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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
221/801

秋の章 「夕刻」

本屋までの道のりを永澄と歩いた。

帰宅時間にしては中途半端だからなのか前にも後ろにも制服姿の生徒は見当たらない。

せっかく女子と歩いてるんだから誰かに見られて噂になる、なんてのもちょっとワクワクするのにそんなことにもならなそうだ。

「そういえば秋のところにもゆきりんから連絡来た?」

「来た…。あいつ本当マジでポンコツ!」


ゆきりんが日本を旅立ってもうかなりの日数が経っていた。

向こうでの生活が落ち着くまではこっちから連絡を取らずにおこう、なんて思っていたがあまりにも連絡がないもんだから俺から連絡したのが先週。

にも関わらずmail delivery subsystemが届いた。

は?あの野郎!

勝手にライングループも抜けたしメアドも変えやがって!

あの感動の乱痴気ランチははなんだったんだ!

そう憤っていた昨日の19:00頃、ようやくあいつから連絡が来た。

『すまん!飛行機のトイレで携帯を落としたのに気付かず流してしまった…。何とか携帯は取り戻せた来たんだけどデータ復元に時間がかかってようやく今手元に戻ってきた。ホントすまん!』

俺は一言だけ返信した。

「お前の携帯、ウンコまみれ」

災難だったな、ンコりん。

『久々に連絡した友人に対して返信はそれだけか薄情者!』

「どうせ桜さんのあとだろ!お前は友情よりも愛情をとる男だ」

『バッカヤロウ!まだお前にしか連絡してねぇよ!』

あいつしばらくみないうちにバカになったな…。

「バカはテメェだハゲっ!さっさと桜さんに連絡しろや!」

『や、あの…桜、怒ってない?』

こいつ…、探りいれるためにまず俺から連絡してきやがったな!

「心配しかしてねぇよ!早く連絡しろこのウンコ野郎!」

それきり返信はなかった…。

薄情者はお前だ!このウンコバカ!


「飛行機で携帯落とすなんて笑。ゆきりんらしからぬ失態だよね笑」

「ちゃんとウンコ拭き取ったのかな?」

「え?なにそれ?」

永澄は初耳のようだった。

あの野郎〜!さてはウンコの件は伏せてやがるな?

「あいつ飛行機のトイレに携帯流したんだよ。だからしばらく連絡できなかったって」

「うそ〜笑。ゆきりん、可愛いっ!」

しまった、逆に好印象を与えてしまった。

それにしても、トイレに携帯を流すと可愛いのか…メモメモ。

「特進組はゆきりんがいない日常に慣れた?」

「いいや…って言いたいけど、慣れてきてる。慣れたくないって思ってたけど、ゆきりんの席に違う奴がいる教室も見慣れちゃった」

永澄は俺の隣を同じ歩幅出歩く。

少しだけペースを落とした。

「それでいいんだよ。いつまで経っても寂しいままじゃ人は何も成長しないから」

「ふ〜ん」

「ふ〜んって何っ!」

「ゆきりん乱痴気ランチで言ってたから。ドイツ行きを決めたのは永澄の一言があったからって。永澄は何気に名言多いよね?」

「なにそれ?乱痴気ランチにゆきりん出てたの?」

「え?聴いてないの?」

4組に流してなかったのか槇原愛理!

「それ、いつの話?」

「ゆきりんがドイツに行く日。最終回だって言って前日に録音したのをお昼に流したんだよ」

野島さんのiPodにまだ残ってるかなぁ?

借りて永澄とマカに聞かせてあげたい。

どうでもいいことだが中橋光一にゆきりんの最後の言葉は届かなかったらしい。

まぁあいつなぞどうでもいい。

「あぁ、その日は私もマカも学校休んだからね笑」

「休んだの!?」

「うん。サボった笑」

不良だ…。

まぁヤクザの娘を不良と呼ぶのはいささかグレードダウンしている気もするが。

「2人で見送りに行ったの、空港まで」

「はぁっ!?ゆきりんの見送りに行ったの!?2人で!?」

あのポンコツうんこ野郎!

「うん。行った笑」

「あいつ俺らにはウソの日を教えてたのに!」

「私達にもだよ」

「へ?だって見送りに行ったんでしょ?」

「マカがね、絶対前日だって言うから朝イチから空港で張ってたの笑。嘘見抜くとか、さすが幼馴染だよねぇ笑。」

8年来の友人すげぇ…。

俺らはまだまだなんだなぁ笑。

「その時の話詳しく教えてよ」

「立ち話もなんだから中に入ってからゆっくりしてあげるよ」

目の前にはもういつもの大型書店があった。

「ゆっくり歩いてくれてありがとう」

「あ、気付いてた?笑」

「私を誰だと思ってんの?笑。人間観察得意なんだよ?」

だとしたらさっきのもバレているだろうか?

悩みがあるかと聞かれた時の俺はいつもの俺でいられただろうか?



チョコドーナツを永澄に奢ってもらった。

代わりに俺はコーヒーを2つレジで注文する。

コーヒーが2つ、チョコドーナツとハニードーナツの乗ったお盆を俺が持つと

「秋、ここでいい?」

と前を歩いていた永澄は空いていたテーブルを指差す。

「そこじゃマカが見つけにくいよ。窓側に行こう」

とってつけた理由だ。

永澄が指差したその席は偶然にも俺にとって特別な場所だった。

別に誰が座ってもいい。

それが永澄だとしても。

けどそこに俺が座ることはない。

ユーリ以外と、俺がその席に座ることは絶対にない。

俺達は外からよく見える窓側の位置に陣取った。

そこで永澄から空港での話を聞き、俺は乱痴気ランチの話を教えた。

野島さんから来週iPodを貸してくれると連絡があり、予備校のない日の放課後に2人に聞かせることを約束した。

「あのさ、機会があったら永澄に聞いてみたいことがあったんだ」

「なに?ウチの家業の話?」

「いや、興味ない」

触れちゃいけない話というのは世の中にたくさんある。

「そうじゃなくて、永澄と…マサさんの話」

「私とマサさん?」

「うん。その…付き合った経緯というか…」

キランと永澄の目が光った…気がした。

「なに?そんなに年の差カップルが奇妙でおかしい?」

「ないない!そんなことないです!」

一応…気にしてんだな。

「じゃあそんなに美女と野獣カップルが怪奇で滑稽?」

彼氏のこと、野獣とか言うなよ。

「いくら友達でも私とマサさんの関係に口出ししたら、、、」

「違う違う!誤解だ!!!」

「あの…お客様。他のお客様のご迷惑になりますのでもう少し静かにしていただけますか?」

「「あ、すみません」」

怒られた。

「お前のせいだからなバカ澄!」

「ご…ごめん。で、秋の聞きたいことってなに?」

そうだ、忘れるところだった。

「永澄とマサさん、どっちから告ったのかなって」

またキランと目が光った。

「興味本位じゃなくて!ちょっと…聞いてみたくて」

「それを興味本位って言うんじゃないの?まぁいいや、私からだよ」

「それっていつ?」

「去年の冬かな?」

去年の冬って、13歳だよね…?

「俺と花さんほど歳の離れたマサさんをどうやって落としたの?」

照れた顔の後、永澄はその顔を奥に引っ込め今度はニヤニヤとしだした。

しまった、勘付かれたか。

「え〜、なにぃ?まさか恋のテクニックが知りたいとかぁ?」

顔がニヤニヤしてるのに声までニヤニヤしている。

永澄は知り合った頃は大人びた子だと思っていたけど仲良くなった今は俺とさほど変わらないと思うようになった。

それだけ今は気を許しているのだろうか?

「誰かに告るの?」

「その予定はまだない」

まだ、ない。

「誰かに告りたいの?」

「その予定もまだない」

まだ、ない。そのうちある!

「もしかして、、、」

また乃蒼だと勘違いされるだろうか?

「ユーリ?」

「なんでお前がユーリを知ってんだぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ゆきりんか?ゆきりんから聞いたのか!

ていうかお前しかいねぇよな!

あのウンコ野郎!

携帯と一緒に自分もトイレに流れてしまえ!

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