親友×親友
「あぁ、また負けたっ!」
俺のとなりで頭を抱えているのは、親友の新だ。
「健は強すぎんよ!」
「新が弱いんだよw」
今日は日曜日。2人で俺の部屋でゲームをして遊んでいる。
「もういっかい!次は勝つ!」
「あぁ、いいよ」
*
*
*
「ところでさぁ」
コントローラーをかちゃかちゃ動かしながら、新が切り出した。
「なんだよ」
俺も画面を見ながら返事をした。
「俺さ、彼女できたんだよねw」
「っ!?」
俺は一瞬固まった。
そして、俺の手はコントローラーを投げ捨て、健の胸ぐらに掴みかかっていた。
「うわっ!」
「ほんとか?」
自分でも恐ろしいくらい低い声で俺は聞いた。
「だ、だったらなにっ?なんで怒ってんだよ!…あ、あれか?俺が羨ましいんだろ?お前、今まで彼女できたことないしっ!あっ!」
俺は新を押し倒した。
「違う、そうじゃない!」
「だ、だったらなんだよ!離せよ!!」
「分からない。」
「はぁ?」
そう、自分でもわからない。なんでこんなに怒っているのか。
「お前、もう帰れよ」
俺は新に言い放った。
「健が怒ってるのに帰れないよ」
新は優しい。優しすぎる。
そのせいで、俺は…
「いいから帰れよ!!!」
ドンっと新を突き飛ばす。新は壁にぶつかった。
「痛っ!」
「!!」
「新!わるい!大丈夫か!?」
ふっと、我に返った。新の左頬は赤くなっている。
顔をあげた新は、涙目で、なんていうか、綺麗だった。
「なんで、健は、こんなことっ…」
そのとき気づいた。この気持ちは『嫉妬』だ。
「新、おれ、俺はっ…」
言ってしまっていいのだろうか。
この言葉を言ったら、もう親友にはもどれないんだろうな。
「新、すき。好きだ、おれ、もう押されられない、くるしい」
俺は自分の声を絞り出して、言葉をつむぐ。
「苦しいよ…」
*
*
*
笑うなら、笑ってくれ。だけど、俺はなかなか顔を上げられなかった。新は、どんな顔をしてるだろうか。軽蔑してるだろうか。
恐る恐る顔を上げると、新は意外な顔をしていた。
「健…」
新は頬を赤くして俺を見ていた。
「そうか、健はそういう風に思ってたのか…なのに俺は、、、ごめん」
「い、いや、新が謝ることじゃないよ!俺が悪いんだ。ごめん」
お互いに謝罪をすると、部屋に再び沈黙が。
「俺、別れるね」
「はっ?なんでだよ」
「だって、健との関係が壊れちゃうなら、彼女なんていらない。そもそも、そんなに好きじゃなかったし、それに…」
「それに、なんだよ?」
新は、まっすぐに俺を見つめて、微笑んだ。
「俺も気づいちゃったから。自分の『本当の気持ち』」
*おわり*