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クラスで勇者に転生するはずが一人で置いて行かれました。  作者: NayuTa


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5章・諸国会議−6

 ゾゾでの会議に参加する一団が出立する数日前、皇帝と元老院の面々、皇太子セルディスが一室に集まりテーブルを囲んでいた。

「エリシア王女に貴族一人、護衛が二人か……。」

 つい先ほど報告を受けたのは怪しい動きを見せているアルセリア王国から諸国会議に参加する面子の情報である。

 ゾゾに配慮した少人数での編成に見えるが……。

「あの見栄っ張りの王がそれほど殊勝な考えをするとは思えない。」

「陛下に同意です。貴族一人はほぼ間違いなくストラウド卿でしょう、」

 ヴォルミンの言葉に元老院議員全員が頷いた。

 人数ほど確度が高い情報ではないと前置きされたが、同行する貴族が爆炎の二つ名で知られるクレイ・ストラウドであることは疑いようがなかった。

 彼なら会議で文官と同様の役割をこなしつつ護衛も必要なくなる。

 そこまでは理解できるが、なぜアルセリアがこの人選にしたのかが問題である。

 文武両道の極みと言われるクレイだが、これまで諸国会議のような場所に国王不在で出て来た例はない。

 アルセリアがそうしないのは特に国王が彼を軍事力の要としても見ているため、自身の元から易々と離すことができないからだと思われていた。

 最近の不穏な情報も含めてアルセリア王国内で何かが大きく動いた事は間違いない。

 王国内で何かが動こうとしているのか、クレイに何かをさせようとしているのか、ゾゾに送るのはセルディスでいいのか。

 誰も出せなかった答を最初に出したのはセルディスだった。

「私とユウリという冒険者二人で行きましょう。」

 国内の事を最優先にするならば当然の案だが、それは自身の安全を全て捨てているのと同義だった。

 宗絃は正規の軍人ではない。

 上流階級を狙うなら当然夜会だが、正規の軍人ではない宗絃は身近に置くことができない。

「お前の剣の腕が確かなのは認める。だが……。」

 ルギウスの立場なら自らその案を出して当然と言われそうだが誰一人そうする事はなく、ヴォルミンはその案を真っ向から否定した。

「そうです。それは流石に承服しかねる。夜会の間、彼は近くにいられません。」

「近くにいれば必ず守られるような言い方ですが、そこまでですか?」

 セルディスの問いに断定的な言い方を避ける傾向にあるヴォルミンは黙ったが、代わりに答えたルギウスは断言した。

「奴なら、やる。」

 数秒、室内に流れた沈黙を破ったのは失笑だった。

 注目を集めたセルディスは悪びれもせず言い放つ。

「面白いですね。是非とも見てみたい。」

 代表団の責任者に就けた時点でメンバーの最終決定権も彼にある。

 残された者たちにできる事は祈るのみだった。



 出発の朝、そろそろ出ようかという宗絃の部屋がノックされた。

 主は分かっている。

 絶対に遅刻するなと口を酸っぱくしていた向かいの部屋の住人だ。

「おはよう。」

 顔見ただけでアイラは安堵の表情を浮かべた。

「よかった。ちゃんと起きれたみたいね。」

「そんなに気にするなら一緒に寝てくれれば良かったのに。」

 一瞬固まったアイラは無言で宗絃の肩を思いっきり叩いた。

 先日、予定よりもかなり早い時間に最終の打ち合わせから戻ったフィオルの部屋ににシャミとアイラが入ると、フィオルだけでなく宗絃も難しい顔をして腕を組んでいた。

 聞けた話は『計画変更に伴い旅程は完全に極秘のものとする事』と『成功報酬の追加』という二点だけだったらしい。

 依頼を受ける冒険者にすらここまで情報を与えられないのは極めて稀であり、国で何かが起きているのは明らかだったが、そこまでの説明は受けられないまま返されたのだという。

 その時から不安を隠しきれないアイラと真逆に、宗絃は翌日からはごく普通の態度に戻っていた。

 アイラが不安でないのかと聞いた時も、

「一回死んだような気はしてる。」

と軽く返しただけだった。

 アイラは記憶を失っている話だろうかと思ったが、本当に一度死んで転生したなどとは思いもしないままである。

 知り合って一年も経っていないが、アイラより少し低い背丈だと思っていた宗絃は既に彼女を追い抜いて当初のような少年の印象は無くなりつつあり、随分と長い時が過ぎたように感じさせる。

 彼から話を聞いてアイラが肝を冷やす事は何度もあったが、事前に危険だと感じるのは初めての経験である。

 事前に何をするのか分かっていれば、と思う事もあったが、今は何も出来ない無力感に苛まれている。

 アイラに出来たのはただ一つ。

「気を付けて、いってらっしゃい。」

と言う事だけだった。

 宗絃はどこか嬉しそうに、

「行ってきます。アイラも気を付けてな。」

と返すと帝城に向かって歩き出し、一度だけ振り返って手を振った。

 いつもと変わらないその姿に手を振りながら、アイラはどうしても不安を拭えなかった。

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