アイスクリームはじめたい
「と、言う訳で、アイスが作りたいんだよ!」
「……作れば?」
アイス、アイス! と、唐突に騒ぎ立てるジェーンに、ディアスは素っ気無い返事を返した。
言わんとするところはディアスにも理解出来る。折角乳牛を飼育しているのだ。それを有効活用するため、皆が欲しがりそうな乳製品として、『アイスクリーム』は無視出来ない魅力がある。それに、明治時代にはアイスを製造・販売する店があったので、レシピの入手難易度も高くないのでお手ごろである。とも言える。
ディアス自身も、『スイーツ』関連のレシピは積極的に調べていたので、『アイスクリーム』の製法などとっくの昔に手に入れてる。勿論、そのレシピはジェーンの手にも渡っており、作ろうと思えば作れるのだが……
「もう、冬場に雪を掻き集めてアイス作るのはこりごりなんだよ!」
クリームが凍る程に冷やさねばならないのが難点だった。
ディアス達は冬場の氷を氷室に保存してあるが、あまりに貴重過ぎるので、そうお手軽には使えない。
「……要するに、『冷凍庫』が欲しい、って事で良いのか?」
「はいっ! ついでに、屋台で売りたいんで、『クーラー・ボックス』もお願いしますっ!」
「……ああ、そのためか……」
ディアスは、何で急にジェーンがそんな事言い出したのか、やっと理解した。
早い話が、今年も『畜産品評会』やります。と言うお誘いが来たのだ。
今年はオリジナル地鶏(名前はまだ無い)も出す予定だが、去年は品評会に出した水牛『おきしとしん』の評価が今一だったので、その雪辱を果すには、やはり水牛で評価を得るしかない。と意気込むジェーンであった。
その水牛達は、牛乳目的で飼っているので、素晴らしい乳製品でリベンジを! と考えるのはアリだろう。……だが、
「アイスはちょっと微妙じゃないか?」
「どこが? 夏にはやっぱりアイスなんだよ!」
「夏、って言っても、ゲーム内は、だろ。リアルじゃ12月半ば。思いっきり冬じゃないか」
リアルとゲームは別物とは言え、やはりどうしても引き摺られてしまうところはある。リアルが冬だとゲーム内が夏でも、『アイスを食べる』と言う選択肢は出て来難い。
「細かい事気にしちゃ駄目なんだよ! 美味しいアイスは、冬でも売れるんだよ!」
「……そりゃ、凄い自信だ」
ディアスもジェーンの言う事を否定するつもりは無いものの、さほど試作した訳でも無いアイスに、何でそれだけ自信が持てるのかは分からなかった。
「それに、冷凍庫作れる所何て殆ど無いんだし、アイス作れば物珍しさも手伝って売れるよ!」
「だけど、冷凍庫は面倒臭いんだよなぁ……」
と、ディアスは消極的。技術的には作れるものの、必要性をあまり感じていない。『氷室』で十分。と言って、この家には『冷蔵庫』すら作ってないのだ。
「大体、冷却機のポンプを動かすのに蒸気機関が必要、って、冷やすために火を焚かなきゃならないのが気に入らない」
その迂遠さもさる事ながら、常に蒸気機関を動かすための石炭の消費が馬鹿にならない。と、何だかんだ言って断ろうとするディアス。
「嘘言って誤魔化しても駄目だよ。動力は水車で良い、って知ってるんだから」
タゴサク君の所の醸造所に設置した冷蔵庫だって、動力は風車じゃない! と言うジェーン。
「『冷蔵庫』程度で良いならな。『冷凍庫』にはパワーが足りないんだよ」
「……サイズ小さくしても、駄目?」
「駄目」
専門知識の無いジェーンには、ディアスの言う事が本当なのか、それとも単なる言い訳なのか、判断が付かない。
「それに、その辺は効率上げたりして、何とか出来る可能性もあるが、何より駄目な理由は、今はヤマカンが居ない、って事だ」
「あ……」
ヤマカン、ただ今大学受験のため、しばしゲームを離れて勉強中。
「推薦で決めてすぐ戻って来るぞい!」
と、12月中には何とか戻れる、とは言っていたが、それでは今回の品評会には間に合わない。
ディアスは新規に図面を起こせるが、自分で出来るのは精々鍛冶まで。機械部品の加工となると、その製造はヤマカンに頼らざるをえない。
つまり、『駄目』と言うよりは『無理』なのだ。
「ねぇ、何とかならないの?」
「そう言われても、俺の加工技術じゃ、ポンプ1つ作るのもままならないし……」
悲しそうな瞳で見上げて来るジェーンに、幼子の頼みは何とか叶えてやりたくなってしまったディアスであったが、出来ない事は出来ない、と言う当たり前の結論しか出て来ない。
「ヤマカン並みの技術力を持った知り合いでも居れば……あ」
「あ、ってなにさ?」
「チャックなら、多分作れるな」
釧路の技術者達に蒸気機関を技術提供してからかなり経つ。今では、独自に蒸気船を作れる様になっており、それだけの技術があれば何とかなるだろう。その中でも船大工のトップであるチャックなら尚更だ。
それに、漁業が盛んな釧路では、魚の保存に有益な冷凍庫は大きな需要がある筈で、十分取引になる。何せ、他のゲームである様な、『アイテム・バッグの中の物は劣化しない』と言う機能は『TONDEN FARMER』には無いからだ。
……と、言いたいところだが、問題が無い訳でも無い。
氷が有用、などと言う事は誰でも分かってる訳で、そのため釧路にも大規模な『氷室』がある。大規模、と言っても有限なのだし、もし氷を使い切れば次の冬まで補給は出来ない。それに、維持コストも相当掛かる筈だ。対して『冷凍庫』のメリット、維持コストが割に合うかどうか、と言う事だ。
それに、釧路の技術者達が、独自に冷凍庫を発明していないとは限らない。
この辺の事情は、実際行ってみないと判らないだろう。ディアスの予想では、規模が大きくなりつつある漁業と物流の所為で、氷が不足している可能性が高い。と読んでいる。
「じゃあ、早速チャック君の所に行こうよ!」
「……取引が成立したら、それはそれで問題があるんだよなぁ……」
世界的な歴史で見れば、『冷蔵庫』の発明は明治以前であるが、日本に入って来たのは昭和になってからである。明治時代にあったのは、氷をセットしてそれで冷やす、と言う程度の物だ。故にゲーム設定的に、普通ではその図面は入手不可能に近い。
より正確に言うなら、一般普及や日本での製造はそんな物だが、特殊な用途のために海外から『氷を作る機械』を買った、と言う記録は明治頃にあるのだが、その辺は考慮されていないらしい。
だが、全てのプレイヤーがそんな歴史を把握している訳でも無く、また、発明家プレイをしている一部の者が、偶にそんな流れを無視して開発したりするので、ディアスが作った冷蔵庫も、驚かれるもののそれ程大騒ぎになったりはしなかった。
だが、物流に多大な影響を与えるレベルまで普及させてしまうと、ディアスが悪目立ちしてしまう。以前の蒸気船がやり過ぎて、裏取引にしないといけなかったのと同じ失敗を、また繰り返す事になりかねない。
それに、普通では手に入らない物の対価、の算出は厄介であり、本当に払う事が出来るのか? と言う問題まで発生するだろう。
「蒸気機関だって、『釧路炭田』の恩恵、って誤魔化したんでしょ? だったら、氷だけなら、氷室に保存してた、って誤魔化せば良いじゃない」
「使う量が少量ならそれもアリかも知れないが……、手に入れた新技術、何てどうしても使ってみたくなる物だ。……その歯止めを効かせるのが厄介だ、って話なんだろうが」
「じゃあ、逆転の発想で、『冷蔵庫』が珍しくなくなれば良いんじゃない?」
「……逆転、って言うか、本末転倒だろ、それ。その分、お前が期待してた『アイスの希少性』ってアドバンテージが消えるぞ」
「う……」
それは、困る……。と言葉に詰まるジェーン。ひょっとしたら、冷凍庫が普及すれば、自分より美味しいアイスを作れるプレイヤーが出て来る、と言う事を悟っているのかもしれない。
その間も、ディアスは『高機能製図台』を起動させ、今まで作った冷蔵庫の図面を、冷凍庫として使えるよう改造するため、冷却効率を上げ、熱交換器や断熱材等の見直しをしていた。
「……何とか、なりそうだな」
と、ディアスはポソリと呟くと、
「ほら、行くぞ」
「行くって、え? じゃあ、作ってくれるの!?」
「交渉次第だろうが、金はお前が出せよ」
と言う訳で、2人は釧路へ。今回は時間が惜しいので、出来るだけ身軽に、アイテム・バッグを空にしてから『転移室』を使う事に。
「……普段、他所の地方行くのにはあまり使わないけど、所持品少なければあまり料金掛からないんだね」
些少の金であっさりと着いた釧路の町並みを見、ジェーンは、何時も苦労して移動していたのは何だったんだろう? と首を傾げる。
普段は金の節約、とか言って使いたがらないが、所持品の重量に掛かる金額が多いためか、身一つで《転移》すれば、驚く程料金は安くなる。
リアルの電車料金辺りと比較すれば、距離と時間を考えるとむしろ安いと言え、利用者が少ないのが不思議な程だ。
「帰りは冷凍庫のパーツ持って帰らなければならないから、必然的に料金も高くなるぞ」
「その辺は……覚悟してるよ……」
と言いつつも、所持金を確認しているジェーンの様子は、覚悟が出来ている様には見えない。
ディアスはそんなジェーンを気にも留めず、すたすたと歩いて行く。
目的地はチャックの造船所だが、港町である釧路の中心部からはかなり近い。ゲーム・システム的に『計画誘致予定地』に含まれ、『造船所』は当然誘致対象である。そのため、チャックの所以外にも、多くの造船所が軒を連ねている。金が掛かるのを嫌がり、『計画誘致予定地』がスカスカなままの十勝とはえらい違いだ。
「おーい。チャックいるか?」
「あれ? ディアスの旦那じゃないですかい?」
ディアス達を出迎えたのは、自称『ペラ職人』のランキンだった。船全体の製造には係わらず、自称通りスクリューの専門家である。かなりニッチなプレイ・スタイルだが、そんな物が通用する程、船の需要があると言う事であり、彼の作るスクリューの性能が良い、と言う事でもある。
「ウチの親分なら、今寄り合いに出てますよ。例の4番艦のコピーが出来ないか、って」
高速艇の要求が無視出来ない程に増えまして……。と、ランキンもちょっと困った様に眉が八の字になってる。
物流の量が増えた結果、今度はより速く。と速度の要求が出るのは当然と言えた。そして、今のところたった1隻とは言え、その要求を満たせる実例が存在する。
要するに、何とか出来る技術があるのに、もったいぶって出し惜しみしている。と周りから怪しまれているのだ。それを何とかするには、やはり量産化するしかない。
「そんなに厄介な問題か? あれを造った当初ならともかく、今ならコピー出来なくも無いだろ?」
生産性と保守性を考えれば、多少は性能を落とさざるを得ないとは言え、その方が扱い易くなるだろう。と言うディアス。
「そりゃ、そうなんですがね。結局あれがウチ預かりになってるのって、親分しか操船出来る人が居なかったからなんで……」
造れても、乗員の育成が現実的じゃ無いんですよ。と言うランキン。
高速艇が故に、その難易度から事故も起こり易く、唯一操作を教えられるチャックも、常に教官として付いていられる訳でも無い。
大体、そのチャックとて、【機械】の『エクストラ・ツール』、『統合制御機構』があって初めて操船可能となる代物である。そして、そこに辿り着くまでには、やはり相当の苦労を重ねているのだ。
「と、これはこっちで何とかする問題でしたね」
いや、聞き苦しい愚痴を聞かせちまいました。と苦笑するランキン。
「それで、今日はどう言ったご用件で?」
「『冷凍庫』のパーツ作製を頼みたい」
「『冷凍庫』……ですかい?」
単刀直入に切り出したディアスに、怪訝な表情を浮かべるランキン。
「何でまた、……いや、ちょっと待ってください。こりゃ、俺の判断で何とか出来る案件じゃなさそうだ」
と、ランキンは《通信:チャック》と連絡を取る。
寄り合いの最中に《通信》入れちゃって良いものかね? と思ったディアスであったが、『冷凍庫』はそれ程重要案件、と考えればそう言う事もあるだろう。
「……え?」
用件をチャックに伝え終えたランキンが、途端に顔を引き攣らせる。
「? どうした?」
「それが、皆今から来るって……」
「ほぉ。対応が早いな。……皆?」
皆、って誰だよ。と思うディアス。まさか、『寄り合いに参加していた全員』じゃ無いだろうな? と嫌な予感が頭を過ぎる。
そして、すぐに……
どどどどどどどど、
と、足音が近付いて来る。とても、1~2人の足音ではない。
「ディアスっ! 『冷凍庫』が作れる、ってマジかっ!?」
「でしたら、是非ウチに図面をっ!」
「あっ!? こら、抜け駆けすんなっ!」
「優先するなら、『魚市場』が先だろうがっ!」
「馬鹿野郎! 今まで何を話し合ってたと思ってるんだ! 輸送船にこそ搭載すべきだ!」
「それを言うなら、漁船だって!」
……大混乱。
『冷凍庫』の需要はあるだろう、とは見積もっていたディアスだったが、これは予想以上、と言うか異常である。
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇいっ! いっぺんに言われても分からん!」
ディアスは大声を張り上げて、とりあえず皆を黙らせる。
「代表者、前に出ろ!」
途端に、腰が引けた様に誰も出て来ない。
自分の都合を通すには出た方が良いのだが、身勝手な言い分がディアスの気に触ると、『代表者』という立場上、釧路全体が見捨てられる可能性があるからだ。そのリスクは、誰も負いたくない。
「……チャック、その寄り合いでの話を、簡単にまとめて話してくれ」
「お……おう」
このままでは埒が明かないと見るや、ディアスは一番交流のあるチャックを指名する。
おそらく、寄り合いに出ていたであろう全員が大挙して来ている事、話し合いがどうこう言っていた事から察するに、寄り合いの内容は無関係で無いだろう。と考えるディアス。
「議題は『高速艇の量産化』とその『乗員の育成』だったんだが……、目途が立たねー、って言うか、時間が掛かりそう、って言うか……」
えーと、とここで言葉を区切り、この辺りから話がずれ出したので、船大工としちゃー、よく分からん事もあるんだが、と前置きし、チャックは少し話の整理に時間を使ってから、再び口を開く。
「出来ねーモンは出来ねー。って事で、なら、何で『高速艇』が必要か、って事だ。その問題が解決出来るなら、慌てて造る事も無いだろ」
「まぁ……、理に適ってるな」
「ただ単に速い方が良い、ってだけの場合も多いんだが、更にその理由を考えれば、足の速い食材を輸送するため、って事だ」
だから、船はそれ以上に速くなくちゃ。と言うチャック。
その辺はディアスにも解る。と言うよりは予測していた事だ。だから、
「魚とか傷み易い、何て今更だろ。冷凍庫位、独自に開発しててもおかしくない、って思ってたんだが?」
「そりゃー、作ったさ。作ったけどコストが掛かり過ぎて、採算取れねーんだ。……えー、順番に話すとだな」
先ずは当たり前の様に、冬場の氷を保存して置く『氷室』から作ったらしい。しかも、大鋸屑に水を沁み込ませて凍らせた物を用意したのだ。こうする事で、普通の氷より長持ちする保冷材となるらしい。
当面はそれで良かったのだ。しかし、漁獲量の増加、物流の需要増大につれ、氷の増産が難しい、と言う問題に突き当たった。冬場しか作れず、広い面積を必要とするからだ。大量に取れる魚に釣り合いが取れるだけの、氷の生産が追い付かなくなって来たのだ。
「おかげで、魚の一部は、いや、大部分は畑の肥料になった事もあったな」
その頃はしばらく漁獲量の制限してたっけなー、と昔を思い出しつつ語るチャック。
当然、この頃には『冷凍庫』の開発の話題が持ち上がるも、その成果は芳しくなかった。作れはした。しかし、想定より効率が悪く、無理にでも製氷場や氷室を広げた方がマシ。との評価だった。
この後も開発は続けられるも、『冷凍庫』の正確な図面が無いので手探り状態。そこで冷却の原理から洗い直したところ、別な方法が出て来た。
「それが『硝石』を使った冷却法、って訳だ」
【発破】アビリティの関係で、火薬の材料である硝石は手に入り易いしな。と言うチャック。……自分が発見した方法でもあるまいに、微妙に自慢気。
その手があったか……! とディアスは少し悔しそう。
冷蔵庫の類は、液体→気体の変化の際に気化熱を周りから吸収する現象を利用するが、同様に固体→液体の場合でも溶解熱を周りから吸収する。このため、硝石を大量に無理矢理水に溶かすと、温度が下がるのだ。氷水に塩を入れると、更に温度が下がる、位なら、理科の実験とかで誰しも経験があるだろう。
しばらくはこの方法で氷を増産したり、船にも硝石を積んで輸送中の保冷を持たせていたのだが、そもそも全ての冷却を賄える程、大量の硝石がある訳でも無いし、あまり使っては本来の火薬用途の方に支障が出る。
と言う訳で、代替案が色々発案されては没になって来たのだ。←今ココ。
「ってなワケで、冷凍庫が作れりゃ、今抱えている問題の一部が解決するんだよ」
とチャックは説明を終える。
「……そんなに、効率が悪いのか?」
ディアスとて一応『冷凍庫』をそれなりの性能で作れる自信はある。が、話を聞いた限り、本格的に真面目に長い間研究してるっぽい釧路の技術者とて、それ程性能が低い物を作る訳では無いだろう。と思っている。
「何が原因なのかは分からんが、必要な氷の量とそのための冷凍庫の規模、それを動かす蒸気機関のパワーから逆算すると、船の運航に支障が出る程、石炭食う」
石炭を増産しようにも炭鉱夫の数が足りてないし、もし石炭が十分量確保出来たとしても、それだけ燃やすと環境汚染の問題が出て来る。と、お手上げのポーズをとるチャック。
「そりゃ……、効率が悪い、って言うより、どっか欠陥があるだろ……」
密閉が甘くて、冷気が漏れてるとか、と疑うディアス。そのディアスの反応に、周囲の皆は期待に満ちた表情を浮かべる。
「あっさりそう言う台詞が出て来る、って事は、やっぱりディアスのは、もっと性能が良いんだな」
「ハードル上げるなよ……」
ディアスが言ったのはあくまで推測なので、実際に実物か図面を見てみないと何とも言えないところである。
「一体、どんな設計したんだよ? 『蒸気機関』が作れるなら、『冷凍庫』だってそんなに難易度が違う物でも無いだろ?」
「そりゃー、ヒート・ポンプは熱機関の逆回しだしな。俺達だって、もっと簡単に何とかなる。って思ってたんだが……」
熱機関が高熱源と低熱源の温度差から動力を取り出す物なら、ヒート・ポンプは動力で熱媒体を移動させ、高熱源と低熱源を作り出す物である。
熱機関、それも外燃機関である『蒸気機関』の設計が出来るなら、それを参考に『冷凍庫』もそれなりの性能で作れる筈だ。実際、ディアスだってそうして設計したのだ。
「熱力学はちゃんと計算したのか? 『蒸気機関の基礎知識』みたいなノウハウがあれば、その辺はシステム・アシストで簡単に計算出来るだろ?」
1haの土地開拓でもらえる『1haボーナス』は、殆どのプレイヤーが持っている物であり、その種類も1人1つと言う訳では無いので、『蒸気機関の基礎知識』を持っているプレイヤーは他にも居る。
それに、蒸気機関に限らず熱関係のノウハウなら、その中に熱力学の知識も含まれるので、誰1人として熱力学の計算が出来ない、と言う事は考え難い。
「計算はしたさ。……したけど、何か見落としてるのか、前提条件がミスってるのか、作ってみるとどっか違うんだよ」
ほれ、これが図面。とチャックは自分が設計した、船舶搭載用の『冷凍庫の図面』をディアスに渡す。
ディアスは、そんなにアッサリ図面渡しちゃって良い物かね? と疑問に思いつつ受け取ると、さっと目を通す。
「……いや、俺の目から見ても、そんなにおかしな物じゃ無いと思うが」
多少効率を上げられそうなところはあるが、本当に多少、である。つまり、ディアスの『冷凍庫の図面』も大差無く、期待する程の性能差は無い事になる。
「設計は問題無いが……、強いて問題点を挙げるなら、もうちょっと綺麗に描いた方が良い、って位か」
「……は?」
今一何言われているか分かっていない皆の前で、ディアスは設計はそのままに、理路整然と解り易い様に描き直す。個々のパーツの見易さを考えた配置、加工方法の指定に組み立て手順まで。事細かに手を入れる。
ほれ、とディアスはものの数分で仕上げた図面をチャックに返す。
確かに、解り易いかも、と言いつつ、それを見ていたチャックであったが、しばらくして、ああっ!? と驚きの声を上げる。
「自分で作る物だから、って手抜きしたのかも知れないが、あれだと【図面理解】が足りないと解り難いだろ」
何を驚いているんだ? と訝しがる皆に、ディアスが簡単に説明する。……その後に、
「図面の出来でシステム・アシストの掛かりが違って来るしな」
と、1番重要な事をついでの様にぽそり、と付け加える。
スキルの実行を補助するシステム・アシストだが、そのために必要なデータが何処から来るか、と言えば『図面』や『レシピ』である。それが自身にノウハウの蓄積の無い、新しい事をやろうとするなら尚更である。
要するに、図面が読み難いから要訣が理解出来ず、上手く作れなかった。と言う事になる。
ちゃんとした正しい知識を得る事が大事。と、基本的な事を指摘している様な仕様は、『TONDEN FARMER』らしい、と言えばらしい。
と、そんな今更な事を理解した釧路の皆さんは、その事実に愕然とする。
『図面が悪い』のは、ある意味『設計が悪い』のより洒落にならない。設計は必要なノウハウを手に入れれば改善出来るが、図面に関してはコツや図面規格のルールを教えてくれるNPCは居るものの、最終的には本人の創意工夫と熟練によるところが大きいからだ。つまり、すぐに何とか出来る事では無いのだ。
「そうと、最初っから分かってれば……。『機械工』と『設計士』の間で、『設計が悪い』『技術力が無い』って、喧嘩になった事すらあったんだぞ……」
と落ち込んだのも束の間。チャックは図面の束を取り出すと、
「ついでにこれも書き直してくれ!」
「断る!」
と、頼んではディアスに即答で断られたりしている。この遣り取りから、『釧路一の船大工』ですらそれだけの差がある、と見て取れる。
「今日は家庭用冷凍庫作ってもらうつもりだったから、大規模倉庫用、何て大型の物は想定して無いぞ。とりあえず、船舶搭載用、位なら何とか出来るが……」
我も我も、と押し寄せて来そうな他の皆を牽制すると、ディアスは改めて図面を弄り、船舶搭載用に設計を最適化し始める。
「船の蒸気機関から動力を取りつつも、高熱源である燃焼室からは遠ざけて、冷却は海水を利用して効率上げて、キングストン弁からの配管を弄って……」
と、出来るだけ既存のパーツを流用し、新たに開発が必要だったり調達コストが掛かりそうな部分は手を入れず、それでいて将来的には改修し易い様にした上で、すぐにでも生産出来る設計とした。
「と、まぁ、こんなところで。……って、勢いで設計してしまったが、対価を決めてなかったな」
どうしようか? とディアスが図面をヒラヒラと弄びながら言うと、それを値段の吊り上げ交渉と受け取ったか、船大工達がオークションの如く次々に値段を言っては吊り上げて行く。
ディアスにはそんなつもりは無かったので、当初の予定通り、冷凍庫用の熱交換器のパーツ一式を作ってもらう他、
1.今回の図面をゲーム内1年間は秘匿する
2.今後も頼み事を最優先で受け付ける
3.新たな技術的進展があればそのデータをもらう
等、金銭的な遣り取りより、裏取引のパイプを太くしてみた。
「倉庫の方は……、ちょっと時間は掛かるが、波力か潮汐力を利用して石炭要らず、なのを作ってみるつもりだが?」
「是非それで!」
冷却力は弱目だが、昼夜を問わずノンストップで稼動するから、相当冷やせる筈だ。とディアスが提案すると、皆、一も二も無く即答した。
「よし。話はまとまったな。……あれ? ジェーンは?」
ディアスは話に夢中になっていたため、放って置いたジェーンが側に居なくなっているのに気が付かなかった。
そこへ、ランキンが、
「ジェーンの姉御なら興味失って、こっちで一緒に俺等の昼飯に集ってますが」
「ちょっ、お前また何食ってんの!?」
「マグロの漬け丼です」
「そう言う事言ってんじゃねぇぇぇぇぇぇっ! って言ってんだろうがっ!」
「でも、冷凍技術が悪いんで、ベチャベチャで美味しくないです」
「だから、勝手に食っといてケチ付けるとか、何様だよ!」
ジェーンはもきゅもきゅ、とご飯を頬張ったまま、膨れっ面をすると、
「ディアス君は夢中になると話が長過ぎるんだよ。今日の本題はアイスなんだよ。早く冷凍庫作って、新しいアイスを試作したいんだよ」
「分かったから! パーツ受け取ったら、すぐ帰るぞ!」
と言う訳で、早速作製に取り掛かってくれ、とディアスがチャック達の方に振り返ると、そこには新たな商売のネタを嗅ぎ付け、ギラつく目をした男達が居た。
「アイスとか……! その手があったか! 冷凍庫の性能が改善された今、俺達もその市場に乗り出せる!」
「おーい、チャックよ……」
「悪りーな、ディアス! 釧路も酪農が盛んな地域だからな! お前等にだけ美味しい目は見させねーぜ!」
「……いや、別にどうでも良いけどな……」
ディアスには独占販売する気など無いので、そんな事より、ウチの冷凍庫のパーツ。と、改めて催促する。
だが、ジェーンは違う様で、対抗意識を燃やしつつ、
「ふん。魚臭い冷凍庫で作ったアイスなんて、悪評を立てるだけなんだよ」
「何をー!? だったら、アイス専用高速艇を新規造船して、北海道全域にデリバリーしてやる!」
「だから……、ウチのパーツ……」
ジェーン達の言い合いが一段落するまで、ディアスは蚊帳の外に置かれるのであった。
「……とりあえず、これで完成だ」
「わ~い♪」
ディアスは工具を置くと、図面と見比べ、問題点が無いかチェックする。
当初の予定では、冷凍庫で氷を作って、それでアイスを冷やす予定だったが、折角なので直接的に冷やせる装置を作ってみた。
見た目は薪の投入口の空いていない竈の様だが、素材は断熱性を考慮して軽石の削り出し。中に冷媒が流れるパイプを仕込んであり、これにより釜を-10℃位まで冷やせる予定。この釜の中でアイスクリームを掻き混ぜながら凍らせる訳だ。
その内、攪拌も自動で出来る様にし、本格的にアイスクリーマーっぽくしてみようか、とか目論むディアスであった。
「じゃあ、早速作ってみるよ!」
品評会までには、何種類か出せる様に、色々試作するよ。と、材料を並べ立てるジェーン。
基本レシピをアレンジし、それに色々混ぜてみるつもりなのか、ジェーンの用意した材料は、何処からか買って来たのか、フルーツの砂糖漬けが何種類もある。
「先ずは基本的に『バニラ・アイス』でも作るか?」
と、材料の中のバニラ・エッセンスを手にし、ディアスは問うた。
このバニラ・エッセンス、お菓子系のレシピがある程度開放された後、『市場』に並ぶ様になった物だ。バニラは熱帯の植物なので、北海道では栽培は無理。NPCが販売してくれなければ、どうしようもない。
「新しい道具に慣れるためにも、基本から行ってみるのは賛成するけど、『TONDEN FARMER』内でのアイスの基本レシピは、牛乳・砂糖・卵黄のみを使った『カスタード・アイス』なんだよ」
と、材料を計量していたジェーンは、ディアスの微妙な勘違いを指摘する。
おそらくは、『あいすくりん』と言う名で売られていた、日本初のアイスが『カスタード・アイス』だったためだろう。
「それにしても、種類増やそうと思って、リアルのレシピ検索したんだけど、あまり役に立たなかったよ」
「そうなのか?」
「リアルは何でも簡単に手に入り過ぎるんだよ。生クリームを使う、とか、アイスクリーマーにセットする、とか。酷いのになると、市販のアイスクリームの素をミルクと混ぜて冷凍庫で固めるだけ。何てのもあったよ」
ゲーム内じゃ、そんな加工済みの食材や、便利な道具なんて、簡単には手に入らないんで参考にならないよ! しかも、フレーバーはお好みで、とかいい加減なんだよ! と憤るジェーン。
「……まぁ、アイスクリームの素、とやらはともかく、生クリーム位なら作れるし、今使ってる道具もアイスクリーマーっぽいだろうが」
「その辺は、ディアス君には感謝してるけどさ……。そう言う問題じゃ無くて、リアルじゃ、苦労して自分で作る楽しみ、ってのが、失われつつあるんだなぁ。って思っただけ」
ジェーンは牛乳を1L弱火に掛け煮詰めつつ、卵4個を卵黄と卵白に分け、卵黄に砂糖を大さじ5杯入れ、掻き混ぜる。と、手際良く作業しながら、リアルじゃ手作りお菓子、何て殆どやった事無かったよ。と苦笑する。
ディアスは、そんな事考えつつ遊んで無いので、ふーん、と気の無い返事を返しただけ。それより、どんなアイスを作るつもりなのか? と言う方向に興味が向き、テーブルに並べられた材料、特にフレーバーの類を一通り見て回る。
「お? これは、この間上川行った時の土産に買って来た、『ラベンダー蜂蜜』か」
「うん。ラベンダーの香るアイスも良さ気じゃない?」
富良野のラベンダー畑は有名だが、ゲーム内でもやはりラベンダー畑を作ったプレイヤーが居たのだ。だが、綺麗なだけでは飯の種にはならない。そこでラベンダーを使った生産品を色々作っていた、と言う訳だ。
ディアス達は近くに立ち寄ったついでに、折角なので記念に、と、この蜂蜜を買ってみたのだが……
「俺的には、ラベンダーの香りは食欲をそそらないんだが……」
「どうしてさ?」
「ほら、ラベンダー、って言うと、トイレの芳香剤のイメージが」
「ラベンダー農家に謝れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
食べ物の匂いを、トイレの匂い、とか言われたら、そりゃ、怒る。
「でも、ラベンダーが芳香剤として良く使われるのは、事実だし」
「だからって、トイレは無いでしょ! トイレはっ!」
「そうは言っても、俺以外にも同じ事考えるヤツは居るかも知れないぞ?」
「うぐぅ……」
確かにありそうな話に、言葉に詰まるジェーン。ディアスはそこに空かさず、
「と言う訳で、俺のお勧めは『味噌アイス』だ!」
勿論、ジェーンの反応は冷たい。
「そんな下手物、喜ぶのはディアス君だけだよ?」
「何をぅっ!? お前こそ全国の味噌蔵に謝れっ!」
鍋を火に掛けている事も忘れ、しばし罵り合う2人。
「何か焦げ臭いけど何やって……、ほんと、何やってるの? お前等……」
台所に入って来たシモヘイが、ディアス達の様子を見てちょっと引いていた。
エスカレートした罵り合いの末、ならば決闘だ! とPvPモードで殴り合っていたのだが、【格闘】アビリティの熟練はジェーンの方が上で、押し倒したディアスの上に跨り、マウント・ポジションを取ったところだった。
「エロスは程々にな……」
「「違ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁうっ!」」
言い訳に更に時間を浪費し、牛乳は確実に焦げてしまうのだった。
《両者戦意喪失によりDraw》
PvPモードの結果を告げるシステム・メッセージが、やけに虚しく響く。
と言う訳で、遣り直し。
「成る程。品評会に出すアイスを作ってた、と」
それは良いとして、趣向の違いで喧嘩するのはどうかと……、とシモヘイは呆れていた。
「だがあのレシピは、ホルスタインの牛乳を使った場合の物だった筈だぜ。水牛のは濃い目なんで、ちょっと分量が違ってくると思うんだが?」
「その辺の誤差修正のため、先ずはレシピ通りでどうなるか、試してるとこなんだろ」
「確かに、水牛の方が濃い分、あんまり煮詰めなくても良さそうなんだけどねぇ……」
ジェーンはとろみの出て来た牛乳を掻き混ぜつつ、こんな物かな? と首を傾げる。
素が濃い分、煮詰めてもそれ程量が減っていない。つまり、相対的に卵や砂糖の量が少ないと言え、ジェーンは足そうかどうか、悩んでいた。
以前作った時は、何かアイスっぽい物、が作れればそれで満足だったので、細かい事は気にしていなかった。故に、美味しいかどうかまで考えて作るのは、今回が初めてである。
結局出来上がりの味を見てから、と結論した様で、溶いた卵黄と砂糖を混ぜ合わせた物を鍋に注ぐと、もうしばらく掻き混ぜる。
これで、アイスクリーム・ミックスは出来た訳だが、
「シンプルな匂いだな。やっぱ、香り付けにバニラ・エッセンス入れた方が良いかな?」
「バニラ・アイスは後で試作するから、それまで待て」
「ちょっと、外野、うるさいよ」
とか言いつつも、その間に粗熱の取れたアイスクリーム・ミックスを、冷却機の釜に移し、手回し式のハンドミキサーで掻き混ぜるジェーン。
混ぜ続ける事、約20分。
「お。アイスクリームっぽくなったな」
「まだ柔らかいんで、どっちかって言うと『ソフトクリーム』なんだけどね」
これを器に移して、-20℃位で固めれば出来上がりだよ。と言うジェーン。
「ソフトクリームを売ってみるのも良さそうなんだが?」
「この状態を維持する温度管理が面倒なんだよ」
温度が高ければ融け、低ければ固まり過ぎる。この絶妙な温度管理はどうすれば出来るのか? リアルならセンサで温度測ってマイコン制御すれば良い。で済んでしまうが、そんな便利な物はここには無い。
と言う訳で、ソフトクリームを売る案は没。
このままとりあえず味見をしてみたかったディアスだが、味見は売り物にするのと同じ状態で。と言うジェーンに止められ、素材は金属製のバットに移して冷凍庫へ。
約30分で完成。リアルだともっと掛かるらしいが、例の1日4時間の所為で、相変わらず時間経過の影響が良く分からない事になっている。
攻略掲示板の情報では、後は手を加えずただ待つだけ、の状態だと6倍速。と言われているが、例外もあるらしいので、まだ何とも言えないところである。
「……うむ。前よりは美味くなってるな」
それが腕が上がったためなのか、道具が良くなったためなのか、は分からないが、とりあえずプラス評価を付けるディアス。その割にはさほど美味しそうにしていないのは、ついついリアルのアイスと比べてしまった所為だろう。
シモヘイも目深に被った毛皮の所為で表情は読めないが、特にコメントを発していないところを見ると、似たような感想だろう。
「でも、若干甘みが足りないかも……?」
と、ジェーンも満足行かない出来の様。
ゲーム内では珍しかろうと、結局は良く食べるリアルのアイスと比較される訳で、そうなるとこの程度では……、と思ってしまう3人。
「その辺は試作を繰り返すしかないな。それに、この上にジャム掛ける食べ方するなら、甘さ控えめでも良いかも知れないし」
俺はこの素朴な味は嫌いじゃ無いぞ。と言いつつ、2杯目をお替りし、実際に自分で作ったイチゴジャムを載せてみるディアス。
「うん。ジャスティス……!」
何かそれだけで満足してしまった様なディアスは、これ以上試作を手伝ってくれなさそう。と思うジェーンであった。
そして、『畜産品評会』当日。
「ワシ、復活!」
ヤマカン、久々のダイブ・インである。
「お? ヤマカンじゃないか。イベントに合わせて入って来やがって」
「受験はもう良いのか? どうだ? 受かったのか?」
「受かってないのにゲームやってたら、今度はDIGを没収されちゃうかも?」
ヤマカンがダイブ・インしなかったのは1週間程度だが、イベントが迫っていた時期でもあり、色々と苦労したディアス達。
故に話したい事も色々ある筈なのだが、結局は受験の話が最初に上るのは、それが最大の懸案事項だからだろう。
「結果はまだ出とらん。じゃが、一応試験は終わったし、少し位息抜きしても罰は当たらんじゃろ?」
面接と小論文は、神経使うんじゃよ~。と語るヤマカンは、確かに憔悴している様に見える。
「もし、これで落ちていたりすれば……、3月まで入れんかも知れん……」
情緒不安定なのか、ネガティブな思考に捕らわれ、急に暗くなるヤマカン。
「まぁ、まぁ。とりあえず、アイスでも食って元気出せ!」
と、ディアスはクーラー・ボックスからアイス・バーを一本取り出し、ヤマカンに渡す。
このクーラー・ボックス、釧路で得て来た硝石を利用した冷却法を用いている。
最初は『森林喰らい』に使ってる様な小型の蒸気機関で冷却機を動かそうか、と言うアイデアもあったのだが、冷却維持のための石炭の消費を考えて没になった。それに、食い物屋が建ち並ぶ中、石炭の煙をモクモクと上げるのもどうかと、と言う事情もある。
それに比べれば、大量の硝石を持ち運ぶ方がまだマシ。との判断だ。
このアイスを作るのに、色々と苦労があったのだよ。と、その苦労譚を自慢げに語るディアス。
ちべたくて、おいしいのぅ~。とアイスに癒されつつその話を聞いていたヤマカンであったが、ふと首を傾げ、
「……のぅ、それなら、温泉宿の冷蔵庫用に補修部品があったじゃろ。……何でそれを使わなかったんじゃ?」
「……忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
おかげで、えらく遠回りをしてしまいました。
持ち物の把握は、キチンとしておきましょう。
「だが、後悔はしていない!」
確かに、ノウハウの蓄積、と言う意味では無駄にはなっていませんが。




