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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
142/778

秋の章 「初めての客」

「よ!お前ら。なんだ?閑散としてんな」

12:30になってようやく十天屋に初めての客が来た。

「いらっしゃいませ吉岡先生」

乃蒼が黒服姿で接客する。

「鈴井、元気か?」

「はい。あれ?島田先生と一緒じゃないんですか?」

俺もてっきり一緒に来るものだとばかり思ってた。

「一緒に来るわけねぇだろ。けど来るって行ってたぞ。もうちょっとしたら来るんじゃないか?それよりも鈴井。雪平と七尾は大丈夫か?化粧のせいかもしれないが顔色悪いぞ?帰らせた方が良いんじゃないか?」

俺とゆきりんは互いに顔を見合わせお互いを確認する。

「大丈夫?」

「大丈夫だ!俺は絶対に大丈夫だ!」

言い聞かせないとダメなんだな、ゆきりん…。

「本人たちが大丈夫って言ってるし、大丈夫だと思います」

「ならいいが。じゃあ鈴井のオススメのやつ1つくれ。大盛りってできるか?」

「先生なら特別にサービスです」

「そりゃいい店だ!贔屓にするよ」

明日閉店するけどな。

「じゃあ私作って来るね〜」

「私も手伝う〜。あんた達店番よろしく」

乃蒼と彩綾は2人仲良く調理室へ向かっていった。

雪平、と吉岡先生が名を呼ぶと

「今はゆきりんです」

と間髪入れずに答えた。結構気に入ってんじゃねぇか。

「俺にゆきりんって呼べってか?まぁいいや。お前、春から比べてだいぶ変わったな」

おぉ、どストレートに聞いて来た。

「でしょうね。あ〜、でも変わったと言うよりかは戻ったって方がしっくりくるかも?いや、やっぱり変わったのかな?」

ゆきりんにしては随分と歯切れが悪い。

「変わったよ笑。少なくとも春にお前がそんな格好するだなんて先生達の誰も想像できなかった」

あの頃のゆきりんなら文化祭に来ることすら怪しい。

半年か…。

人が誰かと一緒にいるのにしては短いよな。

「楽しんでるか?」

「はい。まぁまぁ」

さっき死にかけたんじゃねぇのか?

「まぁまぁか笑。そりゃ上出来だ」

ガラガラっと十天屋のドアが開かれた。

「あら?閑散としてるね」

吉岡先生と同じ感想を述べながら島田先生も現れた。

「いらっしゃいませ。こっちの席、空いてますよ」

俺が吉岡先生の向かいを勧めると

「こんなに空いてるのに相席?」

と島田先生は不満そうだ。

あぁ、ユーリに電話してぇ〜。

「先生何食べる?」

タケルがメニューを開いて見せると

「じゃあ…スープカリーで。ご飯少なめにできる?」

「了解です。俺、調理室行って彩綾達にオーダー伝えて来るよ。お前ら留守番よろしくっ」

黒服のタケルは颯爽と彼女に会いに行った。

島田先生はゆきりんの顔をマジマジと見た。

「えっと…なんでしょう?」

「腹がたつ」

いきなりの攻撃。

さすがのゆきりんもノーガードだったのでショックを受けている。

「男なのに綺麗!肌もツヤツヤ!スタイルもいいし!もうっ、若いって良いわね!」

あ、そっちっすか。

「あ…、どうも」

「褒めてないわよっ!」

「褒めてないんすか?」

ゆきりんはただ島田先生に絡まれていた。

「ちょっと島田先生、酔ってるんですか?」

そう言えば島田先生って酒癖悪いって吉岡先生言ってたな。

「仕事中に酔ってるわけないでしょう!吉岡先生、バカなんですか?」

きっとからみ酒だ、と俺は確信した。

「七尾、助けてくれ」

「今はアキちゃです」

「アキちゃ、助けてくれ」

「嫌です笑」

「じゃあその名で呼ばせるな」

俺もこの名前をかなり気に入っている。


10分ほどして乃蒼達が2つのカレー皿を持って帰って来た。

「吉岡先生のは乃蒼が、島田先生のは私が作ったんだよ。食べて食べて」

彩綾が2人を急かす。

「どれ。……鈴井」

「はい?え?美味しくない?」

「美味しいぞ」

「良かったぁ〜」

美味しいって言う言葉は幸せな日本語だ。

それだけで作った人を嬉しい気持ちにさせる。

ゆきりんが前に言っていたこと、こう言うことだったんだな。

「島田先生は?どう?どう?」

「………もう、嫌んなる」

「え?美味しくない?」

「美味しいわよ!若くてお肌ツヤツヤでその上料理上手って、良いわねっ!羨ましいっ!荒木さん、私と人生取り替えてっ!」

多分、島田先生は昨日のお酒が残っているんだ。

そう思うことにした。

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