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クラスで勇者に転生するはずが一人で置いて行かれました。  作者: NayuTa


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3章・目立つらしくてー11

 三日後、出発の準備をする本部職員達の周囲には同様に帝都へ向かう者達が集まっていた。

 大所帯となった一団の中、ウィルはシャミから声をかけられた。

「おはようございます。荷物は預けられたのですか?それにしても少ない気がしますが……。」

 帯同する集団は商人が大多数を占めるがそうではない者達の荷物を運ぶ業者もいる。

 業者のランクにもよるがそこそこ高い業者でなければ目的地で荷物を返すまで簡単には取り出せないために手荷物がなくなる事はないのだが、ウィルは大きめのカバンしか持っていなかった。

「おはようございます。これで全部ですよ。最低限の着替え以外は売りましたからね。」

 前日まで拠点を持ち、町でトップクラスのパーティーにいた冒険者とは思えない答えにシャミは驚いた。

「では、剣は?」

 ウィルの剣は先日見た細緻な装飾が施された高そうな剣から新人冒険者が持っていてもおかしくない一般的なものに変わっている。

「あれは協会からパーティーに与えられたものでしたからね。返しましたよ。」

「返した?そんな義務は協会にはありませんが?」

「え?バーツ支部長から、『ゲイン支部から出るなら支部から与えられた剣を持って出るのは盗み同然』とか言われまして。」

 シャミは頭を抱えた。

「そんな勝手な……。」

 功績、技能に応じて武器などを協会から与えられるものはあるが、あくまで『協会から』である。協会の言いなりにならないなら返せなどと言えるはずはないし、言えば冒険者への圧力として問題になるだろう。

「なんか……申し訳ありません。」

「いえ、ウィルさんが謝られる事ではありません。それより、武器を変えるのは大変では?」

「ま、対応力も実力ですから。帝都でいい剣を探しますよ。それより、そろそろ時間ですよね?」

「はい。あと少しですね。もう一人来ますのでお待ちください。」

 本部に帰る者たちは既に準備を終えているように見える。という事は、ゲインから本部に向かう協会関係者であることは予想できた。

「もう一人?まさか……。」

 ウィルが何かを言おうとした時、背後から声が聞こえた。

「すいません。遅れました。」

 振り返ったウィルは驚きの声を上げた。

「アイラ?」

「遅れていません。指定した時間に十分間に合っていますよ。」

 シャミが話しかけた先には全身、長旅にぴったりの機能性を重視した装備に身を包んだアイラがいた。

 そして、彼女もウィルがいる事に驚きの声をあげる。

「あれ?ウィルさん?じゃあ、もう一人の協会関係者はウィルさんですか?他の暁光の導きの方々は?」

「俺は抜ける事にしたんだ。次のパーティーが見つかるまでは帝都でソロ活動だ。アイラは?」

「私は本部への異動を希望したんです。シャミさんとテッカンさんが推薦してくださったので、すぐにでも異動可能と言われたのでついて行く事にしたんです。」

 驚いた表情のままウィルがシャミを見ると、得意げな顔で、

「有望株ですからね。すぐにでも来て欲しいとお願いしました。三日で準備は無理があるかと思いましたが。」

と言った。

「窓口だけでしたから大した引き継ぎもなかったので。」

 下を向いて頬を染めたのは純粋に褒められた嬉しさと、最小限のものしか無かったために同僚の一人から女が住んでいるとは思えないと明言された事実を思い出した恥ずかしさからだった。

「これで、協会関係者は揃いましたね。少し早いですが出発しましょう。」

 彼女の言葉で部下達が出発のために声を掛け合い始める。

「お二人とも、『もう一人』の予想は外れたようですね。残念だったと顔に出ていますよ。」

 シャミがイタズラっぽい笑みを浮かべると、アイラとウィルは顔を見合わせて気まずそうに視線を逸らした。

「俺は他に帝都に行く協会関係者なんて思い当たらなかったからな。支部内での異動しか見たことないし。ソウシなら行きそうだな、と思っただけだ。」

「わ、私も他に帝都に行く方に心当たりがなかっただけです。ソウシは本部でランクアップ試験を受けられることも知っているはずだから行くのかなと。」

「私は一言もお二人がソウシさんだと思っていた、などと言っていませんよ。」

 シャミの言葉に二人が顔を伏せるのを尻目にシャミは出発の号令を出し、歩きながら話を続けた。

「何やらやり残した事があるそうで、今日の出発には間に合わなくても後から帝都にいらっしゃるそうです。」

 その言葉に顔を上げた二人だったが、同時に引っ掛かるものがある。

 家と呼べる場所があった自分ですら三日で出立の準備を整えたのに、拠点とすら思っていなかったであろう宗絃がなぜ今日の出発に間に合わなかったのだろうか、と。

「また何か、予想外のことをしていそうな気がします。」

「そうだな。アイツはやらかしてくれそうな気がする。」

 二人が振り返ればそこには見慣れた町の姿が広がっている。

 都市ほど大きくもなければ閑散とした田舎でもない。

 ちょうど中間ほどの規模のこの町に二ヶ月前に現れた少年。

 すれ違っても、彼だと瞬時に認識できるほど顔を知っている者はごく一部で、新人冒険者が多く集まるこの町では目立たないはずだった。

「ま、何かやったらすぐ分かるだろ。目立つ事だろうし。」

「そうですね。目立ちたくはないようですが、結果が派手ですから。」

 二人はそう結論づけ、帝都へ向かって歩き出した。

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