「そ。そんなのみんなに言えることだ。2人だけのせいじゃない」

「ちなみにタカの予想では何組が優勝なの?」

と阿子さんが尋ねると不思議な答えが帰って来た。

「優勝は俺らだ」

は?なに言ってんの?だってさっきは2位って言ったじゃん。

「データ通りならな。けど、俺らが勝つよ」

意味がわからない。


『まもなく午後の部を開始します。校舎にいる生徒は校庭まで集まって下さい」


放送部のアナウンスで野島さんが立ち上がった。

「さぁ、行くかぁ」

野島さんの考えてることはわからない。首を傾げていたところを見ると雪平もよくわかってないんだろうな。

みんなでゾロゾロと教室を出る時に俺の名前を呼ばれた。野島さんだった。

「さっきはサンキューな。3組のやつらの」

忘れてた。不快な気分が蘇る。

「お前が止めてなかったら俺はあいつら殴ってたかもしれない。そしたら俺の体育祭はリレーを走ることなく即終了だ。」

だから後頭部痛くても怒らなかったのか。てか羽生さんイスぶつけてたけどそれはいいのかな?

「お前には教えといてやる。データ通りで行けば優勝は3組だ」

カチン、ときた。ムカムカと胃のあたりが熱くなる。

「3組には陸上部の短距離選手が2人いる。そいつらはアンカーとその前に走るだろう。さっきお前らが胸ぐら掴んだあの2人だよ」

そうと知ってたらトドメをさしておくんだった。やっぱ俺はツメが甘い。

「な?負けらんねぇだろ?」

「そうですね。後ろから刺してでも勝ちたいです」

どうせなら後ろから差せよ、と大して上手くない事を言う。

「あいつらは桜のことバカにしやがった」

はい。

「タケルや乃蒼のことまでバカにした」

はい。

「俺とお前できっちりカタをつけよう」

誘ってくれるのは単純に嬉しかった。でも…

「確実に倒すなら俺より雪平の方が良いんじゃないですか?」

野島さんはメモを俺に見せた。


コー…13秒50

タケル…13秒46

雪平…12秒88

秋…12秒63


えええっ!俺、雪平より速かったの???

「これからあいつらは陸上部のくせに文芸同好会に負けるんだ」

ゾクゾクしてきた。

「秋、お前でもいいんだけど今日は俺にアンカー譲れよ」

うける笑、何言ってるんだこの人。やっぱりバカだ。

「アンタ以外に誰がいるんすか?」

「お前でもいいんだけどな?」

確かに俺がアンカーでアイツらぶっちぎってゴールしたらカッコいいだろう。けどその俺の姿を野島さんに置き換えたら、そっちの方が遥かにカッコいいと思えた。

「今日のところは遠慮しときますよ」

「そっか。まぁ任せとけよ。陸上部だろうがカーメリタ・ジーターだろうがブチ抜いてゴールしてやるよ!」

この人は言ったことは必ずやる人だ。

「ターカー、あーきー、早くおいでよ」

阿子さんの声だ。

「お〜、今行く〜」

前を歩くこの人の背中は俺よりも小さいのに何でこんなに頼もしいんだろう?

俺はなんて頼りになる先輩がいるんだろう。

花さん、見に来てくれるかな?

このチームで勝つところ、見て欲しい。

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