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クラスで勇者に転生するはずが一人で置いて行かれました。  作者: NayuTa


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3章・目立つらしくてー12

 アイラ達が帝都へ発った二日後、彼女達の出立と同日に創設した新たなクランのオーナーとして事務仕事に励むバーツは朝から頭を抱え、愚痴をこぼす相手を欲していた。

 新設早々とはいえ、想定以上に組織が回っていない。

 その割に規模は思っていたほど大きなものにはならなかった。

 規模が大きくならなかった要因はウィルだろう。

 新クランの看板になるはずだった暁光の導きはリーダー不在で解散状態という情報が流れてしまった。

 その原因はとして噂以上の情報は流れていないし他の三人は加入しているのだが、何かあったと勘繰ってバーツについて来なかった者が多いのは確かだ。

 そして組織が回っていない原因は冒険者協会から引き抜く事に失敗した職員にあるとバーツは考えていた。

 事務処理において万能に近かったアイラの事だが、それ以上に指示を素直に聞いてくれるところが評価を高めていた。

 バーツについて来た他の窓口職員はそれ以外の業務をやりたがらないために内部の事務が遅れているのだ。

 バーツが認識している失敗はこの二人だが、実際に最も大きな影響を与えたのはテッカンが彼について来なかった事だった。

 町の冒険者協会が二分される事態を見たテッカンはどちらかに籍を置くことを拒否して実家の農業を手伝うことを選択した。

 古株だった彼は冒険者からも協会内部からも信頼されており、その不在はウィル以上に新クランへの参加者の足を鈍らせたのだ。

「全く、どいつもこいつも義理ってもんが分かってねぇ。」

 バーツが舌打ちしていると部屋がノックされ、入るように言うと協会支部から引き抜いた男の一人が慌てて入って来た。

「オーナー、大変です!」

「朝からどうした?」

 大声への苛立ちを隠しながらバーツが聞くと走って来たらしい男は息を切らしながら伝えた報告はシンプルだった。

「ダンジョンが、消失したそうです。」

「何っ⁉︎」

 バーツの疲労感を驚きが超え、立ち上がる。

「どっちのだ?」

「近い方です。」

「誰かが攻略したんじゃないのか?」

「恐らくは。ですが協会にも報告がなく、不明だそうです。少なくともウチのクランに所属していない者のはずです。」

「じゃあ、いつかも分からないのか?」

「昨日の夕方、最後の組が出てから今朝までの間としか……。」

「衛兵は?出た奴らを見てないのか?」

「そこまでの情報はまだ来ていません。」

 バーツは言葉を失った。


 その日から町中は大騒ぎになった。

 稼ぎ場を一つ失ったことよりも、誰が攻略したのか不明というのが問題だった。

 普通ならば攻略者がダンジョンの最奥にあったはずの宝を持ち帰りどれほどの値が付くのか、協会からの査定はどうなるのかと多くの情報が行き交うはずだが、ゲインのように出所不明の噂話だけが飛び交う状況は異様と言えた。

 だが、その騒ぎを加速させた一旦は間違いなく『分断』と言ってもいい形で誕生したクランの存在に他ならない。

 町の規模に対して冒険者協会とクランが存在するのは過剰だった。

 利害の関わるほとんどの部分で衝突が起きていたのだ。

 そんな町の喧騒を背に、帝都に向けて出発する商人、ペルーの姿があった。

 行商に向かうとは思えない、明らかに一人分の荷物しかない装いである。

 実際彼が持つ荷物はほとんどが自分の物のみで商品のほとんどは先発したシャミ達の一団と共に部下が運んでいる。

 商人として情報を重視する彼にとって今のゲインは危険な市場にしか見えなかった。

「情報だけでなく、確度の大切さを理解できていない者が多過ぎますね。」

と呟き、帝都への道のりを急ぐのだった。


 ゲイン史上最悪の混乱と言われた翌日。誰もがこの謎に包まれた状態に慣れ始め、いずれ収束に向かうと思った朝、大方の予想を裏切って更なる混沌が訪れた。

「オーナー!もう一つのダンジョンも消失しました!」

「な、何ぃ⁉︎本当なんだろうな⁉︎」

 昨日から溢れかえった情報は全てが伝聞で、その根拠を探すことなど不可能となり信用できるものなどなかった。

 バーツは本気でこの話も嘘であることを願ったが、それも虚しく、

「朝一でダンジョンに向かった複数のパーティーからの情報です。ウチのクランの連中も含まれます。」

と最悪の現実が突きつけられた。

 力が抜けて崩れ落ちるように椅子に座り込んだバーツは頭を抱える。

 ゲインの収入はダンジョンから冒険者が持ち帰る魔石が中心である。依頼の収入もあるが、それもダンジョンがあるおかげで人が集まっているからこそ生まれる収入だ。

 それがあるからバーツもクラン立ち上げに踏み切った。

 ダンジョンがなくなればバーツの考えるゲインの構造は全てが崩壊する。

「誰が……。」

 呟くバーツがいる部屋とは別の小さな部屋には暁光の導きの三人が揃っていた。

 新人教育を任された三人はミーティングの時間中だったが、昨日に引き続きそれどころではなくなってしまった。

「一人しかいないよな。」

 ゴータスが呟く。

「だよね。未踏エリアまで攻略出来る冒険者、というか出来る可能性のある冒険者は。」

 チャロもその意見を肯定する。

「バーツさんは気づかないのかしら?」

 カミラの疑問に答えたのはチャロだった。

「彼の実戦を見たのって私達だけだしね。それに遠い方のダンジョンは通路型じゃないから一人で進めるような場所でもないし。どうやったのかは分からないけど、出来る可能性があると思っちゃうのも私たちだけなんじゃない?」

「それもそうか……。」

 最初に驚くほどの魔法を見せられ、武闘大会でのウィルとの剣戟を見たからこそ思い当たるのだ。

 現場主義と胸を張り、協会を批判することもあった元冒険者のバーツがこのような事態に陥るのは皮肉としか言いようがない。

 重い空気の中、

「今は出来ることをやるしかない。」

と姿勢を正したゴータスを見てカミラとチャロも彼に倣うのだった。

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