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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
143/778

秋の章 「瀬戸さんと高橋さん」

「また一気に暇になったねぇ」

吉岡先生と島田先生が帰ると途端に暇になる。

やっぱり店舗の立地条件は大事なんだと思った。

「けどそろそろ2人来るはずだ。悪いけど佐伯、次の客のは佐伯が作ってくれないか?」

「え?俺で良いの?」

「悪いな。この2人に紹介したいんだ」

「了解。そう言うことなら仕方ないな。で、誰が来るんだ?」

ちょうどそのタイミングでガラガラと扉が開く音がした。

「わぁ、暇そう」

瀬戸さんが辛辣だ。

「お邪魔しま…うそっ!ミナト?そっちは七尾くん?なに?何なのそれ?私の女としての自信が今脆くも崩れ去ったんだけど」

lowから一気にテンションがあがる。

「ああああ!!!」

そう言えば彩綾は何か知ってるっぽかったな。

「どうも、瀬戸内海に永劫澄み渡るで瀬戸永澄です。ふたつ名はafter school Siren(二本足の人魚)です」

それ、テンプレなのかな?

「同じく高い橋に真っ直ぐな夏、高橋真夏です。マナツって呼ばないでね。ふたつ名はstraight summer(真夏)です」

テンプレだね。

初めて聞くそのふたつ名も、意味そのまんまだね。

あとずっと気になってたんだけどゆきりんはマナツって呼んでるけどいいの?

「「「高橋真夏ぁ!!!」」」

あ、どうも。と照れ笑いを浮かべている。

「やっ。荒木さん久しぶり」

「久しぶり…だけどさぁ。私あんたに言いたいこと、、、」

「あ、あ、あ、ちょっと待って。とりあえずオーダーしてよ。待ってる間にきちんと説明するから。マナツ、ここ座れ」

ゆきりんが6人がけの席に2人を通す。

「なんでゆきりんが高橋真夏と知り合いなのよ?」

「てかなんでゆきりん高橋さんのことマナツってよんでるのかな?」

「ゆ…ゆきりん???ミナト、ゆきりんて呼ばれてんの?」

「ちょっと待って、高橋さんなんで雪平のことミナトって呼んでるの?」

「「「謎が多い〜!わかんな〜い!」」」

乃蒼、タケル、彩綾の心の叫びがシンクロした。

「ちゃんと説明するから。とりあえずなに食うか決めてくれ」

本当にちゃんと説明すんのか?

俺は出来ないから1人でやれよ?

「じゃあゆきりんのオススメで」

「じゃあ私は七尾くんの、、、」

「今はアキちゃです」

「七尾くんのオススメで」

ブレない女、瀬戸永澄。



悲しそうな表情をしながらタケルは調理室へ向かった。

そうだよな?聞きたいよな?これからどんな話になるんだろう?

「えっと、とりあえずなにから話そうか…」

司会は何故か俺だった。

「ちょい待って!一番最初に私言いたいことがある!」

司会の進行を妨げるなんて、次からゲストに呼ばないぞ彩綾。

「待って待って!それなら私も言わなきゃいけないことが!多分それで荒木さんの言いたいことも解決するような?」

「え?私まずゆきりんと高橋さんの関係が気になっちゃうんだけど」

バラバラだ…。

「え〜っと、じゃあ…まず高橋さんから」

「ヒイキだ〜!」

食い気味で彩綾が不満を叫ぶ。

「彩綾うるさい!多分ホントに高橋さんの話を聞けばお前のは解決すると思うから黙って聞きなさい!」

「だからどうしてゆきりんはマナツって呼んんのか教えてよ」

とりあえず乃蒼に向かって人差し指を口の前に当て「し〜っ」とする。

それで乃蒼は大人しくなった。

「騒がしくてごめんね笑。いいよ高橋さんからで」

「いいの?」

「いいよ。今日のゲストだから」

それじゃあ、とガタンという音を立てて高橋真夏は起立した。

「ごめんなさいっ」

頭を下げ本当に心を込めて謝罪した。

「私、2人に失礼なこと言っちゃった。あの後に荒木さんは佐伯くんと付き合ってるの知って、鈴井さんは誰とも付き合ってないって聞いて、本当に申し訳なく思って。あの、ごめんなさい。私の早とちりでした」

彩綾と乃蒼は2人顔を見合わせ、けど最初から示し合わせていたかのように

「「頭あげてよ」」

とハモった。

高橋真夏は頭を上げ真っ直ぐに彩綾を見て

「けどアレだよ?佐伯くんじゃないからね!」

と必死に弁明をする。

「なんかそれはそれで複雑だけど、ちょっとホッとしてる。結構人気あるしね。黙って負ける気は無いけど、相手としては厄介だなって思ってた」

「ごめんなさい」

「もういいよっ笑」

「鈴井さんも、ごめんなさいっ」

「私ももういいよ〜。最初から誤解だったわけだし、その誤解が解けたなら全然気にしないっ」

そこでようやく高橋真夏はホッとした表情を浮かべて椅子に座った。

「良かったぁ…」

「安心した?笑」

「うん。ありがと七…アキちゃ」

流れに身を任せられる女、高橋真夏。

「あとはなんだっけ?ああ、どうしてゆきりんはマナツって呼んでで高橋さんはミナトって呼ぶのかだよな。それは俺知らないから本人達に聞いて」

俺の仕事はここまでだ。

「どうしてって…どっから話せばいいんだ?」

「どっからって、最初からじゃない?」

「最初って、どこだ?」

「だからあれじゃない?ほら、あそこからだよ」

話が進まねぇ…。

「俺達は小学校から去年までずっと一緒のクラスだったんだ」

「「「へぇ!」」」

「仲良しだったんだ?」

乃蒼が尋ねた。

「仲良し…ではないな笑。けど俺が小学校で話ししてたのはマナツだけと言っても過言ではない。それでもそんなに話した回数は多くはなかったけど。あの時俺、精神世界に引きこもってたから」

「けどおかしいよ!乱痴気ランチの時にあんた高橋真夏なんて知らないみたいに言ってたじゃん!」

おやぁ〜、とばかりに高橋真夏がゆきりんの方を向いた。

視線を感じているくせにゆきりんは知らんぷりをしている。

「あの時まだ俺が小学校の時にいじめられたって話をしてなかっただろ。マナツとの関係を話すならそこから話さなきゃならないし、言いたくなかったんだよその時は」

「いいじゃんよ、去年同じクラスでした、で」

「…なんか、言いづらかったんだ」

「「何が?」」

この2人双子かな?

「その、…マナツ、俺の事まだ恨んでるんじゃないかなって」

再びガタンと音を鳴らして高橋真夏は立ち上がる。

「恨んでるって、なに?ミナト私が恨んでるって思ってたの?」

「そりゃ、思うよ。卒業式であんなことしたら、普通怒るって思うだろうよ」

「思ってないよ!逆に私はミナトが私のこと恨んでるんじゃないかって、、、」

たまらなくなって声をあげた。

「なぁ?もうこの話、やめない?」

誰にでもそういうのってあると思うんだ。

「この話はさ、ゆきりんと高橋さん2人だけでする話だと思うんだ。いくら友達でもこういう形で聞くのってなんか違うと思う。せっかくさ、こうやって集まったんだからもっと先につながるような話しようよ。瀬戸さんもいるんだしさ」

瀬戸さんは涼しげな顔をしている。

ホントにこの子は肝が座っている。

何者なんだ?

「そうだな。マナツ、俺お前のこと恨んでないから。その誤解だけは解いとく」

「私だって恨んだことなんて一度もないからね?誤解しないでね」

何年か越しの誤解が解けたなら、それでいいと思った。

あとは2人の問題だ。俺らが聞いていい話じゃない。

「七尾くん」

「ん?」

瀬戸さんが俺をしげしげと見ていた。

「やるねぇ」

「なにが?」

「私が止めようかなって思ったところで、先に遮ってくれたじゃん」

「なんかね、聞いちゃいけないと思ったから」

「七尾くんて、将来なりたいものある?」

「え?」

特別なりたいものなんてなかった。

現実的に見えているのは、草天流の後継ぎくらいだ。

「別に今はないけど。どうして?」

「就職に困ったら私のところに来てよ。おとうちゃんに頼んであげる」

職種が何かはわからないけど、中2にして内定を1つ貰った。

「ハイ、カレー出来たよ。で、どこまで話進んだの?教えて教えて!」

空気の読めない男、佐伯健流。

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