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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
217/800

花の章 「茶番劇」

「ウチの乃蒼は…なんてアホなのかしら…」

イレーヌが泣き止まない。

ちょっとだけ、のつもりのワインがいけなかった。

酔いがイレーヌを決壊させてしまった。

「まぁでもまだ秋も付き合ってるわけじゃないみたいだし…」

「1年半だよ?アドバンテージが1年半もあったのに、どうしてあの子はそれを活かせなかったのかしらぁぁぁぁぁ泣」

「まぁまぁイレーヌ、落ち着いて。秋達はまだ14歳だよ?これからいくらでもどうにでもなる歳じゃない笑」

「だから早く既成事実を作っときなさいってあれほど言ってたのにっ!」

乃蒼、大変だね…。

「花、乃蒼はいい子よねぇ?」

「良い子だよ〜。私大好きだもんっ」

「秋のお嫁にどうかしら?」

「そりゃ乃蒼が秋のお嫁さんになるなら私は嬉しいよ?でもそれは当人同士が決める事だから…」

「ねぇ花。私達、姉妹弟子よね?」

「はい?」

「私達、無差別格闘七尾流と無差別格闘鈴井流の開祖よね?」

「はい?」

「私達にもし男の子と女の子が生まれたら、結婚させようって、そういう約束してたわよね?」

「私、水被ってもパンダにはならないよ?」

「秋は女になるわよね?」

「ならないよ!笑」

「そういう設定でいってみない?」

「小学館から訴えられるわよ?」

「じゃあ、秋ってペンダントしてたわよね?鍵穴のあるロケット型のペンダント。乃蒼はその鍵を持ってるわ」

「鍵があってもメインヒロインに持ってかれて終わりよ?」

「じゃあどうしたらいいのよぉぉぉぉ!!!!」

だからそういうのは当人同士に任せましょうって…。

親が口出すとロクなことにならないわよ?

「秋をぉぉぉぉ、秋を息子にしだぃぃぃぃぃ」

欲望がダダ漏れね…。

「花ズルいっ!あんな子と一緒なんてぇぇぇ!秋ちょうだいよぉぉぉ!」

「ダメだよ笑。秋は私の世界そのものなんだから」

「じゃあ乃蒼とぉぉ、乃蒼とぉぉぉ、うぉぉぉん泣」

「イレーヌ、しばらくお酒禁止ね」

大変ね、乃蒼。

ブルルルルル、ブルルルルル

あ!秋からだっ!

「もしもし〜」

『あ、花さん?まだイレーヌと一緒にいるの?』

ハミルトンを確認するとすでに17:30を超えていた。

「あっ!もうこんな時間なの!?ごめん秋、イレーヌと話し込んでてまだ家に帰ってないの」

『いや、いいのいいの。あのさ、いま乃蒼と一緒にいるんだけど吉岡先生のところで晩御飯食べて来てもいいかな?』

「えぇ?乃蒼も一緒に?」

『うん。野島さんも桜さんも一緒』

「そんなに?先生にご迷惑じゃない?」

『ちょっと待って、先生に変わるね。…先生、花さん』

てっきり吉岡先生がでるものだと思っていた。

『七尾秋は預かっている。返して欲しかったらパイナップルをひとつ、秋が後でメールする住所に届けろ。さもなくば秋を私の息子にする。これは脅しではない。繰り返すこれは脅しではない』

それだけ告げてプツリと電話が切れた。

声は女のものだった。

逆探知させないギリギリの通話時間。

恐らくは時間を図りながら電話をしていたのだろう。

つまり、犯人は私が警視庁刑事部特別重犯罪課交渉係に勤めている事を知っているということに他ならない。

あの部署は警視庁の中でも限られた人しか知らない。

犯人、もしくは協力者は内部の人間?

どちらにしても、秋が危ないっ!

もしかしたら乃蒼もっ!

「ごめんイレーヌ。私用事ができちゃった」

「えぇ〜!もうちょっと付き合ってよ花ぁ〜」

それどころじゃないの!

あなたの乃蒼も危ないかもしれないんだよ?

でもイレーヌにそれは言えない。

ただでさえ傷心のイレーヌに、乃蒼が危ないなんて、そんなこと…。

「ご〜め〜んっ。また今度ランチしよ?その時は気がすむまで付き合ってあげるから。ねっ?」

「う〜ん。わかったぁ。もしかして仕事?」

「えぇ、うん、まぁ」

「大変だねぇ。わかった。じゃまた連絡するね」

「オッケー。今度はフレンチね」

「探しとく!」

「よろしく〜。楽しみにしてるよ」

私とイレーヌは会計を済ませ店を出た。

いつものように、笑って手を振りながらイレーヌと別れる。

イレーヌを乗せたタクシーが見えなくなると、自分でもわかるくらいに冷ややかな顔になった。

後悔させてやる。

秋を誘拐したこと、死ぬほど後悔させてやる。

「もしもし、祝人?今どこ?」

警察に内通者がいる可能性があるなら、警察はアテにならない。

むしろ危険だ。

『どこって…穴ぐらだけど?』

「秋の携帯の電波探知して。電話番号は090••••••••」

『おいおい、なんだよ急に笑』

何笑ってるの祝人?殺されたいの?

「いいからっ。急いで秋のいる場所特定して!」

カチャカチャとキーボードを叩く音が聞こえたかと思うとすぐに祝人から

『わかったよ。今お前の携帯にメール送った』

と返ってきた。

「ありがとう。ちなみにソコ、どこ?」

『どこって、え〜っと、メノスグランデっていう比較的新しいマンションだけど』

「部屋番号までわかる?」

『部屋まで〜?う〜ん、少し時間ちょうだい』

「なるべく早くお願い。そこに三太いる?」

『珍しく来てる。スピーカーにするよ。おい三太、花から。ーーーーーーもしもし花、どうかしたのか?』

「秋が誘拐された」

『なんだと!』

「三太、mk2グレネード用意できる?」

マーク2手榴弾。

通称パイナップル。

第二次世界大戦でアメリカ軍を中心に広く使用された手榴弾だ。

『出来なくはないけど、どうするつもりだ』

「犯人の要求なの。パイナップルをひとつ用意しろって」

『ひとつだけ?…なんか裏があるんじゃねぇか?子ども1人誘拐するほど危ない橋渡って要求がパイナップルひとつだなんておかしいだろ』

「私もそう思う。それに秋だけじゃなく乃蒼達も巻き込まれてる可能性が高い」

『おふっ…マジかよ…』

「多分本来の目的は違うところにあると思うんだけど。ねぇ、mk2用意するのにどれくらい時間かかる?」

『早くて1時間。諸手続きスッ飛ばして30分弱』

「それじゃ秋の身が危ないっ!」

『仕方ねぇだろっ!穴ぐらにねぇんだから三國まで取りに行かなきゃならねぇんだぞ』

とにかく早くしなきゃ。

時間がかかればかかっただけ犯人の思うツボになる。

『わかったぞ。4階の402号室だ』

三太の怒鳴り声が聞こえた。

『馬鹿野郎っ!なに教えてんだっ!こいつ1人で突っ込むだろうが!おい花、15分で行く!俺が行くまで待ってろ』

「ごめんね三太、それは出来ない。秋が…待ってるから」

『おい花!すぐ行くから!10分、いや、5分だけ待ってろ!』

「三太…ありがとうね」

『おいやめろ!こんな時にそんな事言うな!」

「もし生きて帰ってこれたら…私のこと、お嫁さんにしてくれる?笑」

『ばかやろう!フラグ立ててんじゃねぇ!だから待ってろ!すぐ行くから』

「もし本当に私が死んじゃったら…あいつにごめんって伝えて」

『自分で言えっ!そういうのは自分で言うから意味があるんだよっ!』

「あはは笑。そうかもね。でも私からは死んでも言えないよ。生きてる限り、私はあいつを許さない。だから死んでから伝えてね」

『縁起でもねぇこと言ってんじゃねぇっ!』

「じゃ、行くね。三太…」

『おい花!そこ動くな!2分で行くっ!』

「大好きっ」

通話を終了させ祝人からのメールを確認する。

書かれていた住所はここからそれほど遠くない。

走れば5分。

祝人から着信があったけど、私は携帯の電源を落とした。

待っててね秋。

いま花さんが助けてあげるから。

渾身の力で地面を蹴る。

私の100mのベストタイムっていくつだっけ?

確か11秒くらい?

さすがにそれよりは遅くはなってるだろうけど、すぐいくよ秋。

だから無事でいて!

私の命にかえてでも、あなたを守ってみせるからね。




追記

ガタンっと音がした方向を見るといつの間にかクソ長官殿が地面に這いつくばっていた。

車椅子はクソ長官殿の足元に転がっている。

「三太っ!拳銃所持許可!発砲も射殺も許可だ!早く行けよこのクソのろま野郎っ!」

クソ長官殿のその喋り方を俺は久しぶりに聞いた。

「うるせぇよ!今行くっ!」

「わかってんだろうなあ!花のこと死なせたら、お前も殺すからな!」

「誰に言ってんだよ!お前じゃねぇんだ!」

口から出た後でそれは激昂していても言ってはいけないセリフだと気が付いた。

「だったら早く行けぇぇぇ!」

「うるせんだよクソ長官殿がよぉ!!!」

俺は叫ぶと同時に走り出した。

待ってろ花。

今俺が助けに行く。

すぐに行くから無事でいてくれ。

俺が命にかえてもお前を守るから。

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