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花さんと僕の日常   作者: 灰猫と雲
第一部
124/778

秋の章 「闇飼いとリーゼント」

再び教室の真ん中を通って前側から出ようとすると、リーゼントがドアの前を塞いだ。

「おい、さっきから何シカトしてんだよ」

俺たち2人が入ってくるまでの喧騒が嘘のように教室がシーンと静まり返る。多分このリーゼントが盛大にスベったのだろう。そんな凍りつく空気をさらに凍りつかせたのはもちろん雪平だった。

「お前が恥ずかしげもなくそんな頭をしている理由を言ったら教えてやるよ」

雪平が、雪平った(人を見下して小馬鹿にすること)。

「質問を質問で返してんじゃねぇよバーカ」

お前、学年トップに向かって何言ってんだ?笑

「質問で返してねぇだろうがバカ。日本語もわからねぇのかバカ。七尾に国語を教えてもらえバカ。あと死ねバカ」

「あぁ?随分と偉そうな口きくじゃねぇか雪平」

「俺はお前より偉いんだよ。そして人間としての格も上だ。ちなみにお前はこの教室の中で1番下だ」

当たり前のことをそんなハッキリ言っちゃダメだよ。

「お前誰にナメた口きいてんだ?殴られてぇのか?」

「お前こそ、誰にナメた口きいてんだよ。失明したいのか?」

ざわ…ざわざわ…

教室が少しずつ少しずつエスポワールの船内へと化していく。

「昔バカだったくせに学年トップとったからって調子に乗ってんじゃねぇぞ」

さっきから感じていたのだが、このバカは雪平の知り合いなのだろうか?言葉の端々からそう感じる。

「あ?うるせぇよ。お前は頭にヤマト乗せてるからバカのままなんだろ?」

おっとそれはダメだぞ雪平!松本零士先生に失礼だろ!

「あんだとコラ!もっぺん言ってみろよ」

「聞こえなかったのか?それとも意味がわからなかったのか?お前そこまでバカなのか笑」

気持ちいいくらいに雪平ってる(人を小馬鹿にして人格を否定すること)

俺はヤマトがぎゃふんと言うまで雪平を止める気がなかったが、さすがに女子達には申し訳ない気持ちになった。

「ごめんね、2人とも」

高橋真夏と瀬戸さんに雪平の分も謝っておいた。

「ええと…あの…ミナトは大丈夫…じゃないよね?」

「え?大丈夫じゃない?相手素人だし」

瀬戸さんの肝が据わっている笑。

「お前本当に殴られてぇみてぇだな」

衝突は避けられないと感じたのかヤマトの取り巻きどもがオロオロし始めてきた。

「あ?なに通常攻撃しようとしてんだ?。撃てよ、波動砲」

観察不足だ雪平。

そいつの顔見てみろよ、真っ赤だろ?今エネルギーチャージ中なんだからもうちょっと待てよ。そのうち撃つよ、そいつは。

けどもし本当に頭が割れて波動砲撃ってきたら、2人して謝ろうな。

「ヤマトじゃねぇぞコラ」

「それがヤマトじゃなかったら何なんだよ!いいから俺に構わずさっさとイスカンダルに向けて飛び立てよ。地球のピンチはお前が救うんだろ?」

なんか…雪平がズルく思えてきた。

こんな面白いおもちゃ、そうそうお目にかかれない。

俺もこいつをイジリたくてウズウズしていた。

俺の頭に名案が浮かび、怯えながら動向を見守っていた近くの女子生徒に

「それ、もう使わないなら一本くれない?」

と、使い終わった割り箸をひとつ貰い、

「あとメモ帳とペンがあったら貸してくれないかな?」

と言うと女子生徒はキョどった目で俺を見ながらメモ帳から破った紙とマッキーを貸してくれた。

その裏と表に『暴走天使』と書いて教壇に置いてあったセロテープを使い割り箸に固定する。

よし、完成。

未だ睨み合いを続けている雪平とリーゼント。

その間に割って入り、真っ直ぐになるよう丁寧に『暴走天使』の旗をリーゼントの頭に刺し、そして力一杯に叫んだ。

「お子様ランチかこの野郎っ!」

「なんでお前の方が先にキレてんだゴラァァァ!」

「テメェの天使が暴走してっからだろがぁ!」

頭に旗刺してイキってんじゃねぇバカ野郎!

雪平に加え俺まで参戦し、さすがに闇飼いと鷹の爪の2人を相手にするのは分が悪いと判断したのか取り巻きどもは

「やめた方がいいよコーちゃん。こいつらダブルドラゴンに勝った奴らだろ?」

と止めに入った。

胸がざわつく。

「おい待てチョビヒゲ。お前今なんて言った?」

「俺ヒゲなんて生やしてないよぉ」

「んなことはいいからっ!今なんて言った?」

「え?だから、ダブルドラゴンに、、、」

「違うっ!その前!」

「その前って…やめた方がいいよコーちゃん?」

こいつ!思い出した!

「なぁかぁはぁしぃこぉおぉいぃちぃぃぃ!」

こいつ今年の春、俺とタケルに絡んできた中橋光一じゃねぇか!

「テメェ2度と俺に関わるなって言ったよなぁ!そんなウンコみてえな頭してっから忘れんだろが!」

俺達2人を前にしても中橋光一は怯むことなく

「うるせぇ!いつの話してんだこら!俺は今、2年の不良を束ねてんだぞ!」

とオラオラしてくる。が、目線を落とすと足がガタガタしている。

教室にいる生徒と子分を前にして引くに引けない状況なのなだろう。

「あぁ?じゃあ俺も黙らせてみろよお子様ランチ!大体ウチの学年の不良なんてそこにいるチョビヒゲとハゲとデブだけじゃねぇか!」

チョビヒゲとハゲとデブは急に自分が話題にのぼり明らかに動揺していた。

「よしお前らまとめてかかってこい。ブチ殺してやる」

「ちょい待て雪平。俺の指が喉仏を咥えたくてウズウズしている」

こいつらはeagle claw(鷹の爪)がやる笑。

「私もいるよ?」

なんでafter school Siren(二本足の人魚)まで加わろうとしてるんですか?

「わ、わたしも、いるから!」

声が裏返るくらい怖いならアンタは引っ込んでなさい!

「マナツはいいよ。瀬戸さんもせっかくだけど今は遠慮して。俺、こいつがムスカ大佐みたいに『目がぁ…目がぁ』って言うの見てみたいんだ」

「あ!ずりぃぞ!俺もこいつの喉潰したいのに」

「お前にはそこの3人やるから我慢しろ」

俺がチラッとみると3人はガタっと一歩下がる。

引けば老いるぞ臆せば死ぬぞ。

「おいヤマト、知ってるか?お前らは俺らに危害を加えたら停学だ。けど俺らは特進だから無罪放免だ」

んなわけねえだろ笑。そんなの誰が信じ、、、

「くそっ、特進だけ優遇されやがって」

信じたぁ!

こいつ本物のバカだ!

「そんなわけねぇだろバカどもがぁ!」

地を這うような野太い声でドアの前に立っていたのは、とんとご無沙汰していた吉岡先生だった。

「あ、先生久しぶりっ」

「久しぶりっ、じゃねぇ!お前と雪平、それから高橋に瀬戸!生徒指導室に来いっ!」

あ、いいね。お茶でも飲みながらチーズタルト食べよう。

「は〜い笑」

「それから中橋。お前いつになったらその髪を直してくるんだ?」

そりゃそうだ、乃蒼が許されないんだぞ?お前も髪を黒くしろ。だか中橋光一は

「うるせぇよ。なんでテメェに指図されなきゃなんねぇんだよっ!」

と吐き捨てた。

喉元めがけて指を走らせたが、すんでのところで吉岡先生に手首を掴まれ届かなかった。

「だからやめろって七尾」

中橋光一に暴言を吐かれてもなお吉岡先生の口調は穏やかだった。

「離して先生。じゃないとコイツ殺せない!」

「殺したらお前、親呼ばなきゃならんだろ」

「先生、親より先に救急車と警察です」

なに冷めてんだよ雪平!熱くなれ!焼けた鉄のように真っ赤に燃え上がれ!燃え上がれガンダム!

「少し落ち着け七尾」

「けど…」

「いいから早く生徒指導室に来いこのボケっ」

「あ…先生、痛い。…痛い痛い痛い!耳引っ張らないで!痛い痛い…あ、ちょっと良…やっぱ痛いっ!痛いってばっ!」

いつかの野島さんのように耳を引っ張られながら俺ら4人は生徒指導室に連れていかれた。

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