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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
136/778

秋の章 「変態さんとサンタさん」

文化祭当日、また体育祭のように曇りだった。

校内がメインとはいえ、天気が悪ければ花火は打ち上がらない。

ヤプーの天気予報では明日の降水確率は50%となっている。

そんな五分五分な予報なら俺にも出せると思った。


先週ユーリと話して以降、俺達は何度かメールをやり取りした。

そのほとんどが大した内容ではなくありきたりな世間話だった。

知りたい、聞きたいことはたくさんあったけどそれをするにはなんだか憚られた。

それにはいろんな理由がある。

一番の理由は俺が臆病なだけだと自己分析している。

分析したの自分のことだけではない。

ユーリのことも、俺の知りうるすべてを参考にしていくつかの仮説を立てた。

ユーリは学校にあまり行っていない。

俺はユーリが何か嫌なことがあって自主的に休んでいるのかと思ったが、こないだの電話で「社長」と黒木芽衣子さんなる人の声で言っていたからきっと仕事か何かの理由で学校に行けないのだろう。

となると、…


仮説1

ユーリは年上ですでに働いている。

定時制か何かの学校に通っているのではないか?


仮説2

ユーリは働いている。

普通に学校に入学したものの、仕事が忙しくて学校に行けていない。


もし仮説2なら、俺と似たような年齢の人が仕事が忙しいとなると職種として芸能が真っ先に浮かんだ。

もしそうなら、凄いな。

俺、芸能人の知り合いができて芸能人を好きってことになるのかな?

わくわくした気分の反面、とても複雑な気分にもなる。

芸能人なら、それこそユーリのことを好きな人なんて全国にたくさんいるだろう。

ユーリは雪平の言葉を借りればとても魅力的な人だ。

それに男の芸能人ってかっこいい人ばかりだし…。

俺、フツメンだし…。

恋のライバルが多そうで正直自信がない。

まぁユーリが一般人だとしても自信はないし、きっと恋のライバルも多いだろうな。

叶わぬ恋なのかな?と思った。


「あれ?早いね秋。もういたの?」

公園のブランコでゆらゆら揺れながらそんなことを考えていると、乃蒼がジャージ姿で現れた。

「おはよう。ジャージ?」

乃蒼は上下あずき色したジャージ姿で登場した。

「おはよ。だってどうせ制服脱ぐことになるから家からジャージの方が楽かなって思って。さすがに恥ずかしかった笑。はい、制服」

乃蒼は大きめの紙袋を俺に手渡す。

中を見ると乃蒼の制服が綺麗にたたんで入っていた。

「ありがとう。汚さないようにするよ」

「匂い嗅いだりしないでね?笑」

「それは、無理だよ…」

嗅がない自信がない。

「ダメだよ笑。臭いよ」

「乃蒼は臭くない!いっつもいい匂いだよ!」

「あ、ありがとう///」

「だから、こっそり嗅ぐ」

「だめっ!絶対だめぇ!」

うるさい。嗅ぐったら嗅ぐんだ!

「あと制服抱きしめたりしてもダメなんだからね?」

「それも…無理だよ…」

そこまでで1セットなんだから。

「変態っ」

「そうだよ?自覚してる。だから止めても無駄だ」

「とたんに貸したくなくなった」

「だろうね笑。けど安心して。匂いも嗅ぐし抱きしめる。それだけは約束するから」

「その言い方だと私がさもそれを望んでるみたいじゃないの」

女心は難しい。

「じゃあ質問するけどもし男の子に制服貸したとして、匂いも嗅がない抱きしめもしない、そんなふうにされたら逆に傷つかないか?自分に魅力がないって思わないのか?」

「………私にそういう無理矢理な正当性を主張しても無駄だよ?」

「あ、やっぱり?笑」

「じゃ、匂い嗅いでもいい。抱きしめてもいいよ。でもそれは私の目の前でしてね。私の目を見ながら匂い嗅いだり抱きしめたりして」

嫌だぁ〜!…あれ?でもなんか想像したらそれはそれで興奮する。

俺、Mなのかな?

「私の匂いがする?私を抱きしめてるみたい?って聞いてあげるよ」

あ、…いいっ…。

はぁはぁする!

「乃蒼、朝から秋の理性壊しにかかるのやめなさい」

「あ、おはよう彩綾」

「おはよう乃蒼。おはようド変態」

否定はしない。

「おはよう彩綾」

「あれ?タケルは?」

今日俺の家にタケルは迎えに来なかった。

昨日の時点でこの公園へは雪平と来ると連絡があったので俺は1人でここで待っていた。

「雪平と来るってさ。あいつあれ以来すっかり雪平とベッタリだ」

こないだイザコザがあったせいなのか、タケルの理性も失われたのか何をするにしてもタケルは雪平と行動を共にしている。

ハタから見て気持ちが悪い。

「そうなんだ。ま、い〜けど」

時計を見るとまだ7:50。

「あれ?腕時計カッコいいじゃん」

彩綾が俺の真新しい腕時計を腕ごと掴んで離さない。

「少し早いけど誕生日プレゼント」

「高そ〜。花さん、秋に甘いからなぁ」

「これ、花さんじゃないよ?」

「え?違うの?じゃあおじいちゃんおばあちゃん?」

「じいちゃんばあちゃんは華道に関係するものしかくれないよ」

「もしかして…例の秋が好きな人?」

ユーリ?

なわけあるかっ!笑

と言っても彩綾は俺とユーリの関係性や距離感を知らないから誤解しても仕方ないか。

「まさか。プレゼントを交換するような間柄じゃないよ」

「じゃあ誰よ?」

「誰って、サンタさん」

彩綾と乃蒼が凄く訝しげな顔になった。

「バカにしてるの?」

彩綾の言葉の棘がバラよりもキツい。

「してないよ。ホントにサンタさんから貰ったの」

「クリスマスまであと3ヶ月近くもあるのに?」

「俺のサンタは誕生日や入学祝いもくれるんだよ!」

ちなみに花さんは今年サンタさんから車をプレゼントされたらしい。

サンタさんって、儲かる仕事なのだろうか?

でなきゃただのパートタイマーに車なんて買わないだろうし。

それかもしかしてサンタさん、花さんのこと狙ってるのかな?

諸外国のVIPから誕生日を祝うメールが来る花さんなら、サンタさんもあり得る!

ポンと肩を叩かれ、乃蒼を見ると

「秋、サンタさんって…いないんだよ?」

ととても可哀想な子を見る目で俺を見ていた。

どちらかと言えば、今よりもさっきの会話の中でその目をして欲しかった。

乃蒼は変態に寛容だけど、夢みる男の子に対しては厳しいと思った。

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