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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
152/778

タケルの章 「はじまる、ここから」

「さぁ、いよいよ2クラスを残すのみとなりました。続いては〜…お、2年1組!歌うのはは鈴井乃蒼、七尾秋ペアだぁ。デュエットは2年4組に次いでこれが2組目!鈴井・七尾ペアは茂木・高橋組を超えるパフォーマンスが出来るのかぁ!」

司会が不必要に会場を煽る。

「来たよ乃蒼!秋!頑張ってね!」

励まそうとする阿子さんの声援今の秋と乃蒼にはプレッシャーにしかなっていない。

「秋ぃ…怖いよぉ〜、怖いよぉ〜」

「だ、だ、だ、大丈夫だだだだよ。こ、こ、こ、れがおわ、おわ、おわ、、、」

テンパってんな。

茂木はともかくさっきの野島さんの歌ですっかり自信をなくしてやがる。

「ほら、行くぞ!不戦敗になっちまう」

俺は秋と乃蒼の首根っこを掴んでステージ横に連れて行く。

「頼むねタケル!」

任せろ彩綾。

俺は今日この七尾秋に自分の良さを1つわからせてやるんだ。

自分の頑固さやルールに縛られて長所が表に現れない勿体無いこいつに今日風穴を開けてやる。


「どうも、2年1組です。よろしくお願いします」

怯える2人の代わりに俺が放送席に声をかけた。

「あれ?3人?」

声しか聞いてなかった槇原愛理は、実際見ると『いかにも!』な感じの先輩だった。

例えば今時ラジオの番組にハガキで送ってそうとか、BL好きそうとか、そういった感じのメガネで冴えない見た目の女子。

「いえ、実際歌うのはこの2人です」

秋と乃蒼が異次元に飛ばされた目をしていた。

お前ら、蛇の前に差し出されたカエルでももうちょっと堂々としてるぞ?

「おっけー。原キーでいいの?」

「原キーから3つあげて下さい」

「「みっつぅぅぅぅ???」」

やっと現世に戻って来たか。

「話が違うよタケルぅ!さっき2つって言ったじゃん!」

「乃蒼は余裕、秋はギリ歌える。乗れば丁度いい。忘れんなよ?お前ら男女パート交代して歌うんだからな?」

「俺ムリだよそんな高いの!」

「バカ野郎。お前はこれが適正キーなの!ほら、早く行ってこい!」

俺は確信してんだ。

もし俺の想像通りならこのステージを降りた時、1回戦のヒーローは茂木でもなく、茂木を喰った野島さんでもなくお前だ秋。


明らかにきょどったままステージに上がる2人を俺は舞台袖から見ていた。

2人がチラチラとこっちを見ている。

聴衆もそんなオドオドした2人に期待などしていないのかざわざわと私語が目立つ。

すいませぇん、静かにして下さぁ〜い。

イントロが流れる。

さあ、秋。お前はお前が思っている以上にすごい奴だってことをわからせてやる。

お前は何にも自分のことわかっちゃいない。

お前は本当にすげぇ奴なんだ。

友達として誇りに思う。

なのにお前はいつもどこか自信なさげで、それを隠すように強がってる。

いいんだよお前は傍若無人で。

今からお前が知るのはお前が生きて行く上で全くなんの得にもならねぇ特技の1つだ。

それがわかったからってお前の人生うまく行くわけじゃない。

けどさぁ、お前の良さは自分で見つけてくれよ。

今日のこれはただのきっかけだよ。

小さなこだわりや自分のルールなんて取っ払っちまえよ。

そしたらさぁ、俺はお前が野島さんなんかよりずっとすげぇ奴になると思ってるんだ。

さぁ行け秋!

今日ここが、お前のスタートにしよう。

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