美少女転校生現る
「今日からこの学校に転校してきました。犬井春香です。よろしくお願いします。」
突然オレの前に現れた、『犬井春香』と名乗るツインテールのどこか懐かしいオーラを放つ美少女。
そんな美少女によってオレの人生は新しく廻りはじめようとしていた。
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高二の春。学校生活始まりの時期。
特になにも期待などしていない。
期待しても無意味だから。
オレ、黒井恵斗は普通のやつより性格が冷めているのかなんなのかわからないけれど、人生になにも期待してない男だ。
高校生活の春という単語を聞いて浮かび上がるのは、クラス替え、転校生、などだろう。
みんな胸を膨らませ、ドキドキして登校するものなのだろう。
そんなの馬鹿らしい。
オレのマニュアル。
クラス替え。クラス替え=リア充共の集まり。しかも、オレには友達と呼べるやつが一人もいない。
転校生。可愛い子が転校してくる。これは、完全に期待してない。
俺の人生は破滅的だ。
口に出すほど辛くなる。
憂鬱ないつもの朝、オレは新しい教室のドアを開けた。
俺の新しい席。後ろの窓側。
新しい席に腰をかけると、学年が上がったのもあり、2階から3階のクラスになったため、よりグラウンドが見渡せる。
グラウンドの周りには、桜の木が何十本も咲いている。
オレだって性格が冷めてるとはいえど、桜の花弁が咲いていると綺麗だなとは思う。
しばらくオレがたそがれていると、新しい担任が教室に入ってきた。
去年と、また同じ担任。つまらない。憂鬱だ。
そしてHRがはじまる。
担任がなにかを話している。
すると、教室のドアがガラリと開く。
担任の話を聞いていなかったオレは、突然開いたドアが怪奇現象で開いたものだと一瞬目を疑った。
けれど、それは怪奇現象でもなんでもなかった。
転校生がドアを開けたのである。
教室がざわつく。
男子の目が雄叫びを上げる。それを、女子がジト目で見る。
そう、そうゆう場にならなければおかしい状態だったのだ。
なぜなら、転校生は誰が見ても可愛い美少女だったから。
歩く度に茶色のツインテールが揺れる。
どこか懐かしいオーラを放つその美少女は言った。
「今日からこの学校に転校してきました。犬井春香です。よろしくお願いします。」
拍手が盛大に起こる。
オレがポカーンとしていると、担任が美少女に後ろの窓側の席の黒井の隣に座れと言った。
ん...?後ろの窓側の席?黒井?
後ろの窓側の席はオレがちょうどいるところだ。
しかも黒井って。え?黒井?
黒井ってこのクラスにいたっけ。
...って、オレじゃん!!!
オレの席の隣だと!?
まてまてまて、混乱してるぞ、頭が。
たしかにオレの隣の席は空席だ。
まさかとは思ったが、ここに座るのか!?
落ち着け、オレ。
こんな美少女ごときに気弱になるなよ、オレ!
オレが期待していないこと。
『転校生。可愛い子が転校してくる。』
このマニュアルは嘘なのだと確信した。
美少女がオレの隣の席に座った。
そして、
「よろしくね、恵斗くん。仲良くしてくれると嬉しいな。」
と最高の笑顔で俺の目を見て美少女は言った。
「よ、よろしく。」
あぁ、笑顔が天使すぎる。
揺れるツインテール。そのツインテールには骨の飾りがついた髪ゴムが結ばれている。なぜ、骨なのかは疑問だが。
けれど、近くで見るともっと可愛いな。
それにしてもほかの男子の視線が物凄く痛い。
中にはオレの藁人形を作り、釘を打つところを見せつけてるやつもいる。
いつ用意したんだよ、藁人形(汗)
この美少女、『犬井春香』が来たことで俺の人生は新しく廻りはじめようとしていた。