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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
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秋の章 「文化祭準備、完了」

「というわけで、ぷぷぷ笑、タケルもぷぷぷ笑、大いに反省してるからぷぷぷ笑、お前らぷぷぷ、俺に…笑、俺に免じてぷぷぷ笑…許してやって笑、くれないか?大爆笑」

羽生さんがまともに話せていなかった。

「俺はぷぷぷ笑、いいけど笑、雪平は?ぷぷぷ笑」

「いや、…俺は…別に…気にして…ないから…。むしろ…俺の方こそ…………すまん笑」

雪平は一生懸命に笑いを堪えている。

「わぁ〜、タケル。変な頭ぁ〜」

乃蒼が均衡を破った。

「「「「「「ぶあっははははははははっ」」」」」

羽生さんに連れられて戻ってきたタケルの頭が、何かの先っぽみたいになっていた。

「羽生さん、これって普通に謝っても許してくれたんじゃないんですかね?」

タケルが笑、とても笑、不愉快そうだ笑。

「うん、なんかそうだったかもな?笑」

「羽生さんっ!大体100歩譲って坊主になるのは良いとして!なんすかこのガタガタな坊主は!自分で上手いって言ってたじゃないですか!」

女子プロの髪切りデスマッチに負けた方みたいな髪型だ笑。

「お前が暴れるからだろ笑。まぁいいじゃねぇか、重苦しい空気よりも笑いに包まれた方がうちららしいだろ?」

「笑わせるのは良いけど笑われるのは嫌ですよっ!」

俺をはじめ雪平も乃蒼も、野島さん達もちんな笑っていた。

ただ1人、彩綾を除いて。

「タケル、彩綾にも謝れよ」

羽生さんが促すとタケルは不満げな表情から一変してとても真面目な顔に戻った。

頭は変だけど。

「ごめんな。さっき羽生さんに叱られるまでお前の気持ち考えてなかった。俺と秋達の間で板挟みにさせちゃってごめん」

彩綾は

「羽生さんに言われるまで気づかなかったの?」

と答えた。

俺とタケルはこの声のトーンに慄いた。

マズい!彩綾が怒ってる…。

「私はねぇ、秋の話の続きが聞きたかったの。それをあんたが訳のわからないこと言って空気変えて…、自分の彼氏が輪を乱すようなことしている時の彼女の気持ちがあんたにわかる?わかんないよねぇ?わかんないから羽生さんに言われるまで私のこと考えもしてなかったんでしょ?」

荒木飛呂彦先生なら今の彩綾の背景に

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

と描くだろう。

とにかくこれはマズいと思った。

「うん、ごめん。自分のことばっかり考えてた」

はぁ…と彩綾は深く息を吐く。

「腰落として」

来た…。

言われるがままタケルは肩幅に足を開き腰を落とす。

「high or low?」

「治ったばかりだからハイで」

「オッケー。首に力入れて」

俺ら幼馴染以外は何が始まるのかと固唾を飲んで見守る。

この後どうなるか知っている俺は、思わずタケル同様歯を食いしばって首に力を入れてしまう。

彩綾が一歩後ろに下がる。

「ready?」

「………yeah」

彩綾が…そのままタケルに飛び込んで抱きしめた。

え?…ええっ?

「病み上がりだしね。今日だけは許してあげる。今度からちゃんと私の事も考えてねっ」

俺とタケルだけ物凄く驚き、他のみんなは『なんだよ…ただのイチャイチャかよ』といった表情だった。

「なぁ秋…」

「お…おう…」

「俺、首繋がってる?」

「うん。大丈夫。ちゃんと付いてる」

「変な方に曲がってるとか?」

「大丈夫。ちゃんと前向いてる」

「そっか…」

俺とタケルは彩綾が蹴らなかったことが未だに信じられずにいた。

「よっと」

彩綾はタケルの首に抱きつき掛け声をかけて両足を蹴ると、タケルは彩綾の両足を持つ格好になった。

「あぁ…いいなぁ〜」

生のお姫様抱っこを初めて見た!

「いいでしょ〜乃蒼!笑。タケル、これでチャラにしてあげる」

それで蹴られないのなら安いものだ。

highなんて選んだ日には2日は首が回らない。

もっともlowだと3日は足を引きずるけど。

「坊主頭もかわいいよ?」

タケルの頭を彩綾が撫でている。

「そうか?彩綾が言うならボウズのままにしよっかな?」

目の前のカップルが本格的にいちゃつき始めた。


「お前よくこんなまとめ方考えられたな笑。俺には出来ない収め方だよ」

俺のそばで野島さんが羽生さんにそう言うと、

「なんかよ、真面目に謝ってもそりゃ許してくれるだろうけど、その後しばらく変な空気になるの嫌だったんだよ。来週はもう文化祭だし。いつもみたいな感じで過ごしたかったんだよな」

と羽生さんはそう答えた。

「出しゃばらずにお前に任せて良かった。俺は正攻法しか出来ないからな」

「それぞれキャラってもんがあるだろ。お前はそれでいんだよ。ただ今回はお前じゃなくて俺の方が上手くいったってだけだ」

「何にしても感謝してるよ」

「ああ、大いに感謝しろ」

俺と一緒にそれを聞いていた雪平が

「…今回は正直助けられたって素直に思うよ」

と声をかけて来た。

「羽生さんか?そうだな。あのままだったらせっかくの文化祭がおかしな空気のまま始まっちゃってたかもしれないからな。お礼言っといたら?」

「本気で言ってるのか?やだよ笑」

「素直じゃねぇなぁ」

「なんとでも言え」


午後5時を回った頃、ようやく文化祭の準備が全て終わった。

店内はアジアンなテイストに仕上がり、ホネキチはターバンを巻いてインドの修行僧みたいな格好にさせられていた。

来週はもう文化祭当日。

野島さん達と、恐らくは雪平とも、そしてきっと俺らにとっても駿河二中での最後の文化祭が始まる。

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