基本設定……のつもりが裏設定
何か色々細かい設定資料です。
基本的には、
・作中でチラッとだけ出て来た話
・辻褄の合わない事を書いてしまわないための覚え書き
・その内ネタにするかもしれないアイデア
等が適当に書き綴られた物です。
VRMMO物は数が多いので、それらで一般的になっている設定、例えば『デス・ゲーム』とか、と大幅に異なる部分は、何も説明無しだと違和感があると思うので、書いてみました。
でも、特に読まなくてもなんの問題もありません。……筈。
■ブレイン・マップ派生技術
有名な使用例は、『FDシステム』『サイボーグ技術』『擬似人格AI』『バイオ・コンピュータ』等がある。
逆にあまり知られていない使用例は、『ナノマシン群体制御』『ネットワーク統合制御』『擬似ESP』等。
脳とデータを遣り取りする様な、直接的に脳と係わる技術と、脳と言う特殊な情報処理系を参考にし、生物的な動作をする機械、と言う2つの方向性がある。
■サイボーグ技術
義手・義足、義眼等、人工物を人体に組み込む技術一般。ブレイン・マップの恩恵で、旧来より格段の進歩を遂げた。
神経接続式の義手等は昔からあったが、これに触覚の再現が加わっただけでなく、応答速度や随意性も向上している。
脳内に蓄積されている経験を読み込んで、個人向けの調整が出来る様になった事、神経系と電子制御系のスムーズな連携が可能な、情報伝達プロトコルを組み込んだ事が性能向上の理由となる。
これらにより、旧来の技術では実行が難しかった、反射等の不随意動作を制御コンピュータが処理し、その制御結果を適切な神経信号として伝達する事で、『勝手に動いた』等の違和感を感じさせずに高速動作させる事が可能になっている。
また、内臓に関しても『運動に合わせて拍動が適切に変化する人工心臓』等の、高性能な人工臓器を作れる様になる、と期待されている。
脳へ演算器やメモリ・チップを埋め込む、『ブレイン・インプラント』も開発が進んでいるが、まだ認可は下りていない。
■大型筐体と簡易端末
FD機器には大きく分けて、人がすっぽり入るカプセル、悪く言えば棺桶の様な大型筐体と、最低限の情報投影機能を実現したヘルメット型の簡易端末が存在する。
FD機器としては大型筐体の方が基本形であり、簡易端末はそこから目的に合わせて余計な性能を削り、扱いを容易にした物である。
大型筐体のメリットは何と言っても大容量の情報投影・読み取り性能による、高度な仮想空間再現能力である。
これは大型化により高性能な脳干渉システムを採用している事、脳だけでなく全身の神経系への干渉システムも搭載している事、制御コンピュータもスパコン並の大型機を使っている事、安全保障系が充実している事、等が理由であり、どれも大型であって始めて実現出来る物である。
特に安全保障系は重要であり、FDシステムの問題点に対応し、迫力ある派手な演出をトラブルの起こるギリギリのところを見極めて情報投影する事を可能にしている。
対して簡易端末のメリットは安い事。生産が容易で普及させ易い事にある。
性能の面では全てにおいて大型筐体に劣るが、小型でお手軽な事を逆手に取り、意図的にFDに使わず、普通に行動しながら必要な情報を部分的に投影し、拡張現実の様な使い方が出来るのは簡易端末ならでは。だが、こう言った利用方法は、日本では医療等一部の分野以外では認可されていない。
情報投影性能についても、やや大型筐体と比して再現度が低く、また過度の刺激を与えそうな派手な演出はリミッターで抑えられる、以外はそう劣る物でも無く、一般的な用途には十分である。
■DIGの種類
大きく分け、『軍事用』『医療用』『一般用』の3種類がある。
『軍事用』は当然軍事機密であるし、『医療用』も生命に係わる観点から詳細は秘されている。よって、3種とも独自の経緯で開発されており、技術的な繋がりは殆ど無い。
・軍事用
兵士の訓練に使えない、と判明して以降、『擬似テレパシー・データ・リンク』や『センサ情報投影』による、いわゆる『擬似ESP』を利用した効率の良い作戦行動補助システムに活路を見出している。
・医療用
リハビリの効果を高める補助や、義手等を設計する際のデータ取り、介護の際の精神的ケア、神経信号遮断による麻酔効果、等多岐に亘っており、その分複数の種類のDIGが存在する。
・一般用
ゲームや映画等の娯楽用途、プレゼンテーションやネットワーク会議のビジネス用途、データ教材を利用した学習用途、等の応用が出来る、と言われているが、日本では社会的にあまり影響の出ないゲームで様子を見ている最中。
作中に登場する物は娯楽用であり、『一般用』に分類される。現在、唯一の日本製DIG。
8社共同開発であり、費用対効果のギリギリのところを突いた優秀なハードである。
これ以上の高性能化は値段ばかり高くなって、その性能を実感し辛く、価格を抑えた普及版を作ろうにも、それ以上に性能を削った事による粗が目立つ様になる。
外国にもDIGはあるが、『一般用』としては日本製の物が最も優秀であり、これ以上の物は数年は出て来ない、と言われている。
■ダイレクト・リンク対応OS
FD機器に組み込まれているOS。
DIG同様、『軍事用』『医療用』『一般用』に大きく分かれる。未だ黎明期であり、発展の余地を残している。そのため、時折アップ・デートが行われている。
通常のコンピュータ用で使われる従来型のOSの場合、並列処理系や大量の情報の機械~脳髄間の翻訳系の問題で、リアル・タイムの遣り取りに支障が出る事が判明。この問題に対応するため、カーネル・レベルで脳と親和性の高いデータ形式を処理し、脳神経を模した高速並列処理系を備えたOSが必要とされた。
一見『ブレイン・マップ派生技術による高性能OS』の様だが、『脳と親和性の高い情報処理』と言う事は、『脳の苦手分野も再現』と言う事になり、結果、ループ処理において演算結果が発散する可能性がある。つまり、一定の解が得られない、演算間違いが起こる可能性があり、FD機器以外には使用されない。
結局、物理シミュレーションは従来OS、FD機器の制御はDL対応OSと、2種類のシステムの連携が必要となり、やはりデータ翻訳の手間が必要となるが、OSの機能の一部に『仮想感覚器』と言う物があり、これが実際の人間の感覚器と同程度の速度で物理パラメータを神経信号に置き換えている。これにより、DL対応OSは、アバター制御OSと言う見方も出来る。
サイボーグ・パーツの制御系も、個別の設計・調整が行われているものの、基本的には同類の物であり、むしろこれが最初に世に出たDL対応OSである。と言える。
■FDシステムの問題点
FD技術はほぼ完成の域にあるが、『人間側が対応出来ない』と言う理由で自由にデザインする事が不可能である。そのため、当初期待されていた幾つかの用途に使えない、と言うデメリットが存在する。
・知識を覚えるのに役に立たない
脳への直接的情報書き込み、で即思い付く利用法が知識の詰め込みであるが、ただデータを書き込むだけだと、それをスムーズに思い出す事が出来ない。
使い物になる様にするには記憶の関連付け、言わばインデックス・タグを付ける必要があるのだが、人間のそれは非常に複雑に絡み合い、結果、記憶を丸々入れ替えるのに匹敵する情報操作が必要となってしまう。
投影された情報を人間側が1つ1つ吟味し、整理して覚えて行けば問題無いのだが、それだと『現実で学習するのと変わらない』と言う結果になり、FDを使うメリットは無い。
・技術を身に付けるのに役に立たない
現実にはコストやリスクの問題で実行し辛い事、特に軍事の分野で訓練への応用が期待されていた。
脳にのみ情報を書き込む事の問題は早くから指摘されていたので、訓練は全身の神経系に干渉可能な大型FD筐体を用いて行われた。しかし、FD内で出来る様になっても、現実には体が着いて来ない、と言う問題が発生。
データを精査したところ、『実際に体を動かしていないため運動神経の発達が不十分』『擬似感覚を投影しているため感覚神経の発達も不十分』と、大別してこれら2つの問題点に由来する事が判明した。つまり、動作を実行するのに『細かい制御信号が伝えられない』『差異を補正するための感覚が鈍い』と言う事になる。
被験者の体感としては、『身に付けた筈の技術が、訓練をサボって出来なくなった』感覚に近いとされ、結局は再訓練が必要となる。
それだけならまだしも、出来ない事を出来ると誤認した事による事故が多発。メリットが無いどころかデメリットが確認されてしまった。
・非現実的な情報投影によるパニック症状
脳に直接情報を投影出来るため、無茶苦茶な情報投影による混乱、例えば『激痛・悪臭等の不快な五感情報』『病状などの再現』『身体欠損の再現』等の手法により、精神にダメージを与えられる事は解っており、対策も採られて来た。
しかし、それら『悪意ある情報』のみならず、映画やゲーム等で良くある『フィクションの派手な演出』でも悪影響が出る事が判明した。
良く引き合いに出されるのが、ゲームで移動の手間を省くための『テレポート』の類である。
テレポートすると周囲の状況が一瞬にして変化してしまうため、それに対応できず軽いパニック症状を起こし、気分が悪くなる、等の問題が少なからず発生した。俗に『テレポート酔い』『転移酔い』等と呼ばれる、『空間識失調』の一種である。
派手な演出も、もし実際に体験したとすれば、単に恐怖を与えるだけの物でしかない場合も多く、個人差もあり的確な対応は難しい、とも言われている。
また、誰でも空中戦に対応出来る様、空間把握情報も脳に投影したゲームが、『勢いとか高機動時の迫力を感じない』と批評された事があり、この辺りのバランス取りは製作者の頭を悩ませる問題でもある。
・精度の低い情報投影によるストレス症状
極端な例を挙げれば、何も感じない空間に閉じ込めれば、間違い無く精神に異常を来たす。そこまで行かなくとも、現実より『目が悪い』『耳が良く聞こえない』状態ならストレスが溜まる事は間違い無い。
元々人間の感じている世界は、感覚器の得た情報を基に脳内で組上げられた仮想現実、と言う考え方も出来、想定より低い精度の情報しか得られないと、その補完のために脳に負担が掛かる。
また、単純に高密度の情報を投影すれば良い、と言う物では無く、特に気にしていない部分について高精度の情報を投影すると、これも負担になる。
この問題は当初『3D酔い』や『VR酔い』の一種と考えられて来た。しかし、一部重複する部分があるものの、基本的に別問題であり、対策方法も異なる。
倫理的な問題で、痛覚を鈍らせるフィルタ等を組み込まねばならない場合も多く、何処までリアルにすれば良いのか、未だに解決を見ず、現在のソフトは実験的な意味合いが大きい。
■FDソフト
現時点で判明しているFD対応ソフト。過剰なリアリティの悪影響を懸念し、FDゲームは基本的に15禁に指定される。
・『TONDEN FARMER』
北海道を舞台とした、開拓シミュレーション。
詳しくは別項『TONDEN FARMER ゲーム設定』で。
・『戦国KARUMA』
東北を舞台とした、戦略シミュレーション。
・『Iron Site』
関東を舞台とした、ロボット・アクション。
・『Signal Blue』
中部を舞台とした、カー・レース。
・『NANIWA AKINDOH』
近畿を舞台とした、経営シミュレーション。
・『超人Athlete』
中国を舞台とした、スポーツ・アクション。
・『GADGET MONSTER』
四国を舞台とした、召喚獣バトル。
・『武林Online』
九州を舞台とした、格闘アクション。
・『Powerfull Diver』
動画視聴ソフト。元々はFDM用の動画視聴ソフトのおまけ機能として作られた物。
だが、FDM自体にDIGに対応した再生機能が備わって販売されたため、おまけ機能のみが独立して販売される事になった。
FD非対応の従来規格の動画ファイルを、FD内に構築した仮想映画館で見れる様にした物で、映画館らしく、ポップコーン等の菓子類や、コーラ等の飲み物も味わえる。
グレードが幾つかあり、高位の物は映画館環境をカスタマイズ出来たり、食事の種類が多かったりする。
ただ、一般的にはそこまでの機能は求められておらず、基本機能のみのベーシック版が一番売れている。
■FDアバター
FDシステムで利用されるアバターは、仮想世界の情報を取得する端末であり、正に本人の分身と言える。
FDシステムの問題点に対応するため、様々なフィルタや補助システムが組み込まれており、基本設計は全メーカーで共通規格を採用している。
特徴的なのが、アバター自身に動作制御系が備わっている事で、人間の脳の運動野を使用せず、FD内での行動による慣れや経験は、アバター側に蓄積される。
これはスポーツ選手等の特殊な技能を持つ人が、その経験をFD内に持ち込めない、等のデメリットが存在するものの、非現実の経験を脳に書き込む事による悪影響を防ぐために必要な措置である。
また、この事はデメリットばかりでは無く、
・現実で不利な身体能力、怪我や年齢の所為で体が不自由な場合でも問題無い
・現実の体型とは違う体型も可能
・非人間型にも対応可能
・脳への負担軽減
等のメリットも存在する。
■FDゲーム内での違法行為
従来のゲームでも、違法行為を題材とした物は18禁となっているが、FDゲームは過度のリアリティのため、『本当に犯罪をやっている』気分になってしまい、多大な悪影響がある、と言われている。
このため、それらの行為は禁止されているが、まだ完全に防ぐための法整備が出来ておらず、自主規制に任されている段階である。
特に暴力行為や薬物使用、性行為等は、従来から存在する倫理的な問題を管理する団体が厳しくチェックを行っている。
未成年の飲酒に関しては、『実際には何も飲んでいない事』『アルコール分0.00%ビール等の前例がある事』等を理由に容認される傾向にある。ただしこの場合、現実に存在する酒の銘柄が書かれていたりすると、飲酒を促すコマーシャル的な意図があると看做され、アウトである。
■デス・ゲームの可能性
都市伝説で良くある『デス・ゲーム』だが、人を殺せる様な機能はDIGには備わっていない。
しかし、トラウマになる様な体験をさせたり、ショック死しかねない恐怖を与える事なら出来る。更には大型筐体なら生命維持に係わる重要な体機能を誤作動させ、意図的に殺す事も可能。
ただし、これらは安全保障系のチェックを掻い潜れたら、と言う条件が付く。
安全保障系は独立したシステムになっており、しかも中身は基礎理論から異なる多層のフィルタである。これをハッキングする事はほぼ不可能で、少なくともゲーム・ソフトに細工をした程度で何とかなる物では無い。
とは言え、結局は人の創ったシステムなので『穴は無い』とは言い切れないのだが、殺人可能なレベルの重大なセキュリティ・ホールは真っ先に調べられ、埋められている。
そのため、各会社には『デス・ゲームを研究する部署』なる物が存在している。
■思考加速システムの実用性
物理シミュレーションの高速動作に伴い、思考を加速させ、実時間の何倍もの時間を体験したかの様に感じさせる。FDではそう言った事も理論上は可能だと言われていた。
元々人間の脳は命の危機等、非常時には高速動作する事が知られており、この応用であまり高くない倍率の範囲なら比較的容易に実現可能である。
この場合、脳は音や色彩等の情報を無視し、処理を簡略化する事で高速化を実現している。FDシステムでは、そう言った処理の大部分はコンピュータ側で受け持っているので、簡略化しないまま高速化が可能となっている。
しかし、加速は精々16倍速まで、と言われている。
神経の情報伝達は、電気信号と化学物質によって伝えられるが、電気信号はともかく、化学物質による伝達は非常に低速で、これがネックとなる。また、無理に高速化すれば、化学物質の急激な劣化を招き、健康に障害が出る。
解決方法として、コンピュータ内に人格をコピーしたAIを用意し、これに人間の代わりに体験させ、そのデータを後で本人が体験したかの様に脳に書き込む。と言う方法が考案されたが、本人の体験と言うには無理がある、コピー人格AIは倫理的に問題がある、等の理由から廃案となっている。
倍率が低くても脳の負担が大きくなる事に変わりは無く、思考加速システムは安全保障系の充実している大型FD筐体でしか認可されず、DIGでは使えない技術である。
これら脳側の問題が解決しても、今度はネットワーク系の問題がある。
例えば、ネットワーク・ゲームでは2~3フレームの遅延は日常茶飯事であり、これを感じさせない様に誤魔化す技術がつぎ込まれている。だが、もし30倍に加速していた場合、2~3フレームは、ゲーム内で1~1.5秒もの遅延になり、流石に誤魔化し切れない。
昨今では通信接続系の性能向上で、ほぼ光デジタル通信システムの理論限界値に近い通信速度が出せる様になっているが、それでもまだ遅い。
光速は秒速30万km。30倍に加速されたゲーム内の1秒はリアルの1/30秒であり、この間に光は1万kmしか進まない。
もし1000km離れたプレイヤーが通信対戦を行った場合、応答が帰って来るまでに光は1000kmを往復する事になる。これに要する時間は加速されたゲーム内で0.2秒。この遅延はゲーム性に悪影響を及ぼすレベルである。
たった30倍を想定してもこれだけの問題があり、これは物理的な限界、と言う壁である。
これ以上の加速を実現したかったら、超光速通信と言う夢のシステムを実現させるしか無い。と冗談交じりに言われている。
■地球環境シミュレータの利用
主な使用目的は、『天気予報』『地震予知』『農産物の収穫予測』『病気の流行予測』『埋蔵地下資源解析』『物流解析』『人口予測』等、多岐にわたる。一部公表されていない用途もある。
態々地球環境シミュレータを使う必要の無い事にまで使われたりしているが、環境の影響を全く受けない事柄など殆ど無いため、折角あるのだから、と割と気軽に利用されたりしている。
当初の地球環境シミュレータは学術研究用であり、精度も荒く『机上の空論』の域を出ない物であったが、電算技術の研究の一環で高度な進歩を遂げたスパコンが、その性能をアピールするため、判り易いデモンストレーションとして地球環境をシミュレーションし、実用レベルの結果を出した事から状況は一変。従来の常識では、『十分な精度のシミュレータは費用が掛かり過ぎ、割に合わない』と言われて来たが、メリットがそれを上回る可能性が示された。
だが、スパコンの価格が高い事はどうしようもない事実で、結果、国の保有する地球環境シミュレータに解析以来が殺到する事になった。これに対し、国がスパコンの開発費用を回収する目的で色々引き受けた事が、現在の状況に繋がっている。