野球に流れなんてない!!
「来てる!来てるよ!流れが来てる!」
「騒げ騒げーー!お祭り男の桐島の打席だぞ!!」
何事にも”流れ”という、言葉を使う輩がいる。
だが、俺はそんなのを信じない。
敵の応援団が騒ごうが、味方の守備陣が動揺していようが、監督やコーチ陣が間をとるなど不要だと思う。
「4番、ライト、桐島ー」
そう、この満塁場面。一発出ればサヨナラになるという状況であろうと、投手である俺の仕事は変わらない。目の前の打者に集中し、最高のボールをただ投げる!それが仕事なのだ。
このままサヨナラになるという、そんな幻想などあり得ない!!
バキイイィィィッ
「打ったーーーー!!桐島!もうガッツポーズ!!打った瞬間、確定となる逆転満塁サヨナラホームラン!!試合を決めたのは、やはり!!桐島だーーーー!!」
◇ ◇
「流れなんか信じない?じゃあ、実力がないんちゃう?」
それ結構、酷くない?
「スライダーにヤマをはっとっただけや。前2人がフォークを見逃して、歩いたさかい。なら、フォークは投げへんよなーって……ワイはストレートにメッチャ強いから、それもないと踏んだ。そんならスライダーを待つやろ?」
流れなんか信じないって投手がマウンドに立っていたから、それを尊重した上でインタビューに答えると、こんな風に逆にイジメなんじゃないか?
そらぁ、ほらぁ、スタンドの皆様の応援がこのバットの力に成りましたって言いたいけど。
「相手がそーいうファンを大事にせん投手やからね。ワイは応援の力、信じます」
おおおーーーっ、自分のチームのファンは盛り上がる一方で
「流れはありますよ。ワイの前の3人、……四死球の出塁やで。投手の独り相撲やないか。ワイだってホームランやから、相手の野手さんもポカーンっとしとるだけやったし……それを流れやないって言うんやったら、……ほならね、実力不足やねー」
敵チームのファンは当然ながら、投手へのブーイングである。四球からのホームランなんて、野球ファンからすれば、ムカつくプレイの1つであろう。
なにやってんねん、コラァ。
そんな野郎が、ロジカルを大事にするキャラでした、なんてあまりにも理解に苦しむ。自チームのファンや選手からもあんまり好かれていない。プロ野球選手になれる才能があるのは確かだが、その殻を破ってこそ、真のプロ野球選手。
成ってからが終わりじゃない。
そこで何を成すかが、大事である。
「ワイはバットを振りますよ」
「そして、夜のバットも絶好調ですね、桐島選手!!」
「そやね、このバットも下のバットもワイは絶好調や。女子アナ達の穴を……」
…………毎日のように、週刊誌に取り上げられるような、ド派手な関係を作ることが目立つ。そーいう王様でいるには、活躍しかないのも事実ではあるが……。桐島もファンに好かれるタイプじゃねぇーや。
世界はこうも理不尽な才能ばかりであり、それを覆せる努力もあるということだ。
◇ ◇
「くっ…………桐島め……」
週刊誌を騒がせるような打者が、なぜかこの時代の日本最強の打者。世界の才能、世界の努力の差を知る。そして、矜持や過去もボロボロにしてくる。
「俺は元プロ野球選手の、〇〇だぞ!!」
「いや、知らないんだけど。とりあえず、この所持してる麻薬について、説明してよ」
そーした時の快楽に頼る薬もある。そして、それが決定させるのだ。
敗北感を紛らわせる快楽へ。
「プロ野球選手も堕ちたものねー」
「鯉川さん。活躍している選手とそうでない選手で、こうも世界は違うんですよ。警察の中だってそうでしょ?」
彼もまた、桐島と同じく週刊誌に載るわけだが……。彼はここでも、ただの1ページ・小さいコマに過ぎなかったのだ。




