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TONDEN FARMER  作者: 800
第2章 プロローグ
35/45

プロローグ と言う名のダイジェスト

 すみません。まだ本編じゃありません。


 『戦国KARUMA』側の解説もしとかないと、解り難くなるかなぁ? とか思ったんで書いときました。

 一般的なプレイヤーの視点で書いているので、そこら辺の多くのプレイヤーは大体こんな感じてプレイしてるんだ。とかの雰囲気を味わってもらえたら。ってとこです。

 ただ、そのために一部微妙な解釈だったり、よく解ってなかったりしますが、適当にプレイしているだけのライト・ユーザーの認識はこんなモンです。

 やあ! 金さえもらえば誰の味方もする、傭兵家業の越後屋さんだ!

 いきなり他のゲームの話をされても困るだろうと思って、俺がちょっとだけ解説をしてやるぜ。

 ついでに、このゲーム、『戦国KARUMA(カルマ)』で今までの1年間、どんな経緯があったかも語ってやろう。とは言っても、一介の傭兵プレイでストレス解消に適当に暴れてるだけの俺じゃ、解らん事も多いんだがな。

 ま、適当に客観的に見た事だけ語るとするさ。んじゃ、軽く始めるぜ。




 とりあえず、『戦国KARUMA』の基本的な遊び方のお浚いだ。

 ゲームを始めると、先ずは雑魚中の雑魚、『足軽』からのスタートだ。笑っちまう事に、『足軽』はアバターの設定が出来ねぇ。NPCと同じ、丸い頭に円筒形の手足。手抜きの人形みたいなスタイルだ。

 これはリアルな人間をぶっ殺す事に慣れるのは不味い。って理由でそうなってんだが、マジでPCとNPCの区別が付かねぇ。十把一絡げな扱いがマジパネェ。

 まぁ、ちゃんと自分オリジナルのアバターが欲しいなら、さっさと出世しな。ってこった。

 ってな訳で、出世の話。先ずは武士のランクがどうなってるのか、ちょっと説明するぜ。

 スタート時のデフォルト設定で言うなら、上から、


 ・大名

 ・城主

 ・侍大将

 ・大将

 ・組頭

 ・小頭

 ・足軽


 っと、大体こんなとこだ。これがリアルと同じかどうかは知らねぇが、多分同じなんじゃね? 実際はゲーム的な都合で調整がちょこっとは入ってると思うがな。

 何で大体なのか、ってぇと、藩って言うか大名の方針によっては、階級を弄れるからだ。所によっては、軍隊っぽく『軍曹』とかの階級を作ったヤツも居た、って話だ。……その大名は、とっくに潰されたけどな。

 これに、技能によっては『槍足軽』とか『鉄砲足軽』とかの派生系がある訳だ。

 ちなみに、俺は今『槍小頭』だ。NPC雑兵の部下が5人程居て、まぁ、小隊長みたいなモンだ。これ以上の出世は面倒臭ぇんで断ってる。傭兵として動き難くなるんでな。


 更に笑っちまうのが、この階級、手柄(スコア)を上げれば自動的に出世出来る、ってモンじゃねぇ。上役が人事を担ってて、そいつに認められねぇと出世出来ねぇんだ。

 NPC上司なら、特に問題が無ければスムーズに出世させてくれるんだけどな。これがプレイヤーだったりすると、自分が気に入らねぇヤツは出世させねぇ。とかあったりする。他にも、賄賂持って来ねぇと出世させねぇ。とかな。

 まぁ、あまり無茶苦茶やってると、藩の機能が滞って他所の藩にボロ負けしたりするんで、見つかったら処刑されるんだけどな。傭兵プレイで特定の藩に居つかねぇ俺には関係ねぇ話なんで、これ以上詳しく知らねぇや。


 ちょっと補足説明しなきゃなんねぇのを忘れてた。

 戦国時代では、必要に応じて彼方此方(あちこち)に城を建ててたんで、大名が部下にその城や周りの土地の管理を任せてたりしたんだ。だから、大名の下に城主ってある。江戸時代だと1つの藩に城1つになっちまったんで、大名と城主は同じなんだけどな。

 ついでに言うなら、藩ってのも江戸時代に定められたモンで、戦国時代には藩って呼んでなかったらしい。だが、皆何となく大名の領地は藩、って思い込んでる所為か、そう呼んじまって定着しちまったんで、解り易い事もあって誰も修正したりしねぇ。




 んじゃ、次は戦術の話しかね。

 下っ端の内は上からの命令に従って、適当に暴れてりゃ済むんだが、ある程度出世すると、今度はその命令を出す側になる。当たり前の話だな。逆の言い方をするなら、命令する能力が無いと出世出来ねぇ。って事でもある。

 俺は部下達に『敵に突っ込め!』以外の命令をした事がねぇ。我ながら酷ぇ上司だよ。部下がNPCとは言え、何人無駄死にさせた事か。……まぁ、NPCでも死に戻りするんで、居なくなる訳じゃねぇんだが……。

 とにかく、普通のプレイヤーなら、もうちっと考えて指示出す訳だ。と、更に上への出世が出来ねぇんでな。基本戦略シミュレーションなんで、命令出す側になりたい。ってヤツが殆どだ、って事もある。

 ここで重要になって来るのが、天・地・人ってヤツだ。チュートリアルでちょっと解説されるんだが、俺は『天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ』しか知らなかったんで、何でそんなモンが? とか思ったりしたモンだ。

 要するに、こんな事だ。


「天の時は地の利に如かず。地の利は人の和に如かず」


 チュートリアルの受け売りだけどな。元ネタは誰の台詞か知らん。

 戦に勝つための3つの要素。その重要性の優劣を語ったモンらしい。


 運が良けりゃ勝てる。

 状況を見てちゃんと戦術を立てれば、運が良いだけのヤツなんて敵じゃねぇ。

 きちんと訓練して、互いに補い合える兵士達が居れば、小賢しい作戦なんてひっくり返せる。


 ……こんな感じだったか? 俺自身は切り捨てちまった話なんで、ちょっと自信ねぇや。とにかく、大体合ってる。って言っとこうか。

 逆に言えば、人材育成が一番大事、的な。……いや、それはどっちかってぇと戦略の話になって来るんで、ここでは置いといて。

 戦術、ってのには、地の利を知る事が不可欠らしい。そりゃ、誰だって戦い難いとこで戦いたくねぇしな。

 逆に『背水の陣』を敷き、ワザと後を無くす事で、兵達を死に物狂いで戦わせる。って手もあるらしいが。

 この辺は地理の勉強が出来るヤツと出来ねぇヤツとの差が出て来る。例の『国の監修』ってヤツの影響かね。

 他にも、生産性の高い土地を奪うとか、戦略の事まで考えるとなると、何処でどんな特産物が得られるか、とかの知識も必要になって来る。と、無駄な戦いに戦力を投入して、採算が採れねぇとかで潰れたとこもある位だ。

 まぁ、戦術ってのは出来るだけ有利に戦うために色々考える事なんで、部隊の特性とか相性とか、奇襲を仕掛けて相手に対応させねぇ様にするとか、ややこしい事をしなきゃならねぇんで、俺には無理だ。そんなんはその手のゲームを今まで遊んで来た連中に任せる。

 もうちっと階級が上がりゃ、大体『足軽大将』とかそれ以上位だったか? 作戦指揮をまるでゲームみたいに簡単に出来る様になる、『戦術支援システム』が使えるらしいんだが。って、そもそもゲームだろ! ……だれも突っ込んでくれねぇんで、自分で突っ込んじまったぜ。

 ただこのシステム、ちゃんと索敵とかして手に入れた情報しか表示されねぇんで、偵察して情報を収集したり、戦場を俯瞰出来る様に高台に陣を構えたりと、工夫しなきゃならんらしい。

 あと、階級を弄れる、って話をさっきしたと思うが、これは命令系統をカスタム出来る、って事なんだ。それは組織の改変に繋がるんで、大名クラスにしか権限がねぇんだけどな。

 これで自分が遣りやすい様に弄れば、それなりに効果が出る筈なんだが、これもさっき言った失敗した例、効率的にシステム化された軍隊の指揮系統を模倣しようとしたミリオタが、結局使いこなせずにアッサリボロ負けした事があったんで、あまり弄ったりしねぇのが今の主流だ。




 んじゃ、次は戦略の話な。

 当たり前の話だが、戦いには準備が必要だ。兵の訓練を初め、兵に武装を揃えたり、陣地を構築したり、兵站の補給を考えたり。んで、それにどんだけの金が掛かるんだよ。って話になる。

 昔、どっかのパイロットが言った話らしいが、


「敵機を空戦で落とすのは下策。飛び立つ前に壊すのが上策。そもそも飛行場を造らせないのが最上」


 ……だったかな? うろ覚えだが大体の意味は合ってると思う。

 要するに、順番に戦闘・戦術・戦略の事らしい。ぶっちゃけ、相手に戦う準備すらさせなければ、お手軽に勝てる訳だ。

 逆もまた然り。戦いに勝ちたきゃ、如何に確実に戦う準備を整えるかが重要になってくるのさ。……これまた、チュートリアルの受け売りだ。

 それにモロに響いて来るのが予算の話って訳だ。藩の収入って言うと、要するに年貢の話になって来る。

 時代劇とかで藩の規模を、○○万石とか言ったりする事があるのは知ってると思うが、この石って単位は、単純に言ってお米1年分位だ。平たく言うなら、何人の住人を養えるか、って目安とも言える。もちろん、これが多い程、年貢も多く入り、藩の財政が潤う訳だ。

 だが農にはトラブルが付き物。台風・水害・渇水・冷夏・その他諸々。色んな自然災害の影響で、収入が大きく変わってくる。だからこそ、まずはトラブル対策で、安定した収入を得る事を目指すとこから戦略を始めなきゃなんねぇ。

 解り易いところでは、治水工事だな。川が曲がってるから、大雨とかで増水するとすぐ氾濫する。だったら、真っ直ぐにしてやれば、氾濫し難くなる。これで大分被害を抑えられる筈だ。

 その上で、用水路を作ったりとか、溜め池を作ったりとか、井戸を掘ったりとか。水を確実に確保出来る仕組みを作れば、相当違ってくる。

 また、戦国時代は農民を雑兵として徴用してたんで、あまり戦争ばっかしてると、農作業が出来なくなって困った事になる。

 この辺を理解しねぇで、戦闘技術ばっかり磨いてたとこが、突撃した片っ端から鉄砲隊に撃退された。って事もあったりしたモンだ。ちゃんと予算がありゃ、そっちも鉄砲隊を用意出来たろうにな。

 他にも街道を整備したり、川に橋を架けたり、要所に砦や城を築いたり。やる事は幾らでもある。……例によって、俺には関係ねぇ話だけどな。そんなややこしい事は、自分の土地持ってる城主以上の階級と出来ねぇしな。つまり、このゲーム全体でも、その辺に手を出せるプレイヤーは本の一握り、って訳だ。


 さて、ここまで来ると一部の者は大体似た様な事をやりだす。ぶっちゃけると、リアルの戦国大名がやった有名な改革の物真似だ。リアルで成功してる実績があるなら、簡単だろ。って思っちまう訳だ。

 ……結論から言うなら、大概失敗してるんだな。これが。

 何でか、って言うと、例えば有名どころで『楽市楽座』何だが、あの織田信長がやったってヤツ。関税とか撤廃して物流を促進させたり、一部の商人が市場を牛耳ってたのを潰して自由競争を促したり、……であってたっけ? まぁ、これなんかが判り易くて、とりあえず皆やりたがる訳だ。

 んで、真に受けてやってみたりすると、税が入らなくなるばかりか、商人が好き勝手な事をやり始めて混乱したり、自由に出入りする商人の中にスパイが混じってたりと……、色々あって大打撃を受ける訳だ。

 俺も勘違いしてたんだが、成功例の物真似、ってのは結構難しいんだわ、これが。成功例が故に、表面上の都合の良い部分だけがクローズ・アップされて、印象に残ってるからだ。どうやって成功させたのか? その裏側の苦労まで知ってるヤツは殆ど居ねぇ。

 こう言うのも、『生兵法は怪我の元』と言うのかね。半端な知識で手を出すと、大概失敗するってこった。




 っと、大体こんな事を気にしながらゲームを進めて行く訳だ。

 しっかし、初期FDゲームは国の監修の所為で説教臭くなった。とは良く聞く話だが、『戦国KARUMA』もその例に漏れず。って訳だ。色んな事を知ってるヤツと知らねぇヤツとでは、戦果が全然違う。

 他者より秀でたければ、何をやりたいのか目標を持って、それに目掛けて勉強しなきゃなんねぇ。

 要するにアレだね。ガキ共が良く言う、『勉強が何の役に立つのか?』ってのに対する回答の一種だろう。

 勉強が役に立つんじゃねぇ。勉強出来ねぇヤツは役に立たねぇんだ。

 物事を成すには、色んな知識が必要だ。折角学校で態々教えてくれるってのに、そこで勉強出来ねぇヤツが、もっと勉強が必要な社会で役に立つ訳ねぇだろ。って、暗に言ってるってこった。

 勉強ってのは、『強く勉める』って事。解り易い言葉を使えば、『経験値積んでレベルUP(アップ)』だ。

 勉強したくねぇ。とか言ってるヤツは、人生ゲームをレベルUP無しの縛りプレイやってる様なモンだっつぅの。どんなマゾだよ。

 実際、『戦国KARUMA』でも、その辺解ってねぇヤツ等はすぐに淘汰されて、底辺に落ち着く事になっちまう。そう考えると酷ぇゲームだろ。何でこれがFDゲームの中じゃ1~2を争う人気ゲームなんだか。

 額面通り『戦略シミュレーション』を期待してるなら、止めといた方が良いぜ。


 ……よし。ネガティブ・キャンペーンはこんなモンでいいか。

 これで面倒臭ぇ競争相手が減ると良いな。




 それでもまだ興味があるってヤツには、実際にどんな流れでゲームを進めて来たか、これまでの話を語ってやるぜ。

 1年間、ゲーム内時間では6年間になるが、ホント戦国時代。乱世も良いとこだよ。

 彼方此方で新興勢力が旗揚げしては潰され、謀反や下克上が横行し、裏金流れて寝返りがあったり。いや、これってマジで教育に悪いんじゃね? って程だ。

 雑兵が手抜きデザインなのも、血や怪我のエフェクトが誤魔化されてるのも、死体がすぐ消えるのも、全部悪影響を防ぐため。って理由でそうなってんだが、ここだけ気を付けても無駄だろ。って皆思ってる。

 って、話が逸れちまったな。まぁ、これまで語って来たその辺の設定を念頭において、プレイヤー達がどんな事を考えならがプレイしてたのか、適当に想像しながら聞いてくれや。


■1年目

 早速で悪いが、実はこの時俺はまだプレイ始めてねぇんで、伝聞になる。

 先ずはスタートすると適当な農村? 辺りにランダムで配置される。底から成り上がって行く事になるんだが、何処の大名に仕えようか、大抵のヤツはいきなりここで躓く。

 東北各地に大名っつぅか武将がいっぱい居て、正直言って何がなんやら判らん。何が判らんのかって言えば、意外と戦国武将の事なんざ知らねぇ。って事が自覚出来る訳だ。……マジでマイナーな武将が多くて、よっぽどのマニアじゃねぇと名前聞いてもどんなヤツか判らなかったらしいぞ。

 その所為で、当初はオリジナルの武将なんじゃねぇか? とか憶測が飛び交ったらしいが、時代的にちょっと疑問な武将も居たらしいが、大体実在したらしい。


 んで、次に問題になるのが、何処に行ってどうしたら仕えられるのか、謎だって事だ。

 何せ、初期アイテムにある地図は、戦国時代の地図だって事だ。地図の希少性を考えれば、もらえるだけありがたく、文句を言う筋合いじゃねぇんだが……。ぶっちゃけ、酷ぇ精度だ。つぅか、自分が何処に居るかも判らん。

 おまけに、戦争で頻繁に領地の境が変わるため、国境線が全然当てにならねぇ。

 どうすんだよ? って当時のプレイヤーに聞いたら、そこら辺の噂話、『年貢が高くなった』とか『戦争準備を始めてる』とかのきな臭い話を基に、実際に徴兵してるとこを探すんだとか。……アホみてぇに面倒臭ぇ。今じゃ、プレイヤー達がその辺をもう少しシステマチックにやれる様に環境を整えてるんで、新人は少し楽になってるんだがな。

 ついでに言うなら、情報伝達も戦国時代なので、遠くの話は全然聞こえて来ねぇ。結局、スタート地点の近くの武将に仕えるところから始めるのが一般的だとか。

 情報に関しては、攻略掲示板とかで国情を漏らしてもダメだ。見つけ次第削除されるし、そのプレイヤーは裏切り者とか間者扱いで打ち首になったり追い回されたりするとか。……それでも、何時まで経ってもそう言うヤツは一定数居るんだよな。


 何とか戦に参加し、1段階でも良いから出世出来れば、やっとそれなりに遊べる様になって来る。

 先ずは最初に言った様に、自分のアバターがカスタム出来るってのがデカい。これは単なる外見だけの話じゃねぇ。装備も支給される物だけじゃなく、金さえありゃ、自分の好きな物を買って装備出来る様になるからだ。

 と喜んだのも束の間。大名がその辺の産業に力を入れてなきゃ、良い装備なんて何処にも売ってねぇ。ってオチが付くんだなぁ。これが。

 んで、皆早く内政に口出し出来る様になりたい。と、頑張って手柄を立てて出世しようとする訳だ。

 それと、出世すればNPC雑兵の部下が付く。ってのも無視出来ねぇ。NPC雑兵は全て、どの陣営の者でも完全に互角。平たく言うと、指揮するヤツ次第で戦果が変わって来るんだ。腕の見せ所だな。

 まぁ、中には部下なんぞほっといて、自身の装備やスキルを磨き、無双とか一騎当千とかのプレイするヤツも居るんだけどな。ちなみに、俺がそのタイプだ。


 そんなこんなで、皆地味に戦してる中、早いヤツはゲーム開始1ヵ月、ゲーム内時間で言うなら半年で大名を討ち取り、下克上に成功したらしい。実際やってみれば分かるんだが、スゲェ難易度高くて、どんだけやりこんだらそうなるんだよ。ってモンだ。

 ……オチは、根回しが足んなくて単なる逆賊として処理されたり、速攻で大名倒すために戦術極振りで内政が疎かになって自滅したり。戦略シミュレーションはじっくり腰を据えてやらなきゃダメだな。って事を再確認した1年だったってこった。


■2年目

 この年、プレイ・スタイルに大きな影響を与える、画期的な発見があった。

 実は、大名に仕えなくても戦闘行為が出来たんだよ! そう。野伏(のぶせり)プレイの誕生だ! ぶっちゃけ盗賊・山賊・野盗の類だ。

 ちなみに、栄えある最初の野伏プレイヤーは俺。同期のヤツを2~3人誘ってな。俺はこの頃から始めたんだ。

 野伏の何処が栄えある何だ? って思うだろう。確かに野伏自体は褒められたモンじゃねぇが、発見としては戦術的にも戦略的にも無視出来ねぇモンだったんだ。

 要するに、とりあえず金目の物持ってそうなヤツ等、商人なんかを襲う訳だ。それが、通商破壊になってたんだよ。商人以外にも、年貢を運ぶ農民とか狙い目なんだが。

 そんな事繰り返してたら、俺が縄張りにしてた国の国力が激減。アッサリ他の国に潰されちまった。いや、ありゃビビッたね。

 そのまま俺等も一緒に潰されるかと思いきや、その攻めて来た国の大名……、そいつも今や潰されちまった所為で、名前も忘れちまったが、とにかくそいつに、


「これからも敵国内で盗賊やってくれ」


 って誘われた訳だ。

 この時、序でに出世して、俺等はNPCの部下も付いてちょっとした盗賊団を旗揚げしたんだ。表向きは盗賊団だけど、裏ではどっかの大名配下の傭兵部隊。ってな扱いかな?

 これでしばらくは上手く行ってたんだけどな。金は潤うし、戦利品に良い装備があれば自分達で使っても良いし。……当たり前の話だが、そんな事ばっかやってりゃ、それなりに優秀な護衛も付く訳で。そうなると失敗も増え、情報が漏れ、足が付き易くなって……。

 結果、やり口が悪どい。って事でその大名は周囲の国から袋叩きにあって潰される破目に。

 俺等は何とか逃げ遂せたけど、追っ手の目を眩ますため、散り散りになって逃げたんで、折角の傭兵団もアッサリ解散って訳だ。早かったなぁ……。


 んで、その所為でしばらく逃げ回ってたんで、ちょっと情報が入って来難い状況が続いてたんだが、プレイヤー同士の連携が上手く機能して、下克上が成功する例が増えて来たのもこの頃だ。そもそも、周りの国が手を取り合ってウチの国を袋叩きにしたのも、その連携の所為なんだからな。

 当時は余裕が無くて気付き様も無かったが、情報伝達に画期的な進歩があった所為らしい。その辺の改革に手を出せる地位まで出世したプレイヤーが増えた所為。って言い方も出来るな。

 その肝心の画期的な情報伝達手段は何かってぇと……、ズバリ! 『忍者』だ!

 何でだよっ! って最初知った時は突っ込んじまったぜ。普通なら、狼煙とか伝書鳩とかだろ。と思ったんだが、それらはデフォルトであったらしい。

 んじゃ、何で忍者が画期的か……。『汚い、流石忍者、汚い』ってのを地で行ってやがった。ヤツ等……、リアル知り合いなのを利用して、直接電話で情報遣り取りしてやがった! 攻略掲示板の書き込み制限とか意味ねぇよ!

 それだけじゃねぇ。リアル知り合いじゃねぇ忍者同士でも、綿密に暗号とか決めといて、掲示板の適当なコラムとか、広告コーナーとか、辞世の句コーナーに情報を紛れ込ませてるらしい。……この辺は未だ確認が取れてなくて、規制しようがねぇんだとか。

 とにかく、忍者が本気になれば、狼煙や伝書鳩より多くの正確な情報を確実に届けられるって訳だ。忍者マジパネェ……。


 結論から言えば、野伏プレイによる通商破壊と、忍者プレイによる情報伝達網。この2つの確立が、この年の判り易い成果だったって言われてる。

 このおかげで、プレイヤー達は選択肢が増えて遊びの幅が広がり、戦略も複雑化して色々と新たな試みがやられる様になって行く訳だ。


■3年目

 この頃になって、ようやく今でも名を聞く様なプレイヤーが台頭して来た。戦も内政も出来る、文武両道なヤツ等のお出まし。って訳だ。そうじゃねぇヤツ等は、一時的に目立つものの、すぐにポシャるのも何時も通り。

 そうやってポシャったヤツの代表格が、軍の指揮系統を模したミリオタのヤツ。ある程度の小規模な軍なら良かったんだが……。実際、そいつの部隊は精強で負け知らず。って有名だったしな。

 だが、組織の拡大につれ、細分化した命令系統は無線なんかのリアル・タイムの伝達手段が無い事が災いし、極短い期間大名になっただけで潰されたんだよな。今はどっかの大名の配下で一部隊集いてる。ってとこに落ち着いたとか。

 近代化した軍の命令系統ってのは、それ相応の技術が前提になってるんで、戦国時代で再現するのは無理があったらしい。とその後分析されたそうな。

 今でも残ってるところで、この頃に成立したのは、


・食道楽を極めようとする『天津藩』

・某RPGのファンが集まった『有亜藩』

・某野球チームのファンが集まった『猛虎藩』

・マジで遊郭を作ろうとか考えてる『いやんあ藩』


 ネタ藩ばっかりかよ! って当時皆して突っ込んだものさ。大名になりゃ、国名を好きに変えられるとは言え、そりゃねぇだろ。ってな。ついでに言うなら、『藩』って付ける様になったのもこの頃からだ。

 だが、このネタが藩の方針を解り易く明示し、同好の士が集まる事で安定した体制を整えるのに役に立ってたとは……、だからこそ今まで生き残ってるとは言え、流石にそれは読めねぇよ。


 さて、話は変わって、この頃から、道具等の革命的進歩が出来ねぇか? って試みが始まった。

 ゲームのルールでは、プレイヤーは直接的に開発に係われねぇ。内政やら戦術・戦略の手法なら現代知識を基にする事も出来るが、武具とかの開発に関しては、予算を付けて発展を促せるだけ。どうやっても戦国時代の技術範囲内で収まり、オーバー・スペックのアイテムなんざ出来やしねぇ。

 ……だが、本当にそうなのか? とか言い出す馬鹿が居るモンだ。んで、職人NPCに根気強く説明を繰り返し、試作を繰り返させたらしい。……結論から言うなら、大した成果は上がらなかったんだけどな。

 しかし、当時はもしかしたら? と言う懸念が拭え切れなくてな。各地でその手の試作品が色々作られて、野伏が狙う獲物も、忍者が探る情報も、それら新技術関連に集中してた。って時期だったんだ。

 更にそれに関連して、一部の技術は外国との貿易で手に入れられねぇか? って話も出て来た。

 戦国時代設定だが、火縄銃はある訳だし、外国との貿易が出来ねぇ、って方が不自然だろ。ってのが共通見解だったんだ。まぁ、解らなくもねぇ。ただ、どうやるかは見当も付かなかったらしいけどな。

 それでも時間は掛かったものの、後に成果が上がって、それがフラグになって技術も進歩させられたんだとか。


 俺は何やってたかと言えば、どっかで戦があると聞きゃ、末席に加わって禄を食んだり、そんな仕事もねぇ時ゃ、また野伏やって通行人襲ったりしてた。要するに、主流から外れて適当に過ごしてた訳だ。

 そして、その事が……、俺と、傭兵プレイで商隊の護衛をしてたあるプレイヤーとの邂逅になるのであった。

 この出会いが『戦国KARUMA』の大勢を変える分岐点になろうとは……、当時の誰も、当事者である俺等ですら思いもよらないのであった。……なんちゃって。


■4年目

 え~、眼帯付き傭兵プレイヤーに返り討ちにあって、無理矢理手下にされた俺は、新規プレイヤーを唆して新たな勢力を立ち上げさせられるのであった。

 正直言って、眼帯キャラ、ってのは珍しくねぇ。東北には『伊達政宗』って有名な戦国武将が居たからな。そいつの真似ってのは当たり前の様に居る。もし、スタート地点がランダムじゃなきゃ、仙台藩に人が集中してたかもな。

 まぁ、伊達政宗は特徴的なんで、あまり詳しくねぇ俺でも見分けが付いた、ってだけの話で、他の戦国武将のコスプレも結構居たらしいんだが。

 余談だが、名前まで戦国武将の物を使う事は出来ねぇ。リアルに居たヤツの名前は、入力時に弾かれる。だからコスプレしてるヤツ等は当て字使ってたりする。

 話を元に戻すと、俺が正宗モドキに命じられたのは、野伏プレイヤーを再編し、本格的な傭兵部隊として鍛え上げる事だった。その上で商人と護衛契約を結び……、契約してねぇヤツは野伏として襲う。とんだ自作自演(マッチ・ポンプ)だ。

 ただ、まぁ、他の野伏に襲われて荷物とか盗られた場合、襲い返して取り戻す。って言うアフター・サービスもあって、結構流行ってたんだぜ。そのために忍者とか使って周りの野伏の情報を事前に把握してたりと、面倒な手間を掛けてたんだが。

 そのおかげで、護衛の名目で関所をお手軽に越えられ、各地の情報も集まっていく。って言う、物流と情報を牛耳る大組織にまで成り上がったんだ。……そこまでした当の本人の目的は、『各地の御当地グルメにありつくため』だってんだから笑っちまう。当時、俺等は『領地を持たぬ国』とか『全ての道が国土』とまで言われて恐れられてたのにな。


 とにかく、そのおかげでこの頃は各地の詳しい情報が俺のところにも入って来た。……入って来過ぎて、逆に判り辛かったんだが。そう言うのは参謀のヤツに任せてたからなぁ。

 この頃の大きな動きと言や、貿易フラグを立てる事に成功したヤツ等が居た。ってこった。中でも、外国馬の輸入が始まったのがデカい。

 何せ、日本馬っつったら小型種で、フル装備の鎧武者が乗りゃ、軽装の足軽が走るより遅い。って位のスピードだ。正直言って、騎馬に何の意味があるんだよ? ってレベルだぜ。そこに、デカくてパワーがあって速い。って外国馬が入って来りゃ、戦略が変わっちまう。

 その所為もあって貿易に使える港湾の価値が跳ね上がったんだよな。

 んで、当時の大体の情勢。国または藩を名乗る組織は大小あわせて約30。その内の殆どがプレイヤー大名に成り代わっていて、リアルでも知られてる名産品や資源のある土地を奪い合い、各地で戦火が絶えねぇ時代だ。

 普通なら外交努力とかで戦争以外の解決法を探るのが正しいんだろうが、戦って何ぼの戦略シミュレーション。とか皆思ってた所為で、かなりお気軽に戦端が開かれてたりした。俺等の組織も兵站の輸送なんかで大儲けさせてもらったし、文句を言う筋合いじゃねぇんだが。


 要するにちょっと活躍し過ぎた事もあって、目を付けられる破目になっちまったのは仕方ねぇのかも知れねぇが。

 物資を確実に輸送したきゃ、俺等に話し通さなきゃなんねぇ、ってのは、大名から見りゃどう考えても『目の上のタンコブ』以外の何物でもねぇ。

 特に目に敵にしてたのが、『仙台藩』の『堕天』氏だ。……名前から推測出来ると思うが、コスプレ正宗シリーズの1人だ。ウチのボスも同じく正宗モドキ。しかも、中でも最も目立ってるって事もあって、そいつは、


「仙台を取ったってのに、誰も俺を『伊達政宗』として認知してくれねぇ!」


 とか言って、対抗意識を燃やしてたらしい。ハッキリ言って、逆恨みだろ。それ。

 ウチのボスも喧嘩っ早い戦闘狂なんで、当然、戦闘になる訳だ。

 最初は小競り合いから始まったんだが、その情報が広まるや、俺等を潰したい藩が連合を組み、何故か俺等の後押しをする藩も出て来て、戦火が拡大して行ったんだ。

 俺等を潰したいのは、解る。ある意味邪魔者だってのは自覚してたし。後押ししてた連中は、色々言ってたが、要約すると、


「仙台取っちゃえよ。You! お前が1番『伊達政宗』を上手くやれるんだ!」


 って事になる。後で知ったんだが、怪しげな組織を集いてウロウロされるよりは、適当な領地に押し込めといた方が都合が良い。って思惑があったらしい。

 戦力が拮抗して長引くかと思ったんだが、全ての戦術を無視して、単身敵地に乗り込んだボスが、敵の総大将の首をスポーン! と刎ねてお仕舞い。……単に意表を衝いた訳じゃなくて、陽動が上手く行った上で、裏道に詳しいからこそ出来た策だったんだが。

 結局ボスは仙台藩藩主に納まって、次のボスの座が俺に。って話が出たんだが、折角なんでこの機に気楽な傭兵家業に戻ろうと、俺も組織を抜ける事に。俺は1日に1~2時間しかプレイしねぇし、インしねぇ日もあるって程度のライト・ユーザーには、組織運営なんて重荷なだけだしな。

 リアルで言うなら2ヶ月程度の短い付き合いだったが、それなりに楽しかったな。

 ……よく考えりゃ、あの組織、名前付けてなかったよなぁ……。


■5年目

 各地の戦争が終結してきた結果、大名は15前後に絞られる事になった。これはより広い領地を治められる、有能な大名が出揃った。と言う事を意味してんだ。言い方を変えれば、簡単に下克上させねぇ、安定した地盤が築かれちまった。ってこった。……ある意味下克上こそが醍醐味のゲームで、この展開は微妙だと思うけどな。

 この頃になると、組織運営の色んなテンプレが大体完成したらしい。より正確に言うなら、4年目の乱戦時期に色々試した結果。って事なんで、実際に完成したのはもうちょっと前っぽいんだけどな。逆の言い方をすれば、早い内に完成させたとここそが、今の大名として生き残ってるんだよな。

 リアル歴史にあった手法以外にも、戦争モノのフィクションに出て来た様な架空の戦術を試したヤツも居たらしくて、当時は中々カオスだったらしい。ちなみに、俺等は狼群戦術(ウルフ・パック)を得意としてたぜ。

 だが、これらのノウハウは大名の秘匿技術だ。手の内が知られりゃ、対策も採られ易くなるからな。

 特に有名なのが、信長の『三段撃ち』だ。創作だ、って噂もあるこれが実際に使えるのか、折角のシミュレーションなんで検証してやろう。とか考えたヤツが居たとしてもおかしくねぇ。って言うか、鉄砲隊持ってる武将は、1度はやってみたんじゃね?

 結果は、『コストの割りに使えねぇ』って説と、それは『有効だから真似されたくなくて嘘ついてる』って説が出て来て、よく判んねぇ。


 とにかく、この頃から戦争が鳴りを潜め、内政やら外交が目立ってくる。……一部にはセオリー無視で戦争吹っかける空気読めねぇヤツも居るんだけどな。

 俺も小規模な傭兵家業に戻ったは良いが、あまり平和になっちゃ仕事がねぇな。とか思ってたんだが……。実は、ある程度平和な方が傭兵の出番がある。と知ったのはこの頃だ。

 ぶっちゃけた話、戦争の機会が減ってくると、軍の維持費が財政を圧迫するのが問題になってくる。軍の錬度を高めるため、半農半兵を止め、士農分離して職業軍人を増やした藩ほどその影響がデカかった。要するに、軍縮の必要性に迫られた、って訳だ。

 しかしだからと言って、軍事力が衰えれば、これ幸いと隣国が条約も無視して攻めて来る事もあり得るので、嘗められねぇ程度の体裁は整えなくちゃなんねぇ。そこで、傭兵を適時利用した方が費用対効果コスト・パフォーマンスが良い。って試算が出たって訳。リアルでPMC(Private Military Company:民間軍事会社)が流行り出したのと似た様な展開だな。

 この煽りをくって、軍人以外に食べる術を知らなくて嫁さんももらえん連中が、路頭に迷う破目に。これがまた別の問題を引き起こすんだが。

 その問題の解り易い例が、野伏化だ。実は傭兵ってのも結構交渉力が要る商売なんで、ポッと出のヤツ等がなるのは意外と難しいんだぜ。ってなれば、残された道は野伏になるしかねぇ。って訳だ。

 逆に、俺等みたいに元から傭兵家業やってた連中は、野伏相手の仕事で十分食い扶持を稼げる様になって、昔はたまにやってた野伏プレイもしなくて済んだんで、ありがたいんだけどな。

 それと、大体年に2度程の、リアルの時間で言うなら1ヶ月に1度のペースでの、小競り合い程度の戦での槍働きがあれば、十分楽しめる。稼いだ金を道楽に注ぎ込んでも良いしな。

 ……そんな気楽な事言ってられるのも、内政方面はスッパリ切り捨てて、戦闘技術のみを特化して熟練して来た所為で、そこんじょそこらのヤツ等が相手なら無双出来る位の腕前になってたからなんだが。これもあの傭兵組織で鍛えたおかげなんだよな。


 まぁ、そこまでは想定されてた程度の問題で、言っちまえば許容範囲だ。

 だが、世の中の主流って言うか、常識を全く無視し、それが故に普通じゃあり得ねぇ成果を上げるヤツが居る。そう言うのを『破天荒』って言うんだが、正にアイツは破天荒だった。

 アイツは路頭に迷った野伏達を受け入れやがった。受け入れたと言っても、兵として雇い入れた訳じゃねぇ。雇ったところで、そいつ等がやりたい戦が出来るとは限らねぇ。そんだけ軍事力が膨れ上がれば、周りの国も攻めて来なくなるだろうし、自ら動くには組織がデカくなり過ぎるからな。

 アイツはただ、こう宣言しただけだ。


「戦がしたいなら、ウチに攻めて来い。相手をしてやるぜ!」


 こんなアホな事言うヤツは、俺の元ボスで、現仙台藩藩主のアイツしか居ねぇ。

 藩主としてはアホとしか言い様の無い事だが、ゲームとしては戦闘目的でプレイしてるヤツもかなり多く、そいつ等の需要を満たす、と言う意味では、正に救いの主、って訳だ。

 当然、人が挙って集まって、仙台藩は乱戦状態に突入。周辺の村々は野伏に占拠され、小競り合いの絶えねぇ毎日。

 それが何で続けられるのか? 戦の予算はどうなってる? って疑問が湧いたんだが、この戦はプレイヤーが戦闘を楽しむための物。だからこそ、農民を兵として徴用する事無く、生産力を落とさずに戦を出来たってのがデカい。その上、NPC雑兵を用いねぇ事は、その分経費を削れるし、無駄に戦闘を大規模化しねぇ。って意味もあったんだ。

 そんな事情は後になってから知られた訳で、当時は無駄に国力を浪費してる様にしか見えなかった。だからこそ、この機に乗じて仙台藩を落とそうと、隣の藩が攻め込んだんだが……。

 結果は無残。楽しく戦闘をやってるところに、文字通り横槍を入れられた連中が怒って、直前まで戦ってた仙台藩の兵と野伏達が手を組んでアッサリ返り討ちにしたんだ。

 普通の傭兵団にまで規模を分散させてこっそりと紛れ込んでた、俺等の居たあの組織が、背後から急襲したってのもデカいが。


 こうなって来ると、戦闘志向のプレイヤーは殆ど集まって来てたし、普段の小競り合いも、常に軍事演習をしてた様な物。とすら言える。

 おまけに、戦闘その物が目的のプレイヤーが多いんで、褒賞は少なめでも問題ねぇし、南蛮貿易で軍事力を支える利益も十分上げてる。って、洒落にならねぇ状況になってたんだ。

 要するに、何時の間にか、仙台藩は士農分離に成功し、精強な兵を多数抱える軍事大国になってた訳だ。

 おかげで、内政は結構アバウトなくせに、軍事力で付け入る隙を与えねぇ。って周辺諸国から見れば、頭の痛い問題だな。


■6年目

 この年に入って新たな問題が。ゲーム内の話じゃねぇ。リアルの影響だからこそ、マジヤバイ。

 大手ゲーム・メーカーがFDに参入する可能性。それが自社サーバを立ち上げる前に、プレ・テストで地球環境シミュレータを使う。って噂が聞こえ始めたんだ。その煽りで、あまり人気の出てねぇ現行のFDゲームが割を食う。って噂もな。

 ただ、『戦国KARUMA』は比較的人気のある方で、当時すでに4万人近いプレイ人口があったんで、楽観視してるヤツの方が多かったけどな。……まぁ、人気があるって言っても、採算が採れるレベルじゃねぇ、とも聞くが。

 とにかく何とかなるだろう。って考えて、殆どのヤツは他人事の様にプレイしてた訳だ。……気にしたところで、何も出来ねぇ。んで、開き直ってただけだがな。

 俺の場合は、程々にきな臭い噂の立つ所に出向いて、傭兵の仕事を得る暮らしを続けてたんだ。

 結構活躍したりして、本格的に仕官しないか? と誘われる事も多かったんだが、政治に係わるのも面倒だし、部下が増えて頭を悩ますのも疲れるし。とりあえず断り、それでもしつこく勧誘されるなら、他の土地に移ったり、ってのがパターン化してた。……微妙に厭き始めてたのかも知れねぇ。


 そして、最大のトラブル・メーカーも、この安定した状況に飽きてたらしい。あの正宗ランキング1位のお方だ。


「1周年を記念して、現状をリセットするため、自滅覚悟で戦争を仕掛ける!」


 この宣言に皆パニックになったぜ。いや、マジで。

 何せ、最大の軍事大国が暴走すれば、言った通りにリセット出来るだろう。普通ならそんな事しても無駄に疲弊するだけで、幾ら大国でも勝ち目なんてねぇんだが、混乱その物が目的なんだから洒落になってねぇ。だから他の国が使者を送って何とか思い止まらせようとしたらしいが、取り付く島もねぇ訳だ。

 しかし、リセットしようって言い分も解らねぇ訳じゃねぇ。今のところ統治が上手く行ってる、その安定感は、新規参入プレイヤーに対し敷居を高くしてたんだ。

 安定した統治体制ってのは、その辺の重役が揺るがねぇ、って事でもある。そいつ等の首が簡単にすげ替わっちまう様なら、国が安定しねぇ。って事だからな。

 大きな戦乱にも巻き込まれず、謀反も起こさせねぇ様に管理されてる。おかげで、戦略シミュレーションなのに、戦略に携われるまで出世するのが殆ど不可能になっちまってる。これじゃ、ゲームの面白みが半減だろ。って話は、結構前からあったっちゃ、あったんだな。

 この状況じゃ、新規プレイヤーの獲得が難しいんで、運営のテコ入れがある。って噂も立った位だ。……プレイヤーが自らこんな事するなんざ、運営も思わなかったろうけどな。


 そんな訳で、周囲の事情もお構い無しで戦争準備を続ける仙台藩に、周辺諸国、いや、全ての藩が呼応する様に戦争準備に奔走する破目になっちまった。

 もう、その混乱振りと言ったら、戦争準備も戦争その物と大差ねぇよ。ってモンだった。

 本当は仕官したかったが、国が下手に安定しちまった所為で野伏プレイに甘んじてたヤツ等が、大喜びで混乱に拍車をかけた。ってのもある。そうでなくても、下級武士にはまたとねぇ武勲を上げるチャンス。一部のトップ・プレイヤー以外は、この戦乱を大歓迎だったりする。

 何とか被害を免れようと、色々根回ししてた大名が、既得権益を守るため保身に走ってる。とか揶揄されて、年明けも待たずに内乱で潰された例もあった。

 中には仙台藩の準備が整う前にこちらから仕掛けよう。って意見もあったらしいが、これまでの軍縮の流れもあり、今戦しても仙台藩の方が圧倒的に有利。って事で実現しなかった。


 変化があったのはゲーム内で2月になった頃。『ゲーム間戦争』の告知が出た所為だ。

 新年度の始まる4/1。予てより懸念のあった、現行FDゲームの規模縮小の話だ。ぶっちゃけた話、この戦争で負けたゲームが、規模を縮小、最悪の場合、サービス停止に追い込まれるかも知れねぇ。ふざけた話だ。

 これを受けて、


「他のゲーム・サーバを攻める事にしたんで、戦争はやっぱナシね」


 とかアイツは言いやがった。

 おかげで、ホッとするやら、益々混乱するやら。それは奇襲を成功させるための嘘かも知れねぇって戸惑いもあるし、久々の大戦に心を躍らせていたヤツ等は目標を失って唖然。……ホント、状況を引っ掻き回すのが好きだよな。

 もし本気で言ってるなら、仙台藩が遠征で留守にしてる隙に乗っ取っちまおう。って話も出たらしいが、もとよりその軍事力こそ最大の売りの仙台藩だ。空き巣狙いなんかしても、その軍隊が残ってりゃ、戻って来た時にアッサリ取り返されるのがオチだろう。って事でボツ案になったらしい。

 ここで動いたのが猛虎藩の連中だ。流石古参の藩だけあって、早速手を打ってきたらしい。その手とは、ゲーム間戦争への参加表明だ。仙台藩に使者を送って、『一緒に戦おうぜ』的な事を言ったらしい。その事はすぐに発表されて、皆の知るところになったからな。

 そん時の皆の反応は様々だ。猛虎藩が仙台藩の真意を知るための手だとか、戦を期待していた部下達を抑えるためのポーズだとか、色々憶測が飛び交ったんだが……。その後、猛虎藩は妙にヤル気満々になってやがった。藩主同士の直接対談の直後らしい。今までのゲーム内での戦争準備が、そのままゲーム間戦争の準備に変わっちまった。

 同じ様な事が僅か2週間足らずの内に何度も起こった。何らかの件で仙台藩と話を持つ機会のあった藩は、殆どが乗り気になってやがった。……どう言う説得したのかはサッパリ分かんねぇ。折角の大規模イベントだし、ゲーマーの矜持を揺さぶっただけかも知んねぇが。

 結果的に、半分程の藩が遠征に参加。直接的に戦闘に参加するプレイヤーが約1万。物資輸送などの後方支援が約1万。更に、これにNPCの雑兵やら人足やらが加わるので、単純な人数ならその数倍にもなる。

 参加しねぇ藩も、協力して他ゲームの侵攻に対する防衛体制をとるなど、少なくともこの流れを止める気はねぇらしい。

 ちなみに、俺は遠征には参加しねぇ。俺みたいな、たまの暇潰しでプレイするヤツにとっちゃ、大規模遠征はちょっとキツい。それに、他にやる事もあるしな。

 そんなこんなで、この1年は殆ど混乱と戦争準備で終わっちまった。だが、祭りは準備期間が楽しい。って言うし、これはこれで充実した1年だったぜ。




 そして……、俺はゾロゾロと行軍するプレイヤー達を見送ってる。

 その遠足にでも出かけるかの様な、楽しそうな様子を見てると、ちょっと自分も混ざりたくなってウズウズするが、参加する訳にはいかねぇ理由がある。

 んじゃ、ダイブ・アウトして本命の用事を済ませるとするかね。


 以上、貴方の街の傭兵屋、越後屋さんがお送りしました。

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