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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
180/778

レンの章 「七尾秋など死ねばいい」

飽きたなぁ。

さっき放送部の部長さんからカラオケ機材の故障とアナウンスがあった。

だったら早く終わって欲しい。

どうせ七尾秋が歌ったところで優勝はさっき気持ち悪い踊りをしながら、踊りよりも気持ち悪い顔をして歌ってた茂木とかいう人に決まってる。

早く終わってフォークダンスやろうぜ〜。

もうそれしか楽しみないんだからさぁ〜。

「レンちゃん!」

女子の列からリンがデカイ声で俺の名を呼ぶ。

だから、学校で話しかけるなって言ってんだろアホリン。

ついでに『ちゃん』付けもやめろ!

タダでさえ付き合ってるだの双子だの言われてるんだから極力こいつとは関わり合いたくはない。

なのにいくら言ってもこいつは改めようとしなかった。

「おい藤村、彼女来てんぞ」

「るせぇ!彼女じゃねぇ!それから双子の姉キでもねぇからなっ!」

間違えるにしたってなんで俺が弟なんだよ!

身長か?身長で判断するのか?

おい待て誰がチビだコラ!

「来ちゃった笑。わ〜すご〜い、男の子ばっかり」

「そうか、それはご苦労だったな。じゃ、もう自分の席戻っていいぞ」

「あ〜、そんな事言っても良いのかなぁ〜。私、良いこと思いついたのに〜」

付き合いが長いから分かる。

こいつの良いことは本当に良いことだ。

聞くだけ聞こうじゃないか。

「何を思いついたんだよ」

「七尾先輩、機材トラブルで歌えないじゃない?」

ああ、とてもいい気味だと思っておるよ。

「で、レンちゃん知ってる曲なら何でも大丈夫でしょ?」

こいつの言わんとすることが読めた。

「やだねっ。なんであいつのためにしなきゃならないんだよっ。死んでもやだねっ」

それにもう辞めたの。触りたくないの!

「話は最後まで聞きなよ〜。だからぁ、今までなんの接点もなかったんだからこれを機にお近づきになれば良いと思わない?」

ぴくっ

いやいや、いやいやいや笑。

「一回戦だったらまだしも、今はあいつ1人じゃねぇか」

「だからぁ、本当にもうバカだなぁ。話が進まないよ」

おめぇがぁ!ノロいからじゃあ!

「サクサク言え!お前の頭の中じゃ何がどうなってる?」

「機材トラブルで歌えないならレンちゃんが伴奏を弾けばいい。そんで七尾先輩に乃蒼先輩を紹介してもらう」

「そんな上手くいくわけねぇだろ。なんでそこで乃蒼先輩が出てくんだよ」

「私が七尾先輩に交渉するから。レンちゃんが乃蒼先輩とフォークダンス踊れるよう頼んでもらえるように」

フォ、フォ、フォークダンス!?

それは、乃蒼先輩と手…手…手ぇ!!!

「乃蒼先輩の手、あったかいのかなぁ?それとも、ヒンヤリしてるのかなぁ?フォークダンスは学年ごとにしか踊れないから、私達は2年生とは踊れないなぁ〜」

さ、策士め…。

「いや、レンちゃんが嫌なら無理にすることないよ。ほな、さいなら」

「ちょっと待てぇぇぇぇい!」

くそっ!今日まで半年間ずっと密かに隠していたのにこんな全校生徒の前でバレることになるとは!

しかし、乃蒼先輩と手繋ぎデート(校庭内限定)が出来る(時間限定)なら、価値はある。

「わかった。お前も一緒に行ってくれるんだろうな?」

「当たり前じゃん?だってレンちゃん1人で行ったら七尾先輩にからんだ挙句、ボコボコにされちゃうじゃん」

体育祭の直後からあいつの噂は聞こえてきていた。

鷹の爪には関わるな、逆鱗に触れたら声を失う。

なんでそんなやつと噂になってんすか乃蒼先輩!

あなたはもっと、可憐でおしとやかで清純で、純潔じゃないですか!

それをダークサイドの七尾となんか噂になって…。

はっ!まさか!弱み握られてるんですか?

言うこと聞かないと上靴隠すぞ、とか脅されてるんじゃないですか?

チクショー卑劣なり七尾秋!

大丈夫です乃蒼先輩!

俺が束縛の鎖から乃蒼先輩を解放してみせます!

「乃蒼先輩は別に七尾先輩に脅されてなんかないと思うけど?」

「俺の妄想に土足で踏み込んでくるな!」

付き合いが長いとオチオチ妄想もできねぇよ。

「さ、じゃあ行こっかレンちゃん」

「あぁ、颯爽と登場して観衆の度肝抜いて七尾に土下座させてやる」

「あ〜土下座だったら見下せるもんね」

「そうそう!なんたって俺チビだから普通にしてたら見上げて………どつくぞ」

何やらせんだよ。


小さい時から何をやってもリンには勝てなかった。

勉強もかけっこもゲームもケンカも。

あいつは1番で俺は2番。

あいつが会長で俺が副会長。

生まれたのもあいつが先、俺は年度最後の3月生まれ。丸々1年遅れで生まれたようなものだ。

身長もあいつの方がまだ高い。

けど唯一俺がリンに勝てるもの。

俺が、1番になれるもの。

だったはずなのに俺は今年それを捨てた。

リンだけが最後の最後まで泣きながら反対してたっけ。

本当はもう2度と触りたくないと思っていたけど、こんなことでもしなけりゃ乃蒼先輩には近付けない。

なら俺の持ちうる最大限で乃蒼先輩に近付いてみせる。

見てろ七尾秋!

てめぇの歌はそこそこ上手いかもしれないけど、俺の本気で弾くピアノはお前が腰抜かす程うめぇからな!

このカラオケ大会決勝でインパクトを残すのは茂木でも野島さんでもお前でもねぇ!

この俺だぁ!

俺は今日お前を踏み台にして乃蒼先輩に藤村蓮という男の名を刻んでやる!

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